【文徒】2014年(平成26)10月29日(第2巻204号・通巻406号)

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1)【記事】講談社が雑誌の未来に向けて一歩踏み出した!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】講談社が雑誌の未来に向けて一歩踏み出した!

ここ数年、講談社の雑誌にかかわる発表会で驚かされることはまずなかった。「グラツィア」「グラマラス」の休刊というように悪い意味で驚かされることはあっても、胸を躍らせるという意味で驚かされたのは、いつが最後であったろうか。
しかし、昨日の「新規事業発表会」は違った。もちろん、そのひとつひとつが成功するとは限らないにしても、私は久しぶりにワクワクした気分にさせてもらったように思う。誤解を恐れずに言えば、講談社は私が「文徒」で主張してきたことを次々に実現しようとしているではないか!
電車に乗ればわかることだが、雑誌や新聞を読んでいる乗客は、もはや少数派である。圧倒的多数の乗客の視線はスマホに釘付けになっている。これは電車に限ってのことではあるまい。オフィスでも自宅でも暇が出来ればスマホに首ったけという現実に出版社は向き合わなければなるまい。スマホを占拠することなしに雑誌に未来はないのである。
この場合、紙の派生物としてデジタルがあるのではない。紙と同等以上のクオリティがなければ、スマホを雑誌文化が占拠することはできないのである。当然、デジタルファーストであっても良いわけだ。デジタルファーストでウエブマガジンを立ち上げ、月間100万単位のPVを獲得し、そこから紙へ、イベントへというように多様にして、立体的なメディア戦略に出版社は挑戦すべきなのだ。これに講談社は応えた。この日、講談社はデジタルファーストのウエブマガジンを二つ発表した。
一つは40代男性をターゲットにした「FORZA STYLE」であり、一つは40代女性をターゲットにした「ミモレ」である。しかも、この二つのプロジェクトにおいて講談社は編集長を社外の人材に求めた。「FORZA STYLE」の干場義雅編集長は「レオン」や「オーシャンズ」の創刊にかかわった人物であり、講談社にとっては初めての社外編集長となる。「FORZA STYLE」は動画を駆使したデジタルビデオマガジンであることも話題の一つだ。干場自身もいわばキャスターとして登場する。
一方、「ミモレ」の大草直子編集長もハースト婦人画報社出身で講談社の「グラツィア」にはフリーでかかわったキャリアを持ち、個人ブログは月間180万PVを数えるカリスマ40代である。ともにフリーで揉まれてきただけのことはあり、キャラクターも立っている。
昨日、講談社が発表したのは、このデジタルファーストの二つの事業だけではなかった。
集英社朝日新聞社と組んで「T JAPAN」を創刊するのであれば、講談社日本経済新聞社と組んで女性ファッション誌「THE NIKKEI MAGAZINE STYLE Ai」を来年3月に創刊することになった。この反射神経の良さを私は評価したい。B4タブロイド判、オール4色、中綴じ、左開き、32〜38頁で、60万部(首都圏50万部 関西圏10万部)で、コンテンツ制作を講談社が手がけ、デリバリーを日本経済新聞社が担う(日本経済新聞の第4日曜版に折り込む)。初年度は6〜8回の刊行となり、2016年には10〜12回の刊行を予定する。広告は講談社と日経の共同セールスとなる。編集長は元「グラマラス」編集長の藤谷英志。
また既刊3号が好調なハイエイジ向け女性誌「おとなスタイル」はデジタル展開をスタートさせ、来年からは季刊誌として創刊される。もともとはNHKと連動した企画であったが、デジタル+季刊誌として独自に歩みはじめるというわけだ。
これで終わりかといえば、まだあった。講談社女性誌は現在、「ViVi」「with」「ヴォーチェ」「フラウ」と4誌あるが、紙版を買うとデジタル版も手に入るというサービスを始めるというのだ。
講談社が「雑誌の未来」に向けて一歩前に踏み出したことを印象づける発表会であった。次なる課題は、いかに「少年ジャンプ+」に対抗するか、だ。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40869
http://hrm-home.com/blog/

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2)【本日の一行情報】

◎「WIRED」が指摘するアマゾンのFire Phoneが失敗した理由。
「何より打撃を与えたのは提供した商品に対して高値をつけすぎたこと」
iPhoneやその他同価格帯のアンドロイド端末と比べるともろく、安っぽさも感じてしまう」
http://wired.jp/2014/10/26/fire-phone-a-failure/

◎「圧倒的にいちばん速く覚えられる英単語アプリ」が無料でリリースされた。私は「でる単」(シケ単)とも呼ばれた青春出版社の「試験にでる英単語」世代だが、こうした実用書は紙ではなく、デジタルへと移行していくのだろう。デジタルによって「出版」の概念が拡張されるということである。
http://jp.techcrunch.com/2014/10/27/english-vocabulary-learning-app-mikan-released/
年内に100万ダウンロードを目指すというが、マネタイズは、どうするのだろうか。無料でリリースするとなると、広告収入は欠かせまい。
http://thestartup.jp/?p=13031

