【文徒】2015年(平成27)11月6日(第3巻203号・通巻653号)

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1)【記事】ステルスマーケティングの罪が問われている(田辺英彦)
2)【本日の一行情報】(田辺英彦)
3)【深夜の誌人語録】(田辺英彦)

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1)【記事】ステルスマーケティングの罪が問われている(田辺英彦)

PR会社のベクトルが、経済誌週刊ダイヤモンド』11月7日号の特集に掲載された「ステマ症候群 急成長するPR会社ベクトルが掴んだノンクレジット広告の落とし穴」という記事の内容に抗議している。
「弊社を含め PR 業界におけるメディアとの取引は、広告枠を購入するという形ではなく、必要に応じて編集協力費を支払うという商習慣が存在している事は事実であり、弊社もその慣習に従った活動を一部しておりました。しかし、編集協力費を支払う事が、記事の内容やクレジット表記の有無を決めるものではなく、それらは最終的に編集権を持ったメディア側の判断に委ねられるものであり、我々PR 会社がコントロールできるものではございません。」
「今回の週刊ダイヤモンドの記事は、ステマの定義も定まらず、違法行為ではないとしながらも、弊社が行っている PR 活動が生活者を欺く行為であるかのように誇張された表現がされている点、業界全体の慣習の話にも関わらず弊社一社のみを特定し攻撃している点、さらには今回の記事掲載に至る取材方法が公正性に欠ける点など、弊社としては誠に遺憾であり、法的措置を含め検討する所存でございます。」
http://vectorinc.co.jp/news/wp/wp-content/uploads/2015/11/%E5%BC%8A%E7%A4%BE%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%8C%E9%80%B1%E5%88%8A%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%A4%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%A0%B1%E9%81%93%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6.pdf
http://japan.cnet.com/marketers/news/35072861/
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1511/02/news061.html
シリアルアントレプレナーの小川 浩は、「コンテンツマーケティング業界は一致団結してステマ業者を駆逐するべきである」として次のように述べている。
ステマが大きな問題になるのは、自社のメディア、すなわちオウンドメディアではなく、既存のメディアに、自社に都合のいいコンテンツを記載させようとするからだ。オウンドメディアを自社で作り、そこに作成したコンテンツを蓄積し、そして積極的にソーシャルメディアに告知して、ユーザーにシェアをしてもらうよう働きかけること。
これが正しいコンテンツマーケティングであり、このあり方を広告主もマーケティング業者も遵守していくべきだと考える。」
http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/42991/
とはいえ、日本放送作家協会・常務理事の高橋秀樹が言うようにステマの定義は難しい。
「当該評論と作者著者・提供会社に利害関係が無いことが必要なのか。そうとばかりは言い切れまい。例えば、著者が「自作を語る」というような原稿を書いた時は、ステマだろうか?
テレビにもステマ的行為はある。情報番組などで芸能人が出演して番組宣伝をすることはどうか。これをステマと判断されるのは番組にとっては得ではないので、最近は「番宣です」と、はっきり言う対応を取ることが多くなった。これはこれで良い傾向だ。
この「番宣」をCM総量の規制に数えるかどうかの問題はあるが、良い傾向だ。ここから分かるのは広告であることがステルス(隠されている)と言うことが問題だという認識だ。
ドラマなどの旅館観光地のロケタイアップはどうか。業界には「アゴ・アシ・マクラ」という隠語があってこれはロケ先の旅館、観光協会などが「アゴ=飲み食い・アシ=旅費・マクラ=宿泊代」を全部負担してくれることを言う。この場合は、タイアップだとをはっきり表示することが望ましいだろう。
隠す方法は巧妙だ。政治家のお説拝聴を唯々諾々と垂れ流すニュース番組。ドラマの中でイケメン俳優が何気なく使っている時計やアクセサリー。セットのインテリア。これらがステマではないとは言い切れない。」
http://blogos.com/article/142200/
雑誌もステマと無縁ではないだろう。決して他人事ではないのである。

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2)【本日の一行情報】(田辺英彦)

◎米国の電子書籍ニュースサイト「The Digital Reader」によると、ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州の消費者保護局が電子書籍の中古販売を認めるべきとの提言を公開した件で、ドイツ出版社・書店組合は「文化産業の破壊につながる」と反対の姿勢を見せているという。
http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=6923
隣国のオランダでは電子書籍の中古販売について合法判断が出ているそうだが、いずれ日本でも電子書籍の中古販売が問題になる日が来るかもしれない。

