【文徒】2014年(平成26)9月29日(第2巻183号・通巻385号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】朝日新聞モラルハザードが止まらない!
2)【記事】書泉グランデ青林堂の変質
3)【記事】本日の一行情報
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2014.9.29 Shuppanjin

1)【記事】朝日新聞モラルハザードが止まらない!

私たち同様に夕刊フジ朝日新聞がデリバリーを担う「T JAPAN」に疑問を投げかけた。
「お金持ちばかりに集中的に配ることになるが、この対応に配布対象になっていない読者から地域差別的ではないか、という声が漏れている」
ここでも元朝日新聞記者の井上久男がコメントしている。
「新聞社には企業と報道機関の両側面がある。その両立が商業ジャーナリズムには必要ではあるが、このやり方では『選民』ではないか、という批判が起きても仕方がない」
朝日新聞の広報は「スタイルやトレンドに敏感な人という編集上の想定読者が多いと推定されるエリアを配布地域としました」とコメントしているが、それが何を意味しているのか、この広報マンは理解しているのだろうか。たとえ、「配布地域外の方もご覧いただけるようにウェブサイト上にも掲載」したとしても、「T JAPAN」が配られている地域と配られない地域が厳然と存在してしまうということ自体が問題の核心部分である。こんな差別的な配布方法を考えた朝日新聞に「人権」を語る資格はないはずだ。朝日新聞憲法14条をどう考えているのだろうか。朝日新聞には次のような吉本隆明の言葉を贈ることにしよう。
「市井の片隅に生まれ、そだち、子を生み、生活し、老いて死ぬといった生涯をくりかえした無数の人物は、千年に一度しかこの世にあらわれない人物の価値とまったくおなじである」
年収1500万円だろうが、年収200万円であろうが、同じ購読料を支払っている限り、読者としての価値は全く同じである。集英社朝日新聞の差別ビジネスに巻き込んで欲しくないものである。
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140924/dms1409241820014-n1.htm
それにしても朝日新聞ジャーナリズムのモラルハザードは深刻だ。「女装と日本人」の著者・三橋順子20日付記事「『男の娘』になってみる?カジュアル女装、裾野広がる」に対し、「…それにしても、後ろから2つめの段落、まったく私の本(『女装と日本人』)のパクリではないか・・・。『朝日新聞』、訴えてやろうか」とツイートし、更につぶやきつづけた。
「パクリ部分は『古来、日本は異性装に対しておおらかな国柄だったと言われる。古事記にはヤマトタケルが女装して敵を討つ場面があるし、歌舞伎の女形は江戸時代の大スターだった。明治期以降、西洋的な価値観の流入で女装への抑圧が強まったが、戦後の混乱を経て復活。女装に寛容な風土のもと、(後略)」
「同じ記者が書いたデジタル版の関連記事では『女装と日本人』を引用している。ということは、やっぱり私の本を見て、その上で、本紙記事を書いているのだろう。だったら、注記くらいすべき」
「私は、朝日新聞の記者に何人も知人がいるし、記事コメントもしてるから社内のデータベースを検索すればすぐに連絡はつけられると思う。メールなり電話なりで確認取材をすれば済むことなのに。その手間を惜しむのは記者として怠慢。それとも、もう故人だと思われたのか・・・」
「問題の記事を書いた神庭亮介記者は、朝日新聞文化くらし報道部記者(放送・読書・遊軍担当)で31歳。『映画・音楽・マンガ・サブカルチャーなどに関心』だそうだが面識はない」
https://twitter.com/MJunko0523
http://www.asahi.com/articles/ASG9K2VSJG9KUCVL002.html
「トピックニュース」によれば、三橋の指摘に対して神庭亮介はツイッターで次のように応答、かつ反論をした。
「初めまして。記事の筆者の神庭亮介と申します。『女装と日本人』、大変興味深く拝読し、記事執筆にあたっても参考にさせていただきました。ただ、ヤマトタケルの部分にせよ、歌舞伎の女形にせよ、複数の書籍や記事にあたって確認しており、パクリとは言えないかと思います」
むろん、三橋は納得しなかった。「トピックニュース」によれば次のようにツイートした。
「個々の事象への言及はともかく、それらを体系的に結び付けて論じたのは私の『女装と日本人』が最初です。なんらかの言及なり注記があってしかるべきだと思います。新聞記事の紙幅の制約は承知していますが、やはりたいへん残念に思います」
http://www.asahi.com/articles/ASG9K2VSJG9KUCVL002.html
私は三橋の言い分に納得する。記事を書くに際して、参考にしたのであれば、その旨を記すのが、礼儀というものではないだろうか。
長谷川幸洋は「現代ビジネス」で「朝日新聞はまだ懲りないのだろうか」と朝日新聞のシリア空爆報道を批判している。リードでは「集団的自衛権」行使と書きながら、本文では「米国は自衛権を行使した」と書き、「集団的自衛権」という言葉は出て来なかったというのだ。
「パワー国連大使は「集団的自衛権に基づいて空爆した」とは言っていない。「憲章51条の個別的かつ集団的自衛権に基づいて自衛する権利がある」と主張しているのだ。この部分は憲章51条そのものの言い回しを引用している。51条は個別的自衛権集団的自衛権を明白に区別していない。両者をセットで「固有の権利」としているのだ(http://www.unic.or.jp/info/un/charter/text_japanese/)。
ところが、朝日はそこから集団的自衛権だけを記者が抜き出して報じたのである。あえて個別的自衛権の部分を落としたと言ってもいい」
「ここで『個別的な自衛権を行使した』などという説明はない。ようするに、米国はあくまで憲章51条にある固有の権利として個別的かつ集団的自衛権に沿って軍事力を行使した、という立場を述べているにすぎない。べつに『この部分は集団的自衛権で、あの部分は個別的自衛権で』などとは説明していない」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40547
朝日新聞はここでも吉田調書と同じ失敗を繰り返しているのである。

