【文徒】2014年(平成26)5月12日(第2巻85号・通巻287号)

1)【記事】「英国記者が見た連合国戦争史観の虚妄」の「虚妄」の虚妄の…
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「英国記者が見た連合国戦争史観の虚妄」の「虚妄」の虚妄の…

祥伝社新書の一冊として刊行された「英国記者が見た連合国戦争史観の虚妄」で南京大虐殺はなかったと主張する部分は翻訳者の藤田裕行がニューヨーク・タイムズの元東京支局長だった、著者のヘンリー・ストークスに断りもなく書き加えたものであったという内容の記事を共同通信は配信した。<同書はストークス氏が、第2次大戦アジア諸国を欧米の植民地支配から解放する戦争だったと主張する内容。「歴史の事実として『南京大虐殺』は、なかった。それは、中華民国政府が捏造したプロパガンダだった」と記述している。だがストークス氏は「そうは言えない。(この文章は)私のものでない」と言明。「大虐殺」より「事件」という表現が的確とした上で「非常に恐ろしい事件が起きたかと問われればイエスだ」と述べた>
新書の場合、「ストークス氏単独の著書という体裁だが、大部分は同氏とのインタビューを基に藤田氏が日本語で書き下ろしたという」ことは、さして問題にすることはあるまい。新書は、こうした手法を使ってミリオンセラーも誕生させてきたのだから。
http://www.47news.jp/CN/201405/CN2014050801001804.html
もっとも、共同通信の記事にも、どうやら問題がありそうである。祥伝社は5月9日付で発表した「『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』に関する各社報道について」で改めて著者たるストークスの見解を発表した。<1、共同通信の取材に基づく一連の記事は、著者の意見を反映しておらず、誤りです。
2、「(南京)虐殺否定を無断加筆 ベストセラー翻訳者」との見出しも、事実ではありません。
3、著者と翻訳者の藤田裕行氏との間で、本の内容をめぐって意思の疎通を欠いていたとの報道がありますが、事実と著しく異なります。
4、共同通信は、1937年12月に南京で起きた事に関する第5章の最後の2行の日本語訳が著者の見解を反映していないと報じています。共同通信は、問題を針小棒大にしています
著者の見解は「いわゆる『南京大虐殺』はなかった。大虐殺という言葉は、起きた事を正しく表現していない。元々、それは中華民国政府のプロパガンダだった」というものです。
5、本書に記載されたことは、すべて著者の見解です。祥伝社と著者は、問題となっている2行の記述について訂正する必要を認めません>
http://www.shodensha.co.jp/kokuchi/kokuchi.pdf
記事には「インタビューの録音テープを文書化したスタッフの1人」が、「南京大虐殺従軍慰安婦に関するストークス氏の発言が『文脈と異なる形で引用され故意に無視された』として辞職した」とあるが、その時点で編集者はストークスに連絡を取り、同時に「スタッフの1人」との間でしっかりとコミュニケーシヨンを取っておくべきであったろう。何らかの齟齬があれば事前に解決しておけば、今回のような騒動は起きなかったはずである。
ちなみに藤田は民族派活動家「みんなで神道」の導師だそうだ。

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2)【本日の一行情報】

◎二度にわたる「回天」特攻に出撃し、奇跡的に生還したという経験を持つ上山春平の「憲法第九条-大東亜戦争の遺産」が明月堂書店から刊行(復刊)されたのは奥付によれば2013年12月8日。この意味深な奥付を確信犯的に選択したのは、70頁近くに及ぶ解説を担当し、奥付に編集として名前を連ねた、たけもとのぶひろと明月堂書店の社長である末井幸作のいわば共犯関係のなせるワザであったと推測して間違いないのではなかろうか。ちなみに私が購入したのは2014年5月3日のことである。たけもとのぶひろは土本典昭の映画「パルチザン前史」の「主役」として知られる滝田修である。また末井幸作の「養父」は末井昭である。たけもとの解説が素晴らしい。藤田あたりはたけもとを少しは見習ったらどうだろうか。
http://meigetu.net/?p=629

◎アマゾンが「0円コンテンツ特集」を実施。
http://www.amazon.co.jp/b/?node=2738340051

◎KKベストセラーズは、月刊誌の「Used Mix(ユーズドミックス)」を6月号で休刊し、北欧テイストのファッション・ライフスタイル誌「style FIZZ」を5月7日に創刊した。
http://www.fashionsnap.com/news/2014-05-07/style-fizz-start/

◎第30回太宰治賞が井鯉こまの「コンとアンジ」に決定した。「濃密な文体で語られる異国の幻想恋愛冒険譚」だそうだ。
https://www.chikumashobo.co.jp/blog/dazai/

ガケ書房中上健次の故郷である新宮市に進出する。今月24日に元九重小学校の職員室だったスペースを使ってオープンする。既にbookcafe kuju(カフェ)、むぎとし(窯焼きパン屋)が昨年11月にオープンしており、本屋部門をガケ書房と共同運営する。
http://gakekuju.tumblr.com/
http://greenz.jp/2014/03/26/bookcafe_kuju/

