【文徒】2015年(平成27)4月7日(第3巻65号・通巻510号)

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1)【記事】ネットで問われているのは無料か、廉価ではないのか
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】ネットで問われているのは無料か、廉価ではないのか

「ほぼすべてのストアには『立ち読み』(あるいは『試し読み』)の機能が備わっている。無料でなくとも、立ち読み分だけで十分楽しめる作品もある」
スマホで成人漫画を無料で読む方法を紹介する「週刊ポスト」の記事はこう結ばれているが、大半のオーディエンスは成人漫画に限らず、何でも無料コンテンツで読みたいのである。
週刊誌の記事にしても、そうなのだ。スクープが昔のように票数に結びつかなくなったのは、読者の関心が専ら無料コンテンツにあるからなのだろう。AKB48の「ご乱行」にしても、週刊誌にダイレクトに飛びつくのではなく、週刊誌のスクープを踏まえて公開されたネットの無料コンテンツに飛びついてしまうのである。
女性ファッション誌にしても同じ。有料の女性ファッション誌ではなく、無料の着回しアプリに読者は流れてしまうのだ。収入に余裕があるのであれば、雑誌の読者に踏みとどまるのだろうが、読者に踏みとどまれない層が、読者に踏みとどまれる層を遥かに上回っていると考えて間違いあるまい。
こうした現実を踏まえて雑誌に何ができるかを模索しなければならない局面に私たちは置かれていると言って良いだろう。週刊誌であれば、例えばスクープをデジタルファーストかつ無料で惜しみなくネットに公開してしまうことだろう。あるいは、そのスクープだけを小額課金(ユーザーに負担を感じさせない範囲の金額だ)のもとネットで販売してしまうことである。こうした施策を可能にするプラットフォームビジネスの確立は出版社にとって喫緊の課題であると私は考える。
そのようにして獲得したオーディエンスは、雑誌にとって(毎号でなくても雑誌を購入してくれる)読者予備軍になるはずである。
http://www.news-postseven.com/archives/20150404_313099.html

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2)【本日の一行情報】

文藝春秋は4月17日、スティーヴン・キングの小説9タイトルの電子書籍版を発売する。「シャイニング 上下」「ザ・スタンド I〜V」「夕暮れをすぎて」「夜がはじまるとき」「悪霊の島 上下」「アンダー・ザ・ドーム 1〜4」「1922」「ビッグ・ドライバー」「11/22/63 上下」という9タイトルだ。
http://news.biglobe.ne.jp/economy/0403/atp_150403_2539748935.html

◎米アマゾンは「Amazon Home Services」を開始。電気の配線・配管、テレビの壁かけ、パソコンやiPhoneの修理、楽器のレッスンなど、要するに便利屋紹介だ。これはLINEなんかも始めたいだろうな。
http://www.amazon.com/services

読売広告社とマイボイスコムは、独自のライフスタイルによる生活者分類を行い、このライフスタイル分類において高感度層クラスターを「聞き耳層」と名付けた。そして、「聞き耳層」が支持する次世代タレントは第1位が広瀬すず、第2位が染谷将太、第3位が高畑充希となった。
http://www.yomiko.co.jp/news/item/old/pdf/20150403.pdf

◎携帯電話の通話離れが起こっている。4月4日付東京新聞夕刊によれば「携帯大手の収益にも影響を及ぼす。ソフトバンクKDDI、NTTドコモの大手三社は一二年三月期までに、データ収入が音声収入を超え、その差は年々広がっている。ドコモは過去十年で音声収入が四分の一に、逆にデータ収入は一・五倍に膨らんだ」という。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015040402000292.html

◎共和国という出版社がある。下平尾直が昨年4月に船出を果たした「ひとり出版社」である。私は、下平尾直について、水声社出身であるという以外は、何の情報も持ち合わせていないけれど、これまで「狂喜の読み屋」とか「総統はヒップスター」を刊行して来たようだ。
そんな水声社から「遊郭ストライキ 女性たちの二十世紀・序説」が刊行された。これが、これまで語られることのなかった歴史に肉薄するなかなかの力作なのである。著者は経済学者の山家悠紀夫を父に持つ山家悠平である。
http://www.ed-republica.com/

潮出版社から刊行された「吉本隆明 最後の贈りもの」は、光文社出身の新海均と徳間書店出身の松崎之貞のタッグにより生まれた一冊だ。歌人道浦母都子による2009年に行われたインタビューが収録されている。
http://www.usio.co.jp/html/books/shosai.php?book_cd=3924
死してなお最近では毎月のように新刊が出ているということは、吉本隆明がいかに大きな存在であったか再認識させられる。
催涙ガス避けんと秘かに持ち来たるレモンが胸で不意に匂えり」
道浦の「無援の抒情」に収められた一首である。

