【文徒】2015年(平成27)3月24日(第3巻55号・通巻500号)
Index------------------------------------------------------
1)【記事】オレンジページ 小倉厚子社長が退任
2)【記事】中島岳志の「下中彌三郎 アジア主義から世界連邦運動へ」を読もう!
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- 2015.3.24 Shuppanjin
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
1)【記事】オレンジページ 小倉厚子社長が退任
オレンジページの小倉厚子社長の退任が決まった。
予兆はあった。オレンジページからすれば経営の生命線にしていた3月に開催が予定されていた基本方針確認会が流れたのである。
周知のようにオレンジページはJR東日本の連結子会社だが、JR東日本としては、オレンジページとの連動もうまくはいかず、最近では売却も想定していた。しかし、そう簡単に買い手は現れなかった。何しろクックパッドとの競合に敗れたオレンジページの経営は悪化の一途をたどる。デジタル戦略はオレンジページにとって急務の課題であったが、小倉はこの方面に全く疎いことも、オレンジページ規模の会社では致命的ではなかったのではないだろうか。トライバルメディアハウスと組んで、読者と企業・社会をつなぐ共創コミュニティサイト「オレンジページサロンWEB by くらし予報」の立ち上げに尽力したのは姜明子常務だと言われている。
消息筋によれば、JR東日本サイドは小倉にリストラを強く求めたこともあったそうだ。リストラとなれば、販売といった小倉の出身母胎が真っ先に対象になることから、小倉はJR東日本とオレンジページの板挟みとなってしまったというわけだ。もちろん、これまでリストラを一切して来なかったのは、小倉の腕力ゆえのことであったろう。ただ今回、小倉から退任を申し出たか、JR東日本が退任を迫ったかは別にして、小倉が社長として機能しなくなったのは言うまでもない。
4月1日付で社長に就任するのは和田俊文。2009年にJR東日本の非運輸部門の関連会社で続々と40代の社長が誕生し、話題になったことがあるが、平成2年入社の和田もその一人である。和田は事業創造本部系の人材であり、このときメトロポリタンホテル長野の社長に就任する。和田は現在、事業創造本部事業推進部門次長だ。いずれにしても、姜明子常務よりも、若い社長が誕生するわけだ。
JR東日本がオレンジページに送り込むのは、社長だけではないようだ。販売と財務にも人材を送り込むそうだ。和田新社長によって小倉色が一掃される大手術が行われるのだろう。オレンジページの編集や広告の現場の一部からは「これでスッキリとした」という声も出ているようだ。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
2)【記事】中島岳志の「下中彌三郎 アジア主義から世界連邦運動へ」を読もう!
中島岳志の「下中彌三郎 アジア主義から世界連邦運動へ」が平凡社から刊行された。言うまでもなく、下中彌三郎は平凡社の創業者である。本書は、平凡社創業100周年記念出版と銘打たれている。下中は平凡社を創業し、百科事典を刊行したことで知られている。平凡社は100周年に当たり、下中彌三郎伝の執筆を中島岳志に依頼したということだ。
これは悪い選択ではない。「中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義」「朝日平吾の鬱屈」「血盟団事件」「アジア主義 その先の近代へ」といった著作を通して、アジア主義や超国家主義にアプローチしてきた中島であれば、大正デモクラシーの余熱のなかで社会主義的労働論や自由主義的教育論を「平民新聞」などで論じながらも、戦前・戦中期において、農本主義的アナーキズム、アジア主義、超国家主義へと自らの思想を性急に昇華させていった下中の実像に肉薄できるはずである。
むろん、下中は超国家主義にとどまるのではなく、戦後になってからも世界連邦主義、非武装中立論、絶対平和主義へと目まぐるしいほどに自らの主張を変えていくことになる。岸信介に寄り添い、岸信介に裏切られるのも戦後のことである。まさに下中は「エタイの知れぬ怪物である」(大宅壮一)である。
しかし、中島は「もし同時代に生きていたら、私は下中を繰り返し批判しただろうと思う」と書き、本書は下中の伝記でありながらも、愛をもって下中を退けると冒頭の「はじめに」で宣言しているではないか。中島にとって「愛をもって下中を退ける」とは、下中の主張の激しい振幅の底流に横たわる理想の一貫性を発掘することであったに違いない。下中の理想を「八紘一宇」や「一君万民」という言葉で表象しても良いかもしれない。中島が愛をもって下中を退ける理由は、そこにあるのだろう。
ところで、私が下中彌三郎に出会うのは、「三角寛『サンカ小説』の誕生」を書いている過程においてである。より正確に言えば、三角は朝日新聞記者として「説教強盗」事件の取材に奔走するが、この「説教強盗」事件について調べているときである。下中が創業した平凡社は昭和4年1月18日付の東京朝日新聞に説教強盗に自首を勧める広告を掲載しているのだ。