                                                                                                                        • -

2)【記事】書泉グランデ青林堂の変質

書泉グランデ在特会桜井誠の新刊が出ることをツイートしたところ、大炎上。
http://togetter.com/li/724047
書泉グランデは該当ツイートを削除した。
「新刊書籍のご紹介をさせていただいた内容に、特定の主張を支持するかのような表現がありましたことは、様々な思想を扱う知識の場である一書店として、決してあってはならないことと考え深く反省しております。
また、そのような誤解をお客様に与えてしまいましたことにつきましては、決して弊社の意図するところではなかったため、恐縮ながら該当ツイートはすでに削除させていただいております」
http://www.shosen.co.jp/news/2014/09/entry_3244/
桜井の新刊の版元は青林堂。といってもラインナップから、長井勝一が率いた青林堂を想像することは、もはやできない。
http://garoshop.cart.fc2.com/
かつての青林堂のスピリッツは「青林工藝舎」が引き継いだ。青林堂で何があったのかは原田高夕己のブログに詳しい。
http://blog.livedoor.jp/yota874harahara/archives/871630.html
現在、青林堂の社長をつとめる蟹江幹彦はカゴメの創業一族だというが、模造拳銃所持で2008年に逮捕されている。
http://ameblo.jp/kaizoukenju/entry-10143435492.html

                                                                                                                        • -

3)【記事】本日の一行情報

凸版印刷は東京、愛知、大阪に住む25歳〜49歳の既婚女性180人を対象に、電子チラシアプリ「シュフーチラシアプリ」を2週間使用してもらい、食品購入に関する節約体験調査を実施。電子チラシを2週間使用した結果、主婦の約8割が節約に有効と回答し、1か月で平均約2,921円、毎日買い物をする主婦では、1か月平均7,288円の食費を節約していることがわかった。
http://www.toppan.co.jp/news/2014/09/Newsrelease20140924.html

