【文徒】2014年(平成26)8月28日(第2巻164号・通巻366号)

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1)【記事】江川紹子のもっともな主張に朝日新聞は耳を傾けたい
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】江川紹子のもっともな主張に朝日新聞は耳を傾けたい

「Business Journal」の「産経新聞に牙を剥いた『言論の自由』軽視の韓国 国内メディアの鈍さも浮き彫りに」における次のような江川紹子の指摘にもちろん同意する。
「日韓関係には、その歴史的経緯など特異な事情もあるが、それによって言論の自由ダブルスタンダードを作ることがあってはならない、と思う。東亜日報社説のように、産経新聞に対する規制を求めるというのは、言論・報道機関が言論の自由に箍(たが)をはめようというものではないのか。韓国のメディアには、少し頭を冷やしてもらいたい」
次のような物言いは江川ならではのものかもしれない。
「韓国では、日本よりはるかに早く、取り調べの録音・録画(可視化)が始まり、弁護人が同席することも認められる」
これは私も知らなかった。また、こう書くのも忘れてはいない。
「また、日本も、言論の自由に関して韓国を笑っていられる状況ではない」
何故、朝日新聞は、こういう文章を社説なり何なりで書けないのか。朝日新聞はリベラルでも左翼でもアカヒでも何でもない。朝日新聞あたりは江川の次のような主張を深刻に受け止めるべきだろう。
「批判的な、あるいは価値観の異なる言論に対して、どれほど寛容でいられるかで、その政権の“民主主義度”が分かるように思う。また、1つのメディアの言論の自由が脅かされている時に、他のメディアがどういう対応をするかで、その国のメディアの質や“言論の自由度”が見えてくるのではないか」
http://biz-journal.jp/2014/08/post_5824.html
ノンフィクションライターの降旗学は「ダイヤモンドonline」で次のような自らの体験を述べている。
「何年も前の事件取材で、被疑者の隣家に話を聞きに行ったことがあるんですね。お隣さんは、犯人のことはよくわからないと言う。すると、そこに居合わせた朝日の記者さんがこう言い放ったんです。あなたは取材に答える義務がある、知ってることを話してくださいとかなんとか。知らないと言う人の口を無理やりこじ開けようとする……、朝日ってこーいう取材するんだな、と思ったものです」
http://diamond.jp/articles/-/57997
最低だよなあ、この朝日の記者は!

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2)【本日の一行情報】

新潮新書から「日本の風俗嬢」を刊行したばかりの中村淳彦がウエブサイト「幻冬舎plus」に「ルポ中年童貞」を連載している。中村は高齢者デイケアサービスセンターを運営しているだけあって、こういう文章はなかなか刺激的である。
http://www.gentosha.jp/articles/-/2507

主婦の友社の「S Cawaii! Beautyムック」シリーズは累計82万部となり、「整形メイク」ブームを巻き起こしたが、ネットを活用したプロモーション戦略が功を奏したようだ。主婦の友社の広報・宣伝課長の長友薫が次のように語っている。
「今はテレビでも『ネットで話題』として取り上げることも多いので、このムックの情報がまずはネットで拡散し、ゆくゆくはテレビまで網羅出来ればと考えていました」
「すでに用意していたYouTube動画をニュースにしていこうとネットメディアを中心にアプローチし、『モデルプレス』でご紹介いただくことになりました。その頃から新聞、テレビからの問い合わせが増えてきましたね」
http://adgang.jp/2014/08/72660.html
小さな火を灯して、これを燎原に広げていくというアプローチである。

◎マガジンハウスも実用ムックに熱心になってきた。8月28日発売の「an・an SPECIAL 知っておきたい女子マナー完全版」とか「Dr.クロワッサン 血糖値を下げるちょい足しレシピ」とかが売れるかどうかは決算を大きく左右することになる。
http://magazineworld.jp/books/paper/8942/
http://magazineworld.jp/books/paper/8941/
例えば「Dr.クロワッサン」を月刊は無理でも、隔月刊に持って行ければ良いんだろうなあ。

◎光文社の第70期決算は売上高244.93億円(対前年比98.1%)、営業利益6.18億円、経常利益11.13億円、当期純利益9.31億円。広告収入が86.4億円で対前年比104.6%と大健闘している。
http://www.shinbunka.co.jp/news2014/08/140825-04.htm

