【文徒】2014年(平成26)5月9日(第2巻84号・通巻286号)

1)【記事】東京都書店商業組合と日本エンタープライズ

アクション仮面」と言えば双葉社の「月刊アクション」における看板作品である。臼井儀人の「クレヨンしんちゃん」に登場するキャラクターを西脇だっとが換骨奪胎することで成立した話題作だが、「アクション仮面」が電子書籍書店BOOKSMARTのPRキャラクターに選ばれた。
http://natalie.mu/comic/news/116003
BOOKSMARTは東京都書店商業組合の運営する電子書籍書店である。むろん、東京都書店商業組合が単独でBOOKSMARTを立ち上げたわけではないようである。
http://booksmart.jp/guide/lp.html
BOOKSMARTを支えているのは、この2月に東証二部から東証一部の銘柄となった日本エンタープライズである。東証一部といっても売上高は40億円程度の企業である。
日本エンタープライズが創立されたのは1989年と相当古いのだが、本格的に営業を開始したのは1997年になってから。携帯電話・PHS等の移動体機器等の販売を手がけていたが、モバイルコンテンツプロバイダーの色彩を強めていって今日に至る。
http://www.nihon-e.co.jp/index.html
日本エンタープライズはIT企業にしては古めかしいところがあるようだ。「商業報国」とか「忘私奉職」という言葉を社長の植田勝典は好んで使うらしい。フェイブックの「People First」と比べてみれば、その古色蒼然とした言い回しに私などは目が眩んでしまう。
http://job.rikunabi.com/2015/company/blog/detail/r227050027/79/
植田の経歴を知れば、古めかしい理由の一端が理解できるかもしれない。植田は堺の鉄工所の次男として生まれたが、結局、就職したのはトヨタ自動車。4年で辞めたのは鉄工所を継ぐためだというが、鉄工所は継がずに日本エンタープライズを立ち上げるものの会社を設立しただけに終わり、松下電器産業のグループ会社に入社。ところが、ここでも「ある事情で、責任を取らされる」ことになる。そこで休眠していた日本エンタープライズで携帯電話の営業からスタートし、やがてコンテンツ配信を手がけるようになる。日本的な、あまりに浪花節的な立志伝に彩られた経営者である。
http://www.bridge-salon.jp/interview/vol03/interview_01.html
その古めかしさにおいて東京都書店商業組合と日本エンタープライズは相性が良いのかしらん。

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2)【記事】「サンデースクランブル」が青山繁晴をドタキャンして大騒動

青山繁晴が5月4日の「サンデースクランブル」の出演を突然キャンセルされた。「サンデースクランブル」はテレビ朝日の番組である。青山は自身のブログ「ON THE ROAD 青山繁晴の道すがらエッセイ」に5月3日付で次のように書いている。
「5月3日土曜の夕刻、テレビ大阪で『たかじんNOマネー』2本目の収録を終えて控え室に戻ると、同行している独研(独立総合研究所)秘書室第2課のM秘書(公募の甲斐あって最良の人材を採用できました)が怒りに震えている。
彼女(25歳の国士)が言うには、4日日曜の『サンデースクランブル』から『番組で同席する韓国人の女性大学教授(実際は実名)が社長(つまり、ぼくです)を忌避しているので、明日の番組参加はキャンセルにしたいとのことです。その代わり、電話取材(電話でコメントを録音し、放送するという意味)に応じて欲しいという連絡がありました』。
ぼくは即、『そうか。じゃ番組に参加しない。もちろん電話取材には応じない』とだけ答えました」
青山は匿名にしているが青山を忌避した「韓国人の女性大学教授」が「歪みの国 韓国」(祥伝社新書)などの著書を持つ東海大学准教授の金慶珠であることはテレビを見ていれば即座にわかる。
http://blog.goo.ne.jp/shiaoyama_july/e/6651febd15683a9d6ea3333c2e8833e0
このブログは青山の言葉を借りれば「凄まじいほどの反響」があったという。何しろNHKの経営委員をつとめる「国民的大ベストセラー作家」の百田尚樹までもが「いったい、どこの国のテレビ局だ!!」とツイートしているくらいである。百田は続けて次のような「百田節」全開のツイートを連発している。
「そう言えば、私も以前、同じテレビ局から『日韓問題』の番組に出てくださいと言われてOKしたところ、収録の前日に送られてきた出演者名簿を見て驚いた。韓国人と反日日本人がずらりと並び、まともな意見を持つ日本人論客はほとんどいなかった。どんな番組にしたいのか一目瞭然。即効で出演を断った」
「テレビを見ていると、反日的な意見(中には事実無根の妄言)を吐く韓国人の大学教授や講師がよく出てくる。なんで、日本の大学が反日思想を持つ外国人を教授や講師にするのだろう? 学生たちに何を教えたいのだろうか?」
https://twitter.com/hyakutanaoki
小説家の大石英司もブログ「代替空港」で次のように書いている。大石はテレビ朝日を「テロ朝」と書いている。
「ただテレビ局としては、右と左、どちらを遇するべきかと言えば、左に決まっているでしょう。うっかり、番組が右な態度を取ったと視聴者に誤解されたら、面倒なことになる。付き合いのある左な連中から抗議を受け、冷笑され、親会社の新聞社からも何を考えてるんだ! と怒られる」
http://eiji.txt-nifty.com/
当の青山は反響の大きさに触れて5月7日付のブログで次のように書いている。
「これは『みんな、いまだテレビに関心がある』と言うよりも、もはや、『マスメディアのあり方が日本を不当に歪めているという認識が広く浸透し、きちんと物を考えるひとほどテレビをはじめマスメディアの根本改革を望んでいる』という事実の表れだと今、考えています」
http://blog.goo.ne.jp/shiaoyama_july/e/7224e06d3fb555354c16d09f27d6ca13
今や「嫌韓」などというレベルをはるかに通り越して、「反韓」感情が民衆レベルに裾野を拡大しているようである。

