【文徒】2014年(平成26)5月28日(第2巻97号・通巻299号)

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1)【記事】仙台で緊デジについて私も私なりに考えてみた
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】仙台で緊デジについて私も私なりに考えてみた

客 君は22日に仙台市青葉区中央市民センターで開催されたトークイベント「緊デジってなに!?」に出かけたんだって?
主 「出版人・広告人」6月号で仲俣暁生さんにインタビューしていたし、これは聞きに行かなければならないと思っていたからね。
客 そろそろ緊デジに関する君の見解を聞きたいものだね。
主 最大の問題点は、緊デジこと「コンテンツ緊急電子化事業」で電子化された書籍の書誌データが公開されていないということなんだよね。受託団体であるJPO=日本出版インフラセンターがホームページで公開しているのは書籍のタイトルだけなんだよね。税金を使っての事業だけにこういう部分を透明化して、社会的に開いておかないと、何を言っても、誰からも信用されなくなってしまう。そこはトークイベントで永江朗さんも言っていたけれど「タイトルだけの公表では書籍を特定できないから事業を検証できない」よね。
客 何でそんな杜撰な情報公開になってしまったんだろう。
主 これからはオレの推測も含めての話になることをお断りしておこう。
客 了解、了解。
主 もともと緊デジは「コミックは既に20万点以上がデジタル化されていると言われているが、論文などを除けば書籍は3万点前後と言われていた。これがプラス6万点となると数字上は一気に3倍となり、デジタル化に弾みがつく」という認識で始まったわけ。この段階でコミックは緊デジの対象外だとJPO は考えていたといってもよい。しかも、コミックを擁する大手出版社にとって電子書籍化は緊デジに頼らずとも自前でできると考えていたし、中小の出版社の書籍がこの事業を通じて電子化できればよいと構えていたと思うんだよね。でなけりゃ、出版社申請と制作の仕事をポット出版沢辺均氏に任せることはあり得ないだろうね。
客 ところが実際はコミックが多くなってしまったんだろ。
主 結局、著作権者から電子書籍化の許諾を取らなければ事業は前に進まないわけだけれど、中小出版社にとって短期間でやるには日常の業務に支障を来すことになるし、初めて電子書籍を制作するという中小出版社が大半であったはずさ。実際、沢辺は自らのブログで「版元ドットコムの会員=192社(現在)のうち、59社に参加してもらいました。約31パーセントの会員社が参加してくれたことになります」と書いているけれど、これが約60パーセント参加していたら、こんなにコミックが混ざるような事態はなかったと思うんだよ。
客 大手からすれば最初からコミックの電子書籍化を緊デジの枠組で取り組めば、何を言われるかわかったものじゃないし、それこそ復興予算の使い道について正面から批判する週刊誌などの雑誌ジャーナリズムを擁しているとすれば尚更だものね。
主 しかし、結局、JPOの現場は書籍6万点を揃えることができなかったんだよ。それで大手出版社に泣きついたわけさ。緊デジ予算を使い切るには、それしかないと判断したのだと思う。恐らく、大手はいやいやとは言わないけれど、仕方なしにコミックの電子書籍化を緊デジで進めることにしたんだと思うよ。
結局、講談社小学館集英社あたりで全体の5割程度を占めることになってしまった。その際に社名を出さないことを条件にした大手出版社があったんだろうね。善意をヘンに勘繰られたくないと判断したんじゃないの。だから、昨年6月に発表した「制作タイトル一覧」は書名だけの情報公開になったんだろう。
しかし、事態がここまで煮詰まってしまった以上、JPOは書誌データをしっかりと公開する必要があるのではないかな。総てはそこから始まると思う。河北新報をはじめとした報道が正確じゃないのとか何とか言っていても、総ての議論の大前提たる書誌データに瑕疵があるのでは「疑惑」を増幅するだけだよ。原子力ムラのようなことは、あまりしないほうがよいと声を大にして、オレは言っておきたい。
客 確かにエロが入っているからケシカランみたいな新聞固有の偉そうな論調は君の最も嫌うところだ。
主 内容はエロあり、グロあり、テロありでも良いんだよ。ただし、緊デジは何故、こういう結果になったのか、その検証は絶対に必要だし、そのためには書誌データの公開が絶対に必要なんだよね。今後も150億円規模のカネが産業改革機構経由で出版デジタル機構に流れ込んでくるというし、この辺りのことをしっかりしないと「自由な表現」の牙城たる出版の独立性が浸食されかねないもの。
お調子者が出版デジタル機構で数年間のうちに100万点だかの電子書籍化を進めるとか叫んでいたけれど、こういうバカは百害あって一利なしだとオレは思っている。これまで口にして来なかったけれど、雑誌広告出身者が出版デジタル機構にいたのだけれど、ある種のイジメに遭遇していることもオレは承知している。
客 出版デジタル機構ってのも、よくわからないよね。
主 なればこそ、出版デジタル機構をよくわかるようにしておく必要がある。そのためにも緊デジを曖昧にはできないはずさ。何でも20億円以上をかけて出版デジタル機構電子書籍の書誌データを構築しようとしているらしいけれど、こんな無駄づかいを許してはダメだよ。オレが「出版人・広告人」5月号で、インタビューした会社だけれど、hon.jpあたりのデータを土台にすれば、それほどカネはかからないはずだ。少なくとも大手の出版社でJPOとか出版デジタル機構にかかわる人材は、デジタルにある程度精通した人間じゃないと絶対に無理だとオレは思うよ。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201405/20140523_13003.html
http://www.hanmoto.com/diary/2014/05/14/712/
http://www.kindigi.jp/dlfiles/jpo20130603/kindigititlelist.pdf

