【文徒】2015年(平成27)4月6日(第3巻64号・通巻509号)

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1)【記事】新興勢力「激ロックエンタテインメント」と出版業界
2)【記事】広報が「ペヤング」事件から学ぶべきことは多い
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.4.6 Shuppanjin

1)【記事】新興勢力「激ロックエンタテインメント」と出版業界

ラウドロックポータルを名乗る「激ロック」。ラウドロックのニュース、インタビュー、ディスクレビュー、動画、カレンダーなど独自のコンテンツを発信している。激ロックエンタテインメントが運営している。
http://gekirock.com/
「Skream!」はオルタナティブ・ロック、ダンスロック、エレクトロを中心に、洋楽ロック、邦楽ロックのポータルサイトだ。これも激ロックエンタテインメントの運営だ。
http://skream.jp/
「激ロック」「Skream!」はともに紙のフリーマガジンも刊行している。購読料を払い定期購読することもできるようだ。激ロックエンタテインメントは国内外40ブランドを取り扱うロック系国内最大のファッション通販サイト「GEKIROCK CLOTHING」も運営していれば、渋谷宇田川町には「Music Bar ROCKAHOLIC」を持っている。
http://shop.gekirock.com/
http://bar-rockaholic.jp/
激ロックエンタテインメントは6月、下北沢にライブハウス「LIVEHOLIC」をオープンする。
http://liveholic.jp/
デジタル、雑誌、イベントを有機的に連関させることが、これからの出版社の課題だと私は主張しつづけて来たが、こうしていとも簡単に実現してしまっている企業が出版業界の外側にあるのである。
http://gekirock.com/company/about-us/#main
激ロックエンタテインメントの代表取締役は村岡俊介。1999年、大阪にてDJイベントのオーガナイザー&DJとして音楽活動をスタートさせている。
http://geki-rock.jugem.jp/?pid=1
読者に相も変わらず「上から目線」(垂直軸のコミュニケーションを志向する編集力)で情報を発信しつづけている雑誌は、総て出版社から出されているという現実は悲惨である。雑誌とデジタルとリアル(イベントなど)を三位一体として展開するには、「上から目線」は必要ないどころか、障害にほかならない。ソーシャルメディアの時代にあって、「上から目線」はソーシャル化されていないのである。
出版社は、雑誌とデジタルとリアルを三位一体として読者、オーディエンスとの間にいかにして水平軸のコミュニケーションを築き上げるかが問われているのだ。むろん、私はロック誌について述べているのではない。女性ファッション誌を念頭に置いて言っているのだ。

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2)【記事】広報が「ペヤング」事件から学ぶべきことは多い

インスタント焼きそばの「ペヤング」が6月上旬に販売再開。「東洋経済オンライン」は「『新ペヤング』は、いったい何が変わったのか」を公開した。
「昨年の混入発覚後は、自社の責任を当初否定したまるか食品の初動対応に批判が殺到した。一方で、店頭から消えた『ペヤング』がネットオークションに出品されると、根強いファンが高値で入札。『ヤミ米』をもじって「ヤミペヤング」という言葉がネット上で飛び交う現象も起きた」
http://toyokeizai.net/articles/-/65162
まるか食品はゴキブリ混入にまるで責任がないかのような対応を最初にしたことは、明らかに公的な大ミスであった。しかし、炎上を遂げると、製造・販売休止を決断し、店頭から商品が消えると、まるか食品批判の逆風がやみ、風向きが変わる。今や「ペヤング」待望論がネットには充満している。その代表はタレント松本人志のツイートだ。
ペヤングが再開するならオレも再開するか。。。」
ツイッターを休止していた松本が「ペヤング」販売再開のニュースとともにツイッターを再開するというのだ。これがネットで話題にならないはずはない。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/04/02/hitoshi-matsumoto-twitter_n_6997390.html
企業の広報担当者は、この一連の流れを頭に叩き込んでおく必要があるだろう。

