【文徒】2014年(平成26)6月18日(第2巻112号・通巻314号)

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1)【記事】私は書店で電子書籍を買わない
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】私は書店で電子書籍を買わない

日本出版インフラセンター(JPO)を事務局とする「書店における電子書籍販売推進コンソーシアム」が6月16日より始めた「リアル書店における電子書籍販売実証事業」は楽天とBookLiveを電子書籍のサービス提供会社とした。三省堂書店神保町本店、有隣堂ヨドバシAKIBA店、豊川堂カルミア店、今井書店本の学校今井ブックセンターの4書店の店頭に並ぶ電子書籍カード「BooCa」のコミックや文芸作品、新書など33社で約3,000タイトルの中から、好きなタイトルを選び、ハードカバーや単行本と同様に、店頭レジで電子書籍を購入できるというサービスである。実施期間は11月21日まで。
う〜ん…別に水を差すというわけではないのだが、私の場合、電子書籍を書店で買おうとは思わない。これまた私感に過ぎないのだが、書店は紙の書籍を売ることに徹するべきなのではないだろうか。書店が電子書籍に変な色気を使って本業が疎かになっては元も子もないと思うのだが…。
更に言えば、このやり方って、どこか統制経済の臭いを感じて、これまた個人的な話だが、そういう仕組みは生理的に嫌いなのである。
百歩譲って、私のような読者が極めて少数派であり、圧倒的多数の人々が書店で電子書籍を買えることを歓迎しているとしても、書店で買うメリットなり、サービスが何もないことが気にかかるところである。
参加企業は、今井書店、大阪屋、紀伊國屋書店三省堂書店ソニーマーケティング大日本印刷/トゥ・ディファクト、トーハン凸版印刷/BookLive、日本出版販売、ブックウォーカー、豊川堂、有隣堂楽天だという。
そこに巨人アマゾンの名前はない。攘夷の心情からアマゾンを意図的に外したのだろうか。それともアマゾンに声をかけたものの断られたのだろうか。ついでに言っておくとCCCの名前もここにはない。私などは、それだけでもこの試みにリアリティを全く感じられないのである。
それでもどうしても書店が電子書籍ビジネスに関与したいのであれば、電子書籍図書カードのようなものを売るのがベストなのではなかろうか。
私の感性は果たして時代からズレているのだろうか。もし、ズレているのであれば是非とも聡明なる関係者の方にご指導、ご鞭撻をお願いしたいものである。
http://corp.rakuten.co.jp/news/press/2014/0616_01.html
http://booklive.co.jp/release/2014/06/161100.html
http://www.jpo.or.jp/ebooks/index.html

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2)【本日の一行情報】

◎「S Cawaii!×Ray×mina特別編集 振袖スタイル」は主婦の友社のファッション3誌のモデルや読モが登場する毎年定番の振袖カタログ。
http://www.hanmoto.com/jpokinkan/bd/9784072962428.html
こういうムックをきっちり売っていくことが大切である。

毎日新聞が6月16日付で掲載した「<雑誌>手結ぶライバル社 苦境の出版業界、再生へ本腰」という記事で押さえておきたいのは二点。ひとつは集英社が「MORE」で付録付きを690円で売り、付録なしを500〜550円で売る試みが好評だったということ。ひとつは、まだ分母は小さいとはいえ「インターネットを通じて紙と電子の雑誌を販売する富士山マガジンサービス(東京都渋谷区)では、13年の電子雑誌売り上げは前年の約5倍に伸びたという」ように電子雑誌が好調であるということである。
http://mainichi.jp/journalism/listening/news/20140616org00m040003000c.html

ソニーKobo電子書籍リーダーで手を組むのは、面白い試みだと思う。既にバーンズ&ノーブルとサムソンは手を組んでいる。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1406/16/news054.html
http://wirelesswire.jp/compass_for_global_communication_industry/201406160947.html
電子書籍ではアップルが駄目になりそうな予感がするんだよね。

芳文社の「まんがタイムきららミラク」に連載されている川井マコトの4コマ漫画「幸腹グラフィティ」のテレビアニメ化が決まった。
http://natalie.mu/comic/news/119002

◎フジテレビは中国の動画配信会社・iQIYI(アイチーイー)と組んでオリジナルインターネットドラマ「不可思議的夏天」を共同制作し、iQIYI(http://www.iqiyi.com/)で中国全土に無料配信する。「日本のテレビ局が中国のネットドラマを制作するのは初めて」だそうだ。
http://www.47news.jp/topics/entertainment/oricon/culture/148102.html

◎LINEキャラクターとスウェーデンを代表する高級ステーショナリブランド「Bookbinders Design」がコラボ。これ高いけれど使いたくなる。ハイエンドブランドとのコラボ商品を「LINE BRAND STORE」で次々に投下するようだ。
http://official-blog.line.me/ja/archives/1004503593.html
出版社がチャレンジすべきことを出版社がやる前にLINEがやってしまったという話なんだよね。良く言えば出版社は慎重派が多いのだろう(悪く言えば出版社は自らの強みを生かすことに臆病だ、ということになる)。私などは何年も前から(「文徒」を立ち上げる以前から!)主張してきたのだけれど…。出版社に足りないのは、明らかに「速度」だ。会議を踊らせずに決定できる「速度」だ。「速度」を獲得するためには経営者には「大胆」に加担する「勇気」が求められる。

