【文徒】2014年(平成26)5月13日(第2巻86号・通巻288号)

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1)【記事】「にこ☆さうんど♯」運営者を著作権法違反で逮捕
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「にこ☆さうんど♯」運営者を著作権法違反で逮捕

北海道警察本部サイバー犯罪対策課および北海道手稲警察署は、5月8日、dueおよびJASRAC著作権を管理する楽曲の音楽ファイルを不特定多数の者にダウンロードさせていたサイト「にこ☆さうんど♯」の運営者である樫村慎一容疑者(29歳)を著作権法違反(公衆送信権および送信可能化権侵害)の疑いで逮捕したことを発表した。
「本件サイトでは、ニコニコ動画に公開されている動画をMP3ファイルに変換してダウンロードおよびストリーム配信を行っていたもので、専用のアプリケーション等をインストールすることなく、ニコニコ動画の動画掲載ページURLを入力するだけで容易に変換・ダウンロードすることが可能となっており、ニコニコ動画で人気のあるボーカロイド楽曲が数多く配信されていたもので、1日あたり約1,500件のファイル変換が行われるなど、大規模な違法配信が行われていました。また、本件サイト運営者は、ユーザに無料で本件サイトを利用させていましたが、本件サイトに掲載していた大手広告サービスを通じて、これまでに約1億3千万円もの収益を得ていたことが警察の捜査によって確認されています」
「にこ☆さうんど♯」は典型的な寄生型サイトである。寄生型サイトの摘発は今回が初めてのようである。朝日新聞などの報道によると「にこ☆さうんど♯」から今年2月までの約6年間で約8億件のダウンロードがあったそうだ。
http://info.dwango.co.jp/pi/ns/2014/0508/index.html
「にこ☆さうんど♯」の「跡地」には、こんな文言が残されていた。
「突然で申し訳ありませんが、諸事情によりサイトを閉鎖する事となりました。勝手で恐縮ですが、今迄ご愛顧頂きまして、ありがとうございました。今後は、niconico 公式のサービス NicoSound をご利用頂くのが良いかと思います。(名前は似ていますが、『にこ☆さうんど』とは関係ありません。)」
http://nicosound.anyap.info/
この文章を読む限り、私には29歳の容疑者には悪いことをしたとか、犯罪をおかしたという意識が希薄のように思える。

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2)【本日の一行情報】

◎50周年を迎える講談社現代新書の「刊行のことば」を執筆した村井実の発言。
「つまり、教養とは、民衆の一人ひとりが能動的につくり上げるものだということです。現代新書はそうした知的活動に役立つものであってほしい。それは講談社の出版の理念である『面白くてためになる』とも合致するものじゃないですか」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39002
デジタルボーン系の企業に私が不満なのは、そしてまた昨今の雑誌社に不満なのは「創刊の辞」を欠如させてしまっていることである。紙であれ、デジタルであれ、言葉を商売道具にする以上、志は天より高くあって欲しいものである。ちなみに村井実著作集は小学館が刊行した。
講談社現代新書の創刊時の編集部に籍を置いていた渋谷裕久の次のような発言を読んでいると、出版社は今も昔も体質的にさして変わっていないことを痛感せざるを得ない。
「一丸どころか、社内の反対は当初、とても強かったです。とくに営業サイドや重役たちは、講談社に教養新書のようなものができるわけがない、第一線で活躍している学者が講談社で書いてくれるはずがない、と考えていましたね」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39003

ポニーキャニオンが無料マンガサイト「ぽにマガ」を5月8日に立ち上げた。
「マンガだけでなく『ポニーキャニオンだから』こそ出来る事を色んな形で読者の皆様にお届けしていきます。それはコミックスだけじゃない。アニメだって、ドラマCDだって、イメージソングだって作れます。メディアミックス、すぐにできます」
http://www.ponimaga.jp/
投稿機能がないようだ。私には、こうした判断を理解しかねる。マンガに関わる仕事のノウハウの無さは、メディアミックスを方針として打ち立てる以前に既存のマンガ誌がデジタルの領域において手をつけていないか、まだノウハウを蓄積できていない部分を特徴として打ち出すことではなかったのか。バックがフジテレビという既存メディアであることが発想の幅を狭めてしまっているのかもしれない。

