【文徒】2014年(平成26)7月2日(第2巻122号・通巻324号)

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1)【記事】BookLiveとCCC提携は、こう読め!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】BookLiveとCCC提携は、こう読め!

凸版印刷三井物産系の電子書籍書店BookLiveと蔦屋書店のカルチュア・コンビニエンス・クラブは、オフラインの紙の書籍とオンラインの電子書籍を融合した新たな総合書籍プラットフォームの創出を目指し、戦略的パートナーシップに関する業務提携に合意したそうだ。
この提携によって実現するのは「『TSUTAYA』で本を購入後、『BookLive!』を通じてすぐに無料で電子書籍版が提供される、あるいは『TSUTAYA』で本を注文後、本が届くまでの間は『BookLive!』で電子書籍版をすぐに読むことができる」などのサービスだという。要するに総合書籍プラットフォームを実現しようということなのだろう。
ただし、出版社の許諾がなければ、こうしたサービスを実現することはできない。出版社によって対応がわかれるだろうが、従来の秩序を揺さぶられることになるのは間違いあるまい。
http://booklive.co.jp/release/2014/06/301305.html
http://www.toppan.co.jp/news/2014/06/ewsrelease140630.html
http://www.mitsui.com/jp/ja/release/2014/1203001_5704.html
http://www.ccc.co.jp/news/2014/20140630_004522.html
川下の資本力が川下に比べれば資本力の脆弱な川上を川上の必ずしも意に即しているとは言い難い方向に動かすというケースも出て来るのかもしれない。アマゾン、楽天大日本印刷凸版印刷の動向をしっかりと押さえておく必要が出版社にはあるだろう。
いずれにしても、BookLiveとカルチュア・コンビニエンス・クラブの業務提携は、経営統合にまで発展する可能性を秘めていると私は見立てている。
大日本印刷丸善ジュンク堂文教堂というリアル書店を傘下に持っていることを考えれば(恐らく大日本印刷楽天は大阪屋を介して手を組むことになるはずだ)、凸版印刷が蔦屋ブランドに食指を動かしたとしても少しも不思議ではない。
一方、巨大書店を次々に開店することで何とか成長戦略を維持している(熱い鉄板の上を踊りつづけている!)カルチュア・コンビニエンス・クラブにしても、BookLiveとの経営統合は願ったり叶ったりのはずである。
逆に言えば経営統合にまで辿り着けないのだとしたならば、この業務提携は失敗したということになるのではないか。
むろん、総ては私の私見である。

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2)【本日の一行情報】

大日本印刷株式会社は、絶版本や重版未定本などを、少ロットの製造が可能なオンデマンド印刷で復刊し、「丸善 丸の内本店」でオンデマンド本として販売する実証実験を9月1日から開始する。
http://www.dnp.co.jp/news/10100409_2482.html

◎何と「偽記事」がネットを跋扈していた。6月12日から13日に「朝日新聞デジタル」を偽装した「仁風林事件 竹中平蔵氏らを事情聴取」なる文章が出回ったというのだ。
「ページURLが『http://shrturl.co/』で始まっていたことから偽装されたものと気付く人がいた一方で、それが一種の短縮URLに見えることもあり、中には信じ込んでしまった人もいたようだ」
http://japan.cnet.com/news/society/35049751/

◎劇映画であるにも関わらず、「東電」と名指ししたのがいけなかったのかどうか知らないが、大島渚にオマージュを捧げた「あいときぼうのまち」は見ておきたい映画である。菅乃廣監督は角川書店の出身者。脚本は「戦争と一人の女」で監督をつとめた井上淳一だ。
http://www.u-picc.com/aitokibou/
「萌えて習得!量子力学」(日本文芸社)の著者も菅乃廣なんだけれど、同一人物なのだろうか。
http://www.bookservice.jp/ItemDetail?cmId=5571291

◎エブリスタが、集英社と共同で開催していた「第4回Seventeenケータイ小説グランプリ」が梨里緒「WINNING SHOT」に決定した。8月に書籍化される。
http://japan.cnet.com/release/30074603/
エブリスタは「大人の恋愛小説賞」で三交社と組んでいるし、「スマホ小説大賞」では集英社講談社双葉社KADOKAWA、新潮社、朝日新聞出版社、小学館クリエイティブソフトバンククリエイティブなどと組んでいる。小学館とは「小学館エンジェル文庫」を立ち上げている。投稿サイト文学の時代と言っても良いのではないか。投稿サイトがウエブの世界にとどまらず、紙の出版社を立ち上げるという事態もあり得るのかもしれない。

