【文徒】2015年(平成27)4月14日(第3巻70号・通巻515号)

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1)【記事】雑誌情況への提言 プラットフォームの構築を
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】雑誌情況への提言 プラットフォームの構築を

客 雑誌を擁する出版に限らず、マス4媒体と称されていたビジネスが大きく変わろうとしている。
主 インターネットとどう融合するのかが、それぞれ問われているということなんだよね。それはインターネットをこれまでやってきたビジネスに従属させることではないというところが、まあ肝なんだけどね。雑誌が「主」で、インターネットが「従」という考え方では、ネットとの融合は果たせないとオレは考えている。
客 雑誌からネットに乗り換えれば良いというものじゃないんだよね。
主 ネット系の企業が「紙」の雑誌にこだわりだしているじゃない。それに今日の一行情報でも紹介したけれど、旅行ガイドブック「ことりっぷ」は紙の出版であっても大成功を収めているよね。紙の出版はまだまだ縮小するだろうけれど、そう簡単には絶滅しないはずさ。
客 でも出版業界は歴史も伝統もある世界だけにインターネットやデジタルに対する偏見は根強いし、そうした偏見と表裏一体だと思うのだけれど妙な楽観主義も一方で未だに蔓延っている。
主 自らをコンテンツ供給会社だと位置づけるとダメだと思う。コンテンツ供給は、カネにならないことは雑誌を出している出版社であればわかっているはずなんだけどな。だって書籍で黒字にならなかったじゃない。それをカバーしたのが雑誌でしょ。ところが、現在、雑誌の果たしていた役割がインターネットのプラットフォームに移行しつつある。こう考えるのであれば、雑誌はプラットフォーム戦略が問われているということになるのではないか。ここのところは、とても重要だと思うよ。cakesってあるじゃない。
客 ダイヤモンド社で「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を大ヒットさせた加藤貞顕が創業したピースオブケイクスが運営しているプラットフォームだよね。
主 オレはcakesって今の時代が求めている雑誌の一つのあり方だと思っている。やはりピースオブケイクスが立ち上げたnoteにしてもそうだよね。しかも、講談社小学館という大手出版社が手がけてしかるべき仕事だったはずだよ。
客 紙の雑誌を単純にデジタルに移行すれば良いというものじゃないと言いたいんだろ。
主 紙の雑誌の読者は絞り込んでも良いけれど、インターネットでは間口をできるだけ広く取る必要があるということさ。紙とネットの融合とは、実は垂直軸のコミュニケーションと水平軸のコミュニケーションを両立させることだとオレは考えているんだよ。マンガの世界では、そういう兆候が見て取れるよね。問題は女性誌とジャーナリズムの部分でどうするかなんだよ。そこいら辺を強く意識して、「文徒」の記事や一行情報を書いているつもりさ。

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2)【本日の一行情報】

KADOKAWAのベストセラー「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」が白泉社でマンガ化され、少女マンガ雑誌LaLaDX」で連載がスタートした。
http://www.narinari.com/Nd/20150430987.html

◎「週刊文春」によって報じられたNHK「クローズアップ現代」の「やらせ疑惑」。最初、NHKは自信満々だったのに雲行が怪しくなってきたのは周知の通りだが、東スポが紹介した「民放の報道系ディレクター」の次のような発言が気になる。
「天下のNHKにこれをやられると痛い! 番組制作において、いわゆる"仕込み"は付きもの。表面上、それは決して認めてはいけないことなのに…」
「ぶっちゃけ、ドラマのエキストラと同じように、仕込み専門の業者も存在する。それでも決して仕込みと認めてはいけないのがこの業界の暗黙のルールなのに」
テレビにとって「やらせ」と「仕込み」は違うという認識が常識なのだと発言しているわけだ。
http://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/388358/
具体的にいえば、こういうことがテレビではまかり通っている。「同じ番組で同一人物が何度も街頭インタビュー」に応じたり、「同じ人物が違う番組でインタビューに応じる」ということがテレビではあるということだ。まとめサイトには次のような動かぬ証拠が列挙されている。
http://matome.naver.jp/odai/2141459832773232601

ディー・エヌ・エーは、同社が運営する「DeNAショッピング」のコンテンツとして、提案型のウェブファッションマガジン「Lily」(リリー)」を立ち上げた。ここで紹介されているファッションアイテムは、すべて「DeNAショッピング」で購入できる。
http://www.dena-ec.com/lily/index.html
http://shopping-tribe.com/news/17275/

