【文徒】2015年(平成27)3月25日(第3巻56号・通巻501号)

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1)【記事】日販の4月1日付組織改訂について
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.3.25 Shuppanjin

1)【記事】日販の4月1日付組織改訂について

日販が4月1日付で組織改訂を行う。
(1)営業推進室にリノベーショングループを新設。
個人の顧客を指す「個客」の購買意欲を高めるべく、書店により感情的な価値を生み出す「新空間」を創りだしていく。リノベーショングループは、書店空間のデザイン、プロデュース、店舗の運営・指導から業態開発に至るまでを担う。
(2)CRM事業部の組織ミッションを再定義し、CRM推進部と改称する。
Honya Club会員・加盟店のみならず、あらゆる個客・書店をターゲットに売上アップ・サービスアップを目指す。リノベーショングループが創り出す「新空間」と「個客」をつなげるために、様々な個客接点を創り、広げていく。まずは、スマートフォンを軸としたインフラを構築し、情報発信からイベントの展開まで、書店の利益につながる仕掛けづくりに取り組む。
(3)マーケティング本部の書籍部・雑誌部を廃止し、流通改革推進グループ・販売企画グループ・仕入部を置く。
「流通改革推進グループ」
買切スキームの構築、時限再販の拡大、「PPI」といった利益指標に基づいた優先販売を軸に、出版流通の変革に挑戦する。変革とは、書店マージンの還元目標を達成し、かつ書籍で儲かる業界構造を創っていくことを指す。
「販売企画グループ」
「新空間の創造」や取引先の業態変化に伴い、店頭は商材の垣根を超えたシームレスな売場に変わることを踏まえ、売場起点でMD機能を一元化していくことを目的に、新設した組織である。店舗・売場の魅力を高める、書籍・雑誌の垣根を超えた商品企画を提案していく。配下に、MDチーム、コミックチーム、ムックチーム、実用書チームを置く。
仕入部」
仕入・配本機能の統合・整理を進めていく。このプロセスに対応して、商材ではなく、「仕入」という概念を上位に引き上げるため仕入部を新設した。配下に、書籍・雑誌という商材単位の組織を置く。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0CCAQFjAA&url=https%3A%2F%2Fwww.nippan.co.jp%2Fnews%2F%25E6%2597%25A5%25E8%25B2%25A9%25E3%2580%2580%25E7%25AC%25AC68%25E6%259C%259F%25E7%25B5%2584%25E7%25B9%2594%25E6%2594%25B9%25E8%25A8%2582%25E5%258F%258A%25E3%2581%25B3%25E8%2581%25B7%25E5%2588%25B6%25E4%25BA%25BA%25E4%25BA%258B%25E4%25BD%2593%25E5%2588%25B6%25E3%2581%25AB%25E3%2581%25A4%25E3%2581%2584%25E3%2581%25A6%2F&ei=CsAQVe_qH5Pz8gWpmYKYCQ&usg=AFQjCNHgusHiHckyvJpvch2o_i1ZE6gs_A&sig2=X2-FqAprWINI21S48rJvzw
こういう組織改訂は象徴的にいえばCCCにとっては歓迎すべき追い風となるだろうし、一方で「街の書店」の経営を圧迫することにも繋がるのだろう。
再販制度に守られてきた中小零細出版社にとっても逆風だろう。日販の主張する「買切スキームの構築、時限再販の拡大」という提案には決して応じられまい。
書店はリノベーショングループの提案に安易に乗って、破綻に追い込まれることがないように願っている。専業書店から兼業書店に変わるのは、歴史の必然だとしても、どのように変わるかは、それぞれの書店の特性を踏まえ、書店自らが判断する必要があるのだ。

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2)【本日の一行情報】

◎本当に久しぶりに岩波新書を手に取った。最相葉月の「ナグネ 中国朝鮮族の友と日本」だ。1999年、最相が「絶対音感」を刊行した翌年に西武新宿線の駅で偶然知り合った中国朝鮮族の女性との16年に及ぶ交流を描いている。中国政府が今も弾圧し続ける地下教会で生まれ育った女性である。
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/

◎「SmartNews」(スマートニュース)は、マガジンハウスが提供する「マガジンハウスチャンネル」を開設した。「マガジンハウスチャンネル」は、女性誌「anan」の一部の記事やオリジナルコンテンツを配信する「ananニュース」、「anan総研」のコンテンツ、Webマガジン「コロカル」のコンテンツを配信する。
http://about.smartnews.com/ja/2015/03/23/0323/
雑誌は、どんな手段を使っても良いからスマホを占拠せよ!というのが私の持論である。

小学館が誇るラノベと言えば、愛称「俺ガイル」こと「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」(渡航 ガガガ文庫)だが、「千葉モノレール」とのコラボし、ゴールデンウィークから「俺ガイル」のラッピングモノレールが運行するそうだ。テレビアニメ第二期も4月より放映される。千葉が舞台なんだよね。そうオレは生まれも育ちも千葉である。
http://www.animate.tv/news/details.php?id=1426948622

◎渡辺望の「石原莞爾」(言視舎)は、石原を里見岸雄の「天皇とプロレタリア」の実践者であり、満州事変で「絶対天皇制」の相対化をやってのけたと捉えるなど実に刺激的な評伝である。渡辺は西尾幹二に師事していたという。編集には知る人ぞ知る小川哲生が噛んでいる。
http://s-pn.jp/archives/1377

集英社ラノベブランドである「ダッシュエックス文庫」の「六花の勇者」(山形石雄)がテレビアニメ化される。
http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0322/man_150322_4505579208.html