KDDIのスタートアップ企業支援プログラムにテレビ朝日セブン&アイ・ホールディングスが参加。大日本印刷凸版印刷も一枚噛んでいる。大手印刷会社は本当にあちこちに顔を出している。
http://www.kddi.com/ventures/news/2014/0924/
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1409/24/news135.html
大手に限られると思うが、出版社もスタートアップ企業支援を考えたほうが紙の「呪縛」から解放されるためにも良いのではないだろうか。

◎月額9.99ドルで約70万冊のキンドル本(電子書籍)が読み放題となるサービス「キンドルアンリミテッド」は今のところアメリカだけであるが、アマゾンは当然、日本に上陸することも考えていることだろう。瀧口範子が指摘しているようにアメリカでは配信ビジネスがストリーミングに移行しはじめているのだ。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20140924/1060430/

ヨシモトブックスがメガネをテーマに雑誌「optical」を創刊。年4回刊だという。
http://www.fashionsnap.com/news/2014-09-24/optical/

オレンジページは駅弁メーカー「NRE大増」とコラボして、『オレンジページ』で「おかあさんの扉」を連載する漫画家・伊藤理佐のアイディアをベースにした、みちのくの銘柄鶏を使った駅弁「唐揚げざんまい」を10月1日から東京駅・新宿駅・品川駅・上野駅・大宮駅のNRE弁当売店で発売する。価格は1100円。
http://ovo.kyodo.co.jp/news/gourmet/a-521617

◎戸賀敬城が「メンズクラブ」の編集長に就任して7年、売上も、利益も倍増したそうだ。その理由を戸賀は次のように胸を張って言う。
「成功のカラクリはとてもシンプル。広告収入が増えたことです。部数が倍増したわけではありません。(中略) では、今の時代に広告を増やすために必要なことは何か。それは部数で「ナンバーワン」になることでも、どこよりもアーティスティックな写真を掲載することもでもない。クライアントから、『この雑誌に広告を載せれば、モノが売れるぞ』と思ってもらうことに尽きるのです」
クライアントを錯覚させる手練手管に優れているというだけの話ではないか。ハースト婦人画報社がABC公査に背を向けているのは、クライアントが現実に覚醒してしまうのが恐ろしいからである。こういう錯覚商法が通用してしまうほど、日本の広告ビジネスは遅れているということだろう。
http://toyokeizai.net/articles/-/48479
真面目に言う。広告業界が真に大切にすべきは、広告なんて糞くらえと思っているような編集者である。

◎これは注目だぞ。ゲイアートの旗手として知られる田亀源五郎が「月刊アクション」で「弟の夫」を連載開始。
http://natalie.mu/comic/news/126914
http://www.tagame.org/

◎「ASAhIパソコン」がウエブで復活した。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1409/25/news133.html

◎4月1日に販売されるや、大ヒットし、あっという間に品切れとなり、4月17日に販売中止となっていたサントリー「澄みわたる梅酒」が全国販売を再開した。
http://www.rbbtoday.com/article/2014/09/24/123755.html
このCMも良かった。飲んでみようと思うもの。
https://www.youtube.com/watch?v=OzdmldIRWvk

カシオ計算機は、KADOKAWAと、音楽分野における協業に合意し、固定観念にとらわれない自由なスタイルの音楽を提供する新レーベル“Mono Creation(モノ クリエーション)”を設立した。
http://www.casio.co.jp/release/2014/0925_monocreation/

◎グッドアイデアだね。「ジュンク堂に住んでみるツアー」が1泊2日で実現される。
「お店に1泊していただき、その間、本や雑誌をお読みいただいたり、自由に過ごしたりしていただきます。
※ビニールがけしてあるコミックスや雑誌はお読みいただけません。特にコミックスはすべての商品にビニールがけしてありますのでご注意ください」
「無料(ただし、お一人様最低1冊の書籍か雑誌のご購入をお願いします)」
http://www.junkudo.co.jp/mj/news/detail.php?news_id=14