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2)【本日の一行情報】

文藝春秋6月19日付役員人事。平尾隆弘代表取締役社長、寺田英視専務取締役、井上進一郎監査役が退任する。代表取締役社長には松井清人専務取締役が昇任する。吉田維取締役が常務取締役に昇任。中部嘉人が取締役に、勝尾聡が監査役に新任された。松井社長は典型的な「春秋」派である。庄野音比古が文藝振興事業担当となったところがミソである。木俣正剛取締役が第一編集に加え、クレアと広告を担当することになったのは、木俣取締役の次への布石かもしれない。
http://www.asahi.com/articles/DA3S11157429.html

◎総合病院の婦人科部長だったという茨木保が医学書院から上梓した「まんが 医学の歴史」の評判が良い。
「小社刊『まんが 医学の歴史』がマンガHONZでレビューされました。さらにTwitter堀江貴文氏、佐々木俊尚氏といった名うての方々にリコメンドされた効果はまさにテキメン。注文殺到でネット書店は軒並み即日完売!_話題のニュースキュレーション・アプリAntennaにおける同記事の配信回数は、なんと20万を超えました。重版(第8刷)も決まりました」
http://honz.jp/articles/-/40480

小学館が「ビッグコミック」連載の山本おさむそばもん」134話を全文公開している。
「震災以来、「食の安全」がいっそう叫ばれるなか、福島産の食べ物をめぐる議論はつきません。そして今、ビッグコミック連載作品『そばもん』で描かれている、会津編が話題になっています。
しかし、マンガを愛するみなさんには、一部分だけではなく、すべて読んだうえで語ってほしい......そう考えたコミスンでは、『そばもん』第134話を全文公開します」
http://comic-soon.shogakukan.co.jp/blog/plane/big-201411-sobamon/

◎「CanCam」専属モデルの池田エライザが、モデルブック出版プロジェクトを始動させた。4000円支援するとできあがった「モデルブック」とサイン入りポラがプレゼントされ。10000円支援すると編集会議で使用した直筆のコンテとサイン入り色校正がプレゼントさせる。クラウドファンディングで200万円の資金調達を目指している。これもまた出版のソーシャル化ということなのだろう。
http://camp-fire.jp/pages/about

◎「夏ぴあ×イトーヨーカドー なつガシ2014」は6月1日まで実施されている。
http://www.itoyokado.co.jp/special/natsupia/index.html

◎第67回広告電通賞が決定。総合広告電通賞は味の素が初受賞!
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/0526-003737.html

