【文徒】2014年(平成26)6月23日(第2巻115号・通巻317号)

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1)【記事】ストーリーボックス?漫画ウエブサイト「マンガイア」?
2)【記事】緊デジの何が一番の問題か?
3)【記事】トラブルつづきの「niconico」はどうなるのか?
4)【本日の一行情報】
5)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】ストーリーボックス?漫画ウエブサイト「マンガイア」?

ストーリーボックスは描き下ろし漫画ウエブサイト「マンガイア」の正式サービスを開始。
http://manga-ia.com/jp/pc/index.html
ストーリーボックスとは「デジタルコミックの制作・Webコミック雑誌の制作・運営を行う会社」であり、「韓国のストーリーボックス社と連携し、海外コミックの翻訳も」行うという。「マンガイア」には代表取締役(「マンガイア」編集長)高安正明とあるが、ストーリーボックスのウエブサイトには社長が誰かも明記されていない。所在地と電話番号だけが紹介されている。業務内容は次のように紹介されている。「電子Webコミック雑誌というのは、簡単に言ってしまうと『漫画が定期掲載されるホームページ』です。制作経費は、掲載される漫画の原稿料プラスアルファでしかありません。
普通に作って、紙の雑誌よりも二桁は安く収めることができるのです。
また、取次の口座確保などの面倒な手続きも必要ないので、思い立ったらすぐに作れます。
弊社はこれまで、『町の古書店さんがオーナーのWebコミック雑誌』『地方私鉄がオーナーのWebコミック雑誌』というのを作ってきました。
『格安で、紙の漫画雑誌と同等以上の広告効果を』――これが弊社の目標です」
「マンガイア」も同じようなものなのだろうか。
http://storybox.jp/index.html
「漫画onWeb」と関係があるらしい。
http://mangaonweb.com/creatorTop.do?cn=46701
ITmedia eBook USER」は「マンガイア」について次のように書いている。
「…読者からの漫画の投稿も募集しており、個人サイトに掲載するように無条件で掲載する『なんでも載せますコース』、作品掲載ページに表示された広告リンクからの収入を100%投稿者へ支払う『広告収入あげますコース』、投稿した作品の権利を1カ月間マンガイアに譲渡することで、単行本用の電子書籍データがもらえる『レンタルさせてくださいコース』の3つがある」
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1406/19/news111.html
フェイスブックの基本データには「設立2008年 場所 仁川広域市」とある。
https://www.facebook.com/storyboxcomics/info
様々なプレイヤーがマンガをもってデジタルに進出して来そうだ。

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2)【記事】緊デジの何が一番の問題か?

日本出版インフラセンターは緊デジで性描写などに問題のあった本について補助金を返納すると発表した。河北新報朝日新聞産経新聞、報知新聞などが報じている。
http://www.asahi.com/articles/ASG6M5WMHG6MUCVL01S.html?iref=com_alist_6_05
http://www.hochi.co.jp/topics/20140619-OHT1T50163.html
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140619/bks14061922070002-n1.htm
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201406/20140620_73008.html
緊デジにおいて最大の問題は仲俣暁生が指摘しているように著者名と出版社名が揃った「完全な書目リスト」が公開されなかったことであると私は認識している。次のような永井祥一専務理事の文章を読んでも、このことに関しては残念ながら何一つ触れられていない。
http://www.jpo.or.jp/topics/data/20140529_jpoinfo.pdf
もちろん、永井の文章にヒントは隠されている。永井はこう書いている。
「電子化の対象となるコンテンツをそろえるのは出版社にとってなかなか大変な作業です。何度か説明会や版元廻り、条件緩和もして申請が増えはしたが、『あたかも自分たちがいい思いをしているように言われるのはイヤだ』と渋る出版社もあり、そういう版元には『出版社の貢献度ランキングで比較するわけではないから』と、協力を取り付けました」
永井がしっかり説明すべきは、どのような条件緩和を行うことによって申請が増えたかではないのだろうか。恐らく、その結果、「『あたかも自分たちがいい思いをしているように言われるのはイヤだ』と渋る出版社」が生まれ(そのように誤解される可能性の高い事態が発生したということだろう)、そうした出版社の意向を反映させてしまったため、著者名と出版社名が揃った「完全な書目リスト」を公開できなくなってしまったということではないだろうか。ここら辺りが検証されなければ、緊デジの貴重な経験を次に生かせないはずである。
公共事業でビル名だけがあって、その所在地が発表されなかったならば、何かあるのではないかと勘繰られても仕方がないように著者名と出版社名を欠如した書目データが様々な誤解を招くことになるという想像力を欠如させてしまって良いのかという問いに日本出版インフラセンターには答えてもらいたいと私は切に願っている。

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3)【記事】トラブルつづきの「niconico」はどうなるのか?