「『説教強盗』に告ぐ!君の出現に依って東京市民は一種の恐怖病に襲われている。君も亦現在の悪業が長く続くものではあるまい。
即時自首して出よ。此の広告発表後一週間内に自首すれば実際君の言う如く家族が困窮していれば、実情調査の上、家族に一千円を進呈しよう」
平凡社が円本ブームに乗り、「現代大衆文学全集」や「世界美術全集」で大当たりをとっていたときの広告だけに読者の喝采を呼んだことは間違いない。市井の人々は、「説教強盗」を怖れながらも、賞賛していたに違いなく、そうした民衆感情を平凡社の広告は見事に掬い上げているのである。
現在、私は船戸与一の「満州国演義」が第9巻「残夢の骸」で完結したこともあって、第1巻「風の払暁」から改めて読み返しているが、「風の払暁」には、こんな記述がある。
「帝国議会は相変わらず満州某重大事件をめぐって紛糾しつづけている。軍中央が憲兵司令官・峯幸松を特派して調査させ、田中義一内閣も真相究明のために動いたが、すべては曖昧なまま推移しているのだ。そこを民政党の中野正剛が舌鋒鋭く突きはじめた。張作霖爆殺が関東軍の謀略だったことはもう隠しようもない。
ただ、それよりも世間の耳目を集めたのは説教強盗・妻木松吉の逮捕で、号外も出た。狙った家々に忍び込み部屋の電球を取り除くと、家主の枕もとに座り込んで煙草を喫いだす。家主が気配に目醒めると延々と説教をはじめるのだ。戸締りの方法や番犬の選びかた。これらが講義され、悠々と立ち去っていくのだ。犯行の手口から漂泊しつつ生計を立てる山窩出身者に容疑が絞り込まれ、西巣鴨に住む妻木松吉が逮捕されたのだが、世間ではむしろ犯人賞賛の声のほうが強かった」
http://www.heibonsha.co.jp/book/b193646.html
出版にかかわる仕事を多少なりともしていると自分で思っているのであれば、「下中彌三郎 アジア主義から世界連邦運動へ」は読んでおきたい。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
3)【本日の一行情報】
◎北海道新聞によれば、札幌市の「くすみ書房」(厚別区大谷地東)は、1600冊の古書を販売するコーナーを店内に設けた。
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/area/sapporo/1-0113804.html
◎大日本印刷は、独自の価値観を持つキュレーターのお薦め情報に基づいて、生活者が自分にぴったりの本やモノと出会える「DNPキュレーション型ECリンクサービス MEETTY(ミーティー)」を開始した。
http://www.dnp.co.jp/news/10108697_2482.html
https://meetty.jp/shelf/list?mode=new
◎新幹線がロボットに変形して活躍する新キャラクター「新幹線変形ロボ シンカリオン」は、JR東日本企画、小学館集英社プロダクション、タカラトミーの3社が手を組んで誕生させた。
http://tokyo-anime-news.jp/?p=31205
◎徳間書店から「松陰の妹を妻にした男の明治維新」を上梓した富沢秀機はテレビ大阪元社長にして日経新聞元常務。
http://www.sankei.com/region/news/150321/rgn1503210056-n1.html
◎イオンは学研とコラボしたイオンモバイルブランドの子供向けタブレット「学研がんばるタブレット」を発売する。
http://www.aeonretail.jp/pdf/150319R_2.pdf
◎「東京創元社 2015年新刊ラインナップ説明会」が、4月20日(月)に開催されるが、今年も一般読者を招待するそうだ。
http://www.tsogen.co.jp/news/2015/03/15031015.html
◎サントリチューハイ「ほろよい」は、夏にオンエア予定のTV-CMに出演する「6人目のキャラクター」を募集するオーディションを実施している。応募に必要なのは"「ほろよい」とともに、ここちよく過ごす自分のセルフィー(自分撮り写真)"で良いのだそうだ。当然、ツィッター、インスタグラムで応募できる。
http://www.horoyoi-cp.com/horoyoitachi/pc/audition.html
◎「2015ヤンマガ専属!AKB48グループグラビアモデルオーディション」の「投票専用ハガキ」付の「週刊ヤングマガジン」がファンの買い占めにあって、本来の読者が買えなかったという話がネットに溢れかえっていたが、オレ、買えたよ。もちろん、通常号よりは売れたのは間違いないけれど、それほど大騒ぎするほどのことじゃないんじゃないの。
http://news.livedoor.com/article/detail/9914434/
◎オンデマンドのオリジナルグッズ制作販売を手掛けるイメージ・マジックが、文藝春秋が発行する雑誌「Number」とコラボ。「オリジナルプリント.jp×Number」オリジナルグッズサイト iPhoneアプリ版をリリースした。
要するに、iPhoneでアプリの「Number」表紙テンプレートに自分たちの写真などをはめ込んでオリジナルの表紙を作り、その絵柄を印刷したリングノートやマグカップ、Tシャツなどのグッズをアプリから注文できる、ということだ。
http://www.atpress.ne.jp/view/58998
