【文徒】2014年(平成26)8月15日(第2巻153号・通巻355号)

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1)【記事】「雑誌はブランド」という認識を転倒せよ
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「雑誌はブランド」という認識を転倒せよ

17日まで開催中の「コミックマーケット86」のブースNo.254に小学館が出展している。広江礼威ブラック・ラグーン」のスマホグッズセットや結城焔によるマンガ版「IS〈インフィニット・ストラトス〉」のお風呂ポスターなど、「月刊サンデーGX」「週刊少年サンデー」「ガガガ文庫」などの関連グッズが販売される。
http://natalie.mu/comic/news/123458
こういう記事を読むにつけ、例えば女性ファッション誌を刊行している出版社が協力し合って、「女性ファッション誌」展のような世間の度肝を抜くようなリアルイベントを開催することはできないものかと思ってしまう。東京ドームあたりを会場にして。少なくとも小学館集英社祥伝社の三社共催とか、講談社、光文社の二社共催とか。
雑誌のこれからについて、私がどう考えているかも述べておこうか。相変わらず、雑誌は厳しい環境に置かれているが、雑誌社は大手広告会社の雑誌を扱うセクションの扱いが増えていることにもっと注目すべきである。
これは私と酒席をともにした関係者であれば耳にタコができるほど聞かされているのかもしれないが、「雑誌はブランドである」という逆立ちした認識を抱いている限り、女性ファッション誌であれ、何であれ、その雑誌は衰退していくばかりなのではないか。この逆立ちした認識を転倒させない限り、雑誌は生き残れないはずだ。
どういうことかといえば、「ブランドの一つが雑誌」という認識を持つ必要があるということだ。
具体的に言うのであれば、ブランドのもとに雑誌があり、書籍があり、ウエブに目を転じれば、デジタル雑誌があり、ECと連動したウエブサイトがあり、アプリがあり、映像メディアがあり、店舗があり、スクールがあり、リアルイベントがあり、読者・ユーザー組織があるということだ。
そこでは雑誌の読者がウエブサイトのユーザーである必要はないし、ウエブサイトのユーザーが雑誌の読者である必要もない。逆にいくつも重複していても良いはずだ。重複の最も多い人々がコアユーザーなのである。言うまでもなくブランドの形成するコミュニティの規模は、雑誌の読者よりも大きくなるはずである。
そうすることによって出版社は雑誌を守るという消極的なスタンスではなく、雑誌を含むブランドビジネスの成長戦略を描くべきなのである。私の構想するブランドビジネスからすれば「雑誌の質をめぐるデータ」は必要ないのである。

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2)【本日の一行情報】

小学館の「月刊コロコロコミック」10月号の付録のひとつは「妖怪ウォッチ2 元祖/本家」の「ガブニャン」ガシャコインQRコード。「妖怪ウォッチ」はブームを通り越して社会現象にまでなってしまった。そりゃあレジェンドになりますよ、コロコロは。
http://www.corocoro.tv/next/

◎「週刊文春」に1977年から連載されている「近田春夫の考えるヒット」は2003年の文春文庫「その意味は」以来、書籍としてまとまることがなかったが、11年ぶりに電子書籍としてまとめられた。2011年から三年間ぶんの連載が「考えるヒットe-1 J-POPもガラパゴス」「考えるヒットe-2 その日本語、変だよ」「考えるヒットe-3 マスターピースをさがせ」の3冊として同時にリリースされたのである。
http://www.atpress.ne.jp/view/49839
こうなると大瀧詠一の「近代音楽史」も読みたいものである。「日本ポップス伝」のことだよ。フーコーの「知の考古学」に比肩する仕事なんだけれどねえ。

◎モロッコ料理「タジン」。これは美味そうだ。
http://www.f-bungei.jp/Essay/?cID=9&nID=69

祥伝社は原宿のストリートファッションのアイコン的存在であるAYAMOの初めてのフォトブック「AYAMO STYLE BOOK」を刊行する。祥伝社ECサイトは割と良くできていると私は評価している。
http://store.sho-mag.jp/contents/140715XGL/?link=CT_TOP_S9