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3)【本日の一行情報】

KADOKAWAが4月1日付で組織改訂を実施した。ブランドカンパニー制を廃止し、事業ドメインごとに再編成した。本部、局、部、課の4階層制から、局、部、課の3階層制に移行したというものだが、300名のリストラを踏まえての体制である。
これにより雑誌の編集部は、マガジンブランド局に入ることになるが、例外がある。最大の例外は旧アスキー・メディアワークスの媒体が、アスキー・メディアワークス事業局に属したことであり、『ファミ通』を除く旧エンターブレイン媒体は、エンターブレイン事業局に属したことである。
これは常識的には考えられないのだが、この変更が外部にオープンなったのは4月2日のことであったという。そもそもKADOKAWAのウエブサイトには4月3日の時点では何ら発表もされていなかった。上場企業として、こうしたヤリ口は決して褒められたものではあるまい。
http://www.kadokawa.co.jp/
http://info.kadokawadwango.co.jp/

Webコミックサイト「モアイ」(講談社)で公開されると評判がSNSで拡散し、瞬く間に100万PVを達成した林明輝のマンガ「ラーメン食いてぇ!」が、上下巻で4月23日(木)に単行本化される。電子書籍版は既にリリースされている。出版社もマンガだと「デジタルから紙へ」ができるようになった。
http://evening.moae.jp/news/2030
例えば女性ファッション誌の編集者は、こういう動向に何も感じない不感症を患っていてはなるまい。私に言わせれば、女性ファッション誌は雑誌広告ビジネスに貢献はしたが、本すら読まないバカを編集、広告の両部門で大量に生んでしまったという負の遺産も残してしまっている。
だから、危機に直面して何もできないのである。人前でチャラチャラするのが得意なのは、才能でも何でもないのだよ。それは出版人としての堕落を意味しているに過ぎない。女性ファッション誌は変わらないと替えられてしまう最右翼だ。

NTTドコモは、定額制動画配信サービスdTVに対応した専用アダプター「dTVターミナル」を4月22日に発売する。テレビのHDMIに簡単に繋ぐことができ、テレビでdTVのコンテンツの視聴が可能になる。
https://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2015/04/02_01.html
http://japanese.engadget.com/2015/04/02/ntt-dtv-4-22-hdmi-dtv/

◎フジテレビの入社式は父兄同伴。リテラが「とにかく、今、フジテレビで働いている局員はおっさんたちも含めほぼ全員、入社式にパパとママが付き添いでやってきていたというわけで、これは相当に気持ち悪い話ではないか」と書いているが、同感である。こういうテレビ局に「報道」を任せて大丈夫なの?ところで産経新聞の入社式も父兄同伴なのだろうか。
http://lite-ra.com/2015/04/post-989.html

AKB48小嶋陽菜の写真集「どうする?」(宝島社)が、6日付けのオリコン週間「本」ランキング(集計期間 3月23日〜29日)で、BOOK(総合)部門と写真集部門でトップに立った。写真集部門でトップに立っても、さして驚きはないが、BOOK(総合)部門で2週連続首位のピース・又吉直樹「火花」(文藝春秋)を抑えての1位となると、やはり驚かされる。これが出版ビジネスの現状なのである。出版で儲けるとは、こういうことなのである。
http://www.oricon.co.jp/news/2050974/full/

◎韓国検索サイト大手ネイバー子会社であるLINEが東京証券取引所への上場手続きを再申請していた。これ日経のスクープなんでしょ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ01HNR_R00C15A4MM8000/

◎「週アス+」に「dマガジン」のラインナップに加わった「ターザン」(マガジンハウス)の大田原透編集長が登場。何と走りながらのインタビュー企画。「ターザン」は「dマガジン」での配信のあと、紙の売り上げも1〜2割アップしたという。
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/320/320929/

幾夜大黒堂「境界のないセカイ」のコミックスがKADOKAWAから刊行されることになった。連載も同社の「月刊少年エース」6月号からスタートする。
http://ikuya.sblo.jp/article/116054524.html