大日本印刷は、パソコンやスマホタブレットで専門紙・業界紙の新聞が閲覧できる有料の会員制デジタル新聞販売サービス「デジタル新聞ダイレクトby honto」を5月8日から開始した。
http://www.dnp.co.jp/news/10098516_2482.html

朝日新聞社は、「朝日新聞デジタル フレッツ光Wコース」を新設し、NTT東日本の会員サービス「フレッツ光メンバーズクラブ」会員のうち、朝日新聞紙版を宅配で購読している世帯を対象に「朝日新聞デジタル」を月額500円で提供するサービスを始めた。
http://www.asahi.com/digital_guide_images/pdf/20140507_1.pdf
こういうサービスを始めなければならないほど、「朝日新聞デジタル」は思ったほど伸びていないのだろう。

福島県双葉町が「美味しんぼ」の一件で小学館に次のような抗議文を提出。
平成26年4月28日に貴社発行「スピリッツ」の「美味しんぼ」第604話において、前双葉町長の発言を引用する形で、福島県において原因不明の鼻血等の症状がある人が大勢いると受け取られる表現がありました。
双葉町は、福島第一原子力発電所の所在町であり、事故直後から全町避難を強いられておりますが、現在、原因不明の鼻血等の症状を町役場に訴える町民が大勢いるという事実はありません。第604話の発行により、町役場に対して、県外の方から、福島県産の農産物は買えない、福島県には住めない、福島方面への旅行は中止したいなどの電話が寄せられており、復興を進める福島県全体にとって許しがたい風評被害を生じさせているほか、双葉町民のみならず福島県民への差別を助長させることになると強く危惧しております。
双葉町に事前の取材が全くなく、一方的な見解のみを掲載した、今般の小学館の対応について、町として厳重に抗議します」
http://www.town.fukushima-futaba.lg.jp/secure/5924/20140507_kougibun.pdf

◎ポプラ新書の「自爆営業」(樫田秀樹)というタイトルは良いな。
「自爆営業とは、ノルマ達成のために日本郵便の職員が、年賀状などを金券ショップに持ち込み、安く売った分の差額に自腹を切る行為をいう。
驚くのは、一部のブラック局のブラック上司の下で働く社員が…ではなく、約25万人の日本郵便の職員の多くが、年賀状販売開始の11月1日からいっせいに自爆するという事実だ」
http://www.labornetjp.org/news/2014/0507kasida

宮城県多賀城市立図書館の指定管理者にカルチュア・コンビニエンス・クラブが選ばれた。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201405/20140508_11024.html

◎電子書店を運営するパピレスは「第1回upppiライトノベルコンテスト〜オフィスラブから異世界トリップまで! おしごとラブコメ大募集〜」を開催。Upppiはパピレスが運営する電子書籍投稿・編集サイトである。
http://upppi.com/ug/sc/page/201405_lightnovel1.html
http://www.papy.co.jp/info/index.php?page=/release/140508.htm

◎「変わった世界 変わらない日本」(講談社現代新書)の野口悠紀雄によれば「アベノミクスは、日本経済の長期的な趨勢に、何の影響も与えていない」のである。GDP成長率は安倍内閣の発足以来、下がりっぱなしなのである。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39180

◎フジテレビの朝の情報番組「めざましテレビ」でジャニーズ事務所のタレントを短時間に三度も間違って伝えてしまったそうだ。軽部真一アナウンサーが松島聡を「まつしまそう」と読むべきところを「まつしまさとし」と読み間違い、神宮寺勇太をテロップで神宮司と間違え、更にSexyBoyzをSexyBoysとこれまたテロップで間違えてしまったというのだが…。私などは「めざましテレビ」に同情してしまうけどね。私がジャニーズ事務所のタレントで好きなのは「労働者」顔の似合う長瀬智也だけである。
http://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/263887/

◎110万部のミリオンとなった東野圭吾の「白銀ジャック」(実日文庫)が渡辺謙主演でテレビ朝日がドラマ化し、今夏放送されることになった。実業之日本社からすれば売り伸ばしのチャンス到来である。脚本が竹山洋だから、重厚なドラマを期待できそうだ。
http://www.j-n.co.jp/news/?article_id=196
http://www.tv-asahi.co.jp/hakugin-jack/

◎現代の高校生サブローがタイムスリップし、織田信長の身代わりとなって生きることになるという、小学館の「ゲッサン」で連載中の石井あゆみのマンガ「信長協奏曲」が映画化され、加えて連続ドラマ化され、更にテレビアニメ化されることが決まった。これはフジテレビの開局55周年を記念したプロジェクトとして実施される。映画とテレビドラマで主役をつとめるのは小栗旬。アニメは7月に、連続ドラマは10月から放送される。映画の公開は、その後になる。小学館からすれば「信長協奏曲」をメガヒットさせるチャンスであろうし、マンガだけではなく小学館文庫あたりで小説化も当然、狙えよう。
http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2014/i/140508-i083.html
アニメ化、ドラマ化、映画化が同時に進行するのは初めてのことだ。