Nikonは、映画「STAND BY ME ドラえもん」を応援している。ウワサでは泣ける映画のようだ。
http://22seiki.nikon.co.jp/newspaper.html

講談社は映画の公開に合わせ、「頭文字Dの軌跡 挑戦の記」を刊行。多田哲哉開発主査が「頭文字D」なくしてトヨタ86はなかったと語っているそうだ。出版は世界を動かせるんだよなあ。
http://response.jp/article/2014/08/13/229889.html

学研ホールディングスの14年9月期第3四半期累計(13年10月-14年6月)決算の連結経常損益は3.1億円の赤字。昨年同期は黒字だったのに。しかも、赤字幅が拡大している。カーヴィーダンスの熱狂が去り、元の学研に戻ってしまったということか。
http://kabutan.jp/news/marketnews/?b=k201408130014

◎タイトルが良い。講談社から10月に刊行される瀬戸内寂聴の「死に支度」はイケるんじゃないのかなあ。
https://eq.kds.jp/bookclub/5109/

◎好きな政治学者としてカール・シュミットと田口富久治をあげている吉田徹の選書メチエ「感情の政治学」(講談社)は読んでみよう。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062585828
私もシュミット、田口は好きな政治学者であった。私の場合、これに橋川文三が加わるのだけれど。吉田の場合は藤原保信も好きなんでしょ。

◎LINEの利用者が近く全世界で5億人の大台に乗る。フェイスブックよりも早いペースだ。
http://www.asahi.com/articles/ASG8D5DCRG8DULFA00V.html

テレビ東京の「ドラマ24」枠で10月から放映予定の「玉川区役所OF THE DEAD」が、マンガ「ゾンビ取りガール」と類似しているとマンガ家たちが指摘している。
http://news.livedoor.com/article/detail/9140343/

神林広恵が次のように指摘しているが、元「噂の真相」の神林のみならず、普通の読者も、そのことに気がついてしまっていると考えるべきだろう。女性週刊誌はジャーナリズムとして読者にいかに信用されるかを真剣に考える必要がある。そのためにも、ある段階で過去を断ち切らねばなるまい。
「『セブン』って、やっぱりザ・芸能界を体現するような週刊誌だとあらためて思い知る。スクープをキャッチしても書かない、掲載しない。旧来のマスコミの悪しき体質がここまで残っている雑誌も珍しいのではないか。しかももっとすごいことがある。問題の『週刊文春』が発売されたのが、既に記したが8月6日。そして『セブン』発売は8月7日。1日しか違わない。(中略)おそらく懇意の芸能関係者から『文春』で掲載されることを御注進され、速攻で掲載した。そんなところだろう。ほかにどんなネタを隠しているんだ?『セブン』」
http://www.cyzowoman.com/2014/08/post_13194.html

◎米ツイッターは動画広告の配信を開始した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2014081300311

丸善ジュンク堂文教堂とhontoのサイトで購入された書籍の「honto 月間ランキング」の発表を始めた。紙の書籍と電子書籍の販売データを基にしているそうだ。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1408/13/news089.html

KADOKAWAグループのキャラアニとWalker47は、日本ご当地キャラクター協会の後援を得て、8/13〜10/19に全国のご当地キャラを対象とした人気投票イベント「東西対抗 ご当地キャラ&ヒーロー大合戦」を開催している。
http://ir.kadokawa.co.jp/topics/20140812_a2jez.pdf

◎日本出版者協議会は公正取引委員会に対して来年1月に施行される改正著作権法で認められる電子出版物についても再販制度を適用するよう要望した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014081300852

◎アニメ化と映画化のW映像化されるマンガ「暗殺教室」の、いわばブランド力を生かした英単語帳「暗殺教室 殺たん」が売れ始めた。
http://www.asahi.com/and_w/interest/entertainment/CORI2040941.html

日本経済新聞によればフィナンシャル・タイムズは米アマゾンとアシェットの対立で作家はアマゾンを支援せよと主張している。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO75610700T10C14A8000000/

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3)【深夜の誌人語録】

挑戦なくして希望なしである。