【文徒】2017年(平成29)年6月21日(第5巻115号・通巻1044号)

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1)【記事】われらが「敵」アマゾンについて考える
2)【本日の一行情報
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】われらが「敵」アマゾンについて考える

週刊東洋経済」6月24日号が特集している「アマゾン膨張」は目を通しておくべきだろう。
https://store.toyokeizai.net/magazine/toyo/
版元による「アマゾン」批判は理にかなっていると思う。しかし、同じように読者が判断するかどうかはまた別問題である。だから、難しい問題なのである。ちなみに私は新刊書を購入するのに殆んどアマゾンを使っていないのは、事務所が神保町にあるからだ。幸いにして目的買いを殆どしないで済む環境にあるわけだ。
そんな私であっても既刊本や古書の購入に際してはアマゾンを度々使うことになる。特に既刊本の場合、マーケットプレイスに古書が出品されていれば、そちらのほうが安く入手できることもあり、重宝していることもある。
こうも言える。上原正三の「キジムナーkids」(現代書館)を読みながら、どうしても「帰ってきたウルトラマン」で上原が脚本を担当した「怪獣使いと少年」を見たくなったら、どうするのか。私は迷わずアマゾンを使うことにしている。民衆の生活においてアマゾンは、民衆の利益に資するインフラであり、もはやなくてはならない存在として民衆の生活に定着してしまっているのだ。何しろアマゾンの唯一無二の理念は「地球上で最もお客様を大切にする」なのである。こうしたアマゾンを批判し、世論の支持を取り付けることは決して楽なことではあるまい。読者は出版社と違ってアマゾンに対する警戒感はないのである。
周知のようにアマゾンは日販にバックオーダー取引を中止することを通告した。日販からすれば寝耳に水の話であったろう。そもそもバックオーダー発注の引当率が低いことはアマゾンから常々指摘されてきたことであり、日販からすれば出版社と協力して引当率の向上に向けて努力を積み重ねて来たのに、ということになろう。
実際、日販はweb-Bookセンターの王子流通センターへの一本化に際しても、アマゾンの意向は充分に「忖度」されるはずであった。しかし、アマゾンはそれを良しとはしなかった。もっと読者をストレスフリーにするためには更なる納期短縮を実現したかったのであろう。確かに金額的にバックオーダー発注がそれほど大きいとは思えないが、アマゾンからすれば自らのビジネスを支える「地球上で最もお客様を大切にする」というイデオロギーにかかわる問題にほかならなかったのである。そこらあたりを良くも悪くも日本型官僚的体質の典型といって良い取次会社の日販は甘く見ていたのである。
アマゾンを敵に回すことの難しさに出版業界は今後とも直面せざるを得ないのである。

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2)【本日の一行情報】

◎12日に解散したアイドルグループ「℃-ute」のメンバーであり、主婦の友社の女性ファッション誌「Ray」の専属モデルである鈴木愛理のスタイルブック「あいりまにあ」が3刷と好調だ。
https://mainichi.jp/articles/20170619/dyo/00m/100/000000c
男性も買っちゃうんだろうな。
https://mainichikirei.jp/graph/20170619dog00m100000000c/002.html
両親はともにプロゴルファーで、慶應出身のインテリ・モデルでもある。

◎「出版科学研究所によると、紙と電子版を合わせた昨年の漫画市場全体の推定販売金額は4454億円。このうち、紙媒体が前年比9・3%減の2963億円と落ち込んだのに対し、電子書籍は同27・5%増の1491億円と大幅に増え、全体の3分の1を占めている」(産経ニュース)は知っている。問題は、紙と電子の単行本の市場規模が今年逆転するかどうかである。
http://www.sankei.com/entertainments/news/170619/ent1706190005-n1.html
マンガという商品があることにより、日本は欧米以上の電子書籍大国となることは間違いあるまい。

八戸市直営の書店「八戸ブックセンター」がオープンして半年。来館者は10万人を突破したようだ。毎日新聞が次のように書いている。
「約半年間の販売冊数は6433冊、販売額は969万948円。1日平均は販売冊数が43冊、販売額が6万4178円で、それぞれ目標の30冊と6万円は超えている。ただ、開館約1カ月の1日平均(販売冊数78冊、販売額11万8587円)と比べると減少した。同センターは当初は『オープン特需』があり、現在は落ち着いてきたためと説明している」
https://mainichi.jp/articles/20170619/ddl/k02/040/140000c

芦田愛菜小学館の「図鑑 NEO」のCMに登場。天才子役も、もう13歳になる。芦田は、6歳から「図鑑NEO」を愛読してきたそうだ。
https://mainichi.jp/articles/20170618/dyo/00m/200/024000c

◎今年で300周年を迎えるフリーメーソン。宝島社は「FACTS ABOUT FREEMASONRY BOOK ♯COMPASS」を発売する。付録のDVDにはグランドマスター就任式の映像が収録されている。確かカメラマンの沢田教一フリーメーソンだったんだよね。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000536.000005069.html

