【文徒】2015年(平成27)1月22日(第3巻13号・通巻458号)

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1)【記事】池内恵に耳を傾ける
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】池内恵に耳を傾ける

池内恵はブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」で次のように書いている。
「『イスラーム国』側の宣伝に無意識に乗り、『安倍政権批判』という政治目的のために、あたかも日本が政策変更を行っているかのように論じ、それが故にテロを誘発したと主張して、結果的にテロを正当化する議論が日本側に出てくるならば、少なくともそれがテロの暴力を政治目的に利用した議論だということは周知されなければならない」
http://chutoislam.blog.fc2.com/blog-entry-258.html
フェイスブック(閲覧にはログインが必要)でも次のように書いている。
「大原則としてこれぐらいは共有したいものです。テロの暴力と威嚇を背景に自論を展開しようとする人が日本社会に極めて多いことはシャルリー・エブド紙事件の際に明らかになりました。
左翼反米派だけでなく、右翼・民族派を含めて、イスラーム主義の暴力を、反政府や反欧米であれば正当なものとみなす思潮が、行き詰まった日本社会に充満している。『欧米の支配は終わろうとしている、バスに乗り遅れるな』と言って致命的な選択ミスを犯した戦前の愚を繰り返してはならない」
https://www.facebook.com/satoshi.ikeuchi
池内は「イスラーム国の衝撃」(文春新書)を刊行したばかりである。そこでは、こう書いている。
「神の啓示による絶対的な規範の優越性を主張する宗教的政治思想の唱導は、自由社会においてどの範囲まで許され、どこからは許されないのか。日本の法執行機関と市民社会のそれぞれが、確固とした基準を示しておく必要がある。『イスラーム国』への対処は、日本の自由主義体制と市民社会の成熟度を問う試金石となるだろう」
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166610136

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2)【本日の一行情報】

◎90年代の「週刊少年マガジン」を支えていた作品の一本に大島司の「シュート!」がある。少女マンガのセンスを隠し味にした熱血サッカー漫画であった。大島司と男性名を名乗っているが、実は女性。その後、「コミックバンチ」でバレーボールをテーマに「アタック!!」の連載を始めるが、未完で終わっている。そんな「アタック!!」が2月3日発売の「漫画アクション」(双葉社)4号で約5年ぶりに再開されることになった。
http://mantan-web.jp/2015/01/20/20150119dog00m200033000c.html

◎男性タレントの単独起用は99年8月号のKinKi Kids以来、男性の欧米男性アーティストの単独起用となると創刊以来初めてのことになるという。2月下旬から日本ツアーを開始するワン・ダイレクションが講談社の女性ファッション誌「ViVi」3月号の表紙を飾ることになった。NTTドコモ「U25応援計画」のテレビCMにも出ているよ。
http://mdpr.jp/international/detail/1461595

◎殺された「シャルリ・エブド」元編集長で風刺画家ステファン・シャルボニエは、90年代に子供向け新聞「モン・コティディアン」で仕事をしていた。小林恭子が発行元の「Play Bac」を訪ねてのレポートだ。ここで働く風刺画家による「銃弾が風刺文化を殺した」という発言が印象的である。
http://toyokeizai.net/articles/-/58416

ラノベを卒業した大人をターゲットにしている「メディアワークス文庫」。浅葉なつの「神様の御用人」が3巻で50万部を突破したそうだ。
http://ir.kadokawa.co.jp/topics/20150119_c12ov.pdf

◎オトバンクの運営する書籍紹介サイト「新刊JP」は1月23日、同サイトから無料で視聴できるラジオ番組「ASUKAと優月心菜の『あすからココナッツ書店』(営業中)」をスタートする。更新日は毎週金曜17時。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1501/20/news083.html
こういうサイトもあって良いだろうけれど。私には無縁な世界が繰り広げられている。

◎新潮ジャーナリズムは新潮新書にも脈打っている。「沖縄の不都合な真実」(大久保潤 篠原章)が切り取った現実の断面から目を背けてはなるまい。
http://www.shinchosha.co.jp/book/610601/
大久保は日経記者。「幻想の島 沖縄」も読んでおこう。
http://www.nikkeibookvideo.com/item-detail/16707/
篠原は「ハイサイ沖縄読本」の編著者。「日本ロック雑誌クロニクル」の著者でもある。
http://book.asahi.com/author/TKY200503110274.html

◎「ジョジョの奇妙な冒険」のフェイスパックが発売される!
http://withnews.jp/article/f0150120002qq000000000000000W00o0701qq000011405A

◎日本ブランド戦略研究所による企業情報サイトランキングが発表された。1位「サントリー」、2位「キリン」、3位「トヨタ自動車」、4位「サッポロビール」、5位「カルビー」、6位「アサヒビール」、7位「伊藤園」、7位「日本ハム」、9位「資生堂」、10位「ヤクルト本社」、10位「富士フィルム」。
http://japanbrand.jp/ranking/cc-ranking/cc2014-1.html