◎マガジンハウスの「Hanako」表紙を「ドラえもん」のしずかちゃんが飾り、表4をトヨタのCMでしずかちゃんを演じる氷川あさみが飾る。電通出身で、「TOYOTOWN」の一連のキャンペーンのクリエイティブディレクターをつとめる佐々木宏が言う。
「街で言うと、表参道や青山や代官山のような、PCや携帯で言えば、AppleMacや、iPhone『雑誌と組むなら、マガジンハウス!』といまだに、ファンですね(笑)」
佐々木は今から20年ほど前に雑誌局に籍を置いていた経験を持つ。「Hanako」の戸高良彦が言う。
「『Hanako』は編集記事と広告をあまり区別したくないと思っています。テーマとして面白ければ、きちんと読者に届くと考えています」
「Hanako」のみならず、マガジンハウスの雑誌にとって広告は「生命線」である。
http://www.advertimes.com/20140509/article156132/

テレビ朝日はアニメ「ドラえもん」のテレビシリーズ英語版を、全米で視聴可能なベーシック・ケーブル/衛星チャンネルの「ディズニーXD」で今夏より初放送すると発表。
「今回アメリカで放送されるのは、2005 年 4月よりテレビ朝日系で放送されているシリーズから厳選された 26話。『ローカライズ版』は、本来の『ドラえもん』の世界観を大切にしながら、アメリカの文化や社会基準を考慮し、英語圏の視聴者に親しんでいただけるような作品となっています」
http://company.tv-asahi.co.jp/contents/press/0302/data/20140512-doraemon.pdf

中条比紗也の「花ざかりの君たちへ」を乙冬ユキが描く。白泉社の「花とゆめ」創刊40周年を記念して「レジェンドトリビュート」を5月20日発売号より開始する。「花とゆめむから生まれた歴代のヒット作にリスペクトを込め、気鋭の作家陣が新エピソードを描くという企画だ。第一弾として選ばれたのが「花ざかりの君たちへ」である。
http://www.hanayume40th.com/tribute.html

◎「小悪魔ageha」や「egg」が消えてゆくなか、その筋で最も期待されているのが徳間書店の「LARME」であることに私も異論はない。
http://matome.naver.jp/odai/2139944202975828201?&page=1

集英社の「MEN'S NON-NO」6月号では、1994年10月号の田辺誠一以来、約20年ぶりに同誌現役専属モデルである坂口健太郎が単独表紙を飾った。「色白で薄顔」な塩顔男子の代表格なんだって。
http://mdpr.jp/review/detail/1360278