◎「CanCam」10月号(小学館)の付録は、高橋留美子うる星やつら」のラムちゃんキャラクターのメジャーとクリアポーチだ。小学館も、講談社も、集英社も女性ファッション誌がマンガに急接近している。女性ファッション誌の編集者によっては、こうしたコラボを嫌う者もいるだろうが、私は推進派である。
http://natalie.mu/comic/news/124470

◎女性のふんどしというのは、SM官能小説の世界の話だと思っていたが、「驚きの解放感! 疲れスッキリ! 快眠ふんどしパンツ」(マキノ出版)が売れているという。もちろん、「ふんどしパンツ」付きである。ネットで売れているのは分かるよなあ。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20140821/1059626/

◎「女子美×電通 人権アートプロジェクト」人権ポスター展が相模大野駅に隣接するボーノ相模大野にあるユニコムプラザさがみはらで開催中だ。こういう素晴らしい企画はもっともっと積極的にPRしてもらいたいものである。
http://www.joshibi.ac.jp/about/joshibinews/2235

◎全国のコンビニエンスストアで「三ツ矢サイダー缶500mlワンピースデザイン缶」が発売される。
http://www.shonenjump.com/j/2014/08/140825news04.html

トーハンとブックライナーは、業界初となる「特別便による日曜・祝祭日の書店着サービス」を9月7日到着分より開始する。
「今回のサービス開始により、休日前々日の注文についても確実に休日に店着するようになり、書店は来店客の多い日曜・祝祭日に商品を販売することができるようになります」
http://www.tohan.jp/whatsnew/news/post_346/
しかし、やっとだよ、やっと!アマゾンが上陸した時点で開始できなかった「怠惰」というべきか。

ハースト婦人画報社を去り、コンデナスト・ジャパンで「VOGUE girl」の編集長に就任した宮坂淑子の次のような考え方は、私とほぼ同じである。
「『雑誌だけに終わらない媒体』という点を意識しました。新生「VOGUE GIRL」は、年2回発行する雑誌、毎日更新のウェブ、読者によるコミュニティの3本柱で構成します」
しかし、厳しいことを言うのであれば宮坂がハースト婦人画報社で手がけてきて仕事に圧倒的に欠如していたのは「知性」である。タダで着飾った有名人を拒絶する「知性」である。「雑誌だけに終わらない媒体」も広告を提供してくれる企業に奉仕するだけでは、何の意味もないことを知るべきなのではないだろうか。日本のモード誌とやらに私がいつも感じる不満である。「重さ」がなく「軽い」だけに終わる媒体は、もう見飽きたよ。
http://www.fashionsnap.com/inside/voguegirl-renewal-interview/

◎「花とゆめ」(白泉社)の創刊40周年を記念した複製原画展が、9月5日から28日までアニメイト池袋本店3階わくわくスペースで開催される。
http://natalie.mu/comic/news/124479
別冊花とゆめ」10月号の付録は「花ゆめメモリーコミック」だ。
http://natalie.mu/comic/news/124543

◎学研の女子小中学生向けファッション誌「キラピチ」「ピチレモン」の読者感謝イベントが、千葉市で開催された。
http://www.47news.jp/CN/201408/CN2014082501001828.html

◎ICT総研の2014年度のSNSの利用動向調査結果は、2014年末にSNS利用者数が6023万人に達するとしている。
http://economic.jp/?p=39342

◎宝島社はイオンとがっぷり四つで組んでいる。40代向けファッション誌「GLOW」がプロデュースしたイオンのレディスブランド「persodea(ペルソデア)」16アイテムを今日から販売している。
http://ryutsuu.biz/topix/g082508.html
さて、セブン&アイはどうするか。

中央公論文芸賞木内昇の「櫛挽道守」(集英社)に決定。
http://www.yomiuri.co.jp/culture/20140825-OYT1T50112.html

