【文徒】2014年(平成26)5月29日(第2巻98号・通巻300号)

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1)【記事】「文藝春秋SPECIAL」を100円で買ってしまった!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「文藝春秋SPECIAL」を100円で買ってしまった!

文藝春秋SPECIAL」がリニューアルされ、エッセー誌からオピニオン誌に生まれ変わった。ただし「諸君!」のように尖ったオピニオン誌ではない。武器としているのは既存のオピニオン誌にはない間口の広さである。その間口の広さは「世界」「正論」「ウィル」といった雑誌と比べると歴然としている。間口が広いということは、バランスを重視しているということでもある。
http://www.bunshun.co.jp/mag/special/special1407.htm
バランスを重視しているという意味において「文藝春秋」という四文字を背負うのに相応しいオピニオン誌である。
吉地真編集長によれば「読者に『思考の補助線』を提供する雑誌」である。記事は基本4頁、長くても6頁なのも、そのためである。物足りないと思えば書籍に当たれば良いのである。「考えるための第一歩」を「文藝春秋SPESIAL」は担おうとしているのである。BLOGOS編集部のインタビューに答えて吉地編集長は次のように語っている。
「いまの時代、読者はみなさん忙しいですから、『中央公論』『世界』『Voice』『文藝春秋』のすべてを読んで、『さぁどれが正しいのだろう』と考える時間はないのが現実です。だからこそ、賛否両論を一冊の中で読むことができれば、自身が考えるきっかけになるのではないでしょうか。『賛成も反対も両方の意見に読み応えがあるけど、これどちらが正しいのだろうか』ということを読者と一緒に考えていきたい。“自分の頭で考える人の新しい雑誌”というのはそういう意味なんです」
http://blogos.com/article/86972/
偏らないことが保守の知恵だとすれば「文藝春秋SPECIAL」は、その原点に回帰しようとしているのだろう。商売だけを考えるのであれば偏ったほうが良いだろうが、保守のプライドがそうさせなかったのかもしれない。
文藝春秋SPECIAL」は内容のリニューアルではなく、マーケティング面でも新しい試みにチャレンジする。電子版を同時発売するのだ。紙版の定価は940円だが、電子版の価格は700円に設定している。
しかもリニューアルを記念して5月29日まで100円で提供するという。またBLOGOSとの共同企画でリニューアル第一号のなかから論争になりそうな事柄や話題の事柄を扱った記事を厳選して、BLOGOSに転載するという。ちなみに私もキンドル版を100円で買った。
蛇足ながら目次を見て最初に感じたのは福田和也坪内祐三の名前が見あたらなかったことである。こんなところも文藝春秋にとっては新機軸なのかもしれない。

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2)【本日の一行情報】

◎小説家の盛田隆二ネトウヨツイッターでのやり取り。盛田の次のようなツイートにネトウヨが反応。
「…百田尚樹氏は『貧乏な国だから泥棒も入らない』とナウルを揶揄したが、かつて日本軍はナウルを占領し、家屋・学校・教会を破壊。住民の大半をトラック諸島に強制移送させて使役し、約500人を死亡させた。日本は貧しい国に泥棒に入ったのだ。百田氏がそれを知らないとは言わせない」
ここまで丁寧に説明する盛田はぴあのOBである。
http://togetter.com/li/672310

電子書籍ストア「honto」は、筑摩書房ぶんか社河出書房新社三笠書房など12社の電子書籍購入後のダウンロード期限365日を無期限に変更した。期限が撤廃されたことで購入した作品を何度でもダウンロードできる。
http://honto.jp/info/detail_041000003766.html

リットーミュージックの「スカパラ入門」や「ジャズ・スタンダード・セオリー」はCDが付いている。CDやDVDは本のなかで生きるようになるのではないだろうか。
http://www.rittor-music.co.jp/books/13317209.html
http://www.rittor-music.co.jp/books/13317110.html

NECパーソナルコンピュータは、パーソナライズ機能を備えた情報リーダアプリで50万ダウンロードを突破している「My Time Line」をアップデート、Windows ストアより無償ダウンロード提供を開始した。また講談社とコラボして「ゲキサカ」のワールドカップ特集を「My Time Line」のトップタグに掲載する。
http://www.necp.co.jp/press/ja/1405/2601.html

ゴーゴーカレーは創刊55周年を迎えた「週刊少年マガジン」とコラボして、6月4日から8月31日まで「マガジンカレー」を販売する。「週刊少年マガジン」6月4日発売号ではルポ漫画「ちょっと盛りました。」(にしもとひでお氏)に今回のコラボの模様を紹介&店舗で使えるトッピングサービス券を掲載する。
http://www.gogocurry.com/news.html#20140604