ドワンゴの「niconico」は不正ログイン問題で被害の拡大を防ぐべく一部利用者のアカウントや金銭被害のあったゲームコンテンツの課金を停止した。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201406/2014061800789
http://info.dwango.co.jp/pi/ns/2014/0618/index.html
しかし、「niconico」のトラブルが次々に発生している。今度はマイクロアドが提供する広告配信サービス“MicroAd AdFunnel”を経由して表示された広告より、悪意あるWEBサイトへ誘導し、マルウェア(悪質なソフトウェア)をダウンロードされるという事件が発生した。
「6月19日(木)未明より、FlashPlayerの更新を促す通知に見せかけた誘導が表示され、悪質なソフトウェアがダウンロードされてしまうとの被害が発生いたしました。
調査の結果、問題となった広告は、株式会社マイクロアドが提供する広告配信サービス“MicroAd AdFunnel”を経由して表示された広告に埋め込まれたスクリプトにより表示されているものであったため、株式会社マイクロアドに対して事実の確認を行い、6月19日(木)正午までに『niconico』と該当の広告ネットワークとの通信遮断を実施いたしました」
http://www.microad.co.jp/info/info20140619.html
http://info.dwango.co.jp/pi/ns/2014/0620/index.html
niconico」は利用しない方が良いのかもしれない。そう判断するユーザーも出て来るのではないだろうか。

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4)【本日の一行情報】

双葉社が投稿サイト「小説家になろう」と組んで7月30日に創刊する「モンスター文庫」のツイッターでの評判。
「うーん……別になろうのが本になるのはいいのだけど、編集がチェック通すよね? ただの右から左で利益狙いだと、粗製濫造でケータイ小説と同じ末路を辿りそう」
「なろう!レーベルがまた一つ」
「またなろう系レーベルが爆誕するのか」
http://hatebu.net/entry/www.futabasha.co.jp/monster/

ミクシィの朝倉社長が日経ビジネスオンラインにアップされた自身のインタビュー記事について了解なく記事化されたと怒っている。
http://now-or-never.jp/?p=1265

ホリエモン=堀江貴文のツイートが「不敬」だと炎上。発端となったのは6月17日の次のようなつぶやきだった。
「皇太子が通るからとかよーわからん理由で首都高が目の前で閉鎖されて途方にくれる笑。皇太子のせいでアポイントに遅れます笑」
これに対して「あんた一体皇太子をなんだと思ってんだ」という指摘には「人間」と応じ、「敬う気はあるのか」という声には「皇太子を、なんで敬う必要があるんだ?私は少なくとも敬うに値する事実を知らん」と答え、
https://twitter.com/takapon_jp
http://www.j-cast.com/2014/06/18207992.html?p=1

◎「オレンジページ」のマスコットキャラクター「おれふぁん」が満一歳になったという編集長のブログなんだけれど、これだったら遥かにスヌーピーのほうが可愛いよなあ。一年も経ったんだから、このキャラクターは失敗だったと、そろそろ総括したほうが今後のためだと考える良識派は「オレンジページ」には存在しないのだろうか。
http://plaza.rakuten.co.jp/opsugi/diary/201406190000/

文藝春秋司馬遼太郎の「燃えよ剣」を電子書籍としてリリース。司馬の電子書籍第一弾は「竜馬がゆく」であったが、これは文藝春秋の2013年の電子書籍売上においても、テレビドラマが大ヒットした「半沢直樹シリーズ」原作、「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」(池井戸潤)に次ぐ売上であったという。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/1636057000000000000M
電子書籍の裾野は確実に広がりつつある。