◎「月刊スピリッツ」「サンデーS」「ぷっちぐみ」「ちゃおDXホラー」「増刊flowers」など小学館の複数のマンガ誌で、中川いさみのキャラクターを擬人化した「ネッコロ」を掲載中だが、小学館史上一番のキワモノ番組「ネッコロTV〜ネッコロがってみて根〜」として11月5日より毎週水曜日25時から5分間、TOKYO MXにおいて放送を開始する。
http://www.nekkoro.jp/blog/2014/10/post-68.html

◎「VOGUE JAPAN」12月号の附録はCOACHのカバー付きスペシャル・メモパッド。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000170.000000930.html
外資系出版社はABC公査を無視。それでも広告が入ってしまう。本国ではABC公査を受けているにもかかわらず、だ。日本の広告業界が舐められていると誰も感じないのだろうか。

◎これ最高!「ダイヤモンドオンライン」の原英次郎編集長が「変身」(=チェンジ)。女装というとハードルが高いけれど、「変身」ならば大丈夫ってわけ。昔の「エリザベス」のような隠微さはない。編集長が「最前線」に立つというのは、見ていて気持ちがよい。編集長は黒子なんて言っていないで読者(=ユーザー)の前に自らを積極的に晒さないと駄目だと思う。編集長もまた読者の共感を獲得すべき「キャラクター」なのである。
http://diamond.jp/articles/-/61104
トランスヴェスタイト(異性装)に関しては、渡辺恒夫の「脱男性の時代 アンドロジナスをめざす文明学」や「トランス・ジェンダーの文化 異世界へ越境する知」を読んでおきたい。
http://www.keisoshobo.co.jp/book/b181972.html
http://www.keisoshobo.co.jp/book/b181924.html

◎私たちの世代にとってウォークマンは商品名というよりも、固有名に近かった。生誕35年を迎え「ウォークマンぴあ」が刊行される。
http://www.musicman-net.com/artist/41030.html
かつてソニーは光輝いていたものなあ。哲学者の風貌を思わせる猿がウォークマンを聞くCMは傑作だった。
https://www.youtube.com/watch?v=IKzNIP1x1R4

◎日経によれば「雑誌広告はタイアップ広告が好調だった前年同月の反動で前月のプラスからマイナスに転じた」。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL27H1R_X21C14A0000000/

資生堂の「25歳〜39歳の有職女性で美容・ファッションの情報感度が高い人を対象にインターネットで行われた」調査によれば「女性らしく上品になりたいと思う女性が急増! いまの女性たちの理想は、『カワイイ』では満たされないみたい」ということになる。
http://news.mynavi.jp/news/2014/10/27/182/

◎元「AKB48」の女優・光宗薫が、小学館の女性ファッション誌「Oggi」12月号でモデルとしてデビューした。
http://www.asahi.com/and_w/interest/entertainment/CORI2043807.html

博報堂DYメディアパートナーズから発表された「アスリートイメージ評価調査」で好感がもてるアスリートのトップは錦織圭。2位が卓球の石川佳純、3位がレスリングの吉田沙保里、4位がイチロー。国内の活躍だけでは好感度が上がらない時代である。
http://www.hakuhodody-media.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2014/10/HDYmpnews20141027.pdf

松下幸之助の「道をひらく」(PHP研究所)が累計511万部となり、戦後ベストセラーの第2位になったそうだが、私は読んだこともないし、これからも読まないような気がするなあ。第1位は黒柳徹子の「窓ぎわのトットちゃん」で約581万部。
http://www.yomiuri.co.jp/culture/20141027-OYT1T50103.html

千代田区立図書館で「平凡社100周年『別冊太陽』展-日本の文化を創った100人-」が開催されている。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1410/27/news122.html
http://100th.heibonsha.co.jp/history.html
創業者・下中弥三郎の人生は波乱に富んでいて面白いんだよな。「説教強盗事件」に際しては、犯人を捕まえたならば懸賞金を出すという新聞広告を出したのも下中だし、もともとは石川三四郎と親しかったのだが、最終的には国家社会主義者になっていくんだよね。

◎米アマゾンはネットフリックスに対抗すべくコメディ配信サービスを手がけるルーフトップ・メディアを買収する。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0IG21A20141027
また、米アマゾンはテレビに差すと動画を受信できるスティック型端末を発売するが、これはグーグルに対抗するためだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM28H0H_Y4A021C1EAF000/
ともに投資家対策でもあるんだろうなあ。

◎ 「幻冬舎プラス」で連載されている中村淳彦の「ルポ中年童貞」が面白い。ネトウヨには中年童貞が多いらしいことも、私は中村の連載で知った。
http://www.gentosha.jp/articles/-/2749

◎ネコ・パブリッシングが刊行するビーチライフスタイル誌「HONEY」が来春より季刊誌となる。
http://news.mynavi.jp/news/2014/10/27/386/

◎マガジンハウスから刊行された、まきりえこの4コママンガ「男子のトリセツ2」が面白いそうだ。男子をダンスィ、女子をジョスイと言うんだって!ブログ発の企画である。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1410/28/news062.html

◎カーリルは公立図書館が提供する電子書籍サービスとの連携を開始したというが、カーリルが調査した「図書館が提供する電子書籍3万8547タイトルの出版社別比率で、「All About」の記事コンテンツが全体の46.7%を占めている」情況は最低である。
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20141027_673199.html

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3)【深夜の誌人語録】

「耐えて、耐えて、耐えて」が基本だ。耐えることは爆発力を高めるのだから。