【文徒】2017年(平成29)年6月20日(第5巻114号・通巻1043号)

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1)【記事】 スマホアプリ「マンガほっと」が“最後発”から目指すものとは?
2)【本日の一行情報】

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1)【記事】スマホアプリ「マンガほっと」が“最後発”から目指すものとは?(岩本太郎)

イマジニアが今月1日からローンチしたスマホ向けアプリ「マンガほっと」の事前登録者数は7万人に上ったそうだ。承知の通り、同アプリはノース・スターズ・ピクチャーズおよびコアミックスとの共同事業。スタート時から「事前登録7万人達成の特典」として、『北斗の拳』を3日間無料開放したほか、大相撲の横綱稀勢の里の化粧まわしや去る5月場所の懸賞幕での『北斗の拳』キャラクターを活用した展開(コアミックス社長の堀江信彦稀勢の里との親交によると言われる)などが話題を集めたことが記憶に新しい。
http://mangahot.jp/
http://www.coamix.co.jp/1880
一般向けには『北斗の拳』『エンジェル・ハート 1st シーズン』といった、高い年齢層にも抜群の知名度を誇る往年の名作がスタート当初から「全話読める」ことのインパクトへと注目が集まったようだ。「3日間で読み切れるか」「原哲夫ファンは要チェックだ」等々、ネット上でも話題を読んでいる。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1706/01/news113.html
http://wepli-dot2.hatenablog.com/entry/free-manga-app-mangahot
http://gamebiz.jp/?p=185682
一方で同アプリで注目されるのは、マンガ制作の舞台裏から派生してくるものを、コンテンツとして売りにしていることだろう。『この世界の片隅で』で一躍時の人となったこうの史代が作品制作プロセスを公開する『「ヒジヤマさん」のタネと花』という連載のほかに、タイムライン機能を使って作品の色校やネームなどを公開したりもしている。
このあたりのコンセプトについて、ライターの飯田一史が16・17日にYahoo!ニュースで、「マンガほっと」担当者に対して前後編の長尺に渡るインタビュー記事を載せている。応じたのはイマジニアの宇野智之(モバイルメディア事業本部スマホビジネス事業部事業部長)と、コアミックスの花田健(電子戦略部次長)の2名。
まず前編(リラックマから『北斗の拳』へ!? イマジニアがアプリ「マンガほっと」を手がけたわけ)では3社が協力することになるまでの経緯のほか、この分野に後発組として参入するに際しての考え方と戦略、スタッフの陣容等について、当事者の口からの詳細なレポートがなされている。例えばコアミックスの花田はこんなふうに述べている。
《僕らみたいな版元が関わるマンガアプリのよくあるパターンに倣って、どこかの開発・運営会社のほうから営業がかかってきて、そこに委託で卸す――ようは「おまかせ」「丸投げ」してロイヤリティーだけもらう――という選択肢もありました。
だけれども「自分たちの媒体」としてイニシアチブを持たないと「『北斗の拳』を使えれば儲かりそう」と考える会社に委ねるだけでは、未来がないなと。『北斗』や『エンジェル・ハート』はもちろん大事な作品ですが、旧作で稼いでいくことよりも、新作や新人を育てたいという気持ちが強くありましたから》
https://news.yahoo.co.jp/byline/iidaichishi/20170616-00072187/
後編(紙の雑誌からマンガアプリへの移行は何を変えるのか?稀勢の里ラオウの化粧まわしを贈ったあの会社に訊く)では、アプリを開始するに際してのレギュレーションなどの課題などにも言及される一方、デジタル化の進展に伴うマンガ市場の変容や、そこに向かっていくうえでの戦略、さらには上記のアプリの特性を活かした新たなマンガの可能性についての議論が進んでいく。特に「ジャンプ」を引き合いに出しながらの箇所にはやはり目を引かれる。
《配信作品のランキングもおもしろくて、「無料ではこれが読まれるのか」とか「このマンガが課金されるのか」というのが日次でわかりますから、これは絶対に作品づくりに活かしていけるなと。有名なジャンプのアンケートシステムには功罪あったと思いますけれども、ああいうものが週次どころかリアルタイムでわかる。しかも今まではアンケートハガキの数と売上しかわからなかったけれども、もっといろいろな数字がわかる》(花田)
《うちの会社のストロングポイントはなんだろうと考えたときに「作家と近いこと」だろうと。なんといっても『北斗の拳』の原(哲夫)さん、『シティーハンター』の北条(司)さん、『よろしくメカドック』の次原(隆二)さんといったマンガ家が役員の会社ですから。
実際、作家さんにはアプリリリースに合わせてお祝いイラストを描いていただけましたし(1枚約20円の有料チケットを使うと閲覧できる「とっておき」というものになっています)、Twitterとかでも積極的に拡散してくれて、まるで自分の会社を応援するみたいに応援してくれる作家さんが多くて。ありがたいですね。
話を戻すと、タイムライン機能でやりたかったことは、編集者が作家さんと打ち合わせしたときの様子とか、ネームや色校といったマンガの制作過程では必ず発生するけれども表には出ないもの、僕らにとっては日常だけれどもファンは見ることがなかったものをお見せすることで、おもしろがってもらえたらなということなんです》(同)
https://news.yahoo.co.jp/byline/iidaichishi/20170619-00072191/
今後の展望として《中長期では653万ダウンロードですかね(笑)。最盛期の「ジャンプ」の部数を抜く、と》(宇野)《うちの社長の堀江が「ジャンプ」が一番部数があった653万部だったときの編集長なので、アプリのダウンロード数では勝ちたいなと(笑)》(花田)という発言もある。さて、はたしてどうなるか。