◎「大阪屋」問題について、このように考える人もいるんだなあ。
「複占というと言葉は悪いですが、私の個人的な考えとしては、取次はトーハンと日販の2つに再編されるべきだと思っています」
http://kot-book.com/osakaya-akaji/
二つに再編するとなると大阪屋、栗田出版販売、太洋社、協和出版販売などの中堅取次がトーハン、日販の二大取次に経営統合されなくてはならなくなる。これはこれで現段階において現実的な選択肢とはならないだろう。「一刻も早い業界再編」は出版社も返り血を浴びることになり、出版界の魅力の一つである多様性が失われるという最悪の事態をもたらすことになるだろう。

小学館の「AneCan」7月号は1000人分の読者アンケートハガキから「生活のコレにお金をかけている」ランキングを発表している。1位「旅行」、2位「習い事・スキルアップ」、3位「食べもの」、4位「美容ごと」、5位「インテリア」、6位「結婚」。
http://woman.infoseek.co.jp/news/neta/womaninsight_70535

◎「eBookJapan」は新潮社の電子書籍の配信を開始。星新一山崎豊子沢木耕太郎から今野敏伊坂幸太郎まで、約2500点に及ぶ。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/info/news/2014/06/19_shinchosha.asp

◎米インターネット・ラジオiHeartRadioの登録会員が5千万人を超えた。最大手パンドラのアクティブ・ユーザーは月間7千7百万人を超えている。
http://yogakutengoku.blog135.fc2.com/blog-entry-1838.html

◎学研グループのブックビヨンドは、学研パブリッシングおよび中央精版印刷株式会社の協力により、印刷版と電子版の新刊同時配信(サイマル配信)体制を構築し、6月19日(木)より本格運用を開始した。「学研M文庫」「歴史群像新書」を含む、中央精版印刷に印刷業務を委託している新刊書籍の電子版は、今後、原則としてすべて同時配信となる。
http://bookbeyond.co.jp/news/201406/20140617.html

◎テレビの HDMI 端子に差し込む小型のメディア ストリーミング端末Chromecast の価格は4536円(税込)。
http://www.google.com/intl/ja/chrome/devices/chromecast/
アスキーの評価は「買い」である。
「4536円という低価格も考慮に入れれば、興味のある人ならぜひ試してみるべきだ。何より、どこにでもあるテレビというメディアをChromecast1台で有効活用できるのは大きい」
http://ascii.jp/elem/000/000/905/905069/

塩村文夏都議のツイートのRTが1万3595に及んだ。
http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/6/2/6283.html
次のような不破雷蔵の「都議会『野次』は『お前が結婚しろ』だったのか」という文章を読んでもらいたい。
「塩村議員は今件では単に聞き違い、誤解からあのような形でツイートをしただけの可能性がある。その情報がショッキングな内容だったため、そして民放の映像では肝心の部分で音質の劣化があったため、字幕であのような補完がなされ、それを見た視聴者などが、さまざまな反応を示したことが考えられる」
http://bylines.news.yahoo.co.jp/fuwaraizo/20140622-00036628/

◎「利益の約3倍の借金を抱えてスタート」したタイム社の前途は多難だ。日本の場合、これは新聞社にとっても他人事ではないニュースであろう。
http://toyokeizai.net/articles/-/40000

◎アマゾンのスマホ「ファイア」は日本で発売されるのだろうか。
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303350404579633702593743812
「ファイア」の最大の特徴は、アマゾンのECビジネスと直結させていることである。毎日新聞は次のように書いている。
「アマゾンが投入するスマホは『ファイアフライ』と呼ばれる機能を搭載。カメラを本やCDなどの商品に向けると、スマホの画面に商品の価格や評価などの情報が映し出され、そのままアマゾンの通販サイトで購入することもできる。流れている音楽やテレビ番組もスマホでタイトルや歌手名などを認識でき、認識可能な商品や音楽は1億を超える。スマホを使ってさまざまな商品や楽曲の購入を促す狙いだ」
http://mainichi.jp/select/news/20140620k0000m020122000c.html
アマゾンにとって「ファイア」は、アマゾンのためのマーケティングツールに過ぎないのかもしれない。次のような大西宏の指摘は、その通りである。
「通信キャリアのAT&Tが絡んでいるとはいえ、このFireの登場で、スマートフォンのハードで利益を稼ぎ出さなければならないメーカーと、利益はハードからではなく、それによって別のサービスの利用が促進され、その売上が増加すれば利益を得ることができる企業との競争が始まるということになります」
http://blogos.com/article/88808/

