【文徒】2015年(平成27)11月5日(第3巻202号・通巻652号)

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1)【記事】マンガ出版の未来を考える(田辺英彦)
2)【本日の一行情報】(田辺英彦)
3)【人事】光文社11月1日付人事
3)【深夜の誌人語録】(田辺英彦)

                                                                            • 2015.11.5 Shuppanjin

1)【記事】マンガ出版の未来を考える(田辺英彦)

トーハンはLINEと協力し、電子コミックサービス「LINEマンガ」と連動して書店と共同でコミックの店頭試し読み実証実験を2016年1月31日まで実施する。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ29HSN_Z21C15A0TI5000/
http://www.tohan.jp/news/20151030_614.html
書店のコミックはシュリンクパックされているところが多く、既に作品を知っている読者以外は中身が確認できない。書店の良さは、目的の本以外を、あるいは特に目的もないまま覗いた本屋で気に入った本を衝動的に買える点にもあるのだが、コミックはそれができず、「ブックオフ」などで立ち読みするしかなかったことを考えると、この実験は意義があるとも言える。
トーハンによれば「コミック購入を機に新たな読者が連載誌の定期購読をすることで雑誌売上の増売が図られ、業界全体の底上げとなることを期待」しているとのことだが、コミック雑誌本体の売上が伸びるという局面は、あり得ないといっても過言ではあるまい。2005年にコミック雑誌本誌とコミック単行本の売上げが逆転しているが、この差は無料の電子コミック雑誌が数多出現していることもあって、そう簡単には縮まらないはずだ。
一方で、以前の文徒で紹介したように、「LINEマンガ」は、読者から書籍化の要望が多数寄せられたオリジナルマンガについて、単行本化を実現している。
http://official-blog.line.me/ja/archives/36400172.html
同じく既報だが、NHN PlayArtも出版事業を開始し、オリジナルレーベル「comico books」を設立した。
http://www.nhn-comico.com/press/index.nhn?m=read&docid=8650134
「デジタルから紙へ」という流れも、確かに存在している。とはいえ、まずは発表の場をウェブ上に設け、新しいサービスを展開することが肝要に見える。
一迅社はpixivと共同で無料の電子雑誌「comic POOL」を11月6日に創刊する。毎月2回、第1・3金曜日に更新を予定している。
http://www.animeanime.biz/archives/21969
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20151030_728365.html
アニメ!アニメ!ビズは「リアルなマンガとオンライン上のマンガの双方のビジネスをより強く結びつける狙いもありそうだ。(中略)pixivが得意とする新しい才能の発掘と一迅社の得意とする作家サポートが、新たな可能性を生み出す」と記している。
インプレス総合研究所が発表した、電子書籍に関する市場規模の推計結果によると、2019年度には2014年度の2.3倍の2,890億円程度になると予測し、電子雑誌と合わせると電子出版市場は3,400億円程度になる見込みだという。
http://moneyzine.jp/article/detail/214037
「無料マンガ雑誌アプリの普及や、電子書籍ストアが提供する電子コミックの無料連載をきっかけに電子コミックの購入に至るケースも増えてい」るというので、若者向けの電子コミックは今後も成長を続けるのだろう。
一方で、(「デジタルから紙へ」という流れもあるだろうが)ゆるやかに紙のコミック市場は減少し、早晩、電子コミックと紙のコミックの割合は拮抗するようになるのかもしれない。

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2)【本日の一行情報】(田辺英彦)

KADOKAWA アスキー・メディアワークス角川アスキー総合研究所が共同で「子どもライフスタイル調査2015秋」を実施し、調査結果を発表した。女子小学生の42%がタブレットを使用。用途は「ゲーム」65%、「学習」47%となっており、タブレットを学習に使用している女子小学生の4割が、「紙の本・ドリル」より「タブレット」の方が学習しやすいと答えている。
http://www.lab-kadokawa.com/release/detail.php?id=0023
教育情報を提供するウェブサイト「リセマム」では、ベネッセ・Z会・学研のタブレットを利用した新しい学習サービスについて比較している。
http://resemom.jp/article/2015/10/29/27661.html

アイティメディアは、ネットユーザー向けにエンタメ情報を紹介するサイト「ねとらぼエンタ」(http://nlab.itmedia.co.jp/nl/subtop/entertainment/)を開設した。
http://www.dreamnews.jp/press/0000121777/

◎光文社の人気女性誌『STORY』とメガネスーパーがコラボしたメガネ「i-mine(イマイン)」が発売。
https://www.atpress.ne.jp/news/79375

◎ミスキャンパスコンテストのファイナリストに選ばれた女子大生13名による写真集『キャンパスクイーンコレクション―あの大学の、気になるあの子たち―』(文藝春秋)が電子書籍限定で発売された。
http://woman.infoseek.co.jp/news/entertainment/oricon_2061552
「デジタルから紙へ」という流れは、ここでも起こるのだろうか?

