【文徒】2015年(平成27)4月15日(第3巻71号・通巻516号)

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1)【記事】取次業界再編の鍵を握る楽天
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】取次業界再編の鍵を握る楽天

残された時間は、そう多くはないはずだ。取次業界の再編である。紙の出版市場が縮小するなか、中堅取次は経営が悪化することは免れまい。日販とトーハンが経営破綻することはあるまいが、それ以下の取次は今のままでは生き残れないということだ。出版社や書店からすれば、取次業界が日販、トーハンの二大取次に収斂していくよりも、第3極を形成して、三大取次体制となることが好ましいのではあるまいか。
大阪屋を傘下に収めた楽天にしても、大阪屋の現状に満足しているはずはあるまい。大阪屋は残念ながら関西エリアの一地方取次に過ぎないのだから。理想は、楽天による大阪屋、栗田出版販売、太洋社の経営統合であろう。
そういう意味では、栗田出版販売が子会社のブックサービス楽天(=大阪屋)に事業譲渡したことは、第3極形成に向けて重要な第一歩を踏み出したことになろう。ただ冒頭にも書いたように残された時間は少ないはずだ。経営統合するのであれば、ここ2〜3年のうちに成し遂げる必要があるのではないか。
楽天からすればブックサービスを掌中に収めたことで、栗田出版販売や太洋社との経営統合は必要ないと判断するかもしれない。しかし、それは間違いだと思う。楽天が、この二社の潜在能力を十全に引き出したいのであれば、経営統合という選択肢がベストなのではあるまいか。

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2)【本日の一行情報】

◎マガジンハウスは「Dr.クロワッサン リンパストレッチで不調を治す!」の刊行記念イベントとして、監修者・加藤雅俊によるストレッチ体験会を4月25日(土)に「小田原ダイナシティイースト」1F吹き抜けで開催する。
http://www.dynacity.jp/cm/news/3941
この「リンパストレッチ」が当たったならば、DVD付で第二弾を刊行するとか、二の矢、三の矢を考えた取り組みが必要になってくるはずだ。また、「Dr.クロワッサン」は、デジタルとの相性も良いはずだから、ウエブサイトも立ち上げるべきだろう。あるいは新聞社と組んで、「Dr.クロワッサン」新聞を無料で配布するといった試みもあって良いだろう。これからは定期刊を考えるよりも、まずブランドとして、増殖させることを優先すべきだと私は考えている。

◎「別冊フレンド」が13日に発売された5月号で創刊50周年を迎えたのか。50年って凄いことだと思う。「別冊フレンド」の創刊は1965年だが、1965年から逆に時間の物差しを伸ばした50年前というと、世界は第一次世界大戦の真っただ中にあった1915年だからね。
http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0413/man_150413_9573266126.html

末次由紀のマンガ「ちはやふる」(講談社)が実写映画化されることになった。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1504/13/news078.html
講談社は「デザート」に連載中の「おはよう、いばら姫」(森野萌)を当てたいようだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000615.000001719.html

民主党岡田代表ツイッターアカウントが乗っ取られてしまった。長澤まきが乗っ取り対策を三つあげている。「パスワードはサイトごとに変える」「2段階認証を設定する」「ブランド品などは、信頼できるショップで購入する」。
http://irorio.jp/nagasawamaki/20150413/220801/

文藝春秋と旺文社は、「東大合格生の秘密の『勝負ノート』」(太田あや)発売にあたり、共同で〜あなたのノートは美しい!?〜"「勝負ノート」で目指せ合格!"コラボキャンペーンを展開中だが、同キャンペーンを記念して、「ノートを借りてみたい東大卒小説家は?」アンケートを実施、その結果が発表された。1位はダントツで夏目漱石星新一芥川龍之介森鴎外三島由紀夫…とつづく。
http://hon.bunshun.jp/articles/-/3587
私がノートを借りてみたい小説家は、残念ながら東大卒ではない。日大中退の埴谷雄高だ。

◎地方紙ならではの報道だ。
日本雑誌協会(東京)がIT企業ルーラー(札幌)と連携して、インターネット上で女性誌を試し読みできる無料サービス『ネクストマガジン』を、春の大型連休に合わせて実施する」(北海道新聞)
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/economy/economy/1-0122343.html
ネクストマガジン」は日本雑誌協会の国際委員会の企画だが、国際委員会の委員長をつとめているのが、ハースト婦人画報社のイヴ・ブゴン社長であり、ルーラーはハースト婦人画報社の仕事を多く手掛けている。

◎私の周辺で門井慶喜の「東京帝大叡古教授」(小学館)が話題になっている。日露戦争期を舞台にした歴史ミステリーということなのだが、「叡古」という命名は、明らかにウンベルト・エーコに対するオマージュであろう。
http://www.shogakukan.co.jp/books/detail/_isbn_9784093864084
門井は講談社から「パラドックス実践 雄弁学園の教師たち」を刊行しているが、これは講談社が大日本雄弁会として創業されたことを意識してのことだろう。何とイタロ・カルヴィーノデイヴィッド・ロッジの影響を20歳にして受けていると発言しているではないか。
http://kodansha-novels.jp/0906/index.html
週刊文春」の書評で「『八月の砲声』を聞いた日本人―第一次世界大戦」と植村尚清『ドイツ幽閉記』の奈良岡聰智に絶賛されている。
「近年、日本近代史を素材にした歴史小説に取り組んできた門井慶喜は、本書で歴史とミステリーを見事に融合させ、新境地を切り拓いた」
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/4991
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2013060200013.html
これは買わないわけにはいくまい。ついでに「竹島」(実業之日本社)あたりも読んでおくか。

◎「本」にかかわるキュレーション・メディア「BIRDY」(バーディ)が、4月13日に立ち上がった。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000013410.html
https://bdy.jp/
ネクスト・アカデミーが運営する。ネクスト・アカデミーは「BIRDY」について「みなさんの知的好奇心『知る・知りたい』を刺激し、加速させ、それをさらに繋げるインターネット上の本屋」だそうだが、圧倒的に欠けているのもまた「知」なのである。

◎韓国が産経新聞の加藤達也前ソウル支局長の出国禁止を漸く解除した。産経新聞は号外を出した。
http://www.sankei.com/module/edit/pdf/2015/04/20150414kato.pdf

◎これは目から鱗が落ちる!一ノ瀬俊也は「日本軍と日本兵 米軍報告書は語る」(講談社現代新書)も面白く読んだが、「戦艦大和講義」(人文書院)の面白さは半端ではない。一気に読ませる。おいおい「宇宙戦艦ヤマト」や「艦これ」も論じられているぞ!
「講義のキーワードは『特攻』と『アメリカ』、この二つです。大和(=ヤマト)の物語研究は、戦後日本人にとってこの二つがいったい何だったのかを考えることでもあります」
http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b193380.html

◎来年50回という節目を迎える吉川英治文学賞はシリーズ大衆文学とその著者を顕彰すべく、吉川英治文庫賞を創設することになった。
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/20150410newsrelease.pdf

◎トマ・ピケティの「21世紀の資本」(みすず書房)が電子書籍化される!4月27日から配信開始。
http://www.msz.co.jp/misuzu/ebook_07876_20150413/

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3)【深夜の誌人語録】

他人から信用されようと思ったならば、まず時間を守ることだ。些細なことの積み重ねが信用を形成するのである。