【文徒】2014年(平成26)7月3日(第2巻123号・通巻325号)

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1)【記事】ボイジャーの新たな航海が始まった!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】ボイジャーの新たな航海が始まった!

ボイジャーは7月1日より「Romancer」という電子出版のためのウエブサービスを一般公開した。Romancerは、自分が書・描いた原稿を――Word、テキスト、PDFであろうと、Webブラウザベースの閲覧システムで即公開・告知できる仕組を用意し、ブラウザがリーダーであるため、書店と一体化したアプリをダウンロードする必要はないそうだ。
http://www.voyager.co.jp/hodo/14070101_press_release.html
そんなボイジャーから池澤夏樹著作権管理会社イクスタンと提携し、池澤夏樹作品を電子化し販売を開始する。池澤夏樹作品シリーズは「impala e-books」として、ボイジャーが制作、販売を受けもち、日本および世界の電子書店での展開を担当する。むろん、池澤作品はRomancerで作られている。
リリースにも記してあるが、池澤夏樹をもってボイジャーは出版社として堂々と名乗りを上げたのである。リリースにある次のような一文がまた私の心を打つ。
ボイジャーは、インディーズを含む多くの作家と連帯し、その活動を支援する出版社を目指します。同時に、これからのネット上での言論・出版の担い手として名乗りを上げていくつもりです」
http://www.voyager.co.jp/hodo/14070102_press_release.html
私はボイジャーの青臭さを支援したい。私はボイジャーのしたたかさを支持したい。青臭さをしなやかに守りつづけるためには、したたかさが必要なのである。昨日から東京ビッグサイトで開催されている国際電子出版EXPOでボイジャーも出展しているが、そこで配られているパンフレット「本とあなたをデジタルでつなぐ」のなかで萩野正昭は次のように書いている。
「私たちは自分自身のメディアを必要としている。メディアを育て確立していく努力を求められている。これは誰もいない真っ暗な広場で、見えない空想の支持者に呼びかける無援の行為に似ている。かつて私が目撃した、街頭で地図を指す右翼の領袖のように、そして門前でビラを配っていた左翼の闘士のように。しかし、私たちもまたここから始める時が来ているのだ。自らの言葉で語りかける一人として、そこに立つべきであると」
問われるべきは紙かデジタルかではない。問われるべきは昔から、そして、これからもまた志の有無なのである、思想の有無なのである。

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2)【本日の一行情報】

TOKYO No.1 SOUL SET渡辺俊美の料理エッセイ「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」(マガジンハウス)はシングルファザーとなった渡辺が高校生の息子のために3年間にわたり作りつづけた弁当の写真と文章から成立しているが、売れているそうだ。確かに映像化にも向いている。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20140619/1058548/?rt=nocnt

◎光文社の青木宏行はAKB48がある限り安泰である。
http://akb48sokuhou.doorblog.jp/archives/54870559.html

◎「オリーブ」(マガジンハウス)を復刊させたらどうだろうか。タイトルもそのままで、ファッションのテイストもそのままで、ただし40代向けの女性誌として。宝島社の付録雑誌を粉砕するだけの潜在力を秘めていると思うのだけれど…。1度限りでも良いから、やってみて欲しいなあ。
http://news.livedoor.com/article/detail/8993221/

◎7月17日に開かれる第151回芥川直木賞の選考会の結果から記者会見の模様までニコニコ動画で中継される。いっそのこと白熱した議論が繰り広げられる選考会をオープンにして中継したならばウケるだろうなあ。
http://ch.nicovideo.jp/ch320/blomaga/ar567037

◎今年で25回目となる「2014講談社夏のこどもまつり」が7月21に東京で、7月26日に大阪で開催される。大阪公演のチケットは早くも完売してしまった。
http://kodomo.kodansha.co.jp/news/fes.html
雑誌の入口を大切にしなければならない。

電子書籍書店が市場規模に比べて乱立状態にあるのは間違いあるまい。これが淘汰されていくこともまた間違いあるまい。だからといって電子書籍市場の拡大が止まるわけではないということだ。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140630-OYT1T50101.html

