【文徒】2015年(平成27)3月31日(第3巻60号・通巻505号)

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1)【記事】ミツバチワークスから雑誌が学ぶべきこと
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】ミツバチワークスから雑誌が学ぶべきこと

私にとってミツバチワークスは、10代〜20代の女の子に大人気の無料ブログサービス「Decolog」でブレイクしたIT企業というイメージが強かった。創業は2005年。「Decolog」の他にも、ハートをキャッチボールするだけのアプリ「Heart is in」などもミツバチワークスの仕事である。
また、ミツバチワークスはネットにとどまらず、「ガールズフリーマーケット!」という日本最大級の規模を誇るイベントも主催している。私がミツバチワークスに注目したのは、昨年、インフォレストが破たんした際に「女子カメラ」や「i bought」(アイボウト)といった雑誌を譲り受けたことによる。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1404/23/news108.html
http://www.fashionsnap.com/news/2014-04-30/i-bought-mitsubachi/
インフォレストと言えば一世を風靡した「小悪魔ageha」であったり、「Samurai ELO」といった月刊誌で知られている出版社であったが、ミツバチワークスが手にした2誌はともに季刊誌であった。私はそこにミツバチワークスのセンスの良さを感じた。従来の出版社は雑誌ビジネスの中心を月刊誌に据えて来たわけだが、それは隔月刊誌や季刊誌では、広告が取り難いと考えたからである。
ミツバチワークスは、そうは考えなかったのである。自らが展開する「Decolog」などと連携させてゆくのであれば、これが月刊誌だと逆にウエブビジネスにとって、足手まといになるという発想が根底にはあったのではないだろうか。
ECと連動させたファッション誌「it was only magazine」にしても季刊である。ミツバチワークスが雑誌に求めているのは、「情報の速度」では決してないのである。月刊誌の場合、どうしても「情報の速度」に振り回されてしまう。それでいて、「情報の速度」ではインターネットに太刀打ちできないのである。
とはいえ、インターネットの世界にとどまっているよりも、イベントや雑誌を擁することで、その三角形の内側にオーディエンスを囲い込むことが、ミツバチワークス自身のビジネスの土台を強化し、ビジネスの可能性を拡張していくことになる。私には、そう思えた。「Decolog」などウエブサービスで「量」を獲得し、雑誌で「量」を支える「質」を獲得し、イベントで、その「量」と「質」の「可視化」を図るということでもあろう。
しかも、ミツバチワークスは、雑誌事業に進出するにあたって、アウトサイダーの立場ではなく、日本雑誌広告協会に加入して進めたのである。
ミツバチワークスの選択が正しかったことは、最近、IT系のサービスを母胎に季刊であったり、年2回刊であったり、年刊であったりする雑誌が次々に誕生していることからも理解できよう。ウエブから紙へは、時代の潮流とさえ言っても良いのではないだろうか。
では、雑誌はどうするのか。
はっきり言おう。雑誌に足りないのは「量」である。この「量」を実現するために雑誌はスマホを占拠しなければならないと私は考えている。その際、雑誌は月刊でありつづけることにこだわる必要はないのではないだろうか。
デジタル戦略を柱にすることで、月刊から季刊に刊行形態を変更するという選択があっても良いと思うのだ。あるいは、休刊しているタイトルをインターネットで復活させ、一定の「量」に到達したならば、季刊なり、年2回刊として、紙の雑誌としても復活させる。そうした考え方があっても良いはずだ。

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2)【本日の一行情報】

◎「BusinessJournal」の次のような指摘は当たっている。
「キリンHDが『不動』といわれた業界トップの座から転落した要因の一つとして指摘されているのは、海外事業の拙さだ。その典型がブラジル2位のビールメーカー、スキンカリオール買収である」
サントリーがビームに狙いを定めたのは、蒸留酒事業の規模拡大だけが目的ではなかった。20%台を保持し続けている営業利益率の高さが、サントリーにとっては何よりも魅力だった。サントリーの営業利益率は6.7%(14年12月期)であり、グローバルプレーヤーの条件といわれる10%台に遠く及ばない。営業利益率の高いビームを買収すれば、その差を一気に縮められる」
http://biz-journal.jp/2015/03/post_9388.html

SF小説「FEATHER 〜世界は、ひとつじゃない。〜」を無料配布するという大胆なプロモーションを展開したブループレスは取次を介さない書店との直接取引で出版事業をスタートさせた。取次を通さないかわりに書店側のマージンを業界平均の約2倍となる約40〜60%に設定した。ただし、売掛金の回収サイクルは2カ月だという。
http://japan.cnet.com/release/30097350/
ブループレスが成功するかどうかは別にして、出版で良い本を出そうと思うと再販制は必須の条件になるが、出版で儲けようと考えると再販制は邪魔に見えて来るのかもしれない。

◎約4000平方メートル(約1200坪)の梅田・蔦屋書店の開店日が5月8日に決まった。
http://umeda.keizai.biz/headline/2043/
http://lucua.jp/lucua1100/shop/9f/01.html
梅田から、どの書店が撤退することになるのだろうか。総てが生き残るということは常識的にあり得まい。

