【文徒】2014年(平成26)5月27日(第2巻96号・通巻298号)

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【お礼】
1)【本日の一行情報】
2)【深夜の誌人語録】

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【お礼】

5月25日、26日と、私の父・七郎の通夜・告別式を滞りなく終えましたことを皆様にご報告させていただきます。多くの皆様から温かいお心づかいを頂戴し、感謝の念に耐えません。
父・七郎は去る5月21日の誕生日に92歳の生涯を閉じました。
もちろん、私にとって父を失うことは悲しいことではございますが、何故、父の死は自らの誕生日であったのでしょうか。自分自身で選んだわけではありませけれど、父の立場からすれば最高のプレゼントを天から賜ったのではないでしょうか。何しろ極楽へと向かう旅の始まりが誕生日であったのです。
私は父の仕事を思い出します。父は山から材木を仕入れ、これを市場で売る仕事をして参りました。一ヶ月の大半が出張ということもありました。栃木や九州、紀州、信州の山々に父は素晴らしい材木を求める旅を仕事としていたのです。父は木々の緑の中で仕事をすることら無上の喜びと自負を持っていたはずです。父の仕事は木々の緑によって鍛えられ、磨かれ、深められていったものと私は思っております。実家の二階建ての家屋で使われている材木は、父自らが選んだものであります。今、まさに万緑の美しい季節となりましたが、山々の緑もまた父の旅立ちを喜んでくれているようです。
通夜・告別式は浄土宗によって営まれました。
浄土宗は法然上人によって開かれました。18歳で比叡山にはいった法然上人は「智恵第一の法然房」と呼ばれたそうです。しかし、法然上人は、その座に安住しませんでした。法然上人は王城鎮護でもなく、自らに厳しい修行・難行を科すことで解脱するのでもなく、私たちのような凡夫の救済を第一義に考えたのです。
比叡山では「知恵第一の法然房」と呼ばれた法然上人ですが、自らを「凡夫」、つまり自分に執着して苦悩する普通の人であると決めつけたのです。自ら「聖人」=偉い人であることを拒絶したのです。そして、それまで得た総ての「知」、その「知」に基づく難行を捨て去ります。法然上人は阿弥陀の第18願に依拠して、誰もが平等に救われることを考え、比叡山を下山しました。
法然上人は「一枚起請文」のなかで言います。「一枚起請文」は法然の遺言です。
「念仏を信ぜん人は、たとい一代の法をよくよく学すとも、一文不知の愚鈍の身になして、尼入道の無智のともがらに同じうして、智者のふるまいをせずしてただ一向に念仏すべし」
法然上人の浄土宗は比叡山の緑のなかで、西山広谷の緑のなかで、東山大谷の緑のなかで、鍛えられ、磨かれ、深められていったのです。そのような浄土宗によって極楽への旅立ちを送られる父の幸せを私は分かち合いたいと思い通夜、告別式に臨んだのですが、喜び切ることはできませんでした。やはり悲しかったのです。私たち家族もまた凡夫であることを痛切に感じた二日間となりました。
ところで、私は法然上人の「一枚起請文」を読むたびに吉本隆明の次のような物言いを思い出します。
「市井に生まれ、そだち、生活し、老いて死ぬといった生涯をくりかえした無数の人物は、千年に一度しか世にあらわれない人物の価値とまったく同じである」
私の父もまた「市井に生まれ、そだち、生活し、老いて死ぬといった生涯をくりかえした無数の人物」のひとりにしか過ぎませんが、法然上人の念仏は「千年に一度しか世にあらわれない人物」に対しても、「市井に生まれ、そだち、生活し、老いて死ぬといった生涯をくりかえした無数の人物」に対しても、平等に極楽浄土を保証しているのだと思います。そう考えると私の悲しみは少しだけ和らぎます。
最後になりましたが、父に対して寄せられました皆さまのご厚情に、心よりお礼を申し上げます。今後とも父の生前同様にご厚誼をいただき、ご指導を賜りたく存じます。

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1)【本日の一行情報】

◎2014年4月21日(月)〜4月27日(日)に実施された個人聴取率調査(ビデオリサーチ首都圏ラジオ聴取率調査)によれば、最高聴取率番組をTBSラジオが独占している。第1位「大沢悠里のゆうゆうワイド」、第2位「土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界」、第3位「森本毅郎のスタンバイ」「安住紳一郎の日曜天国」。ベスト10でTBSラジオ以外の番組は第7位にNHKの「ラジオあさいちばん」がランクインしているだけである。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000102.000003392.html

◎韓国の出版市場の65%は教科書など教育書が占めている。
http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=5495

高野和明の角川文庫「ジェノサイド」が累計100万部突破。KADOKAWAは、この4月より、杏、室井滋ヤマザキマリ鈴木おさむ小島秀夫中江有里、合計六名の著名人の推薦コメントを掲載した「『ジェノサイド』著名人特別帯セット」を全国の書店で展開している。
http://www.kadokawa.co.jp/company/release/detail.html?id=2014200687