◎ファッション通販のワールドは自社通販サイトを全面刷新、交流サイト(SNS)と連動したウェブ雑誌も創刊する。現在約130億円のネット売上高を300億円に高めるという。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ30I4I_R01C15A1TJC000/
出版社のEC事業も、擁する雑誌の誌面のクオリティやセグメンテーションで通販サイトと差別化し、メディア化してきたが、新たな展開を模索する必要が出てくるだろう。

集英社週刊少年ジャンプ』のマンガ家によるマンガ制作ガイド「DVD付分冊マンガ講座ジャンプ流!」が2016年1月7日に創刊される。月2回発売の分冊百科で、付属のDVDにはマンガ家の作画風景やインタビューなどが収録される。創刊号は「ドラゴンボール」の鳥山明、2号は「NARUTO−ナルト−」の岸本斉史、3号は「ONE PIECE」の尾田栄一郎と人気マンガ家が続々と登場する。
http://mantan-web.jp/2015/11/02/20151101dog00m200024000c.html

◎藤村厚夫が書いている通り、「国内のネット利用者について調査しているニールセンは、この5月に「今冬ごろにはスマホからのネット利用者が PC からの利用者を超える可能性も考えられる」と発表しました。英国でと同様の事態、すなわち、モバイルからのアクセスがPCからのそれを凌駕するという大転換の波が、いま私たちメディアの業界を襲っている」のだとすれば、編集者のみならず出版・広告に携わる人間には、“モバイルエディタの時代”に相応しい職能が求められる。スマホを攻略すること、スマホを占拠することが、その第一歩となる。
http://blogos.com/article/142280/

イーブックイニシアティブジャパン(eBookJapan)は、インドネシアでマンガを中心とした電子書店「MangaMon」をグランドオープンした。
http://www.work-master.net/201544933

◎秋の叙勲において電通の俣木盾夫相談役(元社長・会長)が、旭日重光章を受章した。
http://dot.asahi.com/business/pressrelease/2015110400033.html
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/1104-008434.html

◎第69回毎日出版文化賞毎日新聞社主催)の受賞作が発表された。▽文学・芸術=黒川創「京都」(新潮社)▽人文・社会=樺山紘一「歴史の歴史」(千倉書房)▽自然科学=渡辺淳司「情報を生み出す触覚の知性」(化学同人)▽企画=日置英剛編「新・国史大年表 全11冊」(国会刊行会)▽特別賞=池内恵イスラーム国の衝撃」(文芸春秋)▽書評賞=角幡唯介「探検家の日々本本」(幻冬舎)。
http://jp.wsj.com/articles/JJ11093961529046104839918234024763773592055

講談社『なかよし』60周年と、サンリオの人気キャラクター「マイメロディ」40周年を記念し、漫画「おはよう!スパンク」とマイメロディがコラボレーション。『なかよし』12月号にはそのイラストシールが付録に付いている。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000818.000001719.html

宝島社文庫ぼくは明日、昨日のきみとデートする』が、第三回「京都本大賞」の大賞に決定した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000243.000005069.html

◎KADOKAWAのウォーカームック『からあげウォーカー』が発売1週間で重版が決定した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001871.000007006.html

岩手県出身の作家12人が、東日本大震災をテーマに執筆した短編7編を収録した『あの日から』(岩手日報社)が出版された。編者の脚本家・道又力は、「岩手の作家たちの思いがこもった作品集になった。多くの人に手に取ってほしい」と話している。
http://www.yomiuri.co.jp/local/iwate/news/20151103-OYTNT50206.html
記録し、記憶すること。サルトルを持ち出すまでもなく、文学が有効かどうかは議論するだけ無駄だ。いみじくも大江健三郎が述べたように、「文学とは個人的な救済の試み」なのだ。

◎「カバーをかけて、ビニールをかけて、タイトルも著者も秘密で、返品も不可能」として天狼院書店が予約販売した「糸井重里秘本」は、ついに中身が篠原勝之の『骨風(こっぷう)』(文藝春秋)だった明かされた。
初版3000部だったが、受付開始とともに当初予定の1000冊が30時間で完売。結局、販売期間までに1591冊の申し込みがあったという。タイトルも知らない予約者には知る由もなかったが、『骨風』は販売期間中に第43回泉鏡花文学賞も受賞した。現在、累計発行部数は4刷で9000部だという。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163902951
http://tenro-in.com/hihon/14901
天狼院書店では、11月16〜18日に豊島公会堂で有料イベント「天狼院の大文化祭」を開催予定。

◎睡眠・体内時計を軸としたメディア「次のカッコイイは健康的。CHANGE TOMORROW 〜+1 Magazine CIRCL〜」(URL:http://www.circl.jp)の月間pvが100万を突破した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000013869.html