集英社は「デスノート」の10周年を記念して、参加型イベント「リアル脱出ゲーム」がとコラボし、「新世界の神からの脱出」を東京と大阪で開催する。
http://www.j-deathnote.com/portal/genjitsu.html
SCRAPがすべての謎を制作したウエブ連動の「DEATH NOTEゲームブックの「死と砂の世界からの脱出」が5月30日に発売される。
http://www.j-deathnote.com/portal/nazo.html

◎広島に本社を置く書店チェーン啓文社の執行役員である児玉憲宗が選んだワールドカップを満喫するための必読書5冊。1位「オシムの言葉」(木村元彦 文藝春秋)、2位「南ア戦記」(塩澤幸登 メトロポリタンプレス)、3位「深読みサッカー論」(山本昌邦武智幸徳 日本経済新聞出版社)、4位「宮本式・ワールドカップ観戦術」(宮本恒靖 朝日新聞出版)、5位「サッカー選手の言葉から学ぶ成功の思考法2014」(朝日新聞出版)。
http://www.soccer-king.jp/sk_column/article/192418.html

◎ 「マガジン航」で大原ケイが次のように書いている。
「米司法省さえも味方につけるほどロビー力もあるアマゾンのやり方を改めるには、それこそフランスのように政府が動いて法改正をするか、アマゾンのユーザー側が要求でもしない限り、ムリなのだ」
http://www.dotbook.jp/magazine-k/2014/05/27/amazon_hachette_battle/

◎「世界で最も優れた市長」の候補に千葉市熊谷俊人市長と福岡市の高島宗一郎市長が選ばれた。
http://www.greecejapan.com/jp/?p=10097

丸田祥三氏の朝日新聞の連載「幻風景」が 書籍としてまとめられ、実業之日本社から「東京幻風景」として刊行されたが、これを記念してトークイベント&サイン会がジュンク堂書店池袋本店で開催される。
http://www.j-n.co.jp/event/?article_id=198

小学館の「CanCam」は、5月23日から25日までの3日間限定で、日本初のデジタルサイネージ広告を展開。都営大江戸線六本木駅の上下線ホームでは電車が入ってくるたびにモデルの山本美月の髪やスカートが揺れたという。まあ、見て下さい。
http://adgang.jp/2014/05/62936.html

Facebookに「ザ・ビートルズ日本デビュー50周年ページ」が解説した。
http://www.mtvjapan.com/news/music/24063
どの出版社でも良いからパートワークで「ビートルズ」や「ローリングストーンズ」を企画してくれないだろうか。CDブックで「グループサウンズ大全」なんてのがあれば、これも買う。

◎オランダの「コレスポンデント」について小林恭子が読売新聞でレポートしている。水平軸のコミュニケーションに依拠するソーシャルメディアは編集力を解放すると私は書いたり、喋ったりしてきたが、「コレスポンデント」は、そのことに自覚的であるといえるだろう。
「読者はサイトの情報を単に消費するだけではなく、コンテンツを作るための参加者にもなる。例えば医療に従事する読者は医療記事を書く記者よりも深い情報を持っているかもしれない。そこで、サイト上に読者と書き手が情報を交換するコーナーを作り、読者との双方向の会話を経て、書き手が原稿を作ってゆくようにした。コレスポンデントでは、読者と書き手の関係が大きく変わる。書き手は『会話を主導する人』であり、読者はサイトに情報を付加する貢献者という位置付けになる」
http://www.yomiuri.co.jp/it/report/20140526-OYT8T50120.html?from=ytop_ylist

徳間書店から刊行された島田明宏の「誰も書かなかった武豊 決断」が発売1ヶ月で5万部とヒットしている。
http://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=87398

サントリー白州蒸溜所の世界観を味わえる「日比谷BAR WHISKY−S II」が銀座にオープン。たまには銀座に出かけてみようかな。ウチの経理から銀座は禁止されている。行くときゃあ、お忍びだね。
http://makernews.biz/201405272802-2/

◎「艦コレ」の次は「お城」ってか。「月刊コミック電撃大王」で連載されている「城姫クエスト」がシュミレーションゲームとなってGREEから配信されることになった。
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/224/224059/

◎「週刊少年ジャンプ」に連載されている葦原大介の「ワールドトリガー」がテレビアニメ化されることになった。
http://www.shonenjump.com/j/sp_wt_anime/

吉田秋生の「海街diary」(小学館)を是枝裕和が映画化する!公開は来夏だけれど、三姉妹を誰が演じるのかキャスティングの発表が楽しみである。
http://eiga.com/news/20140527/10/

◎「出版人・広告人」6月号で黒石狂児が絶賛した岡映里の「境界の町で」(リトルモア)を漸く読了。東京堂書店でさえ、こういう傑作が一階の新刊コーナーに平積みされていないのが今の書店の現状である。3階の文芸コーナーに棚差しされていた。
http://www.littlemore.co.jp/store/products/detail.php?product_id=888

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3)【深夜の誌人語録】

善意や正義が地獄に至る道の第一歩を切り拓くことはままあるし、平凡や常識が最も残酷な結末をもたらすこともままある。