開高健城山三郎が利用した茅ヶ崎の長谷川書店南口駅前店。本店とネスパ茅ヶ崎店があり、ネスパ茅ヶ崎店ではギャラリースペースを一般に貸し出している。6月27日〜7月6日まで、「『考える絵本』原画展」を開催する。
http://books-hasegawa.co.jp/?p=1209
書店は地域の文化発信機能を担うことで、様々なコミュニティのセンターの役割を果たすことで、地域になくてはならない存在になり得るはずだ。

堀江貴文の「マンガ『刑務所なう。&わず。』完全版」が売れるのはわかるが、矢沢永吉の「成り上がり」や中村敦彦の「職業としてのAV女優」がキンドル本の隠れたベストセラーなのだそうだ。
http://exdroid.jp/d/70204/

紀伊國屋書店は5月29日、「タカシマヤタイムズスクエア」内の「新宿南店」洋書売場を6階フロア全域(300坪)に拡大し、日本最大規模の洋書売場「Books Kinokuniya Tokyo」としてオープンする。在庫冊数を現在の約2倍である12万冊となるそうだ。買うかどうかは別にして、洋書が楽しめる空間となるのは間違いあるまい。
http://www.kinokuniya.co.jp/c/company/pressrelease/20140516120001.html

世界文化社の「家庭画報」は5月31日発売7月号で全18ページの“夢の豪華列車「ななつ星」の魅力”を特集するが、この特集と連動して、JR九州の豪華寝台列車ななつ星in九州」との一泊二日のルイ・ヴィトンも一枚噛んだコラボ企画を実施する。1958年2月創刊以来、初となる鉄道車両ななつ星in九州」が表紙を飾る「家庭画報 特装限定版」も6月初旬に発売する(定価1,550円税込)。通常版7月号の内容に加え、特装限定版には、「ななつ星in九州」デザイナー・水戸岡 鋭治によるオリジナル・イラストポストカード2枚、鉄道旅行写真の第一人者・桜井 寛撮影による「ななつ星in九州」カレンダー(2014年6月〜12月)の付録がつく。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140523/prl14052315280094-n1.htm

NECタブレットLaVie Tab E TE510/S1L」「LaVie Tab E TE508/S1」シリーズ「LaVie Tab S TS507/N1S」をすると電子書籍を大量にプレゼントするキャンペーン「ドーンとデジタル雑誌1年分プレゼントキャンペーン」を実施している。「デジタル雑誌コース」では、21種類の雑誌の電子版のうち3種類を20名に1年分プレゼント、「デジタルコミックコース」では、15種類のコミックの電子版のうち1作品を10名に全巻プレゼントする。
https://www.nec-digitalbook-2014.jp/

◎「ウォール街を占拠せよ」の翻訳者として知られている芦原省一と同書の版元たる大月書店がトラブっている。
「…私は大月書店の担当編集者から、『反原連を批判するなら契約はやらない』という趣旨の脅しを受けます。私は、大いに悩みはしたものの、契約を失う可能性を承知した上で、『反原連批判をやめよ』という脅しにきっぱり反対しました。なぜなら自らのエスニシティはそれほどかけがえないものだからです」
http://beneverba.exblog.jp/22041236/

◎5月24日に発売された「レタスクラブ通巻800号記念特大スペシャル号」(7/7号臨時増刊号扱い)は420円だが、スペシャル特大付録「SNOOPYの保冷トートバッグ」がついてくる。附録の力で売れることは間違いないが、採算はどうなっているのだろうか。雑誌を消耗させるだけの附録では意味がない。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000692.000007006.html

◎ファッション誌「ViVi」7月号(講談社)には、葉月かなえ好きっていいなよ。」のスピンオフ作品の別冊付録が封入されている。また「デザート」7月号の附録は、「好きっていいなよ。」映画化を記念したメイキングDVDだ。雑誌の垣根を越えた取り組みによって、雑誌の魅力をアピールすることができる。雑誌にとって重要なテーマは、ともかく壁を壊すことである。
http://natalie.mu/comic/news/117305

◎TPPで著作権保護期間が著者の死後70年に延長されそうだが、青空文庫パブリックドメイン推進の立場から反対だという。
http://internetcom.jp/busnews/20140523/10.html
http://www.aozora.gr.jp/soramoyou/soramoyouindex.html

◎歌舞伎の片岡愛之助が「劇場版 仮面ライダー鎧武(ガイム) サッカー大決戦!黄金の果実争奪杯!」に出演する。片岡の怪演は見てみたい。
http://eiga.com/news/20140524/2/