博報堂DYホールディングス2014年3月期の連結決算は、純利益が前の期比45%増の187億円と過去最高を更新した。売上高は1兆959億円で4.8%増。売上高構成比の高い「自動車・関連品」「飲料・嗜好品」に加え、「金融・保険」「流通・小売業」など幅広い業種で前年同期を上回った。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&cad=rja&uact=8&ved=0CDEQFjAB&url=https%3A%2F%2Fwww.hakuhodody-holdings.co.jp%2Fir%2Fpdf%2F%25E5%258D%259A%25E5%25A0%25B1%25E5%25A0%2582%25EF%25BC%25A4%25EF%25BC%25B9_%25E5%25B9%25B3%25E6%2588%259026%25E5%25B9%25B43%25E6%259C%2588%25E6%259C%259F%2520%25E6%25B1%25BA%25E7%25AE%2597%25E7%259F%25AD%25E4%25BF%25A1%2520%25E5%258F%2582%25E8%2580%2583%25E8%25B3%2587%25E6%2596%2599.pdf&ei=41twU6rzAoro8AW65IGAAg&usg=AFQjCNH5Y-Z0fwFYLMmmFF63Ln59mpHcnA&sig2=GwqiWIc4_i38QJEr4uiiaw&bvm=bv.66330100,d.dGc
こうした業績の好調を維持すべく博報堂DYホールディングス博報堂グループ、大広グループ・読売広告社グループという3つの広告事業会社と総合メディア事業会社たる博報堂 DY メディアパートナーズグループと同列に位置付ける戦略事業組織「kyu」を同社傘下に組成し、「kyu」による米国「SYPartners」社及び米国「Red Peak Group」社それぞれの 100%買収を完了させた。
https://www.daiko.co.jp/dwp/wp-content/uploads/2014/05/20140509_DYrelease.pdf
博報堂DYホールディングスが「kyu」を立ち上げたことで、電通イージスが成功したことが改めて理解できる。「kyu」のCEOにはマイケル・バーキンが就任する。博報堂DYホールディングスでは専務執行役員
http://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/pdf/HDYnews2014050903.pdf
マイケル・バーキン博報堂DYホールディングスのリリースによれば、こんな人物である。
「1958 年英国_まれ。86〜93 年にインターブランド社 CEO。93 年同社をオムニコム社に売却(※以降、同社はオムニコ ム社 DAS Division に所属)。1999 年〜2005 年 DAS ワールドワイド社_。05 年〜09 年オムニコムグループ副会長兼アジアパシフィック CEO。09 年オムニコム社を退社し、Red Peak Group を設立、同グループ会_に就任」

アメリカのタイム・ワーナーは6月6日に雑誌部門の「タイム」をスピンオフすることになった。
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304155604579550583536066764.html

◎「eBookJapan」が20〜30代の会員対象に行った「小学生のときに母親が読んでいたマンガ」アンケート調査を実施。その結果、第1位となったのは池田理代子の「ベルサイユのバラ」!第2位「ガラスの仮面」(美内すずえ)、第3位「DRAGON BALL」(鳥山明)、第4位「王家の紋章」(細川智栄子あんど芙〜みん)、第5位「SLAM DUNK」(井上雄彦)、第6位「ドラえもん」(藤子・F・不二雄)、第7e位「キャンディ・キャンディ」、第8位「動物のお医者さん」、第9位「花より男子」、第10位「あさきゆめみし」。
DRAGON BALL」と「SLAM DUNK」は「週刊少年ジャンプ」の作品。女の子にとっても「週刊少年ジャンプ」ブランドは強い。白泉社集英社の子会社であることを踏まえれば1〜5位を集英社が独占したとも言えるし、「ドラえもん」の小学館集英社の関係を考えれば1〜6位を一ツ橋グループが独占したとも言える。というよりも、「キャンディ・キャンディ」と「あさきゆめみし」を除けば、すべてが一ツ橋グループの作品が並んだ。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/info/news/2014/05/08_motherread.asp
「eBookJapan」はまた20〜30代、40〜50代の会員を対象に「上司にしたいマンガキャラ(男性キャラ/女性キャラ)」アンケートの結果も発表している。上司にしたい男性キャラでは20〜30代においても40〜50代においても第1位は「機動警察パトレーバー」の後藤喜一となった。女性キャラでは20〜30代において第1位は「新世紀エヴァンゲリオン」の葛城ミサト、40〜50代において第1位は「機動戦士ガンダム」のマルチダ・アジャンとなった。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/info/news/2014/05/12_chararank.asp

KADOKAWAはメディアミックスプロジェクト「アンジュ・ヴィエルジュ」の新作「ブースターパック第4章 蒼空の変転世界」を6月26日に発売する。と書くと仰々しいが、要するにカードの新シリーズを発売するという話。
http://www.kadokawa.co.jp/company/release/detail.html?id=2014200672
6〜7枚で300円だから当たれば、札を刷るのと同様のビジネスになる。

