【文徒】2014年(平成26)6月5日(第2巻103号・通巻305号)

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1)【記事】有川浩文藝春秋から消える!
2)【記事】太田出版に吹き荒れた「百田景気」
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2014.6.5 Shuppanjin

1)【記事】有川浩文藝春秋から消える!

有川浩の「三匹のおっさん」は文藝春秋から刊行されていた。単行本として2009年に刊行化され、文春文庫となったのが2012年のことである。今年1月にはテレビ東京でドラマ化されたが、それに際して文藝春秋によって特設サイトが設けられていた。テレビ東京のドラマとしては異例の高視聴率を記録したことも記憶に新しい。ところが昨日、アマゾンで検索すると文春文庫のみならず、画像は表示されないものの「三匹のおっさん」は新潮文庫としても引っかかってきたのである。当初、私はアマゾンの大失態かと思った。
ところが念のため新潮社のサイトを見てみると、「三匹のおっさん」が新潮文庫の6月の新刊として表示されているのである。
http://www.shinchosha.co.jp/book/127634/
文藝春秋有川浩の間にいったい何があったのだろうか。文藝春秋の関係者によれば「三匹のおっさん」のみならず、文藝春秋を版元としている有川の著作は順次、他社に移ることになるという。
http://bunshun.jp/pick-up/3ossan/

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2)【記事】太田出版に吹き荒れた「百田景気」

トーハンが発表した「2014年上半期ベストセラー」の文庫で1位になったのは、百田尚樹の「永遠の0」であった。昨年に引き続き、未だに「永遠の0」が1位となったわけである。年末に映画が公開され、これも記録的な大ヒットとなり、文庫の売上にシナジー効果をもたらしたのだとも言えよう。「永遠の0」は周知のように講談社文庫の作品だが、その親本を刊行しているのは、実は講談社ではない。太田出版である。
永遠の0」が単行本として刊行されたのは、今から9年近くも前の2006年8月のこと。もともと百田は太田出版からデビューした作家であると言って良い。「ボックス!」などは親本も文庫も太田出版から刊行していることを考えれば、「永遠の0」が講談社に持って行かれたことにさぞや臍を噛んでいると思いきや、そうではないようなのである。消息筋は、こう語ってくれた。
「実は太田出版は権利の運用に関しては、しっかりとした版元として知られています。『永遠の0』にしても映像化に際しても、ちゃんと自分の懐が儲かる仕組を確立しています。文庫にしても、他の出版社が断るなか、太田出版から提案のあった厳しい条件を飲んだのが、講談社だけであったということらしいですよ」
太田出版にとってオフィスを移転できたのも、全社員のデスクと椅子が刷新されたのも、百田景気の賜物なのである。

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3)【本日の一行情報】

◎売れる本は売れる。百田尚樹に、池井戸潤に、東野圭吾!東野が光文社から上梓した「虚ろな十字架」がスタートダッシュ。テーマは死刑である。光文社は特設サイトを設け、テレビCMも制作した。「死刑は無力だ」「複雑な理由などなくても人は殺される」という文言も話題になっている。この作品もいずれ映像化されるのだろう。文庫化されればミリオン確実だし。
http://www.kobunsha.com/special/higashino/cross/

主婦と生活社の「Karada LEON」にはGENOVAが一枚噛んでいる。
http://www.genova.co.jp/2014/06/genovakarada-leon-885859.html
GENOVAはウエブ・コンサルティング企業だ。「努力」「友情」「勝利」が企業哲学であるらしい。経営者が「週刊少年ジャンプ」ファンなのだろう。
http://www.genova.co.jp/company/idea/

講談社は「なかよし全国まんがキャラバン2014夏」を開催する。「まんが家体験ができる!最強まんが教室」と「編集者体験ができる『なかよし』ができるまでツアー」(東京以外の会場では「出張編集部」となる)の二本立てだ。東京、新潟、福岡、京都で開催する。
http://kc.kodansha.co.jp/magazine/news_detail.php/01033/9703
「なかよし」7月号から弱冠17歳のマンガ家・長谷垣なるみが連載「利根川りりかの実験室」をスタート。
「なかよし編集部によると、約60年の歴史を持つ同誌のなかでも10代での連載は『異例の大抜てき』。『少なくとも過去20年くらいいないのではないか』という」
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1406/03/news026.html
「なかよし全国まんがキャラバン2014夏」で長谷垣につづく才能が発見されるかもしれない。

小学館松田奈緒子の「重版出来」とキリンビール発泡酒麒麟淡麗<生>」のコラボが実現。「麒麟淡麗〈生〉」開発当時の秘話や現在までのチーム戦の模様を、 『重版出来!』の主人公を動員して描く「淡麗出来!」が「麒麟淡麗〈生〉スペシャルサイト」で読める。
https://tanrei-no1.com/comic/

◎「ビックコミックスピリッツ」に連載中の花沢健吾のゾンビ漫画「アイアムアヒーロー」が映画化されることになった。主演は大泉洋
http://www.huffingtonpost.jp/2014/06/02/i-am-a-hero_n_5435526.html?utm_hp_ref=japan