昭文社の旅行ガイドブック「ことりっぷ」が累計発行部数で1000万部を突破しているという。情報「量」を売り物にするガイドブックが主流であるなか、「ことりっぷ」は「量」から「質」への転換をものの見事に果たしている。オリコンスタイルが次のように書いている。
「情報量が勝負と言われるガイドブックにおいて、『ことりっぷ』の情報量は既存のガイドブックのわずか4分の1程度。それにもかかわらずヒットしたのは、編集部が厳選した情報への信頼感が得られた証。今、流行のキュレーション型を、7年前にガイドブックで実践したことが成功のポイントだったのだ」
http://www.oricon.co.jp/news/2051437/full/
ウエブサイトも充実しているし、「ことりっぷマガジン」も擁している。
http://co-trip.jp/

◎これ凄いな。実業之日本社から刊行された「ロリィタ聖地巡礼手帖 in 東京」!「ロリータ」ではなく「ロリィタ」と表記していることからして、こだわり具合がうかがえる。
「アリス系レストラン全店、執事喫茶、ヴァンパイアカフェ、ゴールデンボンバー歌広場淳さんのフルーツパーラーなどのコンセプト喫茶や、キティちゃんやQ pot.などのコンセプトホテルルーム、三段のアフタヌーンティートレイでサーブされるクラシカル喫茶、ロリィタ専門ブランドショップ、洋館、耽美系の作品を紹介する美術館などなど…。ロリィタ達の間で人気のスポット101箇所を紹介。今までどこにもなかった本です!」
http://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-11129-2

電通は、TBS制作のテレビ番組「SASUKE」の欧州向けフォーマット権を取得。今後2年間にわたり、電通の海外本社である「電通イージス・ネットワーク」傘下のブランド各社、特に、新しい概念のコンテンツを創造することをミッションとする「ストーリーラボ」と協業しながら北欧を除く欧州全域で独占的なフォーマット販売を行う。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0413-004026.html

◎「東大ハチ公物語 上野博士とハチ、そして人と犬のつながり」(東京大学出版会)が売れている。NHK「ひるまえほっと」が取り上げたことが大きいようだ。
http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-066162-1.html

◎第一回日本翻訳大賞が「エウロペアナ:二〇世紀史概説」阿部賢一、篠原琢訳(白水社)と「カステラ」ヒョン・ジェフン、斎藤真理子訳(図書出版クレイン)に決定した。図書出版クレインは確か「ひとり出版社」のはず。「佐藤泰志作品集」も、この版元の仕事である。
https://besttranslationaward.wordpress.com/
図書出版クレインは次のようにツイートしている。
「『カステラ』が日本翻訳大賞の大賞を受賞いたしました。「エウロペアナ:二〇世紀史概説」(白水社)と同時受賞です。応援いただきましたみなさま、ほんとうにありがとうございました。こうしたことをきっかけに、韓国・東アジアの文学がもっともっと読まれ、どんどん訳されることを願っています」
https://twitter.com/cranebook/status/587438417287348224

朝日新聞出版でシニアスタッフとして働く小島清が知人女性に面会を強要したとして、強要未遂容疑で現行犯逮捕された。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2015041300212
朝日新聞出身の烏賀陽弘道が次のようにツイートしている。
「昔の『ぱそ』編集長さんじゃないか!!私の上司だった人じゃないか!!」
https://twitter.com/hirougaya/status/587469118887985152
小島容疑者は朝日新聞出版で開発部長もつとめていた。ムック「憧れのボルドーへ」は小島の仕事だ。
http://www.keyring.net/magazine/vol024.html

KADOKAWAから「まおゆう魔王勇者」「ログ・ホライズン」など人気ライトノベルを刊行していることで知られる作家の橙乃ままれが社長を務める著作権管理会社「m2ladeJAM」(マーマレードジャム)が法人税約3000万円を脱税したとして、東京国税局が同社と橙乃ままれ法人税法違反容疑で東京地検に告発していた。
http://www.asahi.com/articles/ASH48538QH48UTIL01J.html
しかし、この朝日新聞の記事にはKADOKAWAの「カ」の字もないのだけれど、そのことが逆に不自然に思えて来るから不思議だ。
http://www.kadokawa.co.jp/sp/201108-06/

◎ゲームソフトの開発会社だが、ゲームの攻略本なども刊行していたエム・ツーが破産手続きを開始していた。
http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20150327_01.html

楽天幻冬舎は、幻冬舎発行の女性誌「GINGER」の監修や電子雑誌事業を展開するブランジスタの制作協力のもと、スマホ向けの無料ファッション誌「GINGER mirror」を創刊した。
http://corp.rakuten.co.jp/news/press/2015/0413_01.html

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3)【深夜の誌人語録】

臆病に支えられていない勇気は勇気と言わない。それは無謀にしか過ぎまい。