小栗旬の桃太郎を題材にした「ペプシネックス ゼロ」のCMが格好良い。
http://www.pepsi.co.jp/menu.html

◎熊本の長崎書店が雑誌「民藝」フェアを開催している。こういう書店の存在は本当に嬉しい。
http://nagasakishoten.otemo-yan.net/e843560.html

文教堂書店の「空飛ぶ本棚 sky storage service」を評価したい。紙の雑誌を買うと無料でデジタル版の雑誌も手に入る。
「読者はまず書店で雑誌を購入する。会計の際にもらえるクーポンコード(16けた)をスマホなどのアプリに入力。するとその電子版がダウンロードできるようになる。対象はファッション誌、経済誌、料理雑誌など計94誌(4月下旬時点)に上る」
文教堂は最初に始めたこのシステムを開放し、他の書店チェーンも参画。啓文堂書店丸善書店ブックファースト有隣堂書店−など計21法人が順次展開に着手しており、今後のスケールメリット(規模効果)が期待されている」
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140510/biz14051007000001-n1.htm
雑誌は紙のメディアを指すのではなく、「紙+デジタル」が雑誌だという認識を常識化したいものである。雑誌はOtoOメディアとして新たなポジションを得るべきだというのが私の主張である。

朝日新聞長野総局の山田雄介記者は20代女性にスカウトを装って、つきまとつたため東京都迷惑防止条例違反容疑で現行犯逮捕された。35にもなって、こんなバカな真似をするなよな。
http://mainichi.jp/select/news/20140510k0000m040117000c.html

雁屋哲は「硬派」である。
「…今回の件で、色々な方がスピリッツ編集部に電話をかけてくるそうです。
書いた内容についての責任は全て私にあります。
スピリッツ編集部に電話をかけたり、スピリッツ編集部のホームページなどに、抗議文を送ったりするのはお門違いです。
何かご意見があれば、この私のページ当てにお送り下さい」
http://kariyatetsu.com/

日本書籍出版協会日本雑誌協会日本出版取次協会日本書店商業組合連合会の出版関連4団体は電子媒体を含む書籍・雑誌・新聞について軽減税率の適用を求める共同声明を発表した。
「すべての国民が、書籍・雑誌・新聞等の出版物に広く平等に触れる機会を持つことは、民主主義の健全な発展と国民の知的生活の向上にとって不可欠です。これは、生活必需品や医療等、国民の健康で文化的な生活を支える商品やサービスと同等な重要性を持つものです。そのために、出版物にかかる消費税についても、軽減税率の適用によって少しでも国民の負担を軽くすることを要望いたします」
http://www.jbpa.or.jp/pdf/documents/keigen-seimei20140509.pdf

セガネットワークススマホ向けチェインシナリオ RPGチェインクロニクル」が講談社の「別冊少年マガジン」でマンガ化されることになった。
http://9-bit.jp/archives/57619

◎山本ゆりの人気ブログ「含み笑いのカフェごはん『syunkon』」をムック化した宝島社の「syunkonカフェごはん」シリーズが累計300万部を突破。宝島社はネットから鉱脈を探り出すのが上手な出版社である。
http://www.sankei-kansai.com/press/post.php?basename=000000046.000005069.html
料理にかかわる「先生」と付き合いがないことが宝島社の「強み」である。もともと宝島社は「先生」嫌いの出版社である。

内田樹がブログで5月8日付の社説を紹介するとともに、こう書いている。
アメリカの知識階級から日本は『自ら進んで成熟した民主主義を捨てて、開発独裁国にカテゴリー変更しようとしている歴史上最初の国』とみなされつつあることは記憶しておいた方がいいだろう」
http://blog.tatsuru.com/2014/05/10_0902.php

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3)【深夜の誌人語録】

真に冒険をしたいのであれば、冒険主義と訣別しなくてはなるまい。冒険主義がもたらすのは冒険ではなく破壊である。