トーハンは、「ブクブク交換に学ぶ! 体感する書店イベント実践セミナー」を2月23日(月)にトーハン本社で開催する。「ブクブク交換」とは本と名刺の交換会。
http://www.tohan.jp/whatsnew/news/post_367/

紀伊國屋書店新宿本店で日本財団主催「THINK NOW ハンセン病―グローバル・アピール2015」の一環としてフェア「高山文彦が選ぶ『ハンセン病』を考えるための本」が開催されている。北條民雄の代表作「いのちの初夜」(勉誠出版)を特別重版して販売している。
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-Main-Store/20150119224006.html

◎「2015年本屋大賞」のノミネート10作品が発表された。
アイネクライネナハトムジーク」(伊坂幸太郎 幻冬舎
「怒り(上下)」(吉田修一 中央公論新社
「億男」(川村元気 マガジンハウス)
「キャプテンサンダーボルト」(阿部和重伊坂幸太郎 文藝春秋
サラバ!(上下)」(西加奈子 小学館
「鹿の王(上下)」(上橋菜穂子 KADOKAWA
「土漠の花」(月村了衛 幻冬舎
ハケンアニメ!」(辻村深月 マガジンハウス)
本屋さんのダイアナ」(柚木麻子 新潮社)
「満願」(米澤穂信 新潮社)
講談社からのノミネートがゼロである。新潮社、幻冬舎から2作品がノミネートされていても別に驚かないが、マガジンハウスから2作品というのは驚きである。直木賞を受賞していなければ「サラバ!」が最有力候補ということになるんだけどなあ。「本屋さんのダイアナ」か、「キャプテンサンダーボルト」なんでしょ。
http://www.hontai.or.jp/
個人的な意見を言わせてもらえば、私は本屋大賞がどうしても好きになれない。

◎代官山蔦谷書店の旅行書売場でコンシェルジュをつとめていた森本剛史が亡くなったのは2014年9月22日。ダイヤモンド・ビッグ社前社長で「地球の歩き方」元編集長の西川敏晴が追悼文を書いている。
「『地球の歩き方』では、旅行雑誌『トラベル・フロンティア』創刊号で南イタリアとマルタ取材を森本氏に依頼した。彼が好きだった映画『ニュー・シネマ・パラダイス』の舞台であるシチリアのパラッツォ・アドリアーノの取材や、当時覆面作家であった『燃える男』などを書いたA・Jクイネルにコゾ島で会いインタビューをする機会を得て、マルタ共和国は彼の大好きな旅先となったようだ」
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=65339
マルタ共和国は本当に素晴らしい。

金子みすゞの実家の書店「金子文英堂」から営業権を買って開店したのが木村聖文堂。近くの「金子みすゞ記念館」では、本屋「金子文英堂」が2階の「みすゞの部屋」を含め復元されているそうだ。
http://mainichi.jp/journalism/listening/news/20150121org00m040006000c.html

大阪ステーションシティノースゲートビルディング西館の商業施設「LUCUA 1100(ルクア イーレ)」は4月2日のオープンだが、「梅田 蔦屋書店」が入居する。
http://www.zaikei.co.jp/article/20150120/231634.html
http://umeda.tsite.jp/

◎「ビッグコミックスピリッツ」で連載中だった曽田正人の「テンプリズム」が小学館とエイト・ソーシャルウェアが共同で運営する小学館公式電子書籍販売サイト「コミック小学館ブックス」に完全移籍することになった。これまでの1話〜31話を2月2日まで無料公開している。
http://csbs.shogakukan.co.jp/serial/?id=tenth-prism
http://csbs.shogakukan.co.jp/

◎「なかよし60周年名作総選挙」のネット投票受付が1月20日にスタートした。
http://nakayosi60.com/special.html

◎「一迅社文庫アイリス」と小説投稿サイト「小説家になろう」が、第一回「一迅社文庫アイリス 恋愛ファンタジー大賞」を開催。
http://www.ichijinsha.co.jp/special/iris/renaif_award/

三洋堂書店上前津店がマスコットキャラクターを募集している。
http://www.sanyodo.co.jp/contest/

東京外国語大学教授の伊勢崎賢治が次のようにツイートしている。
イスラム国邦人拘束。毎日から電話取材。個人が危ないところに行き、国に迷惑をかけるのはどう思うかと。社の責任で人を送らない大手メディアが何も言える立場にないと言っておいたが、書かないだろうな」
https://twitter.com/isezakikenji/status/557454807175135233

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3)【深夜の誌人語録】

成功こそ失敗の素である。どんな成功も忘れるが勝ちである。