【文徒】2014年(平成26)8月13日(第2巻151号・通巻353号)

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1)【記事】取次はこれからどうなるのか!?
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】取次はこれからどうなるのか!?

客 出版市場が縮小し、書店がバタバタと廃業に追い込まれているけれど、取次業界も大変な時代に入ったよね。
主 日販とトーハンは何だかんだといっても、大丈夫なんじゃないの。
客 日販はともかくトーハンは大変だろうよ。
主 不動産があるじゃない。東五軒町の本社を再開発すれば、何とかなる。取次業界は第3位以下が大変なんじゃないのかな。既に経営危機に直面している大阪屋は第3位の取次だといってみたところで日販、トーハンとの差が大き過ぎるものね。
客 大阪屋はリストラを断行し、本社を移転して、その不動産を売却したし、経営危機を乗り切るのに必死だ。
主 それだけじゃ足りないね。現ナマを投入しないことにはマイナス部分をゼロベースに持って来ることはできないだろう。
客 どのくらいの規模のカネが必要になるのだろうか。
主 ざっくり言って20億円。講談社で販売担当の役員をつとめていた大竹深夫が大阪屋の社長に就任し、講談社小学館集英社KADOKAWAの出版大手4社が足並みを揃えて経営再建に当たっているのだけれど、さすがに4社で20億円は無理だろう。
客 大日本印刷の存在も大きいし、そもそも大阪屋は楽天に買収されたわけだものね。
主 楽天には10億円は出してもらいたいところだろうね。出版社サイドで5億円、大日本印刷で5億円というくらいの配分になるのではないだろうか。いずれにしても、今後、大阪屋は取次としての性格を大きく変えてゆく必要があるだろう。従来通りの大阪屋であれば、いずれ経営危機が再来してしまうだろうからね。楽天系の取次である強みを前面に押し出す必要がある。日販やトーハン帳合の書店との取引を解禁するということになるけれどね。共同配送も必要になって来るだろうな。日販あたりは協力することになるんだろうけれど、まあ問題はトーハンなんじゃないの。
客 出版社にとっても、書店にとっても不動産があるかないかは、生き残りにおいて重要になって来るよね。
主 大洋社は水道橋の不動産があったから助かったわけさ。いよいよ8月25日から本社が外神田に移転となる。中央社アニメイトで何とかなるだろうし、協和出版販売はトーハンだろ。その点、大変なのは不動産のない栗田出版販売だと言われている。
客 栗田が経営危機に陥ったとして大阪屋のように出版社が助け船を出すだろうか。
主 無理だと思うなあ。栗田問題は悩ましいところだ。もっと早い段階で大阪屋と経営統合していれば良かったんだけれど。

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2)【本日の一行情報】

夏の甲子園が始まったが、集英社から刊行されている「ROOKIES」「ボール・ミーツ・ガール」「ミスフル」「青空エール」などの高校野球マンガ6タイトルの電子書籍版の第一巻が無料になるキャンペーンがニコニコ静画、BookLive、eBookJapanなどの電子書店で実施されている。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/special/st/natsunokoshien_free.asp
http://seiga.nicovideo.jp/book/cp/koushien2014
http://booklive.jp/search/keyword?keyword=&t_ids=273885,273887,273884,273883,273888,273886,202788,206778,150873,150196,240580,206771&fk=t_ids&sort=t4

◎マイボイスコムがインターネットで電子書籍に関するアンケート調査を実施した。電子書籍(コミック・写真集含む)の利用者は20.0%。結構、高い数字だ。しかし、「無料で利用することが多い」12.4%で、「有料で利用することが多い」5.1%を上回っている。「無料で利用することが多い」は50代以上で少なく、男性10代や女性10・20代で多い。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140811/prl14081109420006-n1.htm

アメリカの作家たちがニューヨークタイムズに出稿した意見広告。
「われわれはAmazonに対し、これ以上作家を傷つけることなく、また顧客の書籍購入を阻むことなくHachetteとの紛争を解決するよう求める」
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1408/11/news041.html

◎「まんだらけ」のホームページが話題となっている。顔にモザイクを施した万引犯の画像をアップしているからだ。8月12日まで返却しない場合はモザイクを外すと警告していた。
http://www.mandarake.co.jp/information/customary/140805/index.html
8月11日付読売新聞は次のように書いている。
「顔にはモザイクがかけられているが、人形を返さない場合は『モザイクを外す』と警告しており、有識者からは『気持ちは分かるがやり過ぎ』との指摘も出ている」
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140811-OYT1T50032.html
結局、警視庁の要請で公開は見送った。