◎日販は、雑誌『dancyu』の創刊25周年を記念し、11月6日(金)より全国約1200書店にて「dancyu」ムックフェスを行う。
http://www.dreamnews.jp/press/0000121993/

◎大阪の1Kが展開する、大人の女性のライフスタイルメディア「folk(フォーク)」がサービス開始から11カ月で月間100万UUを突破した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000015152.html
http://folk-media.com/

日本電子出版協会は12月2日、東京・飯田橋で「電子出版の新たなビジネスモデル 花開く「デジタル絵本」の世界」セミナーを開催する。
http://www.jepa.or.jp/seminar/20151202/

文藝春秋は、村上春樹色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』電子版を、文庫版と同時に12月4日に発売。村上春樹の小説作品としては初の電子化になる。また、最新作『ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集 電子特別版』も単行本と同時に11月21日発売となる。電子特別版は、カラー写真が追加され、旅の雰囲気がより伝わる作品となっている。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167905033
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163903644
文藝春秋電子書籍に熱心だ。

凸版印刷は、バッテリーレスで無線LAN対応の電子ペーパー表示機を開発した。紙とバーコードで管理されてきた製造・物流の現場で、業務負荷を軽減し、消耗品のコストや環境負荷を抑制する製品として注目される。
http://p-prom.com/product/?p=3572

◎米アマゾン・ドット・コムは、本社がある西海岸のシアトルに書籍を対面販売する店舗を初めて設置する。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151103/k10010292881000.html
http://jp.wsj.com/articles/SB12055383950015144394104581332783684818132
ITmediaは「アマゾンも読書の楽しさを直接伝えられるリアル書店の大切さに気づいたようだ。利便性や効率性だけを追求したことへの“懺悔”かもしれない」と書いている。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1511/05/news056.html
一方で、米国の電子書籍ニュースサイト「Good E-Reader」によると、今月中にも電子書籍端末「Kindle Voyage」の新モデルを発売する可能性が高いという。
http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=6929

◎アマゾンに関しては、また、米国やヨーロッパ各国で労働環境が過酷だとして労働組合が結成されてもいる。日本法人「アマゾン・ジャパン」の従業員も労働環境改善のため労働組合を結成した。活動を支える東京管理職ユニオン鈴木剛執行委員長は「業務改善計画という手法で従業員に自己批判させ、目標を達成できないと退職を迫るなど、不当な労働行為が行われている」と訴えているという。
http://www.sankei.com/economy/news/151104/ecn1511040056-n1.html
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151104/k10010294151000.html

◎フジテレビ系で放送されている『世にも奇妙な物語』が放送25周年を記念し、『週刊少年マガジン』(講談社)と無料漫画アプリ「マンガボックス」と初コラボ。これまでの傑作やオリジナル作品が掲載される。
http://www.oricon.co.jp/news/2061806/full/

◎電子出版社ハッカドロップスは、女性の自立と社会復帰支援のため、自社の電子書籍の作成・販売ノウハウを提供する通信教材を11月10日に発売する。
電子書籍市場は今後も拡大が見込まれる上、電子書籍制作は在宅でできる為、スキルを身につけて起業したいと考えているママやシニアなどに当教材を活用していただきたいと考えています」
https://www.value-press.com/pressrelease/151586
電子書籍出版の普及活動と地位向上」か。きっとカオス状態を経て、淘汰され、電子書籍は浸透していくのだろう。

◎出版ITベンチャーであるグレイプスは、初版20部から商業出版、さらに、増刷を10部単位で適切に行うことでベストセラーを目指す“聖地書店プロジェクト”を進めている。ネットで個人出版をしている作家や、地下アイドル、読者モデルなどインディーズアイドルなどを対象に、2万5000円(ミニ写真集)から出版でき、書店での販売までを実現するためのサービスサイト“モチコミ”をオープンした。
http://thebridge.jp/prtimes/%E3%80%90%E6%96%B0%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9%E3%80%91%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%BA%E4%BD%9C%E5%AE%B6%E3%81%AE%E5%B0%8F%E8%AA%AC%E3%82%84%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%89
こうした作品が“化ける”こともあるのだろうか。下手な鉄砲も数撃てば当たるというが、標的が50m離れたスズメなら、それは奇跡に等しい。そもそも、その鉄砲が50mも射程圏内ならの話だが。

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3)【深夜の誌人語録】(田辺英彦)

負けていると思った時点で勝負はついている。しかし、勝てそうだと思った相手にこそ足をすくわれる。