◎「ジャンプスクエア」(集英社)に連載中の「終わりのセラフ」がアニメ化され、テレビ放映がスタートしたが、4月4日付朝日新聞に全15段広告が掲載された。しかも、クリエイティブは新聞の発行されている地域によって、3ヴァージョンあったそうだ。
http://animeanime.jp/article/2015/04/04/22716.html

博報堂はソーシャルデザインプロジェクト「issue+design」と共同で、4月13日〜19日にイタリア・ミラノ市で開催される世界最大規模のデザインの祭典「ミラノサローネ」の「TOKYO DESIGNERS WEEK in MILANO 2015」に出展する。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/21086

博報堂DYメディアパートナーズが博報堂DYスポーツマーケティングデータスタジアムと共同で実施した「第29回 アスリートイメージ評価調査」によれば、「生き方や発言に共感できる」アスリートは、1位:イチロー(野球) 2位:黒田博樹(野球) 3位:長谷部 誠(サッカー) 4位:錦織 圭(テニス) 5位:工藤公康(野球)となった。
http://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/report/20150402_9810.html

◎啓文社3店舗(新浜、コア福山西、向島ハピータウン)は4月1日から尾道市公共図書館5館(尾道中央、向島、御調、因島瀬戸田)で貸し出した本の返却を受け付けている。
https://twitter.com/keibunsha_book/status/583805726235033600

◎「弱虫ペダル」の人気キャラ巻島裕介が単独では初めて表紙を飾った「週刊少年チャンピオン」が売り切れ店続出だという。それが全国的規模のものであるかは判断しかねるが、「弱虫ペダル」がブレークしていることは間違いあるまい。
http://otapol.jp/2015/04/post-2748.html

◎「光文社古典新訳文庫・駒井稔編集長が熱く推奨する『今こそ読まれるべき古典』79冊」が無料で配信されている。
http://www.kotensinyaku.jp/archives/2015/04/006489.html

双葉社が「SIMPLE & CLEAN FASHION」をコンセプトにした女性ファッション誌「RUDI」を創刊。ムックとしての刊行だ。4月4日(土)にCiaopanic、mystic、Kastane、who's who Chico4ブランドの原宿店で創刊記念イベントを開催したそうだ。
http://www.rudimagazine.com/

◎「2014年5月期の売上高は約3億6000万円、純損失は約14億円と、赤字先行になっています。しかし2015年5月期の半期決算(2014年11月)の売上高は約13億円、純損失は3億円、第3四半期(2015年2月)の売上高は22億円、純損失は1億円」というグノシーが4月28日に上場する。
http://thepage.jp/detail/20150402-00000005-wordleaf

KADOKAWAは急速に「縮小」するのではないか。そんな予感が私にはする。その「縮小」をドワンゴが支えきれるかと言えば否である。更なる経営統合を目指すのかもしれない。「おたぽる」は次のようなエールを送っている。
「だが今後どのような再編があるとしても、読者や関係各位との信頼を培ってきた現場で働く者たちが報われるような配慮を望みたい。株式会社KADOKAWA取締役会長である角川歴彦氏が唱える『クールジャパン』は、利益重視の『冷淡なオタク文化』でないと信じている」
まあ信じるのは勝手だが、KADOKAWAにおける「クールジャパン」は利益重視の「冷淡なオタク文化」をまっしぐらに進んでゆくことだろうし、「読者や関係各位との信頼を培ってきた現場で働く者たち」が報われることは、例えばメディアワークスの創業メンバーであるといった例外を除けば、あり得ないことだと私は考えている。KADOKAWAが選択したのは経営が誰も責任を取ろうとしない体制である。
http://otapol.jp/2015/04/post-2732.html

近畿大学はアマゾンでの教科書販売を本格的に開始した。「ICT教育ニュース」は、次のように書いている。
「…大学が発行するシラバス(授業計画)を必要に応じて印刷物として注文できるシステム「プリント・オン・デマンド」を採用した。これまでは、数百ページに及ぶシラバスを印刷製本して学生に一冊ずつ配布していたが、今年度からはWEB上で閲覧して必要があれば印刷することとし、事務合理化とコスト削減を進めているという」
http://ict-enews.net/2015/04/06kindai/

◎「報道ステーション」で夜桜をバックにバイオリンの生演奏を担当したのは古舘プロジェクトに所属する末延麻裕子。テレビ朝日政治部長であった末延吉正の姪。末延吉正は部下への暴力事件を起こして、テレビ朝日を退職するも、テレビ朝日の「ワイド!スクランブル」でコメンテーターをつとめているなど、相変わらず、テレビ朝日との関係は深い。安倍晋三とは同郷であり、「わが友」と言って憚らない関係にある。
http://lite-ra.com/2015/04/post-998.html

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3)【深夜の誌人語録】

涙による熱狂よりも、笑いによる覚醒に加担したいものである。