【文徒】2014年(平成26)7月14日(第2巻130号・通巻332号)

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1)【記事】雑誌の実現すべき「質」とは?
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】雑誌の実現すべき「質」とは?

単純に読者の数を求めるのであれば、雑誌はインターネットに跪拝しつづけるしかあるまい。
インターネットの「数」に対して、雑誌は「質」をもって対置するとは、酒場でも聞かされることの多い「物言い」だが、問題は、その「質」が誰に対して開かれているかである。
さすがに「広告」であると厚顔無恥に答える編集者は今やいないと思うが、雑誌が実現する「質」は、相変わらず「多数」を求めているような気がしてならない。確かに定価を払って雑誌を購入してくれる限り、雑誌は誰に対しても開かれていることは間違いない。
しかし、誰に対しても開かれているからといって、商売上のスケベ心から、編集者が「多数」を求めて実現した「質」を「多数」が受け入れるかといえば、私は疑問である。ファッション誌系の編集者で「エッジを効かせる」といった言い方をするケースがあるが、よくよく話を聞いてみると、相変わらず「多数」を求めての発想であるということが多い。誤解を恐れずに言えば、編集者は「少数」を求めて「質」を実現すべきであると私は考えている。
編集者が「少数」を求めて「質」を実現したとき、その「質」は私のために実現してくれたのかと読者は少なからず感動を覚え、そうした積み重ねが雑誌に相応しい「数」を形成しはじめる。本来、雑誌はそのようなメディアであったと思うのだけれども。
今日は巴里祭である。

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2)【本日の一行情報】

◎7月9日、渋谷の一番搾りガーデン東京店で開催された「AneCan★プレミアム夏祭り Supported by クルチアーニ C」の模様。浴衣にビールという写真を見ているとオレも飲みたくなる。
http://www.womaninsight.jp/archives/73709

洗顔料も、シャンプーも使わない!美容エッセイストの錦織なつみが宝島社から「素朴美容、はじめました」を刊行。美容専門誌を擁している出版社では刊行を躊躇する企画である。宝島社らしいゲリラ性が息づいている。
http://www.wwdjapan.com/beauty/2014/07/09/00012857.html

◎学研教育総合研究所の小学生白書Web版「2014年春 卒業生500名 中学入学直前意識調査」によれば小学6年生が一日に電子機器(ネット端末)を利用する平均時間は51.8分。小学生が利用しているのは携帯ゲームプレイヤーで6割を超えている。中学校生なったら6割がスマホを希望する。
http://www.gakken.co.jp/kyouikusouken/whitepaper/201403/index.html

◎新潮社のマンガ「GANGSTA.」がアニメ化されることになった。コミックスの第6巻は紙とデジタルで同時発売。また電子書店のBookliveで7月22日まで第1巻の無料試し読みを実施している。作者のコースケは投稿サイトから生まれた才能である。
http://booklive.jp/product/index/title_id/269767/vol_no/001

◎働く女子が初めて買ったファッション誌は1位「ピチレモン」、2位「ノンノ」、3位「セブンティーン」。
http://news.ameba.jp/20140709-640/

◎ミシマ社とPHP研究所がコラボ企画を実施。「みんなのミシマガジン」が、『PHPスペシャル』8月号の特集「どうしても許せない人」を協同編集している。ミシマ社が気持ち悪い理由がわかった。
http://www.php.co.jp/news/2014/06/phpsp.php

◎ブックリスタの電子書籍上半期ランキング。第1位はブッチギリで「進撃の巨人(13)」、第2位「機動戦士ガンダムTHE OGIGIN(1)」、第3位「進撃の巨人(12)」、第4位「機動戦士ガンダムTHE OGIGIN(2)」、第5位「機動戦士ガンダムTHE OGIGIN(3)」、第6位「進撃の巨人(11)」、第7位「L・DK(14)」、第8位「イニシエーション・ラブ」、第9位「ルーズヴェルト・ゲーム」、第10位「進撃の巨人(9)」。
http://www.booklista.co.jp/index.php/ranking2014firsthalf
13位に雑誌が入っている。「ダイム」4月号なんだけれど。

大幸薬品は、学研パブリッシング発行の小学生向け学習まんが「まんがでよくわかるシリーズ」より、「正露丸のひみつ」を刊行し、全国の小学校および公立図書館に約25,500冊を寄贈。またウェブサイト「まんがひみつ文庫」などでの無料配信も実施している。
http://www.seirogan.co.jp/news/seirogannohimutsu_final_140710.pdf

電通は、朝日新聞と共同で、社会的課題に取り組む企業・学生団体・著名人が垣根を越えて集い、地球の青さをイメージした青色のテーブルを囲んで共通価値の創造(Creating Shared Value=CSV)を目指す「Blue Table」プロジェクトを始動させる。このプロジェクトの目的は、それぞれ独自の強みを持つ企業・学生団体・著名人の三者が互いの思いや強みを共有し、手を取り合うことで、社会的課題の解決に向けた糸口を見いだしたり、新たな共通価値を実現するムーブメントを模索・提案していくことにある。プロジェクトの第1弾は「世界の健康問題」をテーマにし、そこでの議論はUstreamによるライブ中継や特設サイト(URL:http://www.asahi.com/bluetable)、朝日新聞などを通して発信・拡散を図る。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2014/0711-003770.html
http://www.asahi.com/ad/bluetable/
雑誌も「広告ビジネスのソーシャル化」に正面から向き合う必要がある。