◎これも嬉しい。書籍校閲を専門とする校正会社の鴎来堂は11月上旬、神楽坂の文鳥堂書店の跡地に書店「かもめブックス」をオープンする。
http://hatenanews.com/articles/201409/22773

◎日本最大の化粧品・美容の綜合サイト「@コスメ」を運営するアイスタイルは子会社のコスメネクストの「@コスメストア」の新店舗である「@cosme store / TSUTAYA EBISUBASHI店」を大阪・道頓堀にオープンする。コスメと本の融合!
http://www.istyle.co.jp/2014/09/_tsutaya_ebisubashi2014111.html
流通と出版社の「力」関係が変わっていくのかもしれない。

◎な!なんと!ジミー・ペイジ紀伊國屋書店にやって来る!公式写真集「Jimmy Page」(Genesis Publications税込7,560円)の刊行を記念してファンと触れ合う握手会イベントが紀伊國屋書店・新宿南店で10月9日に開催される。
http://www.47news.jp/topics/prwire/2014/09/257453.html
「アクア広島センター街×紀伊國屋書店広島店40周年スペシャル企画」なんていうのも開催されている。
http://www.aqa-hc.com/topics/page.php?id=85
黙ってお客を待っているだけでは、書店の経営はやっていけないのである。

実業之日本社はレシピ本「『ワタミの介護』の健康ごはん」を刊行する。「食事を通して取り組んでいる5大予防 ( 低栄養予防、転倒・骨折予防、老化予防、味覚低下予防、便秘予防 ) の観点から考えた、中高年の皆さんが食べて元気になる健康ごはんとして72レシピを紹介」している。
https://p-kaigo.jp/news/4056.html

◎相当、頑固な人なんだろうなあ。「CHANTO」編集長のブログは相変わらず「『すてきな奥さん』編集長・ヤマオカのプチぜいたくな日々」を名乗っている。
http://ameblo.jp/suteoku06/entry-11930310023.html

◎ムック「布袋寅泰ぴあ」(1,620円)が発売された。ソロデビュー25周年なんだね。
http://ure.pia.co.jp/articles/-/26198
こういうムックはぴあの最も得意とするところだ。

電子書籍ストア「BookLive!」は、白泉社のマンガ「陰陽師配信開始を記念して、同作品と文藝春秋よりリリースされている小説の第1〜3巻をクーポン利用で半額となるキャンペーンを10月9日(木)まで実施している。出版社の垣根を越えた取り組みである。
http://booklive.co.jp/release/2014/09/261100.html

ドワンゴ電子書籍を強化するためNagisaWorksから電子書籍アプリ「i文庫」を取得した。
http://ascii.jp/elem/000/000/937/937009/?new
日本最大級の読書コミュニティー「読書メーター」を運営するトリスタの全株式も17億円で取得。完全子会社化する。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1409/26/news148.html

ハースト婦人画報社は、女性ファッション誌「エル・ジャポン」の創刊25周年を記念して、同誌11月号の特別版を1万部発行している。特別版は表紙にゴールド箔を採用するほか、通常版の内容に加えてフランス版「ELLE」の歴史を52ページにわたって紹介している。通常版690円、特別版780円。
http://kirei.mainichi.jp/kireinews/news/20140925dog00m100035000c.html

◎NTT ソルマーレが提供する「コミックシーモア」は、KADOKAWA と連携し、9月27日より20,409冊の配信を開始した。配信開始を記念し、9月30日まで「KADOKAWA作品2万冊全巻半額キャンペーン」をシーモア10周年第11弾キャンペーンとして実施している。
http://www.nttsolmare.com/press/2014/0926.html

カネボウ化粧品は美白化粧品の被害者を「地雷原」と一部の支社で表現していた。被害者に対する人間としての想像力を欠如した侮辱だ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014092702000131.html

                                                                                                                        • -

4)【深夜の誌人語録】

過程を経て結果に至るのではなく、過程そのものが結果だと言えるし、結果もまた過程にしか過ぎないとも言えるだろう。