【文徒】2015年(平成27)3月20日(第3巻53号・通巻498号)

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1)【記事】ベネッセは個人情報を軽く見ていないか!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】ベネッセは個人情報を軽く見ていないか!

ベネッセに個人情報を扱う資格があるのだろうか。業務委託先の契約社員が23人の顧客情報を不正取得したうえ、外部に流出させていたことが判明した。
http://www.47news.jp/CN/201503/CN2015031701001896.html
この「業務委託先」はトランスコスモストランスコスモスは奥田昌孝代表取締役兼COO名義で「弊社元契約社員による、お客様企業の顧客情報持ち出しについて」を発表している。そこには次のように書かれている。
「元契約社員スマートフォンならびにお客様企業の顧客情報を書き写した紙については既に警察が押収しています。また、現時点では第三者に渡った事実はなく、情報の拡散は確認されておりません」
http://www.trans-cosmos.co.jp/company/news/pdf/2015/150317.pdf
だいたい「個人情報」を扱うような仕事を派遣なり、契約社員に任せている限り、こうした情報流出は起こり得るはずだ。ベネッセにしてからが、個人情報を扱う業務を丸投げしてしまっていることに問題があるのではないか。
http://www.trans-cosmos.co.jp/company/
だいたい今回の件に関してベネッセが発表した「トランスコスモス契約社員による弊社お客様情報の不正持ち出しについて」なる文章は不誠実なものである。株式会社ベネッセホールディングス、株式会社ベネッセコーポレーションと社名が記されているだけで、そこに最高経営責任者といって良いベネッセホールディングス代表取締役会長兼社長である原田泳幸の名前はない。文章にしても、昨年、個人情報の大量漏洩で世間を騒がせたにもかかわらず、実にあっさりとしたてものである。
http://blog.benesse.ne.jp/bh/ja/news/m/2015/03/17/docs/20150317release.pdf
ベネッセのような企業に個人情報を委ねるのは絶対に止めたほうが良いだろう。

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2)【本日の一行情報】

小学館の女性ファッション誌「CanCam」5月号が「妖怪ウォッチ」のみならず、ポケモンもあるぞとばかりに、ポケモンの特集を組み、「ピカチュウ顔ポーチ」を付録とする。
http://www.inside-games.jp/article/2015/03/18/85983.html

◎ヤフーとカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は4月1日より、相互情報提供を実施する。
(1)Yahoo! JAPANは、特定のクライアントによって出稿された広告に関する閲覧履歴情報を、特定の個人を識別することができないように加工した上でCCCに提供し、CCCは特定の商品に関する購入履歴情報を、特定の個人を識別することができないように加工した上でYahoo! JAPANに提供する。これにより、Yahoo! JAPANとCCCは、自社の媒体でクライアントがどのように広告出稿することが効果的であるかを分析した統計レポートを作成し、それぞれのクライアントに提供する。
(2)CCCは、顧客の購入された商品、利用したキャンペーンおよびサービスの履歴(Tポイント履歴を含む)に関する情報や顧客傾向データを、Yahoo! JAPANに対して特定の個人を識別することができないように加工した上で提供。Yahoo! JAPANは、個人を特定することなく上記情報を行動ターゲティング広告の配信の精度を高めるため利用する。
http://www.ccc.co.jp/news/2014/20140317_004720.html

任天堂DeNAが、業務・資本提携に踏み込んだ。任天堂DeNAの発行済み株式の10%(総額約220億円)を第三者割当で取得し、DeNA任天堂の発行済み株式の1.24%(総額約220億円)を第三者割当で取得する。任天堂からすればスマートデバイスビジネスに進出することで、従来はアクセスできなかったユーザーに顧客層を拡大できるし、DeNAは主力のゲーム事業のグローバル化を図れる。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0MD0QF20150317
こうした合従連衡は、出版業界も巻き込むことになるだろう。

◎これは朗報だ。「美術手帖」が休刊を免れて、継続が決まった。
http://www.sankei.com/life/news/150318/lif1503180014-n1.html

紀伊國屋書店は、バンコクに開業する大型商業施設「エムカルチエ」に出店する。グランドオープンは4月下旬。
https://www.kinokuniya.co.jp/c/company/pressrelease/20150318140847.html

◎新潮社の石井昂常務取締役が「ビートたけしのTVタックル」に出演した。IROIROは次のように書いている。
「石井常務は実名報道について、『週刊新潮』のやったことで、『新潮社の方針ではない。編集権は編集部にあって、それを侵すことは出来ない』としながらも、『人を殺したらおしまい。回復は出来ない』と語り、『実名で報道するのは、仮名だとフィクションになってしまう』からと説明し、『人を殺した元に戻らない』と繰り返した」
この人、相当の目立ちたがり屋なんじゃないの。
http://irorio.jp/natsukirio/20150317/214196/