台風11号の画像がツイッターに続々と投稿されていた。こういう画像を見て、企業内ジャーナリズムは鈍感であってはならないはずだ。
http://cureco.jp/view/225/

ドワンゴを2014年8月31日で退職することになったエンジニアの松尾壮紘がブログで「15年勤めたドワンゴを退職しました」の連載を開始した。
「面接のとき森さんに『あれ?スーツで来ちゃったの?うちは私服勤務だから私服でよかったのに。模擬面接のとき、君髪染めてなかったっけ? 染めておいでよ』と言われた」
http://ch.nicovideo.jp/nekon/blomaga/ar259865
雑誌編集部が取り戻すべきは、こうしたドワンゴ草創期にあったようなアナーキーな雰囲気ではないのだろうか。

◎「MonoMax」9月号の付録は、人気セレクトショップナノ・ユニバース」の「みだしなみセット」。これは買いだな。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000071.000005069.html

◎「読者の皆様へ」と題された「月刊ビッグガンガン」中野崇編集長名義の文章。
「弊社としましては、今回の刑事告訴がなされたことを真摯に受け止め、法的判断が明らかになるまで販売を差し控えるべきとの判断をし、過去に出版された「ハイスコアガール」のコミックスおよびファンブックの回収、ならびに電子書籍の配信停止をいたしました。また、月刊ビッグガンガン誌上での「ハイスコアガール」の連載についても、諸般の事情を鑑み、一時休載とさせていただきます」
http://www.jp.square-enix.com/magazine/biggangan/pop20140811.shtml

福家書店新宿サブナード店が「毎日タレントに会える書店」としてリニューアルオープンした。
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp0-20140812-1349514.html

東京新聞の佐藤圭が投稿した「地方紙は、集団的自衛権の行使に反対一色だったが、この新聞は賛成した」というツイートが話題になっている。「この新聞」とは「北国新聞」だ。富山新聞福島民報も賛成派だ。
https://twitter.com/tokyo_satokei/status/498745537152045056/photo/1

◎地下鉄東山線高畑駅荒子書店のツイート。
「【妖怪ウォッチ関連本を今後ご注文されるお客様へ】話しにくいお話ではあるのですが、ここのところキャンセルが多発いたしております。お近くで見つけられたなどの理由ではあるのですが他のお客様をお断りして予約をお受けしている商品です。その点を考慮の上ご予約をお願い致します」
https://twitter.com/arakoshoten

小林健治は「連載差別表現」のなかでヘイトスピーチについて次のように定義している。
ヘイトスピーチは、社会的差別の存在を前提に『マイノリティ集団を傷付け、貶(おとし)め、排除するための言論による暴力』であり、犯罪行為である。“話者の品格”の問題でもなく、“対抗言論”で対処できる性質の発言ではない。言論の暴走は必ず肉体に抹殺にいたる」
http://rensai.ningenshuppan.com/?eid=159

◎アクティブミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」が要請文「朝日新聞慰安婦』報道の検証をめぐる一連の報道に抗議し訴えます」を発表した。
「…事実確認も検証も全く行わずに暴論と虚報を垂れ流している産経新聞などの一部メディアが跋扈している現状を考えれば、朝日新聞の姿勢と自己批判は真っ当で、意義あるものと言えるでしょう。ただ、朝日新聞が相変わらず『女性のためのアジア平和国民基金』を評価していることには、失望を禁じえません」
「そして朝日新聞産経新聞も含めた全てのメディア関係者に訴えます。各国・各地で『慰安婦』にされた女性たち(多くは故人になってしまいましたが)の証言や被害にあった時の状況を、今からでも遅くはないですから丹念に取材し、それをメディアを通して多くの日本人に伝える努力をしてください。また、自由権規約委員会をはじめとする国際社会の勧告に、日本政府がどう対応するのか、これもしっかり取材して、私たちに伝えてください」
http://wam-peace.org/20140810/

◎「メタクソ編集王」(竹書房)を刊行したばかりだというのに…。
http://www.takeshobo.co.jp/sp/metakuso/sub01.html
「われらマスコミドラゴンズ会」の会長でもあった角南功が肺がんのため死去。
https://www.facebook.com/MassDra?fref=photo
ヤングジャンプ」の二代目編集長であり、白泉社の常務取締役であった。

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3)【深夜の誌人語録】

自由は頽廃の母胎にもなる。また、頽廃が自由の母胎となることもある。