◎お取り寄せグルメ番組「テレビ東京 虎ノ門市場」(テレビ東京)がプロデュースする食材付情報誌「築地 食べる通信」が4月24日に創刊される。月額2,480円で、毎号特集する築地場外の食材専門店の目利きが選ぶ食材がセットされて届く。創刊号では、創業108年の鶏肉専門店「鳥藤」を取り上げ、セットされて届く食材は「はかた一番どり」だ。
http://tsukiji.toranomon-ichiba.com/about/
2013年に東北から始まった「食べる通信」だが、6月までに東北、四国、東松島、稲花from新潟、神奈川、下北半島、山形、十勝、加賀能登、兵庫、築地、高校生が伝えるふくしまが揃う。
http://taberu.me/

◎季刊アプリマガジン「japan jikkan」 (ジャパン・ジッカン)の配信元はNTTドコモである。
http://fashionpost.jp/archives/34958
http://www.japanjikkan.jp/
編集長はニーハイメディア・ジャパン代表のルーカス B.B.。これまで「metro min.」(スターツ出版)や「tokion」、「planted」(毎日新聞社)など多くの雑誌創刊に編集長やクリエイティブディレクターとして深く関 わってきた雑誌づくりのプロななんだそうだ。
http://www.shinanai-kodomo.com/sp/bb.html
http://www.khmj.com/
雑誌事業に関して言えば、出版社だからといって、紙にしがみつく必要は微塵もないのである。

ニッカウヰスキー公式twitterアカウントのフォロワー数が16万人を突破したそうだ。NHKに足を向けては眠れまい。しかし、現在は竹鶴政孝のニッカではなく、アサヒビールのニッカであることを忘れてはなるまい。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000013248.html

◎3月28日発売の「装苑」(文化出版局)5月号は、「Perfume×日本人クリエイターズ@伊勢丹」を15頁にわたって特集している。全盛期の「装苑」では、あり得なかったような企画である。
http://natalie.mu/music/news/142248

◎すっかり時の人となった元通産官僚の古賀茂明だが、古賀のツイッターを見ていたら、3月25日に次のような投稿をしていたことを発見した。
「《恵村順一郎さん》報道ステーションレギュラーコメンテーター(月〜木)降板発表。番組リニューアルというが実質は更迭。26日限りです。昨年10月の番組審議会(テレ朝の組織)で見城徹委員長(幻冬舎社長)が恵村さんを尋常でない言葉で攻撃。何が起きてた?報ステ報ステでなくなる日?」
https://twitter.com/kogashigeaki/status/580552071176388608
見城は恵村に対して、どのような批判を繰り広げたのだろうか。

◎WEBマガジン「ブルジョワトウキョーロンドン」(BOURGEOIS TOKYOxLONDON)
を母胎にして「ブルジョワトウキョーロンドンカルチャーマガジン」(BOURGEOIS TOKYOxLONDON CULTURE MAGAZINE)というタイトルの雑誌が秋に創刊される。年1回刊!
http://www.fashionsnap.com/news/2015-03-29/bourgeois-magazine/
http://www.bourgeoiswebmag.co.uk/
紙の雑誌も安易に休刊するのではなく、主戦場をネットに移行したうえで、紙は月刊ではなく、隔月刊なり、季刊なり、年2回刊に変更して生き残りを図れば良いのではないだろうか。月刊としてビジネスが成立しないからといって休刊を決めるというパターンだと、出版社によっては、紙の雑誌が一誌も残らなくなる可能性もあるはずだ。

◎GINZA中島敏子編集長×近田まりこ×大森礱佑子によるトークイベント「現代のオリーブ少女たちへ」が4月5日(日)に代官山 蔦屋書店で開催される。
http://tsite.jp/daikanyama/event/004750.html

◎読売新聞によれば「ラジコ」が新サービスの柱として「聴き逃した放送済みの番組を後で聴けたり、リスナー個人の好みに合った番組を薦めたりする機能」を考えているという。
http://www.yomiuri.co.jp/culture/news/20150319-OYT8T50101.html

◎レキシが、朝日新聞J-WAVEスペシャルラジオCMをプロデュースした。
http://ro69.jp/news/detail/121348

◎東京のJR山手線で新型車両「E235系」が今秋から導入されるが、朝日新聞は次のように書いている。
「車内の開放感を高めるため、広告は乗降ドアの横など一部を除きデジタル化。電子看板となる17〜21インチの液晶パネルが、乗降ドアや網棚、隣の車両につながる通路ドアの各上部に、計29〜36枚設置される」
そう車内広告はデジタルサイネージに統一され、中吊り広告がなくなる可能性があるのだ。JR東日本サイドは、中吊り広告を完全にやめてしまうか残すかについては、乗客や広告関係者の意見も聞いて最終的に判断するようだ。
http://www.asahi.com/articles/ASH3N6KK1H3NUTIL03P.html

◎学研のブックビヨンドが運営するクラウド電子書籍出版・書店開設プラットフォーム「wook」(ウック)を活用した現役教師のための会員制ライブラリー「TOSSメディア」がオープンした。
http://bookbeyond.co.jp/news/201503/20150325.html

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3)【深夜の誌人語録】

仕事をパンを得るための手段としか考えられないのであれば、人生は少しも楽しくならないだろう。