集英社の「別冊マーガレット」で連載されていた咲坂伊緒の「ストロボ・エッジ」が実写映画化されることになった。
http://www.cinematoday.jp/page/N0064589?utm_source=gunosy&utm_medium=feed&utm_campaign=xchg

◎国際電子出版EXPOにおけるボイジャーのブースで池澤夏樹が語った「電子出版の今と未来」の録画映像がYouTubeにアップされた。池澤は早い段階から電子出版に関心を抱いていたという。ワープロで書いた原稿で最初に芥川賞を受賞した作家だそうだ。池澤が指摘しているようにマクルーハンの「メディアはメッセージ」は正確に言えば「メディアこそがメッセージ」なのであろう。一歩踏み込んで言わせてもらえばプラットフォームこそがメッセージなのである。プラットフォームが社会を変えるのだ。
http://youtu.be/37c4KTZSF34

日経BP社とD2Cによる2014年における携帯電話を通じたインターネット広告・モバイル広告に関する企業の利用動向調査の結果、22.9%の企業が2014年度の広告・宣伝費を2013年度よりも増やすと回答した。
http://news.mynavi.jp/news/2014/07/10/061/

◎日販は今年もまたオンライン検定「夏のブンコ検定 2014」を実施。受験料は無料!
http://www.dreamnews.jp/press/0000095877/
日販はこんなに「検定」に力を入れている。
http://www.kentei-uketsuke.com/

佐賀県は、8月1日より佐賀―成田線を含む全3路線が就航するLCC春秋航空日本に、佐賀県と宝島社とのコラボで生まれたブランドムック「LOVE!佐賀」を機内誌として提供する。
https://digitalpr.jp/r/8288
http://flyteam.jp/news/article/37807

フジテレビジョンはこのほど、「食」と「旅」をテーマとしたYouTubeチャンネル「videlicio.us」を開設し、動画コンテンツの配信を始めた。スポンサーを付け、タイアップコンテンツを制作、ラボを活用したイベントを開催するなどして収益化を図る考えだそうだ。
http://www.advertimes.com/20140710/article164107/

◎フランスは無料配送を禁止する「反アマゾン法」と言われる法案を成立させたが、アマゾンは黙っていなかった。アマゾンは1ユーロセント(約1.4円)での書籍の配送を開始するそうだ。
http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_all&k=20140711031506a

◎地方によって週刊誌は一日遅れの発売となる。そんな地方に住んでいる読者にとって、「週刊文春デジタル」は一日遅れを解消してくれるということがわかる。
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20140711/1136623/?P=2

◎慶応の女子大生である大川ゆき乃による政治解説番組「BOKUmedia」。これもソーシャルメディアが編集力を解放しつつあることを示す事例だろう。大川は現在、大学2年だが、これは大学1年のときの「番組」ということになる。
https://www.youtube.com/channel/UCCF_Vg9myk5zgjcqD2SSBfA

Amazon.co.jpの商品リンクを含むツイートに対して、ハッシュタグ(#アマゾンポチ)を付けて@返信(リプライ)するだけで、ツイートされていた商品をAmazon.co.jpのショッピングカートに入れることができる新機能「Amazonソーシャルカート」がサービスを開始した。
http://www.amazon.co.jp/gp/socialmedia/amazoncart/ref=tsm_1_tw_amzn_genie_pr

◎「進撃の巨人」のリヴァイが表紙を飾る「フラウ」8月号が「フラウマンガ大賞」と「フラウ文芸大賞」を発表。「フラウマンガ大賞」は海野つなみの「逃げるは恥だが役に立つ」、「フラウ文芸大賞」は藤野可織の短編集「おはなしして子ちゃん」にそれぞれ決定した。ともに講談社の作品。
http://kirei.mainichi.jp/kireinews/news/20140710dog00m100102000c.html

エムオン・エンタテインメントはアラサー女性向けの月刊ファッション誌「and GIRL」と、ママ向けの季刊ファッション誌「mamagirl」のECサイトを開設する。
https://netshop.impress.co.jp/node/375

◎Web漫画サイト「ぜにょん」(コアミックス)が連載開始2日前に突如、掲載中止した「あいこのまーちゃん」(やまもとありさ)の第一話が「漫画 on Web」で無料公開された。やまもとは「みなさんにご覧頂き、ご意見・ご感想頂ければと思います。作品にご興味のある出版社さまはご連絡を頂けますと幸いです」と書いている。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1407/11/news061.html

◎日高勝之の「昭和ノスタルジアとは何か」(世界思想社)。刊行されているのを知らなかった。「東京新聞」の書評で、その存在を知った。これは買わねば!
http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014071302000178.html