◎谷浩志と柏原光太郎は知っている。
http://matome.naver.jp/odai/2139497035261764101

◎日刊英字新聞「ジャパンタイムズ」の小笠原敏晶会長が3年間で10億円の申告漏れ。
http://mainichi.jp/select/news/20140524k0000m040134000c.html

◎マンガアプリ「マンガボックス」で毎週100万人が読んでいるという裸村の「穴殺人」のコミックスが刊行されたが、果たしてどの程度の部数を弾き出すのか興味津々である。
http://ddnavi.com/news/194926/

東野圭吾は韓国でも売れている。「夢幻花」がベストセラーランキング入り。
http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2014/05/23/0200000000AJP20140523001100882.HTML

ニコニコ静画で300万再生超えの人気作品である牛乳のみおの「女子小学生はじめました」が白泉社の「ヤングアニマル」で「女子小学生はじめました P!」として連載されることになった。
http://seiga.nicovideo.jp/comic/3770?watch2_ct1
http://natalie.mu/comic/news/117220
マンガではデジタルから紙へという動きが加速化されている。

◎読者にとってアマゾンは便利な存在だが、出版社にとっては厄介な存在である。アマゾンとHachetteは契約にかかわる協議が合意に達しなかったらしいのだが、その結果、Hachetteはどうなったのか。
「今月初め、アマゾンと出版社Hachetteは密かにバトルを始めていました。両社間での契約内容の協議が失敗に終わるやいなや、Amazonサイト上で同社が出版する本はのきなみ高騰。さらにHachette出版のページには、オススメとして他社の本ばかりが並ぶようになりました。加えてHachette社の本を購入したユーザには、明確な説明なく配達が数週間後になるという事態までおきています。
さらに、Hachette社が誇るヒット作 JK Rowling氏の新書も注文不可(日本では可)な状態ですし、他の人気の本もオーディオ版が60ドルという破格で売られる始末。アマゾンのあれこれを描いたBrad Stone氏の『The Everything Store』は謎の在庫ぎれ(日本では在庫有り)ですし、アマゾンからの圧力ととれる動きがあちこちに見えます」
http://www.gizmodo.jp/2014/05/amazon_43.html
http://longtailworld.blogspot.jp/2014/05/amazon-vs-hachette.html
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303295604579581082785634974
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1405/26/news037.html
こうした記事がホールセラー・モデルについて理解しているとは言い難いとしても、アマゾンは既存の出版社にとって最強であると同時に最凶であることも事実であろう。
日本の出版社も最凶の部分には十分注意する必要があるだろう。
もちろん歴史の必然的な力学に逆らうことはできまい。そのような「反動」のポジションを取ることなく、アマゾンを相対化する知恵が出版界には問われているはずだ。
アマゾンをアヘン化してはならないのである。

◎読者のリテラシー能力が高まっているということに女性週刊誌は、あまりに無頓着だ。「週刊女性」6月3日号の「堂本光一 美女とトイレ籠城20分」は確かにスクープなのかもしれないが、読者は「週刊女性」が「ジュノンスーパーボーイコンテスト」出身のタレントのスキャンダル記事を書けないことを承知している。「女性セブン」にしても、「女性自身」にしても、誰を書けて、誰を書けないか、読者からすれば一目瞭然なのだ。で、読者はどうしたのか?誰でも書いてしまう「週刊文春」の読者になってしまったのである。
http://yuyuhikari.blog118.fc2.com/blog-entry-90.html
http://entameuwasa24.blog.fc2.com/blog-entry-994.html

◎4月の博報堂・大広・読売広告社の単体売上高。博報堂で前年比を割ったのは雑誌だけなのか。
http://www.nikkei.com/markets/ir/irftp/data/tdnr/tdnetg3/20140513/8ob5zc/140120140512061160.pdf

双葉社の「月刊アクション」が7月号で創刊一周年を迎えたことを記念して、連載作家陣の色紙プレゼントを実施している。
http://natalie.mu/comic/news/117380

◎「ビッグコミック」(小学館)の「そばもん」(山本おさむ)も「福島」を取り上げている。
http://otapol.jp/2014/05/post-975.html

◎宝島社の「オトナミューズ」7月号の附録はフランスのラグジュアリーブランド「クロエ」とコラボレーションし、編集部が 企画から制作まで手がけたオリジナルのレザー調ノートとボールペンだそうだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000050.000005069.html

◎北海道とKADOKAWAがコラボして刊行したマンガによる「うんちく北海道」は192ページ、840円(税別)。
http://mainichi.jp/select/news/20140525k0000e040105000c.html

◎ 文春新書の「日米中アジア開戦」は天安門事件の主要メンバーでアメリカに亡命中の陳破空による日米中開戦のリアル・シミュレーション。重版が決定するなか陳破空が来日。陳が尊敬する日本の政治家は明治天皇だそうだ。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166609765

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2)【深夜の誌人語録】

どんなに強い酒精を浴びても酔えないのは、既に悲しみに酔ってしまっているからだろう。