◎「週刊文春」の芸能スクープ「AKB運営幹部と峯岸みなみ未成年時代の『泥酔乱行』写真」に関して、ネットでは「第18営業局営業部専任部長 木島森」「コンテンツ局 持田雄平」という名前が取沙汰されている。雑誌が隠していても、ネットで暴かれるというケースは増える一方である。
http://geinolabo.ldblog.jp/archives/4996998.html

◎レインボー・アクションは、2015年03月26日付でサイゾーが運営するオタクニュース・ポータルサイト「おたぽる」で公開された(取材・文/昼間たかし)の記名があるニュースについて、いくつかの事実誤認があるとして、事実確認の要求を申し入れた。
http://rainbowaction.blog.fc2.com/blog-entry-238.html

世界文化社が「ときめき」を刊行した。今回で2冊目となる。健康雑誌はオシャレで、ハイエンドでは売れないであろうことは理解できる。しかし、「家庭画報」の別冊として、その手の健康雑誌を出す意味はあるのだろうか。世界文化社からすれば、背に腹は代えられないのだとしても、他の方法を模索すべきだと思う。
http://tokimekiweb.jp/

◎京都の書店・恵文社でワンダー バゲージ(WONDER BAGGAGE)の別注モデルが4月末から販売される。
http://www.fashion-press.net/news/16290
http://www.keibunsha-books.com/shopbrand/books/

オンワードグローバルファッションは10日、イタリア料理店、花屋、書店が集結する新業態「ペンデュール ヴィア バス ストップ」(PENDULE VIA BUS STOP)を南青山(東京都港区南青山5丁目4-50)にオープンする。書店が入るのは2階。雑誌や書籍をテーマに沿って提案するコンセプチュアルブックストア。同施設のベランダで読書を楽しめるそうだ。雰囲気が良さそうだなあ。
http://www.apalog.com/report/archive/2601
オンワードグローバルファッションはオンワードグループの企業である。光文社は販売部、広告部が一体となって支援策を考えているのだろうな、当然。周知のように「組曲」、「ICB」、「23区」、「自由区」というオンワード樫山4ブランドと「CLASSY.」、「VERY」、「STORY」はタッグを組んでいる。

◎ぴあは、「FOOTBALL PEOPLE」シリーズをぴあMOOKとして発売した。シリーズ第1弾は鹿島アントラーズ。蛇足ながら書き添えておくと、サッカー記事、わけても鹿島アントラーズとなればと朝日新聞の中川文如をもってピカイチとする。こうした常識をぴあの編集者が知っているかどうかだ。
http://cyclestyle.net/article/2015/04/03/21530.html

◎第20回寺山修司短歌賞(砂子屋書房主催)は、昨年2月急逝した小高賢(=鷲尾賢也)の遺歌集「秋の茱萸坂」(砂子屋書房)に決定した。
「言うほどにむなしくなりぬしかしまた言わねばならぬ言ってこそわれ」
鷲尾さんらしい一首を掲げておく。私は、この心情を共有したい。言えば言うほどに空しく、虚しくなってしまうけれど、それでも「しりぞかざると決意」をもって主張すべきを主張してこその「文徒」である。「精神のリレー」と言ったのは埴谷雄高であった。私が持っているのは講談社版の埴谷雄高全集ではなく、河出版の作品集である。
http://mainichi.jp/feature/news/20150403k0000m040023000c.html

内田樹白井聡の対談からなる「戦後史論」(徳間書店)が、この手の本としては売れている。「対米従属を通じての対米自立」という「ねじれ」を解消しようとしなかったツケが安倍政権を生んだということなのだろう。
http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198639068

◎「白泉社e-net!」2周年を記念し、ポイントを大盤振る舞いするフェアを、5月31日まで展開しているが、白泉社電子書籍大賞最優秀賞を獲得した林久美子「新イシャコイ-新婚医者の恋わずらい-」に登場できる権利を、抽選で1名にプレゼントするという企画を実施している。
http://www.hakusensha-e.net/v_2ndfair