電通は、6月10日に日経BPと公益財団法人日本生産性本部と共同で、「健康経営フォーラム」を発足させる。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/0603-003743.html

◎「週刊現代」「週刊ポスト」の向こうを張って、マガジンハウスが「平凡パンチ特別編集アラシックスからのセックスは、こんなに愉しい」を刊行。小林聖が「ほぼすべての取材・文を担当」したそうだ。
http://www.pigioph.com/blog/works/20140526.html

◎「グランドジャンプ」で復活した「地獄先生ぬ〜べ〜」が日テレの10月クールで実写ドラマ化される。
http://www.cyzo.com/2014/06/post_17364.html

集英社のジャンプ系3誌が総力をあげて取り組む完全招待制の一大ドリームイベント「ジャンプビクトリーカーニバル2014」は東京と大阪で開催される。
http://shonenjump.com/j/_sp/2014/06/140602news06.html

◎お笑い芸人の又吉直樹TBSラジオ「ラジオシアター 文学の扉」に出演して太宰治について語り尽くす。
http://www.tbs.co.jp/radio/topics/201406/000824061400.html
又吉で新書を出せば良いじゃん。
http://matome.naver.jp/odai/2134797518059328901?&page=1

◎LINEの02Oサービスである「LINE@」の累計アカウント開設数が2日時点で4万件を突破した。
http://news.mynavi.jp/news/2014/06/03/366/

◎「日経ビジネス」電子版を定期購読すると先着2000名にiPad mini Retinaがプレゼントされる。
http://internetcom.jp/allnet/20140603/1.html

博報堂DYメディアパートナーズによるアスリートイメージ評価調査」。“FIFAワールドカップで活躍を期待する”日本人アスリートは、1位本田圭佑、2位香川真司、3位長友佑都、4位大久保嘉人、5位岡崎慎司
http://www.hakuhodody-media.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2014/06/HDYMPnews20140603.pdf

アニメイトが専門性に依拠した電子書籍書店「アニメイトブックストア」を7月上旬にオープンする。ここはひょっとするとマンガやラノベの電子版においてアマゾンに対抗できるかもしれない。
http://www.animatebookstore.com/

日経BPがトルコの出版社MDGを買収した。
MDGは2003年設立。米タイムなどからライセンスを得て、経営誌のフォーチュン、ファッション・生活系のインスタイル、マーサスチュアート・ウェディングなど有名誌のトルコ語版を発行してきた」
http://ma-times.jp/5995.html
何故、トルコだったのか。恐らくトルコまで足を伸ばさなければ、買収できる出版社はなかったということだろう。

埼玉新聞によれば、KADOKAWAが旧所沢浄化センター跡地を手に入れた。敷地面積は約3万7380平方メートル。
「KADOKAWAの趣意書によると、地上4階建て延べ床面積約7万5千平方メートルの工場・倉庫・公共貢献施設を建設、印刷・製版・出荷施設のほか、図書館・美術館・集会所、企業内保育所などを設置し、900人の雇用を創出(障害者を含む)する。新拠点稼働で370人程度の段階的新規雇用を目指す」
http://www.saitama-np.co.jp/news/2014/06/03/04.html

◎贅沢な装幀が施されていた。新潮社から刊行された松浦寿輝の「明治の表象空間」。箱(といっても背がない)から取り出し、冒頭の「国体」について書かれたところを立ち読みする。内容的にも面白そうだ。ただし、定価が5400円である。734頁もある大著だけに致し方ないのだろうが、やはり高い。今日は我慢することにした。
http://www.shinchosha.co.jp/book/471702/
私が今日、買ったのは2冊。伊藤彰彦の「映画の奈落 北陸代理戦争事件」(国書刊行会)と大木晴子と鈴木一誌が編集にあたった「1969新宿西口地下広場」(新宿書房)である。
http://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336058102/
http://www.shinjuku-shobo.co.jp/new5-15/html/mybooks/438_1969.html
「映画の奈落 北陸代理戦争事件」を読み始めたのだが、これが信じられないくらい面白い。映画より映画的な映画をめぐってのノンフィクションである。しかし、面白い本が売れるとは限らない。

凸版印刷Jストリームは、凸版印刷が運営する国内最大級の企業向け(BtoB)カタログ閲覧システム「iCata」上で、Jストリームの動画コンテンツ管理配信プラットフォーム「J-Stream Equipmedia」を活用し、カタログに関連する動画を従来よりも手軽に安定した配信ができるサービスを提供開始した。
http://www.toppan.co.jp/news/2014/06/Newsrelease140602_2.html

東京国立博物館凸版印刷は、VRバーチャルリアリティ)作品「伊能忠敬の日本図」を製作、東京国立博物館・東洋館内「TNM & TOPPAN ミュージアムシアター」で、公開している。
http://www.toppan.co.jp/news/newsrelease140603.html

◎読売新聞は半年で発行部数を約52万部も減らしている。有力な県紙一紙分も減らしていることになる。ちなみに朝日新聞は同時期に約9万部を減らしている。
http://www.kokusyo.jp/?p=5781

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4)【深夜の誌人語録】

他人の声に耳を傾け、それを参考にしたとしても、決めるのは他人ではなく、自分で決めなければならないのだ。