◎電子書店「BOOK☆WALKER」はブックビヨンドが扱う学研グループの電子書籍約2600点の配信を開始した。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1503/18/news050.html

DeNAは、「マンガボックス」で展開している「マンガボックス インディーズ」の投稿者に対して広告収益を還元するシステムを導入した。
「新しい『マンガボックス インディーズ クリエイターサイト』では、作者は自身の作品へ『先読み』機能の付加設定をすることが可能となります。作者は、読者がこの『先読み』を利用すると、それによって発生した成果報酬型広告の収益の50パーセントを得ることができます。『マンガボックス インディーズ クリエイターサイト』において『先読み』のオンオフはもちろん、1日から14日までの『先読み』期間の調整や収益の管理を行うことが可能です」
http://dena.com/jp/press/2015/03/18/1/

博報堂若者研究所リーダーの原田曜平によれば「叱られたい」派の若者が増えているという。
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/quindecennial/CO005749/20150317-OYT8T50066.html
これって危険な兆候なんじゃない。エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」が頭を過った。「叱られたい」派が孤独感や無力感に苛まれる自由の重荷から逃れて、依存と従属に安住を求めているのだとしたら、その先にあるのはファシズムだったりして。

◎東京都内中心に女性専用の寄宿舎シェアハウスを35棟運営するスマートライフは、4月1日(水)、主婦の友社の女性ファッション誌「S Cawaii!」とコラボし、モデルの藤後夏子プロデュースによるコンセプトハウス「S House」を目黒区碑文谷に36棟目の女性専用寄宿舎シェアハウスとして開設し、入居者の募集を開始する。
http://www.smt-life.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2015/03/5cfd287e41472aeb25642211cbcc7c35.pdf

◎絵本ナビは、昨年7月よりサントリーフーズ株式会社と「天然水えほんプロジェクト」を進めている。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000003893.html
http://www.ehonnavi.net/specialcontents/produce_dialy/suntory/

岩波書店就業規則改定は社内の「自由な言論」を圧殺しようとしているとしか私には思えない。
<改定案の「諭旨解雇または懲戒解雇」の条文(第41条の4)の特色は、その対象の一つとして、「会社および会社の職員または著者および関係取引先を誹謗もしくは中傷し、または虚偽の風説を流布もしくは宣伝し、会社業務に重大な支障を与えたとき」を挙げていることである>
岩波書店の社員は「岩波文化人」の奴隷になれということなのだろう。この条文に露呈しているのは岩波リベラリズムの本性がスターリニズムに他ならないということだ。
http://shutoken2007.blog88.fc2.com/blog-entry-49.html
保守系」の文藝春秋のほうが昔から岩波書店なんぞより、社風は自由だ。

◎「東洋経済オンライン」が池内恵の「イスラーム国の衝撃」や「現代アラブの社会思想」、ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」を剽窃していた記事を公開していた。池内自身がブログで告発している。それにしても池内の文章は切れ味抜群である。
http://chutoislam.blog.fc2.com/blog-entry-286.html
http://toyokeizai.net/articles/-/61790

ジュンク堂書店池袋本店は「虹色のトロツキー」などのマンガで知られる安彦良和が選書した書物を販売するフェア「安彦良和書店」を4月11日から開催する。
http://www.junkudo.co.jp/mj/store/event_detail.php?fair_id=8539

紀伊國屋書店大日本印刷は、出版流通市場の活性化および新しいビジネスモデルの創出を目的として合弁会社「出版流通イノベーションジャパン」を4月1日に設立する。紀伊國屋書店ジュンク堂丸善文教堂、TRC、hontoが手を組むことができたならば、面白いことができるだろう。言うまでもなく、仕入・物流業務システムの共有化・合理化・効率化を実現することこそが最も急がなければならない課題だろう。それには「出版流通イノベーションジャパン」という合弁会社を設立するなどという呑気なことを言わずに、紀伊國屋書店は、大日本印刷と資本・業務提携に踏み込むべきではないのか。端的にいえば紀伊國屋書店大日本印刷の傘下に加わってしまえば良いのである。
https://www.kinokuniya.co.jp/c/company/pressrelease/20150319160036.html
http://www.dnp.co.jp/news/10108681_2482.html

◎旺文社、講談社文藝春秋の3社は、2015年3月から今夏にかけて「東大合格生ノート」シリーズの3社共同キャンペーンを実施する。
http://www.dreamnews.jp/press/0000109440/

早川書房東京創元社講談社、光文社の出版4社と電子書籍関連事業を展開するブックリスタが協同して、ミステリー愛読者のための特設サイト「Collemys(コレミス)」を公開している。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000086.000006388.html
https://www.booklista.co.jp/feature/mystery/british/

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3)【深夜の誌人語録】

他人と違うことをなそうとするならば、他人と同じことができるようにならなければならない。