【文徒】2015年(平成27)4月8日(第3巻66号・通巻511号)

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1)【記事】共同ピーアールの株主総会
2)【記事】楽天の書店戦略の今後を占う有隣堂「STORY STORY」
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.4.8 Shuppanjin

1)【記事】共同ピーアールの株主総会

共同ピーアールと言えば大橋栄と椎野育太を二枚看板にした強面のPR会社として一世を風靡した。新聞に強い大橋と雑誌に強い椎野というカタチで棲み分け、ブラック筋にも人脈を持っていたことで知られている。何しろ椎野なんか東京電力に自分の部屋を確保していたという逸話を持つくらいである。取引先も神戸製鋼日本航空といった一流企業が名前を連ねていた。
そんな共同ピーアールだが椎野が急逝し、2011年に創業社長たる大橋による会社資金の私的流用が発覚して以降、主要なクライアントを失うなど、社内はガタガタになっているということは風の噂ながら聞き及んでいた。
名古屋で誕生し、今や東京にも本社を構える新東通信が大株主になり、大橋個人が所有していた20.6%の株式も新東通信が手にし、更に買い増しするなどして、現在は約30%を保有するまでに至っている。
そんな共同ピーアールの3月27日に開催された株主総会が荒れたそうだ。
「Business Journal」は次のように書いている。
「共同ピーアールには現在4人の取締役がいるが、いずれも今回は改選期に当たっていない。新東通信はこの4人に加え、同社の社員2人、会長・谷喜久郎氏の子息で現在社長を務める谷鉄也氏、弁護士の平英毅氏、船井アドヴェンチャー代表取締役の下土井幸雄氏の合計5人を、新たな取締役として送り込む株主提案を行った。このうち、谷氏、平氏、下土井氏の3人は社外取締役で、平氏と下土井氏は有価証券上場規程に定める独立役員の定義にも該当するという。
つまり、現職4人の解任こそ求めないものの、取締役会で過半数を取れるだけの取締役の受け入れを求めたことになる」
この提案に上村巍社長をはじめとした現経営陣は反発したようなのだが、この記事を読む限り、現経営陣はあまりにお粗末なのである。議決権の過半数をとれるだけの委任状を入手していないため当然会社提案は否決されるし、ウェブ関連事業で5億7500万円の損失を出しておきながら、事態を正確に把握していなかったり、株主から無能と呼ばれるわ、いやはや、これがPR会社のやることかと私などは首を傾げたくなってしまったくらいである。
http://biz-journal.jp/2015/04/post_9521.html
山口三尊が株主総会の模様を忠実に再現している。
http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/archives/65945712.html
ちなみに新東通信は「サン・ジョルディの日」を日本に持って来た広告代理店である。

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2)【記事】楽天の書店戦略の今後を占う有隣堂「STORY STORY」

有隣堂は、4月24日、新宿・小田急百貨店新宿店本館10階に書店+カフェ+雑貨販売の複合型書店「STORY STORY」(ストーリー ストーリー)を開店させるが、楽天は、電子書籍やポイントサービスなどのサービスを提供することになった。楽天は書店との協業をオンラインとオフラインを融合したカタチで積極的に進める意向だ。
「STORY STORY」には楽天の子会社であるRakuten Kobo Inc.の電子書籍リーダーや、Kobo社のタブレット端末「Kobo Arc 7HD」を店舗内に20台以上配置し、気軽に電子書籍を楽しめるようにしている。
購入を希望する書籍の在庫がない場合、書店向けサービス「楽天ブックス 迅速配送サービス」を活用し、「楽天ブックス」で書籍を注文して最短翌日に取り寄せるという。
店舗内のカフェでは「楽天市場」で人気のスイーツも提供され、テイクアウトも可。
また、季節やトレンドなどにあわせて「楽天市場」からセレクトした雑貨も販売。
カフェでは共通ポイントサービス「Rポイントカード」が利用でき、客は支払いの際に、「楽天スーパーポイント」を貯めたり使ったりすることができる。
さらに、楽天グループのスポットライトが展開する来店促進アプリ「楽天チェック」(無料)では、来店時に「楽天スーパーポイント」が貯まる。
http://corp.rakuten.co.jp/news/press/2015/0406_01.html
楽天にとってオンラインとオフラインを融合しての書店戦略で有隣堂を最初のパートナーにしたことが吉と出るか、凶と出るか。私であれば首都圏の書店ではなく、地方の書店を最初に選ぶだろう。例えば、今井書店とか…。楽天が書店との協業を進めるためには、それに相応しい人材が必要であると思う。

