【文徒】2015年(平成27)10月29日(第3巻198号・通巻648号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】エイ出版がセブンイレブン限定本で著作権無視の大暴走
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.10.29 Shuppanjin

1)【記事】エイ出版がセブンイレブン限定本で著作権無視の大暴走

葉石かおりツイッターに次のように投稿したことで「事件」は発覚した。10月26日のことである。
「拙著『うまい日本酒の選び方』が許可なく、構成、写真全く同じで、語尾だけ変えたパクリ本が本日セブンイレブン限定で『日本酒入門』として発売されると、昨日事後報告がありました。著作権に対する倫理観を疑います」
https://twitter.com/jiji_kuso/status/658788155303137280
葉石はエッセイスト、酒ジャーナリストを名乗り、一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立している。「うまい日本酒の選び方」は今春、エイ(木に世と書く)出版から刊行されたばかりだ。ツイートのなかに事後報告があったというのは、セブンイレブンからではなく、エイ出版と推測される。というのはトーハン帳合でセブンイレブンの独占販売となった「日本酒入門」の版元もまたエイ出版に他ならない。確かに「日本酒入門」は「うまい日本酒の選び方」とほぼ同じ内容のものであった。しかし、「日本酒入門」のどこを探しても葉石の名前はない。
葉石のツイートはつづいた。
「拙著『うまい日本酒の選び方』が下、上が今回セブンイレブンから限定発売されたムック『日本酒入門』です。あまりにまんま過ぎて爆笑(笑)中の構成もほとんど同じです。これが許される日本って…?」
https://twitter.com/jiji_kuso/status/658819911104401408
現在は一般には閉鎖されてしまっているがブログでも怒りを爆発させる。
「一般的に著作権のあるものは、許可無しで転載することは違反です。契約書まで交わしているのに、何の連絡もありませんでした。構成はまんまで、語尾を変えたにすぎない本が、わずか500円で売られてしまうなんて」
「販売期間が短いから回収できないと言われ、有無を言わさず著作権が侵害されてしまうのが、私は悲しくて、悲しくて、たまりません。個人は黙らされ、泣き寝入りするしかないのでしょうか?」
恐らく、「うまい日本酒の選び方」に著者として葉石の名前が刻まれている限り、著作権は葉石にあることは明白である。
しかし、エイ出版は回収には応じられないと返答してしまう。エイ出版は、とんでもない著作権侵害をしでかしておきながら、回収をセブンイレブンに申し出ることで両社の関係が悪化することを恐れたのではなかろうか。この段階でセブンイレブンは何も知らなかったと思われる。
エイ出版はネットでの販売を一部中止することで事態の収拾を図ったが、葉石からすれば「個人は黙らされ、泣き寝入りするしかないのでしょうか?」と思うのは当然のことである。葉石のブログを読む限り、葉石自身がセブンイレブンの広報に連絡を取り、事実を伝え、回収を求めたようだ。
むしろ、セブンイレブンの対応のほうが早かったというべきなのではないだろうか。最終的にはエイ出版の販売から葉石に回収すると連絡が入る。
事態の推移を葉石はブログで次のようにまとめている。
「・パクリ本が出ると、担当から発売日前日に事後報告。
・回収を求めるが、発売期間が2週間と短いため不可と言われる。ネットのみ一部停止。
・販売元のコンビニの広報に事実を伝え、回収を求める
・販売元から事実確認した上で担当から連絡させると約束。→連絡は来てません。
・出版社の販売部より回収の知らせがあり『穏便に済ませて欲しい』と言われる。→穏便って言いかたはないとムッとする。
・正式な謝罪については来月半ば。→著者から日程指定」
それにしてもエイ出版は著作権に関して、あまりにも鈍感である。葉石はブログでこうも書いている。
「勇気ある蔵元から連絡をいただいたのですが、パクリ本が出る一か月前に、拙著『うまい日本酒の選び方』を再編集したムックが出ると電話があったそうです。
著者である私には発売日前日。
何故、連絡をくださらなかったのか不思議で仕方ありません」
http://ameblo.jp/haishi-kaori/
この件は日刊スポーツやデイリースポーツ、朝日新聞なども取り上げている。
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1558199.html
http://www.daily.co.jp/newsflash/gossip/2015/10/28/0008518258.shtml
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1510/27/news103.html
http://www.asahi.com/articles/ASHBW7KC4HBWUCVL01T.html
エイ出版に怒っているのは葉石かおりだけではあるまい。セブンイレブンも当然、エイ出版に怒り心頭であろう。
ちなみに、ロマンポルシェのボーカルを担当する掟ポルシェツイッターに次のような投稿をしている。
「木世(エイ)出版社、前科あるよ。以前出したカレー本で俺の大沢食堂についてのネット記事丸パクリとか平気で載ってたから。しかも画像間違えて掲載されてた」
https://twitter.com/okiteporsche/status/658881560339288065
「これがネット記事からの無断転載等で構成されているエイ出版社の本。何度も似たようなことやってて、心得がなってねえよ。(カスタマーレビュー参照)『カレーの心得 』(エイムック 1979) 大型本 - 2010/6/28」
http://www.amazon.co.jp/dp/4777916529
https://twitter.com/okiteporsche/status/658885103586664449
エイ出版社のカレームック本には、俺が取材に答えた体で載ってて。有名人オススメのカレー店というページで俺以外にもネット記事から抜粋されてた人が数名いた模様。直接事情説明求めたら『担当者が勝手にやってしまいまして』と平謝りしてて最悪でした」
https://twitter.com/okiteporsche/status/658883804619124736
エイ出版には構造的な問題が横たわっている可能性があるのかもしれない。エイ出版が「10月26日発売の『日本酒入門』に関する件」を発表したのは10月28日のこと。総てが後手後手なのである。
「10月26日に発売いたしました『日本酒入門』に関する件についてご報告いたします。
『日本酒入門』は、過去、弊社にて複数刊行致しました日本酒関連のMOOKおよび書籍を再編集・再構成して制作したものです。その編集、制作過程におきまして、弊社既刊書籍『うまい日本酒の選び方』の著者・葉石かおり様への二次使用の許諾確認に不手際があったことが判明しました。
そこで弊社は、10月27日に『日本酒入門』を全冊回収することを決定し、回収手配を行いました。
本件につきましては、著者をはじめ、関係各位、読者の皆様に多大なるご心配、ご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫びする次第です。
尚、弊社といたしましては、出版社としての社会的な責任を含め、真摯に対応させていただくと共に、今後このようなことのなきよう管理体制を徹底いたします」
https://www.ei-publishing.co.jp/company/news/newsrelease/archives/2015/102802/
「二次使用の許諾確認に不手際があった」というが、それはどのような不手際で、何故、そのような不手際が起こったのかを総括しない限り、この出版社の構造的とも推測できる体質は変わらないのではないだろうか。例えば、9月11日付奈良日日新聞に掲載された「飲食店へ多額の血税 ゆがんだ・まちづくり・」という記事にもエイ出版の名前が登場する。
「年間4万人もの市民に愛されてきた奈良市ならまちセンター(東寺林町)の展示スペースを撤去し、多額の血税を投じてオープンさせた飲食店『coto coto(コトコト)』に対する・利益供与・とも取れる仲川元庸市長の手法に、議会や市民から疑惑の目が向けらている。公平・公正であるはずの行政が、一民間業者の出店に物心の両面で支援するこの異常さは、市民合意を得られるはずがない。
一定数の展示スペース撤去の反対がある中、仲川市長は昨年度、突如として閉鎖を決定。その理由について当時、『ならまちのまちづくりのブランディング戦略の一つとして、いくつかのランドマークとなる施設を形成するため』と説明し強行していった。
その強行さを象徴するのが、本紙の市に対する情報公開請求などの取材で明らかになった950万円もの内装工事の随意契約−。市が1400万円を投じて『coto coto』の出店計画を委託した東京都世田谷区の『エイ出版社』に対し、店の特注家具をはじめ内装工事を市は同社と随意契約を交わした。
当初、市が1400万円を投じ、プロポーザルの上で計画案を委託した『エイ出版社』だが、関係者らは『そもそもこのプロポーザルの発注方法がおかしい』と指摘している」
http://www.naranichi.co.jp/20150911is385.html
この記事によれば仲川元庸市長は佐賀県の樋渡啓祐前市長と親しいらしい。樋渡は現在、CCCの関連会社の経営にかかわっているが、そういえばエイ出版もCCCと共同出資して「チームワークス」なる広告会社を立ち上げている。
https://www.ei-publishing.co.jp/company/news/newsrelease/archives/2011/100501/

