【文徒】2015年(平成27)10月30日(第3巻199号・通巻649号)

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1)【記事】有斐閣著作権判例百選 第5版」が出版の差し止めに
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】有斐閣著作権判例百選 第5版」が出版の差し止めに

東京地裁有斐閣に「著作権判例百選 第5版」の出版の差し止めを命じた。産経ニュースは次のように書いている。
「決定によると、有斐閣は平成21年12月に発行した著作権判例百選の改訂に当たり、旧版の編集に加わっていた大渕哲也東大教授の氏名を編者から外して今年11月上旬に出版することを計画。著作物に氏名を表示するかどうかは著作者の権利として認められており、大渕氏は、氏名を載せないのは著作権侵害だと仮処分を申し立てていた」
http://www.sankei.com/affairs/news/151028/afr1510280030-n1.html
編集著作権をめぐって両者の見解がぶつかりあったわけだが、東京地裁有斐閣の主張を退けた。朝日新聞は次のように書いている。
「大渕氏側は第5版について、扱う判例や執筆者が第4版と9割近く一致しているとして、編集著作権があると主張していた。有斐閣側は、第4版で判例や執筆者の選択といった実質的な編集作業をしたのは別の研究者で、大渕氏は『編集著作者ではない』とし、一般的な編者と、著作権法上の編集著作者は異なると反論していた」
http://www.asahi.com/articles/ASHBX5K1HHBXUCVL01Y.html
毎日新聞は、こう書いている。
「決定は『5版は、収録判例や執筆者の8割超が4版から維持されており、2次的著作物に当たる』と判断。『大渕教授の合意なく5版の編者から氏名を外すのは、4版を意に反して改変したと言わざるを得ない』と指摘し、著作権の侵害に当たるとした」
http://mainichi.jp/select/news/20151029k0000m040095000c.html
大渕哲也教授は元裁判官である。専門は知的財産法だ!著作権法学会に属している。「著作権侵害による損害の賠償 - 知的財産法からのアプローチ」なんていう論文を書いている。
http://www.j.u-tokyo.ac.jp/about/kyoin/profile/obuchi_t.html

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2)【本日の一行情報】

◎最近、楽しみにして読んでいるのが「SPUR編集長山崎のファッション横滑り」。この手の雑誌の編集長にしては珍しくセンスが良い。就職活動中にフィリップ・ロスの「さようならコロンバス」を読んでいたというところにも共感できる。
http://hpplus.jp/spur/fashion/andothersstories/
オレの場合は「美しい夏」だったよなあ、チェーザレパヴェーゼの。「あのころはいつもお祭りだった」は「美しい夏」の最初の一行だったと思う。

◎学研エデュケ―ショナルは、自宅で学べるタブレット学習サービス「学研タブレットゼミ」を11月から開始する。端末が36,000円(税込38,880円)。学習コンテンツ月額利用料は、小学1年〜2年/900円(税込972円)、小学3年〜6年/1,500円(税込1,620円)、中学1年〜3年/2,000円(税込2,160円)。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000568.000002535.html

学研パブリッシング(現・学研プラス)と凸版印刷とで共同開発した算数や国語など小学校低・中学年の単元にあったクイズをゲーム感覚で解いていく無料のウエブ学習サービス「学びゲット!」が文科省経産省等が後援する第12回日本e-Learning大賞において、「学習モチベーションアップ部門賞」を受賞した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000192.000007512.html

◎確かに2015年上半期(2015年1〜6月)のABC公査で宝島社の女性ファッション誌三誌の前期比は物凄い。「SPRiNG」が139.4%、「オトナミューズ」が135.9%、「GLOW」が134.5%だ。ただし、前年同期比は、「GLOW」110%、「オトナミューズ」96.3%、「SPRiNG」に至っては54.4%%である。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000241.000005069.html

ツイッターはフォロー制限がかかるアカウント数を、従来の2000件から5000件に拡大した。
https://twitter.com/TwitterHelpJP/status/659157740166623232

◎モデルの菅原沙樹がブログで結婚を発表。
「この度、私、菅原沙樹は、デザイン会社を経営されている一般男性の方と、2015年10月27日に入籍いたしました」
http://ameblo.jp/sugawara-saki/
もともとは「With」専属モデルだった。

秋田書店の元女性社員が解雇無効や地位確認などを求めていた訴訟は和解となった。秋田書店が元女性社員に解決金120万円を支払い、元女性社員は退職することで合意。原告側は「秋田書店と編集長からの謝罪や正式な懲戒解雇の撤回を得られなかったのは遺憾だが、実質的な勝訴とも言える和解であり、原告女性の体調の問題や再就職のこともあって応じた」そうだ。
http://mainichi.jp/select/news/20151029k0000m040024000c.html

◎盛岡のさわや書店フェザン店店長・田口幹人の名前を知らない販売マンは絶無だろう。ポプラ社から「まちの本屋」を刊行する。
http://www.poplar.co.jp/korekara/tankoubon/009825.html
田口は地元のラジオ、IBC岩手放送で「BOOKナビ」に出演している。10月29日の放送では盛田隆二の「二人静」(光文社)をオススメしていた。
http://www.ibc.co.jp/radio/asakara/