◎『Mart』の大給近憲編集長が「東洋経済オンライン」のインタビューに答えて、次のように語っている。
「これだけネットが身近な時代になりましたが、でもいったい、誰が本当に自分の味方になってくれるのか。『あなたはそれでいい』というふうに言ってくれるのは、必ずしもネットではないのかもしれない。そこに雑誌の役割があるのではないかと思っているんです」
http://toyokeizai.net/articles/-/63906
誰だって本当の味方は欲しい。問題なのは、雑誌が読者にとって「本当の味方」の役割を果たし切っていないことだと私は考えている。仮にその雑誌が「本当の味方」だったとして一か月に一度しか目の前に現れないようでは、それは読者にとって頼りない存在なのではないか。女性誌は最低でも「雑誌+ネット+リアル体験」の三位一体をもっともっと深める必要があるというのが私の持論だ。
◎AnimeJapan 2015に電通が出展していたのか。
http://animeanime.jp/article/2015/03/21/22441.html
http://www.animate.tv/news/details.php?id=1426925208
◎「Time Out」シカゴ版が「ギャング映画のベスト50」を発表した。
1.「ゴッドファーザー」(1972) 2.「現金に体を張れ」(1956) 3.「レザボア・ドッグス」(1992) 4.「グッドフェローズ」(1990) 5.「ミーン・ストリート」(1973) 6.「俺たちに明日はない」(1967) 7.「ゴッドファーザーPARTII」(1974) 8.「ミラーズ・クロッシング」(1990) 9.「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(1984) 10.「セクシー・ビースト」(2000) 11.「殺しの烙印」(1967) 12.「パルプ・フィクション」(1994) 13.「ゴモラ」(2008) 14.「イースタン・プロミス」(2007) 15.「街の野獣(1950)」 16.「男の争い」(1955) 17.「いぬ」(1963) 18.「ヒストリー・オブ・バイオレンス」(2005) 19.「長く熱い週末」(1980) 20.「乾いた花」(1964)
鈴木清順の「殺しの烙印」と篠田正浩の「乾いた花」がベスト20に入ったのが嬉しい。メルヴィルの「いぬ」が入っているのも嬉しい。イギリス映画の「長く熱い週末」は私も未見だ。
http://eiga.com/news/20150322/6/
◎大手コンビニエンスストア10社の2月の既存店売上高は、11か月連続で減少。煙草と雑誌が売れないのが原因。私は煙草も雑誌も好きなのだけれど。
http://www.asahi.com/articles/ASH3N5DN7H3NULFA02P.html
◎チュニジアの博物館襲撃テロで負傷した陸上自衛隊3等陸佐(医官)の女性が手記を発表した。そのなかで次のように語っている。
「…部屋の前で「取材をさせてください。あなたに断る権利はない」と日本語で怒鳴っている声が聞こえ、ショックでしたが、それは私にではなく、大使館の方に言っているようでした。大使館の方は、『朝日新聞の記者の方がインタビューをさせてほしいと言っているが、受ける必要はない。体調も良くないし、インタビューがどう使われるかわからないし、あなたには断る権利があります』と言われました。今まで、義務だと思いインタビューを受けていたので、涙が出るほどうれしかったです」
http://www.sankei.com/affairs/news/150323/afr1503230002-n1.html
朝日新聞国際報道部長・石合力は朝日新聞ならびに朝日新聞デジタルのホームページに「取材の経緯、説明します」を発表した。
「今回、記者は医師の了解を得るなどの手続きを踏みました。大使館員とのやりとりについて、記者には大声を出したつもりはありませんでしたが、手記の中で「どなっている声が聞こえ、ショックでした」と記されていることを重く受け止め、結城さんにおわびします」
http://www.asahi.com/articles/ASH3Q5TKDH3QUHBI014.html
◎岡田斗司夫から「枕営業教唆」を受けたというイラストレーターの女性が「岡田斗司夫氏の悪どい手口が広まり、大阪芸大・吉本興業から解雇され傷つく若い女性が一人でも減る事を望」み、岡田の手口をマンガで公開した。
https://twitter.com/miniko_09/status/579301613153587200
https://twitter.com/miniko_09/status/579301801284890624
https://twitter.com/miniko_09/status/579302368774213632
https://twitter.com/miniko_09/status/579302718415601665
これ(10)までつづくんです。おっと、まとめがある。
http://cureco.jp/view/275/
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
4)【深夜の誌人語録】
できないことはできないとハッキリ言う勇気も必要である。