メガネスーパーはデザイン性と機能性の両方を実現した女性用メガネ「Abbellire(アベリーレ)」を、全国のメガネスーパー店舗で販売するが、幻冬舎女性誌「GINGER」とのコラボモデルもある。
http://www.meganesuper.co.jp/pdf/20140612_abbelire.pdf

◎完全個室のパーソナルトレーニングジム「Aphrodite」は「Ray」でレギュラーモデルをつとめる美優を取締役に選任した。
http://www.sankeibiz.jp/business/news/140616/prl1406161040022-n1.htm

KADOKAWAは、日本全国1952地域・1200名の「地域編集長」による地域密着型の情報を発信するスマホ向け地域情報メディアサービス「Walker47」の提供を開始した。スマホのGPS機能を活用して地域情報を出し分けることにより、どこに出かけても「Walker47」のオススメ店がすぐに分かることが特徴である。「地域編集長」は地元タウン情報誌地域活性化団体等で活躍する人々で構成される。
http://ir.kadokawa.co.jp/topics/20140616_nu1as.pdf
現状では全くダメだけれど、コンテンツや工夫次第では、このサービスは受け入れられるに違いない。疑問なのは何故、アプリにしなかったのかである。

サントリーの「金麦」が「花火が彩る、金麦の夏」プロジェクトを開始した。KADOKAWAが運営のWEBサイト「Walkerplus」とタイアップし、全国20カ所の人気花火大会の特等席に招待するキャンペーンを展開する。
http://www.suntory.co.jp/beer/kinmugi/natsu2014/hanabi/

中森明夫が「中央公論」より依頼を受けて書いた原稿が掲載拒否された。長谷川三千子や雅子妃殿下に触れたことが問題だと中森は編集部から言われたらしいが、どう問題なのかは明瞭な回答がなかつたようだ。経済学者の田中秀臣の尽力により、その原稿が言論プラットフォーム「Real-Japan.org」で公開された。
「自らは大学教授として社会的能力を発揮する雪の女王でありながら、妹(=後続世代)には王子様を待つアナとして生きることを強いる。こんな長谷川氏のような人物こそが『レット・イット・ゴー』を唄って“アナ雪症候群”から解放されてほしい。どうだろう、いっそ経営委員としてNHK紅白歌合戦』で『ありのまま』熱唱してみては?」
「雅子妃は『アナと雪の女王』をご覧になったのだろうか? ぜひ、愛子様とご一緒にご覧になって、高らかに『レット・イット・ゴー』を唄っていただきたい。創立90周年を迎えたディズニーは、いわば王制なきアメリカの精神の王室である。それが“アナ雪”で大きな変化の一歩を踏み出した。我が国の皇室はどうだろう? 皇太子妃が『ありのまま』生きられないような場所に、未来があるとは思えない」
http://www.google.co.jp/url?q=http://real-japan.org/%25E3%2580%258C%25E4%25B8%25AD%25E5%25A4%25AE%25E5%2585%25AC%25E8%25AB%2596%25E3%2580%258D%25E6%258E%25B2%25E8%25BC%2589%25E6%258B%2592%25E5%2590%25A6%25EF%25BC%2581-%25E4%25B8%25AD%25E6%25A3%25AE%25E6%2598%258E%25E5%25A4%25AB%25E3%2581%25AE%25E3%2580%258E%25E3%2582%25A2%25E3%2583%258A%25E3%2581%25A8%25E9%259B%25AA%25E3%2581%25AE/&sa=U&ei=tcWfU7GSE4KzlQXFl4CQCA&ved=0CBQQFjAA&sig2=u4_vpmJI-TyT7ofAj6hegQ&usg=AFQjCNHoG3VAkyKlCkJbtHJa-QvsuaXtTw
中央公論」編集部は、どこがどうして問題なのかを中森に説明すべきだろう。私には何が問題なのか全く理解不能である。「中央公論」という雑誌は「批評性」を放棄しているとしか思えないのである。総合誌の堕落である。総合誌に絶対欠かせないのは、何でも消化できる強い胃袋だ。結局、総合誌と言えるのは「文藝春秋」しかないのだよなあ。

主婦の友社はメディアスが発行する「姉ageha」の発売元となることが決まった。「S Cawaii!」の臨時増刊として8月7日発売だ。
http://corporate.shufunotomo.co.jp/?p=7674

◎史村翔=武論尊の見解。「由利さん」とは講談社の元編集者・由利耕一。<…集英社については「編集者は『育てたマンガ家は俺のテカ(※テカ=手下のこと)』っていう意識だった」と指摘。(中略)のちに史村先生は、小学館など他社で仕事をするようになって担当者が変わることに驚かされたという。「小学館の編集者は、マンガ家を育てたという意識がないよね」(史村先生)とも。すると由利さんも「小学館学年誌から出発したから、作家も編集者もまじめ。アウトローがいないね」と指摘。すぎうら先生も「すごくまじめ」と同意していた>
http://manga-style.jp/press/?p=11871

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3)【深夜の誌人語録】

考えるということは書くことにほかならない。書くということは考えることの実践形態なのである。