◎6月29日、安倍政権の進める「集団的自衛権の行使容認」に抗議して新宿で焼身自殺を図った男性について日本の新聞は、総てベタ記事扱いだった。むしろ、海外メディアの関心が高かったというべきか。朝日とAFPの記事を比べてみよう。
http://www.afpbb.com/articles/-/3019134
http://www.asahi.com/articles/ASG6Y55DBG6YUTIL01T.html
ソーシャルメディアでも盛んに取り上げられていた。どんなに主張が正しくても焼身自殺という行為は良くないとか、死んではいけないといった訳知り顔の投稿に私はウンザリしてしまった。そうしたなか伊達政保のツイートは違った。
https://twitter.com/datemasayasu
「人はそこまで追い込まれる時があります。だから死んではいけないとか、他の手段もあるだろうという言い方は無意味なのです。他に手段は無かったからこその行動なのです。抗議の切腹をして生還した経験からそう思います」

◎多くの女性たちが美容院で生活情報誌や女性週刊誌を渡されたくないと思っているのではないか。ここでは「週刊女性」と「オレンジページ」が名指しされているのだが、この2誌が美容院で渡されたくない雑誌を象徴しているのだろう。
「コレ・・ウケた♪美容院行くと必ずオレンジページ週刊女性渡される。20代の雑誌、ないっすかね。そんな感じに見えるの???」
http://inagist.com/all/483369733899567104/

◎千葉県の東金市は地域の魅力を知ってもらうべく、東金市の広告を掲載した文庫本カバーと栞を都内13店の三省堂書店で提供する。
http://mainichi.jp/area/chiba/news/m20140630ddlk12010108000c.html

◎日販は、日販独占流通商品「地ビールを極める本」(ぴあ)を、全国の取引先書店およびコンビニエンスストアで販売を開始した。ぴあの出版物だが、ぴあと資本・業務提携しているセブンイレブンでは買えないことになる?!周知のようにセブンイレブントーハン帳合である。
http://www.dreamnews.jp/press/0000095272/

ダイヤモンド社で「もしドラ」を編集者として手がけた加藤貞顕が立ち上げたnoteについて「ビジネス+IT」で加藤自身が次のように語っている。
「僕は、noteこそが『未来の本』だと思ってるんですよ。かつて、僕は電子書籍の開発に携わっていたこともあるんですけど、ここに本の未来を託すことはできないなと思ったんです。というのも、せっかくデジタルなのに、閉じているし、シェアもできないし、特定の配信スタンドが閉鎖すると読めなくなったりするし、なんのために電子化しているのかわからない」
http://www.sbbit.jp/article/cont1/28172
noteの課金は100円からだが、このハードルをもっと下げられないものか。それこそ10円からの課金を可能にしてもらいたい。

読売新聞社は140周年記念事業として、日本のポップカルチャー「マンガ」「アニメ」「ラノベ」「エンタメ小説」について世界で大ヒットさせるべく「日本代表」を選ぶ国民投票「SUGOI JAPAN」を開催する。「コミック出版社の会」も後援している。新聞と出版が手を結ぶのは良いことである。
http://sugoi-japan.jp/holdingoutline.html

◎「CanCam」モデルと5人の読者が同じ屋根の下たるソーシャルアパートメントで9日間にわたって過ごし、自分を磨く様々なワークショップやセミナーを通じて、後援する江崎グリコ月桂冠、コーセー、パナソニック富士フィルム三菱自動車という6つの企業の商品、サービスについて、リアリティのある情報をウエブサイトで発信し、10月号において事後レポートも掲載する。
http://canhouse.cancam.tv/

◎カンヌライオンズ2014のグランプリ作品が見られる。ジャン・クロード・ヴァン・ダムに乾杯!
http://www.advertimes.com/adobata/article/22820/www.movie-times.tv/purpose/buzz/5059/

博報堂とユナイテッド、ソリッドインテリジェンス、フィードフォースの4社は共同で、ウェブ・アンケートとソーシャル・ビッグデータを融合させた新しいマーケティング・リサーチの手法を開発し、「Social+Survey」としてサービス提供を開始。「Social+Survey」は、ウェブ・アンケートとソーシャル・ビックデータの連携分析だそうだ。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/17691

博報堂DYメディアパートナーズとコスモ・コミュニケーションズは、2014年7月1日よりファッション関連のECビジネスを支援するコンサルティングパッケージ「フリスト」を初期費用無料で提供開始する。こういうことができて、成功すれば、コスモ・コミュニケーションズにとって博報堂の傘下に入ったことは大正解であろう。
http://www.hakuhodody-media.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2014/06/HDYMPnews0630.pdf

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3)【深夜の誌人語録】

現実には理想を突きつけ、理想には現実を突きつけることによって可能性に賭けたい。