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2)【本日の一行情報】

トーハンは、店頭活性化プロジェクトの一環として「文豪気分の旅プレゼントキャンペーン」を全国600書店で実施している。
http://www.tohan.jp/news/20151027_611.html

朝日新聞デジタルの現在の有料会員数は24万人。朝日新聞社の渡辺雅隆社長は、これを50万人に増やしたいのだそうだ。「紙の新聞の寿命が既に見えてきていることなのかな」とも語ったようだ。
http://mainichi.jp/feature/news/20151027mog00m040019000c.html

◎ネットフリックスにとって初の劇場映画「Beasts of No Nation」が大コケしたが、ネットフリックスは興行成績には関心が薄いそうだ。何故なら、「フォーブス日本版」によれば「この作品を公開する最大の意義は、アカデミー賞にノミネートされることにある」という。
http://forbesjapan.com/translation/post_9686.html?utm_content=buffer94aff&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer

◎在京民放キー局5社によるテレビ番組の無料配信サービス「TVer」(ティーバー)がスタートした。
http://www.tbs.co.jp/company/news/pdf/201510261600.pdf
操作性を統一すべきだというレビューはもっともである。
http://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/20151027_727533.html

JTB総合研究所の「スマートフォンの利用と旅行消費に関する調査(2015)」によれば、「旅行商品の予約や購入」が前年比4.3ポイント増の32.6%となり、20代以下と30代の女性はいずれも47.6%とほぼ過半数を占める。スマホ経由で予約・購入をした旅行商品で多いものは、「宿泊施設」(17.3%)、「国内ツアー」(10.3%)、「レストラン」(5.7%)、「飛行機」(5.5%)の順となる。
http://www.travelvoice.jp/20151026-53351