集英社が新ライトノベル文庫をこの秋に創刊する。
http://dash.shueisha.co.jp/dx/

小林エリカマダム・キュリーと朝食を」が集英社から刊行された。芥川賞を獲得すればベストセラーだろう。
http://renzaburo.jp/madamecurie/#a02

文藝春秋は常務になると4階の個室に常駐するのが習わしだったが、松井清人社長は、これを廃止することを最初の仕事とした。
http://inagist.com/all/487101873724198913/

読売新聞社は、中学生、高校生を対象にした「読売中高生新聞」を11月7日に毎週金曜日の発行で創刊する。編集には小学館が小学校高学年向けの「読売KODOMO新聞」に引き続き協力する。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140711-OYT1T50102.html
創刊に先立ち、10代を対象とした無料のスマートフォン用のアプリ「Yteen」をリリースする。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140712-OYT1T50074.html?from=ycont_top_txt
読売新聞も、小学館も大人である。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2605I_W4A620C1CR8000/

◎こういう記述は電通という広告会社の性格を理解するうえで重要な意味を持つはずだ。
「吉田秀雄は、満州や中国のマスコミや満州国政府関係者や南満州鉄道(満鉄)関係者、軍関係者などを積極的に採用した。満州国国務院総務庁弘報処長の市川敏は本社総務局長から常務に、満州放送総局副局長の金澤覚太郎は本社ラジオテレビ局長、上海の大陸新報専務理事・編集局長の森山喬は本社ラジオテレビ局長から常務へ、満鉄弘報課長、満州日報理事長の松本豊三は秘書役から大阪支社ラジオテレビ局長に、満州日報編集局長の森崎実は本社開発局長、ビデオリサーチ社長に、満鉄旅客課長の小谷重一は本社国際局長、ニューヨーク総局長に、満鉄の市江雄次は本社PR局長にと、数多くの満州帰り、大陸帰りや、塚本誠を始めとする復員軍人が戦後の電通の多くの要職を占めた」
昭和40年6月に取締役に就任する塚本誠は陸軍大佐・東京憲兵特高課長であった。
http://dentsu-ho.com/articles/1342

加藤典洋村上春樹に正面から向き合おうとしている。岩波書店のウエブサイトで加藤の「村上春樹は、むずかしい」の連載が始まった。
https://www.iwanami.co.jp/web_serials/kato/DOCs/01.pdf

◎「ゲッサン」の編集長である市川武法のインタビュー記事が話題になっている。
http://yaraon.blog109.fc2.com/blog-entry-25323.html

実業之日本社は無料のWEBマンガサイト「COMICリュエル」を立ち上げた。リュエルはフランス語で「路地」を意味する。
http://j-nbooks.jp/comic/
https://twitter.com/comic_ruelle
「京のとっときお教えします」はガイドブックの新しいカタチを示唆している。ガイドブックとしては全面カラー化が条件だろう。

MXテレビの「週末めとろポリシャン」に出演する際の肩書も「すてきな奥さん」にすべきなのではないか。
http://ameblo.jp/suteoku06/entry-11892736979.html

◎夏祭りデートをしてみたい芸能人。女性が選んだ男性芸能人の1位は「西島秀俊(24.0%)」、2位は「福山雅治(21.5%)」。3位以下に大差をつけている。男性が選んだ女性芸能人は、1位「北川景子(17.0%)」を筆頭に2位「石原さとみ(16.0%)」、3位「有村架純(15.0%)」、「綾瀬はるか(15.0%)」、5位「新垣結衣(13.0%)」が僅差で並ぶ。
http://news.mynavi.jp/news/2014/07/12/037/

◎フジテレビは6月27日付で全社員約1500人の3分の2に当たる約千人を異動。「開局以来の大異動」だというが、ホールディングスの「老害」が居座ったままでは「開局以来の大異動」に見合った変化は起こらないのではないだろうか。ニッポンの巨大マスコミにはトップが責任を取る文化がいつまで経っても育たないようだ。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/culture/article/100784

ドワンゴ川上量生が「無料コンテンツがあふれるネットの中で、電子書籍を売るためには、玉石混交の玉だけ集めたもので、お金をとらないといけない。しかし、いまは石が一緒に入った福袋を電子書籍として売ろうとしている」という主旨の発言をしている。本当にそう思う。
http://www.bengo4.com/topics/1775/

◎シニア層向けの事業を展開するソーシャルサービスは、50代以上の潜在アクティブシニア向けの雑誌「どきどき」を創刊した。「どきどきは、毎月30万部を発行し、中高年層・シニア層が多くの割合を占める、全国の「ポスタルくらぶ」会員の他、旅行会社の顧客、流通の顧客など、シニア団体、シニアの集まる集会などに幅広くリーチするそうだ。定価は200円+消費税。
http://www.sc-sv.com/press/140708

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3)【深夜の誌人語録】

たとえ「質」に転化しなくとも「量」をこなすことで、「速度」が鍛えられる。