◎エブリスタは4月2日、KADOKAWA エンターブレイン三交社新潮文庫スターツ出版、宝島社、双葉社、「ヤングマガジン」、「別冊フレンド」とともに公募文学大賞「エブリスタ小説大賞2015-16」を創設した。
http://estar.jp/.pc/event_plus/estar_grandprix/
文藝春秋は、投稿サイトに相変わらず距離を置いている。その点、新潮社は積極的である。この対称が面白い。

◎大阪在住の主婦ブロガー・山本ゆりのブログ「含み笑いのカフェごはん『syunkon』」をムック化した「syunkonカフェごはん」(宝島社)は、累計350万部突破!
山本は「オリコン2014年 年間“本”ランキング」の作家別総売上数ランキングで4位なんだって。「オレンジページ」なんかも社長交代を機にプロのレシピをできる限り排除して、読者のレシピ中心にシフトしてみてはどうだろうか。遅すぎる決断でもしないよりもしたほうがマシである。プロの権威をメインにしていたのでは実用誌に明日はない。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000146.000005069.html

サザンオールスターズが10年ぶりにリリースした新アルバム「葡萄」に収められている「Missing Persons」は「Megumi,Come back home to me」という詞が胸に沁みわたる曲だ。拉致被害者横田めぐみに捧げられた一曲である。
http://www.hmv.co.jp/fl/10/1228/1/

◎LINEは、ソーシャルギフト事業への本格参入のため、LINEから直接商品の購入・プレゼントができるサービス「LINE ギフト」を公開した。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/973
コンテンツはカネにならない。カネになるのはプラットフォームだ。かつて雑誌はプラットフォームのようなメディアであった。
雑誌において、例えばコンテンツを供給していた個人なり、編集プロダクションのような企業は、雑誌を擁する出版社ほどには儲からなかったことを思い出してみようではないか。
出版社はコンテンツビジネスなどという言葉に酔い痴れていると、IT企業の下請として「薄利」に甘んじることになるであろう。コンテンツビジネスは、昔から儲からないのだ。

◎「週刊文春」は日本テレビ上重聡アナウンサーが自宅マンション購入時に「ABCマート」創業者の三木正浩氏から1億7000万円の無利子融資を受けていたことを暴露したが、芸能人気取りのアナウンサーは上重にとどまるまい。
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/4975

自民党谷垣禎一幹事長が大阪駅前での統一地方選の応援演説で堂々と「馬鹿だチョンだ」と在日朝鮮人への差別語を比喩として発言!在特会と変わらないじゃないか。
http://mainichi.jp/select/news/20150403k0000e010241000c.html

村上春樹が「原子力発電所」ではなく「核発電所」と呼ぼうと訴えかけている。
「僕に言わせていただければ、あれは本来は『原子力発電所』ではなく『核発電所』です。nuclear=核、atomic power=原子力です。ですからnuclear plantは当然「核発電所」と呼ばれるべきなのです」
http://www.welluneednt.com/entry/2015/04/03/173000

◎「MyNewsJapanが入手した朝日新聞社の内部資料」によれば、2014年度、販売店に送られたABC部数の28%が「押し紙」であったという。
http://www.mynewsjapan.com/reports/2141
朝日は読売に比べ、「押し紙」が少ないと言われていて、実際にこの通りであるとしたら、一体、読売は、どうなっているのだろうか。

◎「ダイヤモンドQ」(ダイヤモンド社)5月号がホテルランキングを発表。1位「帝国ホテル 東京」、2位「横浜ロイヤルパークホテル」、3位「ザ・リッツ・カールトン大阪」、4位「ホテル ラ・スイート神戸ハーバーランド」、5位「ホテル グランパシフィック LE DAIBA」、5位「ラビスタ函館ベイ」。
http://domestichotel.blog.fc2.com/blog-entry-7.html

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4)【深夜の誌人語録】

人が言いたいことを代弁していては、存在感は少しも増さない。自分が言いたいことを人に代弁させれば自ずと存在感は増すものである。