◎踊っているのは伊勢丹のスタッフなんですね。矢野顕子が作った伊勢丹オフィシャルソング「ISETAN-TAN-TAN」に合わせて踊るプロモーションビデオなのだが、YouTubeで30万回以上も再生されたそうだ。確かにみんな楽しそうなんだよね。
http://adgang.jp/2014/05/59798.html

◎中国のアリババ・グループ・ホールディングスが上場されたが、その約34%を保有するのはソフトバンクである。孫正義がアリババに目をつけたのは、アリババが無名だった2000年のことだというから、孫の投資家としての才能は相変わらず天才的である。ただし、ブルームバーグが次のように書いていることも事実なのだろう。
「一方で財務状況を懸念する声も根強い。スプリント買収を受け、同社の有利子負債は12月末で9兆2000億円に到達。長期債の格付けはスタンダード&プアーズ(S&P)がBB+、ムーディーズがBa1とともに投機的水準(ジャンク級)だ」
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N4DALQ6JIJUV01.html
リーマンショックのような事態が起きれば孫帝国はアウトになるということである。それでも個人的な趣味からすると、私は孫正義とか、かつてのダイエー中内功とかの経営者が嫌いではない。

◎「アンアン」(マガジンハウス)と福士蒼汰の関係って福士が「仮面ライダーフォーゼ」に出演していた頃からなのか。私も「アンアン」編集部で銀座「加藤牛肉店」の極上ステーキ重を食べたい!
http://magazineworld.jp/anan/anan-editors-1904-2/

◎大阪屋が同社の関西ブックシティの所在地でもある東大阪に本社を移転した。これまで本社を移転してこなかったということ自体が私からすれば大阪屋の危機感の無さを象徴していたと思う。何とか経営再建の第一歩を踏み出したということである。
http://www.osakaya.co.jp/news

◎LINEの2014年1〜3月期の売上高は2013年10月〜12月比で114%の180億円。このうちLINE事業の2014年1-3月期売上高は前の四半期比119%の146億円、対前年同期比で223%だそうだ。ユーザーが全世界で4億人を突破しても、売上高はこの程度の規模にしかならないというところにネットビジネスの難しさと厳しさがひそんでいるのである。ネットビジネスの本質は塵も積もれば山となるという諺をもって表現できるはずだ。逆に既存のメディアの現状をは塵を無視しつづけたツケを支払わされていると捉えることも可能であろう。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140508/555203/?top_tl1

◎7月12日発売の講談社女性誌「フラウ」はマンガと本の特集となり、表紙は「進撃の巨人」のリヴァイが飾ることになった。もちろん諫山創による描き下ろし。当然、広告も連動するよね?ここで広告が連動しなかったら、「進撃の巨人」が「フラウ」に出張する意味は半減しよう。
https://twitter.com/ShingekiKyojin
「フラウ」もブログをやっているんだから、そこでも報告すりゃあ良いんだけれど、残念ながら、やっていないようだ。マラソンGPSウォッチも結構だけれどもさ。

KDDIKADOKAWAの協力を得て、月額400円でアニメが見放題となる「アニメパス」を6月下旬にスタートさせる。
http://animepass.auone.jp/teaser/
http://ir.kadokawa.co.jp/topics/20140508_uapkc.pdf

サントリーは「ザ・プレミアムビールヒルズ」を六本木ヒルズで5月20日からスタートさせる。ビールがうまい季節が到来した。
http://www.suntory.co.jp/beer/premium/event/hills/

◎「食べログ」に紹介されている書店も珍しかろう。長野の松本市の文岳堂は本屋7割、おやき3割だという。
http://tabelog.com/nagano/A2002/A200201/20015419/dtlrvwlst/6279935/

◎「週刊少年ジャンプ」は5月15日発売の創刊35周年記念号を紙とデジタルで同時発売する。デジタル版に特別付録「YJ×Seventeenモデル キャラビア2.5」はないが、デジタル限定特典として有村架純スペシャルグラビアがつく。更に連載作品のおいしいとこどりをした「STARTER BOOK 」や連載作品の第一話だけを集めた「ヤンジャン連載1話激盛!」を無料配信する。デジタルキャンペーンはまだまだ進行中とのことだから、更に読者を驚かせるデジタル企画が用意されているのかもしれない。
http://youngjump.jp/info/yj_digital/
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1405/08/news068.html

ディー・エヌ・エーの無料アプリ「マンガボックス」に連載されていた「金田一少年の事件簿」のスピンオフ作品「高遠少年の事件簿」をはじめ、「ビリオンドックス」「天空侵犯」などオリジナル漫画計11作品を単行本化し、講談社から刊行した。同時にアプリ内で閲覧できる電子書籍として有料配信も始めた。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1405/09/news089.html

講談社漫画賞児童部門は小学館の「月刊コロコロコミック」に連載中の小西紀行の「妖怪ウォッチ」に決定。少年部門は勝木光ベイビーステップ」、少女部門はタアモたいようのいえ」、一般部門は雲田はるこ昭和元禄落語心中」に決定。
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/manga2014(1).pdf

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3)【深夜の誌人語録】

自らの愚行を誇りにできるような生き方は理屈抜きに素晴らしい。