サイバーエージェントによれば2015年の動画広告市場は、前年対比で約160%の506億円に成長する見通し。このうちスマホ比率は全体の46%。動画広告市場は2017年には1,000億円を突破し、2020年には2,000億円規模に到達すると予想している。
https://www.cyberagent.co.jp/news/press/detail/id=11208&season=2015&category=ad
雑誌は動画を取り入れたデジタルシフトを考える必要がある。

◎日本では新聞、雑誌、テレビを7割が信頼し、アメリカでは新聞、雑誌、テレビを8割近くが信頼していない。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/10/post-4034_1.php

KADOKAWAの月刊マンガ誌「電撃マオウ」連載の「この美術部には問題がある!」(いみぎむる)がTVアニメ化されることになった。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001853.000007006.html

Kindleストア3周年を記念し、「Kindleアーカイブ」の約5000タイトルが期間限定で無料配信されている。国立国会図書館が「近代デジタルライブラリー」で公開しているパブリックドメインの古書をKindle用に最適化したものが「Kindleアーカイブ」である。
http://www.amazon.co.jp/b?node=3311912051
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/20151027_727540.html

◎光文社の創業70周年を記念し、女性ファッション誌「CLASSY.」とベイクルーズグループのSpick & Span・IENA・Le Talonがコラボした。
http://blog.baycrews.co.jp/letalon/?p=19516
「VERY」もPlage・JOURNAL STANDARD relume・Deuxieme Classeとコラボしている。
http://www.baycrews.co.jp/feature/2015kobunsha/index.html

◎インスタグラムは100万人というフォロワーを持つ梨花が宝島社の女性ファッション雑誌「オトナミューズ」の12月号より専属モデルとなった。梨花が専属モデルに就任するのは初めてのことだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000240.000005069.html

◎宝島社の40代女性向けファッション雑誌「GLOW」12月号の付録は、YOUがディレクションをつとめるファッションブランド「ピールスローリー」のリバーシブルトートバッグである。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000238.000005069.html

◎日本出版者協議会は丸善ジュンク堂渋谷店がフェア「自由と民主主義のための必読書50」を中断したことに抗議している。
「書店が公式サイトで『本来のフェアタイトルにそぐわない選書内容であった』という発言は、書店員の選書の自由を奪い、選書に選ばれた書籍の出版社を否定するようなものである。表現の自由が損なわれてしまう。読者・書店・出版社の信頼関係をもっと大事にしなければならないのではないか。
たとえば私たちは、『保守政治思想をたどる』というフェアでも、『TPPが日本経済を救う!』というフェアであっても、主張は違うが、そういう出版物が『出版物に値しない』とか『一般にそぐわない』とかの理由で、フェア中止を求めるようなことはしない」
http://shuppankyo.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-2552.html
http://www.nikkansports.com/general/news/1558684.html

電通は、Yahoo! JAPANが運営する「ヤフオク!」と社会課題を扱うコミュニケーションの企画・推進を行う「電通ソーシャル・デザイン・エンジン」との共同企画として、11月4日(水)より、リユースを通じて人の夢や未来を応援する新しい仕組みのクラウドファンディングサービス「reU funding」(リユー ファンディング)を開始する。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/1027-008427.html
http://pr.yahoo.co.jp/release/2015/10/27a/

◎「東洋経済オンライン」によれば代官山蔦屋書店の坪月商は30万円だという。CCCの増田宗昭社長が言うのだから間違いあるまい。
「これから代官山にあるような蔦屋書店を100店展開するけれど、それもCCCがすべて直営するのではなくて、既存の書店(FC)さんが変わっていく」
http://toyokeizai.net/articles/-/89858

◎海老名市の市立中央図書館が揺れている。CCCとの決別を決めたTRCは海老名市の図書館の運営からの離脱も選択肢としていることがわかったからだ。「ハフィントンポスト」は次のように書いている。
「TRCでは現在、図書館を管轄する市教委と「良い方向に向かうよう協議中」としており、市教委は今週中にも会見を開き、今後の図書館運営について説明することになった。海老名市では市長選と市議選が11月8日に告示され、11月15日に投開票が行われる。本格的な選挙戦に向けて、「TSUTAYA図書館」問題が影響しないよう対応に追われている」
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00306799.html
http://www.huffingtonpost.jp/2015/10/27/trc-ccc_n_8397778.html

スクウェア・エニックスは、中国のポータルサイト運営会社の網易(NetEase社)と協業し、中国向けに簡体中国語版コミックの電子配信を開始した。配信されるのは「鋼の錬金術師」「黒執事」「ソウルイーター」「うみねこのなく頃に」シリーズなどである。また、現在雑誌で連載中の16作品については、日本での公開にあわせた同時配信を開始する。
http://www.jp.square-enix.com/company/ja/news/2015/html/6f7465437650563f357af81b50a14ceb.html

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3)【深夜の誌人語録】

何かにだらしないのではない。すべてにだらしないのである。だらしなさとは、そういう病である。