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3)【本日の一行情報】

朝日新聞出版から刊行された恩田陸の「EPITAPH東京」は、鈴木成一デザイン室が手がける「装丁」が紛れもなく書物の一部であるということ再認識させられる作品である。本文には複数の色紙が使用され、イラストや写真も多用されている。
http://ddnavi.com/news/233981/

電通住友商事グループにおいて日用品サイトとしては国内最大級のEコマースサイトを運営する爽快ドラッグは、爽快ドラッグが運営するEコマースサイトを活用したテストマーケティングで協業をスタートさせる。電通は同サイトで商品販売を行う企業向けに、より統合的なサービス提案とデータ活用、実店舗と連動したオムニチャネル施策などの検証を行っていく。Eコマースサイトをメディア化しようという試みだ。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0406-004022.html

電通第4代社長たる吉田秀雄の肉声が聞けるぞ。常識以上の非常識が勝利の道、その通りだと思う。
http://dentsu-ho.com/articles/2388
http://www.yhmf.jp/special/
「いま、吉田秀雄の言葉」はスマホで持ち歩ける。「広告は、科学であり、芸術である」!
http://www.yhmf.jp/special/pdf/yhfm_word.pdf

◎JTBパブリッシングの電子書籍サービス「たびのたね」は、主婦と生活社の「週刊女性アーカイブス」の取扱いをスタートさせた。「週刊女性」の旅行・おでかけスポット情報を、記事単位でバラ売りをする。54円という価格設定である。
http://tabitane.com/special/1504shukanjosei/

◎浦戸宏という名前を聞いてピンと来たら、相当の映画通だろう。小沼勝の耽美的世界観を支えたのが、浦戸の「縛り」であったといえば良いだろうか。具体的に言うのならば、谷ナオミの「花と蛇」「生贄夫人」は監督小沼勝、脚本田中陽造、縛師浦戸宏によって生まれたのである。
そんな浦戸の「縛師 --日活ロマンポルノ SMドラマの現場」が筑摩書房から刊行された。浦戸は「裏窓」の編集者でもあり、フリーの編集者として篠山紀信団鬼六宇野亜喜良による「緊縛大全」(芳賀書店)を世に送り出したことでも知られている。出版業界の裏側もさらりと描かれている。
会津藩士の末裔のひとりが芳賀書店の社長・芳賀章である。彼は大東亜戦争にかりだされ、敗北後はシベリアの厳冬のなかでの二年間に及ぶ抑留(捕虜)体験の持ち主だった」
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480873835/

◎「週刊東洋経済」の特集「あなたを待ち受ける貧困の罠」を身につまされながら読んだ。この特集で鈴木涼美が「元AV嬢・日経記者が歩く女性の貧困最前線」を発表している。
http://toyokeizai.net/articles/-/65370

◎日販アイ・ピー・エスは、日本の出版社向けに、欧米の大手書店に書籍を販売するサービスの提供を4月1日より開始した。このサービス開始にともない4月14日から16日に開催されるロンドンブックフェアへ出展し、現地書店からの受注活動を行う。5月のブックエキスポアメリカ、10月のフランクフルトブックフェアなど主な国際ブックフェアに出展するという。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0CB0QFjAA&url=http%3A%2F%2Fwww.nippan-ips.co.jp%2Fci%2Fnews_20150406.html&ei=Eh8jVc_EFoKj8QW7poH4CA&usg=AFQjCNEhlN9fHP5dD6xnzrj6gz6SREiAvQ&sig2=GlwozNYbenH8zB9g8--jAA

日本ジャーナル出版の「ランチパスポート」。通常700円以上の掲載ランチが、ALL500円で食べられる!飯田橋市ケ谷四ツ谷・早稲田の81軒掲載。使用は3ヶ月。6月29日まで1店3回使える。1000円也。
http://www.nihonjournal.jp/web/lunchpassport_01/index.html