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2)【本日の一行情報】(岩本太郎)

◎『VoCE』が炎上した。18日に公式サイト上に掲載した「女の市場価値はいくつまで?『男は普通の27歳と美人の33歳、どっちと付き合いたい?』」という記事で、「恋愛プロデューサー」の上岡史奈という筆者がQ&Aで紹介した「ブスな22歳/普通の27歳/美人の32歳、付き合うなら?」「僕は若い子のほうが好きなので22歳のほうがいいですね」といったやりとりが大顰蹙を買った模様。『VoCE』編集部は翌19日に当該記事(および同記事の告知ツイート)を削除のうえ、Twitterの公式アカウント上で《今回の記事の件、不愉快にさせてしまった方がいたこと、心よりお詫び申し上げます》と謝罪。
https://togetter.com/li/1121701
http://nackan77.seesaa.net/article/451010215.html
https://tsuiran.jp/pickup/20170619/15986
http://blog.livedoor.jp/ninji/archives/50251775.html
https://twitter.com/iVoCE/status/876709294023913473

◎新作『Stand by me 描クえもん』をこのほど上梓した漫画家の佐藤秀峰が『日刊サイゾー』のインタビューに応じ、先頃kindleを運営するAmazonを提訴するに至った思いや舞台裏の事情などについて改めて語っている。
http://www.cyzo.com/2017/06/post_32948.html

◎こちらもロングインタビュー。『少年サンデー』編集長の市原武法が毎日新聞で、「あだち充がいなかったら小学館を受けなかったかもしれない」という自らのコミック体験から、同誌の編集者として実際にあだちを担当することになった時期のエピソード、『ゲッサン』を創刊した狙い、さらには一昨年に同誌編集長に就任した際に公表して話題を呼んだ「所信表明」の背景などについて詳しく述べている。しかし今回はまだ「前編」なのであった。
https://mainichi.jp/articles/20170617/dyo/00m/200/003000c

◎中国のSNS「Weibo」のマンガ部門と、コルク、noteの3社が協力し、日中のマンガクリエイターを発掘する「日中漫画大賞」を開催することになった。
https://cakes.mu/posts/16582

◎「ガ島通信」などで知られるジャーナリストで「日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)の代表運営委員を務める藤代裕之(法政大学准教授)が、マスメディアの記者や研究者らの参加による、フェイクニュースに関する研究会を6月17日に立ち上げた。
https://news.yahoo.co.jp/byline/fujisiro/20170619-00072232/

◎一方、海外では既にGoogleが「Jigsaw」という、フェイクニュースやヘイト問題に対処するためのシンクタンクを傘下に有しているそうだ。
http://wired.jp/2017/06/15/yasmin-green-business-conference/

◎今年2月のラジオ全体の聴取率は5.6%と、過去最低記録にほぼ等しい数字となったそうだ。ただし、それは未だ視聴率競争から逃れられないテレビとは対照的に、レーティングの呪縛より脱しつつあるラジオから元気のいい話題が昨今続いていることの裏返しだと言えるかもしれない。
https://www.news-postseven.com/archives/20170619_564589.html

東京新聞社会部記者の望月衣塑子が官邸記者クラブでは“部外者”ながらも官房長官菅義偉を記者会見で質問攻めにすることができた背景には、同じ会見場にいた英字紙『ジャパンタイムズ』記者の吉田玲滋が連動するように質問してくれたことが大きかったそうだ。他の官邸記者クラブ記者の多くはシーンとしていたとのこと。
https://www.news-postseven.com/archives/20170619_565004.html

◎ネットメディア『M&A Online』が、インターネット広告業界大手4社のM&Aについて「電通離れのオプト」「選択と集中を進めるセプテーニ」「博報堂の傘下となったアイレップ」「オーガニックグロース戦略のサイバーエージェント」といった項目立てでまとめている。
https://maonline.jp/articles/tech-ad

◎制作現場の疲弊など現在のアニメ業界が直面している問題について、「『諸悪の根源は製作委員会』ってホント?」というレポートを、『ねとらぼ』が制作会社や日本動画協会へのインタビューを踏まえつつまとめている。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1706/18/news001.html