◎5月10日(日)に「第49回 ホテルオークラ東京 文藝春秋 特別講演会」が開かれる。講師は佐藤優。4200円(消費税・サービス料込)也。
http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/special/koen49/
佐藤優孫崎享の激突対談って聞いてみたいな。

電子書籍週刊東洋経済eビジネス新書」シリーズが、通巻100号、累計販売数10万ダウンロードを突破した。1号当たり1000ダウンロードということか。この数字をどう考えるか、だ。いずれにしても、これを記念して、主要電子書籍ストアで期間限定の割引キャンペーンを順次、実施中。また、1〜100号までを1冊にまとめた合本版や、ジャンル別に複数タイトルを1冊にまとめた合本版を順次、配信する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000004767.html

パピレスは、KADOKAWAが運営する「eロマンス文庫」との共催企画として「eロマンス イラストコンテスト」をパピレス運営の電子書籍投稿&編集プラットフォーム「upppi」で開始した。
http://www.papy.co.jp/info/index.php?page=/release/150323.htm

朝日新聞社は4月1日付で、パブリックエディター(PE)制度を発足させるが、PEには社外から「考える人」(新潮社)編集長・河野通和、タレント、エッセイストの小島慶子、元NHKキャスターの高島肇久、社内からはPE準備責任者の中村史郎という4名で構成される。
http://www.asahi.com/articles/ASH3R4FDMH3RUEHF004.html
PEの役割が読者をはじめ社外の声を編集部門に伝える「橋渡し」だというのであれば、この人選で良かったのだろうか。社外のメンバーが朝日新聞のPRの役割に利用されないように祈るばかりだ。

◎絵本ナビは、ラジオ大阪と連携し、絵本の読み聞かせラジオ放送を場所や時間を問わず、Web上でいつでも楽しめる「あったか たのしい〜絵本ナビラジオ放送局」ページを開設した。これがそうだ。
http://www.ehonnavi.net/feat/obc1314/?refsrc=nvtop82

◎KADOKAWAは、気軽かつ手軽に読めるショー トコミックを中心に、かわいい女の子たちが頑張る姿や日常生活をテーマに描く無料のデジタルコミック「@vitamin」(アット ビタミン)を5月より、ComicWalkerニコニコ静画、 pixivコミックで配信する。
http://ir.kadokawa.co.jp/topics/20150323_f8ixb.pdf

◎ぴあよりパシフィック・リーグ6球団公認のファンブック「ぴあ×スポニチ共同編集 パ・リーグぴあ」が発売された。セ・リーグ読売ジャイアンツがいるから、こういう企画はできないのだろうか。
http://ticket-news.pia.jp/pia/news.do?newsCd=201503200011

◎光文社の女性ファッション誌「JJ」が芸能事務所「レプロエンタテインメント」と組んで実施した専属モデルオーディションのグランプリが決まった。グランプリの近藤カコは、母親も読者モデルとして「JJ」に登場したことがあるという。
http://mdpr.jp/news/detail/1474987

◎ブループレスが設立されたのは、昨年暮れの12月18日。創業してから、まだ半年も経っていない。創業メンバーは、経営コンサルタント出身の3名。経営コンセプトは世界中のアート・クリエイターをつなげ、世界のクリエイティヴ産業を元気にすることだそうだ。
http://www.blue-press.com/
ブループレスが俄かに脚光を浴びたのは、3月21日(土)に秋葉原UDX 1F広場で、3月28日(土)に刊行されるSF小説「FEATHER 〜世界は、ひとつじゃない。〜 第一巻」の無料配布イベントを実施したことによる。何と発売前の本をIMALU大桃美代子長州小力、阿久津ゆりえ、星野みちるといったタレントを動員いて2000冊も無料で配布してしまったのである。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/enterprises/release/detail/00119148.html

古谷実のマンガ「ヒメアノ〜ル」(講談社)が実写映画化されることになった。
http://natalie.mu/comic/news/141569

◎神戸市の「将来ビジョン」策定に向け、「基本的な考え方」を発表したが、久元喜造市長は「世界で最も美しい書店」の誘致案を披露したそうだ。
http://www.kobe-np.co.jp/news/kobe/201503/0007848064.shtml

◎第46回大宅壮一ノンフィクション賞の候補作が決定。書籍部門は尾崎真理子「ひみつの王国 --評伝 石井桃子」(新潮社)、川名壮志「謝るなら、いつでもおいで」(集英社)、須田桃子「捏造の科学者  STAP細胞事件」(文藝春秋)。川名、須田はともに毎日新聞の現役記者。川名は社会部、須田は科学環境部に属している。尾崎は読売新聞編集委員
http://www.bunshun.co.jp/award/ohya/index.htm

三浦篤の「まなざしのレッスン 2西洋近現代絵画」(東京大学出版会)は、印象派以降の.難解な近現代絵画をどう見れば(読めば)良いのか教えてくれる。
http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-083031-7.html?utm_content=buffer04f8b&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer

◎「ふらんす特別編集 シャルリ・エブト事件を考える」(白水社)を読んでおいて損はあるまい。私は鹿島茂の発言に同意できる。小さな本だが、とても重要な本だと思う。
http://www.hakusuisha.co.jp/detail/index.php?pro_id=08430

◎実写版「進撃の巨人」の公開日が決まった。前編は8月1日、後編は9月19日。
http://eiga.com/news/20150323/16/

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3)【深夜の誌人語録】

いつも結果が万全でないから情熱が生まれる。