パピレスGYAO合弁会社ネオアルドは、運営する電子書籍投稿&編集プラットフォーム「upppi(ウッピー)」(http://upppi.com)にて縦スクロール形式コミックを対象とした「タテコミ」コンテストを開催している。少年漫画/少女漫画/青年漫画などジャンルは問わず、入賞作の賞金総額は100万円。
http://www.dreamnews.jp/press/0000121838/

◎ネコ・パブリッシングは、ポートランド発のライフスタイル誌「KINFOLK」が発行する書籍「THE KINFOLK HOME」の日本語版を発売した。スローリビングの世界観を伝えている。
http://www.neko.co.jp/?p=99774
http://news.biglobe.ne.jp/economy/1030/atp_151030_5096676605.html

昭和女子大学現代ビジネス研究所は、早川書房と共同で「女性のための物語」に特化した新レーベルをプロデュースした。大学が出版社と共同でレーベルを立ち上げるのは日本で初めてという。文系大学生による産学共同プロジェクトも珍しい事例だ。
http://digitalpr.jp/r/13952

ソネット・メディア・ネットワークスとゼータ・ブリッジは、テレビCM放映直後に、RTBに対応したインターネット広告の配信を行う「Logicad テレビCMリアルタイム連動型広告配信」の提供を開始した。
https://markezine.jp/article/detail/23355
http://www.so-netmedia.jp/company/news/2015/pr_release_20151029.html

博報堂DYインターソリューションズソーシャルメディア連動端末による写真投稿によってリアルイベントの情報拡散と話題化を図るソリューション「Eventter(イベンター)」の提供を開始した。
http://marketing.itmedia.co.jp/mm/articles/1510/29/news094.html
http://www.hakuhodody-inter.co.jp/news

◎『なかよし』(講談社)創刊60周年を記念して、『なかよし』で連載された漫画原作のアニメ・テレビドラマのオープニング/エンディング主題歌を集めたコンピレーション・アル/バム「Twinkle Songs」が、12月2日に発売される。
http://www.musicman-net.com/artist/51303.html
http://columbia.jp/prod-info/COCX-39303-4
女子だけでなく、年代を問わず懐かしい歌が目白押しだ。観月ありさ松雪泰子も、歌っていたんだなあ。

◎12月4日(木)まで第1回電子書籍角川映画祭を開催。新作の映画作品から名作映画まで毎週様々なテーマで映画作品の電子書籍を紹介し、電子書店ではフェアを実施する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001857.000007006.html

リトアニアの映画監督/作家ジョナス・メカスが、1954年から2010年の間に執筆した文章をまとめた書籍『Scrapbook of the Sixties』(60年代のスクラップブック)出版へ向けてのクラウドファンディングを、米キックスターターで実施している。
http://www.webdice.jp/topics/detail/4887/
ジョナス・メカスは92歳か! 「リトアニアへの旅の追憶」を観たのはいつだったか。そういえば学生時代、同じく実験映画のケネス・アンガー「スコピオ・ライジング」を自主上映したこともあった。

文藝春秋は、『週刊文春』の人気連載をまとめた電子オリジナル作品「充電完了。電子書籍の明日はどっちだ……」(著:永江朗)を主要電子書籍ストアで発売した。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/1692028400000000000K
http://hon.jp/news/modules/rsnavi/showarticle.php?id=6920

◎「はいからさんが通る」「あさきゆめみし」などで知られる漫画家、大和和紀は2016年に画業50周年を迎える。これを記念し、原画展や複製原画当たるフェアを実施。
http://natalie.mu/comic/news/164635
http://comic-sp.kodansha.co.jp/yamatowaki50th/index.html

Amazonは、2015年にKindle ダイレクト・パブリッシングで好評を博した苫米地英人を「AUTHOR OF THE YEAR 2015」の受賞者として選出した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000474.000004612.html

集英社ジャンプスクエア』の矢作康介編集長と電通マーケティングソリューション局の外山遊己ストラテジック・プランナーが対談。「編集力」について語っている。
「昔よりコストがかからなくなって、確かに作品数は増えたかもしれません。でも、それだけではマンガの全体的な質、レベルは上がらないですよね。むしろ全体量が増えて、面白い作品の数が昔と同じならば、読者が面白い作品と出合う確率は減るかもしれません」
「メディアミックスにおける「早いサイクルの中でも待つ」のと同様で、こちらも「広げるのが主流の中で、広げずに高める」という“逆張り”なんですね」
http://dentsu-ho.com/articles/3259
「時代の流れに逆張りできるかどうか」という矢作編集長の言葉は頷ける。

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3)【人事】光文社11月1日付人事

FLASH編集長代理
丸山知明
(旧:第二編集局FLASH副編集長)

女性自身副編集長
岩崎宗孝
(旧:第一編集局女性自身編集部デスク)

FLASH副編集長
梶 正宣
(旧:第二編集局FLASH編集部デスク)

Mart副編集長
菊池由希子
(旧:第四編集局Mart編集部デスク)

ブランド事業部副部長
篠崎広道
(旧:広告局ブランド事業部主任)

JJ編集部デスク
相馬慎之介
(旧:第三編集局JJ編集部)

VERY編集部デスク
太田彩子
(旧:第四編集局VERY編集部)

VERY編集部デスク
石井麻衣子
(旧:第四編集局VERY編集部)

美ST編集部デスク
小澤博子
(旧:第四編集局美ST編集部)

美ST編集部デスク
漢那美由紀
(旧:第四編集局美ST編集部)

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4)【深夜の誌人語録】

失敗に不思議など存在しない。臆病や怠惰が失敗に不思議があるやに錯覚させてしまうのだ。