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3)【本日の一行情報】

◎米アマゾンはユーザーがアマゾンにツイッターアカウントを登録すると、アマゾンの商品リンクを含むツイートに対して「#AmazonCart」を付けてリツイートをするだけでアマゾンのショッピングカートに入れることができるサービスを始めた。カートに入れたからといって購入したことにならないところがミソだ。
しかし、ツイッターと連携するとはアマゾンは自己革新にどこまでも貪欲だ。恐らく、自己革新を止めた時点で歴史に終止符が打たれるということを承知しない限り、インターネットをビジネスの舞台とすることはできないのだろう。
http://shopping-tribe.com/world-watch/6422/

◎「ほぼ同時刻に一斉になされたツイート」が話題になっている。その内容は「TSUTAYA運営の武雄市図書館 入館者100万人を突破 - 西日本新聞 | ニュース速報」。このツイートが拡散することで得をするのは誰かってことになる。しかし、こういうヤラセのようなツイートは逆効果にもなりかねまい。私など、この情報を「文徒」で取り上げなければ良かったと思い始めている。
http://togetter.com/li/663380
カルチュア・コンビニエンス・クラブの図書館カンパニーを率いる高橋聡は毎日新聞佐賀版に登場しているが、これも一斉にツイートされるのかしらん。
http://mainichi.jp/area/saga/news/m20140506ddlk41040303000c.html

天童荒太の「家族狩り」全五巻(新潮文庫)がTBSでドラマ化されることになった。放映は7月から、金曜日午後10時からだ。
http://www.tbs.co.jp/kazokugari/
松雪泰子が4年振りで連続ドラマの主演を張ると話題になっている。
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20140506-OHT1T50234.html
ジェットコースタードラマになるんだろうな。

ウォルマートがネット通販売上高の伸び率でアマゾンを上回った。ただし売上規模ではアマゾンはウォルマートの6倍!ウォール・ストリート・ジャーナルは、こう書いている。
「売上高の規模では、アマゾンが依然としてウォルマートを圧倒している。アマゾンの13年売上高は678億ドルと、ウォルマートの6倍を超えている。米アップル、ウォルマート、事務用品小売り大手ステープルズ など、2位以下の10社のネット通販売上高を合算しても、アマゾンには及ばない」
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304555804579546312567375736.html

◎「週刊少年ジャンプ」の連載を目指すマンガ家を主役にした「週刊少年ジャンプ」の連載マンガであった、大場つぐみ小畑健の「バクマン。」(集英社)が佐藤健神木隆之介の主演で映画化されることになった。
http://eiga.com/news/20140507/1/

◎宝島社の「大人のおしゃれ手帖」が成功したのは桐島かれんを選択したことが大きい。「原色」を使わずに「パステルカラー」を使ったことが成功の要因だと言い換えても良いだろう。その昔、マガジンハウスの「オリーブ」が得意としていた色彩である。
http://kirei.mainichi.jp/kireinews/news/20140506dog00m100022000c.html

◎「Samurai ELO」は三栄書房に引き取られ生き残ったが、創刊15年になる「Samurai magazine」は引き取り手が見つからないでいる。
http://mdpr.jp/news/detail/1360079