◎アシェットがアマゾンと戦えるのは、アシェットの業績が好調だからだ。「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版」は次のように書いている。
「…アマゾンとの対立がアシェットの業績を損ねたわけではない。アシェットの親会社である仏メディア大手ラガルデールによると、アシェットの米国とカナダの上半期の売り上げは約2億2600万ユーロ(約310億円)で、前年同期比5.6%増となっている。タートの『The Goldfinch』のほかに、『ハリー・ポッター』シリーズで知られるJ・K・ローリングロバート・ガルブレイスというペンネームで書いた「The Silkworm(仮題:カイコの紡ぐ夢)」も好調だという」
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052970204431804580115201295736106?mod=WSJ_LatestHeadlines

集英社で「ロードショー」の創刊編集長だった仲木都富が亡くなっていた。私は仲木にインタビューできなかったことを悔いている。何しろ仲木は伝説の性生活専門誌と言っても良い「夫婦生活」の三代目編集長であった。
http://www.menscyzo.com/2009/06/post_87.html
今から9年ほど前、「ウィル」に「『夫婦生活』という雑誌があった」という記事が掲載されたんだよね。
https://ndlopac.ndl.go.jp/F/E36YQ97IHU3APTNRVSR3NFII9DS9642GVU978JG6MQRM19IIH7-14341?func=find-c&=&=&=&=&=&=&ccl_term=001%20%3D%2010651772&adjacent=N&x=0&y=0&con_lng=jpn&pds_handle=&pds_handle=
雑誌の歴史の掘り起こしを急がねばならない。

◎「BusinessJournal」によれば、ベネッセHDは「国民の6人に1人をカバーするほどの巨大な情報を集め」ていて、「累計で1億件に上る情報が流出していたこと」が今回の個人情報流出事件で明るみになったわけだが、「情報セキュリティに対して甘い体制は、ベネッセHDの“中興の祖”と呼ばれる福武總一郎・現最高顧問が社長、会長として経営の舵取りを担っていた時期につくられた」のであれば、最も責任を痛感すべきは福武總一郎であろう。福武に洞ヶ峠は許されないはずだ。
http://biz-journal.jp/2014/08/post_5830.html

講談社がコミックのポータルサイト「コミックプラス」と書籍のポータルサイト「BOOK倶楽部」は合計で月間1000万PVだという。
http://rn2btt.radionikkei.jp/webservice/000599.html

◎防水電子書籍リーダー「Kobo Aura H2O」が発表された。価格が高いなあ。
http://news.mynavi.jp/news/2014/08/27/187/
日本での発売はいつになるのだろうか。

アサツー・ディ・ケイは、光文社がスタートさせる「光文社 和食プロジェクト 和食STYLE」を、運営面・広告面で全面的にバックアップする。「光文社 和食プロジェクト 和食STYLE」とは世界遺産に登録された「和食文化」の普及・発展に寄与したいという思いからスタートさせることになった新プロジェクトであり、2014年8月より、光文社の「JJ」、「VERY」、「STORY」、「HERS」、「CLASSY」、「Mart」、「美ST」、「Gainer」の8誌を横断して、和食文化を紹介する様々な特集などを展開するが、公式WEBサイトも立ち上げた。公式WEBサイトでは、和食の作り方、食べ方などをわかりやすく解説する「和食のいろは」などのオリジナルコンテンツを継続的にリリースしていくという。いいぞ、いいぞ!こういう動きは大歓迎だ。
https://www.adk.jp/9448.html
http://washoku-style.jp/

◎愛知県小牧市は8月26日、新たに建設予定の市立図書館の設計にアドバイスをする事業者を、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と株式会社図書館流通センター(TRC)の共同事業体に決定した。CCCとTRCのコンビは強い。
http://www.huffingtonpost.jp/2014/08/26/komakishi_n_5719699.html?utm_hp_ref=japan

スマートフォン向けのコンテンツを提供するドリコムは、全巻無料で読めるマンガアプリ「ドロップコミック(DropComics)」を今秋リリースするという。
http://www.drecom.co.jp/pr/2014/08/20140826.php

紀伊國屋書店武蔵小杉店が11月下旬にオープン。電子書籍端末をカフェに設置し、カフェ内限定で電子書籍版雑誌バックナンバーを読めるようにするなど、O2O(Online to Offline、Offline to Online)の様々な施策を投入し、「オムニチャネル」に取り組むそうだ。
https://bookskinokuniya-saiyou.net/jobfind-pc/job/All/3156

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3)【深夜の誌人語録】

最悪の場合を想定することが最善策というものである。