電通動画共有サイトYouTube」の公式チャンネル「MANGAPOLO(マンガポーロ)」内で日本文芸社とともに7月16日に創刊するYouTubeマンガ雑誌「MANGAPOLO ZERO(マンガポーロゼロ)」の連載作家4名が決定した。連載の残り一枠は、ツイツターによる視聴者投票で決まる。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/0527-003739.html
https://mangapolo.com/zero

AKB48の握手会で、メンバーが男性に襲撃された事件についてフジテレビの「めざましテレビ」のツイートが糾弾される。問題になったツイートは現在は削除されているが、次のようなものである。
「みんな気になる情報が入ってきたよ!
AKB48のメンバーが負傷した事件のため明日の放送予定が変更になるかも!
メンバーの具合が心配だなぁ?大丈夫かなぁ?」
http://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/270297/

チャゲ&飛鳥のCD「SUPER BESTII」がネットオークションで、何と4万円で取引されているとは!
http://woman.infoseek.co.jp/news/entertainment/gendainet_000211594

◎「世界一初恋」は、もともと角川ルビー文庫から刊行されたボーイズラブの小説。そのイラストを担当した中村春菊がマンガ化し、テレビアニメ化やアニメ映画化も既にされている。丸川書店を舞台にしていることも話題になった。丸川書店が発行している業界NO.1少女漫画雑誌を「エメラルド」というのだが、KADOKAWAは何と「エメラルド」を本当に刊行してしまうという。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140526/prl14052612480045-n1.htm

ダイヤモンド・ビッグ社はガイドブック「地球の歩き方電子書籍版の配信をスタートさせた。内容は紙の本と同じだが、分冊版も配信する。第1弾は「A06フランス2014-2015」。分冊版では地域別で11タイトル、内容別では「巻頭特集&旅の準備と技術」の1タイトルの計12タイトルをリリースした。本文中の一部の公共機関などにURLリンクを設定している。価格は1刷版が1700円、分冊版が200円〜700円となっている。海外ガイドブックは電子書籍と親和性が高いはずだ。紙とデジタルのセット売りというアプローチがあって良いのかもしれない。
http://www.diamond-big.jp/release/pdf/140526.pdf

◎「SPUR」7月号(集英社)の別冊「東京"いただきます"手帖」に「センネン画報」や「cocoon」の「天才」今日マチ子が猫嬢ムームを描き下ろしている。
http://news.mynavi.jp/news/2014/05/26/203/

◎神奈川県警サイバー犯罪対策課と横須賀署は平成26年5月23日、栃木県那須塩原市の会社員男性(45歳)を、著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで横浜地検横須賀支部に送致した。平成25年11月9日から同月16日までの間、KADOKAWA著作権を有する「機巧少女は傷つかない」 第3話「Facing "Cannibal Candy" III」、「のんのんびより」 第3話「姉ちゃんと家出した」、「凪のあすから」 第4話「友達なんだから」及び、京都アニメーション著作権を有する「境界の彼方」第4話「橙」をファイル共有ソフト「Share」を通じてアニメーション作品を権利者に無断でアップロードし、不特定多数のインターネットユーザーに送信できる状態にし、著作権公衆送信権)を侵害した疑いが持たれている。
http://www2.accsjp.or.jp/criminal/2014/1144.php

トーハンは、女性ファッション誌18誌を対象にしたオリジナル増売企画「スペシャルDayキャンペーン」を全国約250書店で展開する。18誌の内訳は「with」講談社、「25ansハースト婦人画報社、「VOGUE JAPAN」コンデナスト・ジャパン、「MORE」集英社、「Oggi小学館、「GISELe主婦の友社、「Vi Vi」講談社、「Can Cam」小学館、「GINGER」幻冬舎、「JJ」光文社、「MAQUIA」集英社、「Ray」主婦の友社、「and GIRL」エムオン・エンタテインメント、「FRaU講談社、「BAILA集英社、「bea's UP」スタンダードマガジン、「美人百花」角川春樹事務所、「FUDGE」三栄書房
http://www.tohan.jp/whatsnew/news/day/

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3)【深夜の誌人語録】

良い解決策が見つからないときは、取り敢えず寝てしまって、また明日考えれば良いのである。