電子書籍ストアとしては老舗と言って良いだろう。何しろ創立は2001年だ。 ミュージック・シーオー・ジェーピーが、集英社など20社と共同でPocket PC、Windows CE向けに「PDABOOK.JP」を立ち上げたのは2001年12月1日のことだった。「電子書籍メガストア」と自称していたのだけれど。
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/6771.html
PDABOOKが閉店することになった。11月30日午後5時に会員登録・書籍販売を終了し、12月7日に再ダウンロード期間を終了する。ダウンロード済み電子書籍は、サービス終了後も引き続き閲覧できるそうだ。
http://pdabook.jp/pdabook/announce.asp

◎深沢潮の「緑と赤」(実業之日本社)に期待大。緑は韓国のパスポートの色で、赤は日本のパスポートの色である。
http://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-53672-9

◎「東洋経済オンライン」の「TSUTAYA図書館に協業企業が呆れた理由」。何故TRCがCCCに呆れてしまったのか。TRCの谷一文子会長の発言だ。
「『分類方法を改善するべき』と改めて提言したが、CCCの図書館事業の責任者からは『独自分類は当初からの提案。市もそれでいきましょうと言っている。変えるつもりはない。間違ったジャンルに分類されている場合は、その都度修正する』という回答だった。市にも問題があると、改めて申し上げてある。率直なところ、あの分類は図書館としてはノーだ」
「CCCは海老名で、『食こそ文化』という発想から料理本を大量に集めている。彼らにとって公立図書館はエンタテインメントの一つかも知れないが、地域にとって本当に買うべき本は何なのか、遠大な価値観でもって考えて欲しい」
http://toyokeizai.net/articles/-/90216
CCCに図書館を任せるということは、図書館が図書館であることを放棄するということに他なるまい。それにしても、ここまで発言しておきながら、CCCとヨリを戻してしまうTRCという会社も私には信用できない。日経は次のように書いている。
「神奈川県海老名市の図書館の運営を巡る方針の違いが表面化した図書館流通センター(TRC、東京・文京)とカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、今後も同市での共同運営を続ける見通しとなった。28日に内野優市長が入った話し合いが持たれ、両社が歩み寄った」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ28HPL_Y5A021C1TI1000/
岡山県高梁市は来年12月に「TSUTAYA図書館」をオープンするそうだ。読売新聞によれば「CCCが提案する管理運営費は、スタッフ数35人で年間約1億6000万円。市が直営する場合に比べて11人多いのに、1000万円近く少ない」のだそうだ。
http://www.yomiuri.co.jp/osaka/news/20151028-OYO1T50018.html

◎「第25回神保町ブックフェスティバル」が10月31日(土)、11月1日(日)に開催される。
http://osanpo-jimbo.com/news/13743

KADOKAWAの「ASCII.jp」が10月28日17時30分ごろ、161時間ぶりに復旧した。
「平素より、アスキー・メディアワークスのサイトをご覧頂きありがとうございます。
通信障害により、アクセス出来ない状況となっておりましたASCII.jpですが、対策が完了し、本日より閲覧いただけるようになりました。
閉鎖期間中におきましては、お客様にご不便おかけしましたことをお詫び申し上げます。
引き続き、ASCII.jpならびにアスキー・メディアワークスのサイトをご愛顧頂きますようお願い申し上げます」
http://asciimw.jp/elem/000/000/027/27567/

朝日新聞によれば、全国図書館大会の「出版と図書館」分科会で新潮社の佐藤隆信社長は「売れるべき本が売れない要因の一つは図書館の貸し出しにある」とし、「ある人気作家の過去作品を例に、全国の図書館が発売から数カ月で貸し出した延べ冊数の数万部のうち、少しでも売れていれば増刷できていた計算になると説明」したそうだ。
http://www.asahi.com/articles/ASHBW64R4HBWUCVL01B.html
人気作家の作品を揃えるのが本来の図書館の役割ではないはずだ。全国の公共図書館は10年で400館以上増え、3246館になったというが、その総ての図書館が例えば上下巻からなる長谷川宏の「日本精神史」(上下巻とも2800円+税)を揃えるといったことが本来の役割であるはずだ。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062194617
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062194624

やしきたかじんの元マネジャーが百田尚樹の「殉愛」で名誉を傷つけられたとして、幻冬舎百田尚樹を提訴した。
http://www.sankei.com/west/news/151028/wst1510280107-n1.html
西岡研介が次のようにツイートしている。
「訴状読んだら分かるだろうが、娘さんの代理人弁護士と違って、Kマネの代理人についた弁護士の先生はエグいよ。
あんたがどれだけお目出たい阿呆なのか、衆人環視の中で晒してやるから覚悟しな」
https://twitter.com/biriksk/status/659385666086694912
百田尚樹は、こうツイートしている。
「ネットニュースで私が訴えられたというのを知った(^^; 訴状が届いてないので、どんな内容かわからないけど、司法の場で事実関係が明らかになるのはいいことだと思う」
https://twitter.com/hyakutanaoki/status/659375120134201344

◎クロス・マーケティングによる一都三県(東京・神奈川・千葉・埼玉)に 在住する15歳〜69歳の男女を対象にした「読書に関する調査」によれば、「読書の習慣がある」が50.8%、「読書の習慣はない」が49.3%。読書手法については「主に紙の書籍で読む」が93.7%と圧倒的多数を占めた。紙の書籍派の57.0%が「電子書籍は知っているが、利用しようとは思わない」のだそうだ。
http://www.cross-m.co.jp/news/20151028.html

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3)【深夜の誌人語録】

努力は漢方薬であって、即効性を期待してはなるまい。こうも言える。努力に即効性を求めるから挫折するのである。