◎「ふなっしー」が「AneCan」(小学館)の専属モデルに就任。5月号の表紙を飾ったばかりか、押切もえ、葛岡碧と競演している。付録は「AneCan×ふなっしークリアファイル」。船橋市民としては嬉しい限りである。私は生まれも育ちも船橋である。
http://mantan-web.jp/2015/04/06/20150405dog00m200053000c.html
http://mdpr.jp/review/detail/1478071

ドワンゴが完全受注生産の次世代型通販サイト「ドワンゴジェイピーストア」をオープン。
http://jpstore.dwango.jp/

上西小百合衆院議員の公式フェイスブックが、炎上し、5日午後からアクセス不能になった。ブログも閉じてしまったようだ。
http://news.livedoor.com/article/detail/9972820/

◎日本交通、博報堂DYメディアパートナーズ、博報堂ACCESSは、日本交通グループが保有する一部のタクシーの車内で、iBeaconを活用して情報配信サービスの実証実験を開始。日本交通グループが保有する黒タク(黒色のタクシー)約1,600台の車内にACCESSのBeacon端末を搭載し、日交データサービスが提供する、iBeacon対応スマートフォン向けアプリ「日本交通タクシー配車」(50万人の客が利用)に対して情報を配信するというもの。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/21116

◎さすがに協会ではなく協議会だけれど、また新しい業界団体ができた。日本オーディオブック協議会だって。出版業界って、よほど景気が良いんだね。書協なり、日本電子書籍出版社協会にオーディオブック委員会を作れば良いだけの話ではないのだろうか。
私のような凡庸な者には出版社のお偉いさんたちの発想が殆ど理解不能である。だから私などは記者会見にすら呼ばれないというわけだ、とほほ。出版業界自体を筋肉質にする必要があるとは思わないのだろうか。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1504/06/news155.html

サントリーの松岡修造CMが凄すぎる。YouTubeサントリー公式チャンネルが松岡に占拠されているし。「C.C.Lemon元気応援プロジェクト」なんだって!
https://www.youtube.com/watch?v=Yo8b9IYYtk4

トーハンは、東映アニメーションと共同で人気アニメ「プリキュア」シリーズの関連商品を対象に、MVPブランド「プリキュア 書店deプレゼントキャンペーン」を展開している。
http://www.tohan.jp/news/20150406_488.html

◎オーバーチュアやグーグルに在籍し、現在、アタラ合同会社でCOOをつとめる有園雄一が次のように書いている。
「コピーライター糸井重里吉本隆明を人生の師と仰いでいたため、広告業界吉本隆明の名前を知らない人はいないだろう」
凄い時代になったものだ。
http://unyoo.jp/2015/04/brand-illusion/
アタラは、こういう会社。
http://www.atara.co.jp/

◎久禮亮太に注目したい。あゆみBOOKS小石川店の店長だった久禮がフリーランスの「書店員」を始めた。
店舗を持たない久禮書店を立ち上げたのである。「あちこち書店」というコンセプトが良いではないか。「店舗の売り上げ額に対する返品額の比率(返品率)を、前年よりも下げればその成績に応じて取次から書店に報奨金を支払い、反対に上回れば書店が罰金を納めるという契約」が、「『注文してはいけない』『返品してはいけない』という経営上の要請を、具体的な指標よりも曖昧なムードとして、現場担当者は過剰に忖度する」ようになるという指摘は、正鵠を射ていよう。青弓社のウェブサイトに「こんにちは、久禮書店です」の連載が始まった。
http://www.seikyusha.co.jp/wp/rennsai/kureshoten01.html
楽天や大阪屋には、こういう書店の生理を知り尽くした人材が本当は必要なはずである。

◎dマガジンで復刊を遂げた「ホットドッグプレス」がテレビにも進出する。「月刊ホットドッグプレスTV」がBS日テレで放送開始。
http://www.bs4.jp/programschedule/detail/detail_pc_309032892.html

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4)【深夜の誌人語録】

一日一日の積み重ね以外にに近道は存在しないはずだ。