モリサワAppleのNewsstand向けのコンテンツ配信ソリューションである「モリサワNewsstandアプリ」で配信する雑誌、新聞数が100に達したと発表した。
http://japan.cnet.com/release/30074737/

三省堂書店は、8月15日まで「るるぶ夏のキャンペーン」を開催する。三省堂書店店頭でJTBパブリッシングから刊行されている「るるぶ情報版」シリーズのデジプラス対象書籍を購入すると、同書の電子特別版が無料ダウンロードできるクーポン券をプレゼントされるという。一枚のクーポン番号につき3アカウントまで利用できるそうだ。
http://www.atpress.ne.jp/view/47954

◎シャープはアプリを追加インストールしなくてもWebブラウザーで電子書籍を閲覧できる「ブラウザビューア」をASP型で電子書店事業者などに提供するという。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140630/567747/

資生堂の5月国内販社売上は前年同期比5%減となった。資生堂の苦戦はつづく。
http://makernews.biz/201407013042-5/

◎ぴあは、「チケットぴあ」Webサイトでチケットを購入したものの、何かしらの理由で公演に参加できなくなった場合、クレジット決済済みで、かつ未だ発券されていないチケットであれば、チケットを希望する別の顧客に対し、定価にて再販売できる「定価リセールサービス」を開始した。これは便利だし、「死券」がなくなるという意味でも良いことだ。それはそうと国立競技場のポール・マッカートニーの公演チケットの返金はいつになるのだろうか。だいぶ前にチケットは送ったんだけれどなあ。セブンイレブンで返金できれば問題なかったんだよな。
http://t2.pia.jp/guide/resale-entry.html

テレビ朝日の吉田慎一社長は朝日新聞社出身。テレビ局の社長は新聞社で社長になれなかった新聞人が座るというケースが多い。テレビ朝日の社長になれなかった放送人が朝日新聞社の社長に就任するというケースは絶対にあり得まい。読売新聞と日本テレビでも同じだ。
http://mantan-web.jp/2014/07/01/20140701dog00m200033000c.html

博報堂DYメディアパートナーズは7月1日よりTBSテレビのインターネット動画サイト「Newsi」において、新しい動画広告(プリロール広告)の開発と販売を試験的に開始した。
http://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/service/20140701_8292.html
ウエブとの連動、連携抜きにメディアの未来は語れないということだ。

◎定額制の電子雑誌/コミック読み放題サービス「ビューン」が、ビジネスマン向けの書籍を低価格で購入できるサービス「ビューンおトク読み」を開始。「ビューン」または「ビューン・コミック」の会員であれば、電子書籍を印刷版の販売価格から30%以上割引した価格で購入できる。8月8日まで「ビューンおトク読み」の中からおすすめの電子書籍を1冊100円(税込み)で提供する。
http://www.viewn.co.jp/news/archive/229/

横山悠太の「吾輩ハ猫ニナル」(講談社)は話題になるだろうな。中国の簡体字にルビを付し日本語に取り入れたという離れ業が芥川賞ではどう評価されるかだね。
http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refBook=978-4-06-219064-0&Rec_id=1010

清野とおるのマンガ「ウヒョッ!東京都北区赤羽」(双葉社)が実写映画化されるらしい。
http://www.cyzowoman.com/2014/07/post_12727.html

インプレスグループで電子出版事業を手がけるインプレスR&Dは、次世代型出版メソッド「NextPublishing」によるプリント・オンデマンド書籍を大日本印刷株式会社が運営する「ウェブの書斎オンデマンド本 楽天市場店」で販売しているが、「青空文庫POD」全200タイトル・600製品も提供することになった。
http://japan.cnet.com/release/30074711/

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3)【深夜の誌人語録】

考える暇もないというが、いつでも、どこでも考えられるのであって、考える暇がないというのは自らの怠惰を棚上げした物言いである。