◎TBSと讀賣新聞がTPP合意成立派である。具体的に言うと讀賣は「実質合意」で、TBSは「基本合意」ということになる。TBSが最も前のめりなのである。
http://blogos.com/article/85873/

◎「ダイム」の酒井編集長はガレリアント『ステュデンテ GAS-3451』4万8300円を自腹買い。オレは随分昔に「女性セブン」の周年パーティで貰った鞄を今も使っている。カネがないということもあるけれど、オレは自分の鞄を気に入っている。同じような鞄があれば買い換えようと思っているのだが、これだけ細かく仕切られた鞄って高かろうが、安かろうがないんだよね。
http://dime.jp/genre/137802/2/

◎「ジャパネットたかた」の業績が急降下している。社長さんの「テレビ啖呵売(たんかばい)」はひとつの芸だったと思う。
http://blog.tinect.jp/?p=3418

◎ 「マガジン航」に大原ケイが発表した「電子出版権は本当に海賊版対策になるのか?」には目を通しておくべきだろう。大原は日本の出版社に大して手厳しい。
「電子出版権も、隣接権もぶっちゃけあまり問題じゃない。著者からコンテンツという知的財産を譲渡してもらうのか、委託してもらうのか、そしてそのコンテンツをどういう風に流通させて読者に届けるのか、つまりどう『出版するのか』をちゃんと明文化して契約書を作ることを怠ってきた。電子出版権ってものがありますよ、なんて基本的なことから決めないと取り締まれない海賊版っていうのはそのツケなんだと思う。そしてこのまま『電子出版権はとりあえず出版社にあるからね』ってウヤムヤにするのなら、著者はどんどんセルフ・パブリシングに流れていくだけなんじゃないかな」
http://www.dotbook.jp/magazine-k/2014/05/06/ebook_rights_and_piracy/

◎インターネット広告は伸びていても、インターネット広告の単価は上がっていない。既存のマス4媒体は広告枠に制限があるのに対して、インターネットにおいては広告枠がいわば無制限だから、単価は上がらないのである。むしろ、インターネットの広告単価は下がり続けると考えるべきなのだ。
「今後も流通情報量は増えていくはずで、インターネット媒体は大きなトラフィックを集められるごく一部の勝ち組媒体になれなければ、競争過多により広告単価がさらに下落していくことが予想される。PCからスマホトラフィックの主戦場が流れることで、単価下落に拍車が掛かっている」
ネットビジネスは広告以外の収益を考えなければならない局面を迎えることになるはずだ。
http://thestartup.jp/?p=10426

文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞記念展「『昭和元禄落語心中』と雲田はるこ〜落語に行こうぜ!〜」が、6月6日より米沢嘉博記念図書館1階展示コーナーにて開催される。
http://www.meiji.ac.jp/manga/yonezawa_lib/exh-kumota.html

◎愛犬家向けライフスタイル雑誌「ONE BRAND」を刊行していることで知られるワンブランドは愛犬家専用SNS「dogg.me(ドッグミー)」を立ち上げている。
http://akasaka.keizai.biz/headline/1696/

博報堂DYグループとマーケティングリサーチ会社のゲインと共同で「ニュースをつくるクリエイティブエージェンシー」としてニュージーを設立。独自の編集体制によりオリジナルニュース配信サイト「しらべぇ」を6月中旬に立ち上げる。
http://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/pdf/HDYnews20140507.pdf

◎創刊10周年を迎えた小学館の女性ファッション誌「プレシャス」はグッチとのコラボで日本初の空中ファッションショー「Precious SKY FASHION SHOW feat. GUCCI」を開催した。私は別件があり、取材というか見物に行けなかった。
http://www.fashion-press.net/news/10919

◎これまで私は、いしいのりえの描くイラストのファンであった。これほど女性の髪を繊細に描くイラストレーターを私は他に知らない。いしいに会ったこともないにもかかわらず、彼女のイラストが「アンアン」を飾った際には我がことのように喜んだものである。しかし、これまでの私は今日で終わりにすることにする。これからの私は、いしいのりえの評論のファンも兼ねなければならなくなったのだ。私は、いしいのりえの「女子が読む官能小説」に簡単にノックアウトされてしまったのだ。その行間から感受できる、いしいの凛とした優しい視線に参ってしまったのである。
http://www.seikyusha.co.jp/wp/books/isbn978-4-7872-9220-9

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4)【深夜の誌人語録】

私が文章を書くに際して一人称にこだわるのは、言語をもって他人を殴りつけることを放棄したくないからだ。