シチズン時計は「高機能ファッションウオッチ」として時計の新しい価値観を提案するブランド「シチズンxC(クロスシー)」より、光文社の女性ファッション誌「VERY」とのコラボレーションモデル【1モデル:希望小売価格:100,000円+税】を6月7日より数量限定1,500本で発売した。
http://citizen.jp/news/2017/20170426.html

マーケティングデザインカンパニーのトライバルメディアハウスは、耷出版社と業務提携した。
http://www.tribalmedia.co.jp/pressrelease/10985
これにより耷出版社でサーフィン誌「NALU」、バイク誌「CLUB HARLEY」、ランニング誌「Runninng Style」、ゴルフ誌「EVEN」の創刊編集長を歴任してきたジャック・タカハシこと高橋大一を本気で遊ぶ大人の趣味マガジンを謳うウエブサイト「 Funmee!!」(ファンミー)の編集長に迎え、編集体制を強化する。
https://funmee.jp/articles/331aab634d8c55a82c91355282862390d50bba59

博報堂DYグループの旅行・インバウンド専門会社「 wondertrunk & co.」は、訪日旅行のランドオペレーション事業などを展開するフリープラスと共同で、1,000以上の在外海外旅行会社・旅行メディア向けの情報発信サービス「JAPAN TIMELINE powered by wondertrunk」の運用を開始した。
http://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2017/06/20170615_2.pdf

博報堂は、ゆめみと資本業務提携を締結、企業向けのUX/UI設計・サービス開発・運用領域で協業していくことに合意し、サービス提供を開始した。
博報堂が持つ企業のマーケティング戦略立案/実行力と、ゆめみが持つオムニチャネル・IoT・スマートフォンアプリの領域での高度な基幹サービス開発・運用力を融合させ、企業のマーケティング活動における顧客体験(UX)開発支援サービスを提供することになる。
https://www.yumemi.co.jp/ja/news/2017/724
ゆめみは、こういう仕事をしてきた。
https://www.yumemi.co.jp/ja/works

トーハンの「ほんをうえるプロジェクト」は、「にっぽんスズメシリーズ」(カンゼン)新刊発売に合わせて6月20日〜2017年7月31日の期間で販促キャンペーンを実施。書店店頭で対象商品購入の読者に日本野鳥の会作成の小冊子「ゼロからわかるバードウォッチングBOOK」を特典として提供する。同時にTwitter上でのプレゼント企画を実施する。
http://www.tohan.jp/news/20170619_1004.html

ジュンク堂書店大阪本店で「大阪地本祭」が開催されている。「地酒」ならぬ「地本」を集めたフェアである。
http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/170619/20170619026.html

◎またフジテレビだ。「バイキング」は先週14日の放送で、佐藤浩市三國連太郎の親子関係を紹介する際に、「週刊新潮」の記事を許諾なしに使用して放送したことを謝罪した。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/1842865.html
フジテレビの情報番組が酷過ぎる。

集英社のジャンプVRチームは、7月1日〜4日に米・ロサンゼルス・コンベンションセンターにて開催される「Anime Expo 2017」で実施される「日本キャラVR祭〜Japan Character VR〜」において、VRコンテンツを出展する。
http://panora.tokyo/31417/

◎「モグラガール」とは、モデルとグラビアの両方で活躍する女性をいう。デジタルフォトブックに続き「週刊プレイボーイ」のグラビアを飾った松川菜々花(「ノンノ」専属モデル)は超有力「モグラガール」ということになろうか。
https://netatopi.jp/article/1066147.html
集英社は「モグラガール」の育成に熱心な出版社である。

電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」によれば、世界の広告費は、2017年は5,634億ドル(前年比3.8%増)、2018年は同4.3%増と予測。日本の広告費は、2017年、2018年ともに前年比1.7%増と予測。デジタル広告費の構成比は、2018年に37.6%となり、テレビ(同35.9%)を抜く。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017078-0616.pdf

電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」は、企業のデジタルトランスフォーメーション(デジタルによる変革)を支援する英国のコンサルティング会社「The Customer Framework Limited」(カスタマー・フレームワーク社)の株式100%を取得することで合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017079-0616.pdf

電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」は、英国の「ユーチューバー」のマネジメント会社「Gleam Futures」(グリーム・フューチャーズ社)のマジョリティー株式を取得することで合意した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2017081-0620.pdf
電通は体力のあるうちに日本の「ユーチューバー」のマネジメント会社を買収しないで大丈夫なのだろうか。むろん、「ユーチューバー」のマネジメント会社に限らない。デジタルエージェンシーであっても、コンサル会社であっても同じだ。日本の企業を買収することは、それほど重要ではないという認識なのだろうか。

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3)【深夜の誌人語録】

冒険のない挑戦は現状維持にほかなるまい。