◎6月20日創刊の「学研の図鑑LIVE」は「英国BBCのドキュメンタリー映像を収録したDVD」つき。学研としては15年ぶりの新シリーズ図鑑である。講談社小学館に対抗するためには、DVD付の図鑑が必要となったのであろう。
http://zukan.gakken.jp/live/index.html

図書館流通センター(TRC)とカルチュア・コンビニエンス・クラブが共同事業体として運営する「海老名市立中央図書館」の館長はTRC会長でもある谷文子は地方の公共図書館司書へ勤めた後、31歳のときにTRCに入社していると「タウンニュース」は書いている。TRCは全国で400を超える図書館の運営委託を受けているそうだ。
http://www.townnews.co.jp/0402/2014/06/20/241198.html

昭文社は電車やバスで楽しむ旅に役立つ、アクセス情報の充実に徹底的にこだわったガイドブック「tabitte(タビッテ)」シリーズ全20点を一挙創刊した。「紙+デジタル」が武器のガイドブックである。
電子書籍が全ページ見られたり宿泊予約が5%OFFになったりと、便利でお得な無料付録アプリ『マップルリンク』も更にバージョンアップ。編集者が集めながら本には掲載しきれなかったディープな現地ネタ『編集部旅コメント』(「旅コメ」)を掲載。今後も続々とサービス・コンテンツを拡充させていく予定です」
http://www.mapple.co.jp/mapple/news/2014/06/4265.html

◎「韓国の国家情報院(旧KCIA)が、無料通話・メールアプリ「LINE」を傍受し、収拾したデータを欧州に保管、分析していることが明らかになった」と「FACTA」が報道。
http://facta.co.jp/article/201407039.html
LINEの森川亮社長はブログで次のように反論している。
「記事では、LINEシステム自体ではなく、外部との通信ネットワーク上に関して傍受があったとされていますが、LINEはシステム内であってもシステム外の通信ネットワーク上であっても安全です。LINEの通信は、国際基準を満たした最高レベルの暗号技術を使って通信されていますので、記事に書かれている傍受は実行上不可能です。
また、報道内容にはLINE内のデータが他社に漏洩した旨の記載がありますが、全くの事実無根です」
http://moriaki.blog.jp/
「LINE、LINEと大騒ぎしていますが、FACTA本紙を読んでみると、LINEのネタは単なる導入に過ぎない」そうだけれど。
http://hagex.hatenadiary.jp/entry/2014/06/19/142724

◎サッカーW杯 日本対ギリシャ戦は271万ツイート。
http://news.mynavi.jp/news/2014/06/20/212/

◎6月19日、Facebookのサーバが約30分間にわたり世界的にダウンした。原因不明だそうだ。
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1406/19/news118.html

博報堂博報堂プロダクツ、博報堂アイ・スタジオは2014年6月18日、スマホのアプリとBeaconモジュール内蔵の広告物を通信させることで、ユーザーの行動を喚起するソリューション「ACTIVATION-AD(アクティベーション・アド)」の提供を開始した。
http://activation-ad.com/#about
広告がスマホにやってくる。

◎日本出版販売が発表した5月の雑誌・書籍合計売上は前年同月比4.3%減。内訳は、雑誌5.7%減、書籍8.4%減。児童書と新書の売上増加率はプラス。
http://ryutsuu.biz/sales/g062004.html

◎「はてな」でも不正ログインが発生。
http://hatena.g.hatena.ne.jp/hatena/20140620/1403233254

◎「niconico」で、6月19日(木)より、「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載中の漫画『東京喰種トーキョーグール』(石田スイ)の「静止画MADコンテスト」を開始した。
http://info.dwango.co.jp/pi/ns/2014/0619/index.html

夢枕獏の「エヴェレスト 神々の山嶺」(集英社文庫)が映画化される。
http://www.cinematoday.jp/page/N0063957

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5)【深夜の誌人語録】

できるからこそ油断するのである。