【文徒】2015年(平成27)4月20日(第3巻74号・通巻519号)

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1)【記事】「CasaBRUTUS」と木滑良久
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】「CasaBRUTUS」と木滑良久

これは木滑良久へのオマージュに他ならない。創業70周年に相応しい特集だ。「CasaBRUTUS」の特集「made in USA catalog」。
木滑は平凡出版(=マガジンハウス)を辞めて「made in USA catalog」を刊行する。版元は読売新聞だった。今から40年前の話だ。「CasaBRUTUS」は、既に電子版をリリースしているが、この号をもって、4月16日、Newsstand版をリリースすることになった。Newsstand版を配信するにあたり、アドビが提供する電子出版ソリューションであるAdobe Digital Publishing Suiteを採用した。
Newsstand版は日本版と国際版を制作。しかもアプリケーションを初めてダウンロードするユーザーに最新号の権利を付与するFirst Folio Free機能を活用し、無料で提供する。マガジンハウスは、将来的にはムックおよび特別編集号の配信や、プリント版定期購読およびWebマガジン「casabrutus.com」と連携した各種サービスや特典の提供を予定しているそうだ。
http://blogs.adobe.com/japan-conversations/casa_brutus_dps/
言うまでもなく「made in USA catalog」を母胎にして「ポパイ」が生まれる。創刊当時の「ポップアイ」の書き手を一堂に集めた特集もやって欲しいなあ。
その昔、木滑良久は私に次のように語ったことがある。
「雑誌の基本というか、雑誌を支えるチカラは『言葉』なんですよ。『言葉』によって文脈を作っていかないと、雑誌は絶対に売れないんだよね。ただ、『言葉』を新たに発見するなり、生み出すのは思い込みの激しさではありません。ここを誤解してはならない。
そもそも思い込みが激しい人間に雑誌の編集長はつとまらない。思い込みが激しい人間って地球は変わる、地球は変えられると信じ込んでしまう。でも、雑誌にできることは、せいぜい着ている服を変えることぐらいでしょう。人間の中身はそう変わらない、変えられない。オレだってそう。
結局、思い込みの激しい奴は思い込みの激しいまま、最後の最後まで人間の中身を変えられると思って、小手先でインチキばかり重ねて死んでゆく。そんなものですよ。ある意味、幸せなんですよ。僕はそういう幸せだったら要らない。
マガジンハウスを辞めて出て行っても、マガジンハウスでロクな雑誌を作れなかった奴の結果は、結局、最悪になるよね。
長年にわたって雑誌の編集をしてきて、しみじみと分かったのは、編集者は渡辺貞夫のような自らの演奏をもって稼いでいるのではないということです。本質的に影の存在であって、私が、私がって表に出たがる奴に絶対に編集長はつとまらない。雑誌よりも編集長が目立ってもしようがないでしょ。
編集長は東大を出ている必要も、目立つ必要もないけれど、演奏者のいい加減さをどこまで許容できるかなんですよ。それが編集長の度量なんです。編集長としての度量は、どれだけ大胆であるかであり、どれだけ繊細であるかによって決まるということです」

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2)【本日の一行情報】

朝日新聞社は、シリコンバレーを本拠地とするベンチャーキャピタルのグローバル・カタリスト・パートナーズが組成したファンド、「Global Catalyst Partners Japan」に有限責任組合員として参加した。
http://www.asahi.com/and_M/information/pressrelease/CPRT201512513.html

◎「週刊ポスト」によれば、朝日新聞社は「賃貸事業は売り上げこそ本業の4%程度だが、利益は本業の40%も稼いでいる」そうだ。
http://www.news-postseven.com/archives/20150416_316139.html

まとめサイトを見ていると「角川書店」の名前が消えると大騒ぎしているが、問題はそこではあるまい。事業局としてブランドカンパニー時代と同様に頭に「アスキー」がつくにせよ、「メディアワークス」という名前が残ることが最大の問題である。
角川書店」の創業者は角川源義であって角川歴彦ではないのだ。メディアワークスは言うまでもなく、角川歴彦の創業である。角川歴彦にとって佐藤辰男メディアワークス創業の同志である。今回のリストラでメディアワークスの社員の何人がKADOKAWAを去ることになったのか。
http://matome.naver.jp/odai/2142914582467246801
http://matome.naver.jp/odai/2142915833081692901
これだけ会社をグチャグチャにしておいて、角川歴彦佐藤辰男、松原眞樹の三馬鹿トリオは誰も経営責任を取ろうとしない。この一点からしてKADOKAWAという企業は異様である。
角川歴彦紀伊國屋書店講談社に声をかけて設立した日本電子図書館サービスにしても、私から言わせれば角川の無責任が際立っている。結局、大日本印刷傘下のTRCの協力なくしては何もできないじゃないか。
角川歴彦アドバルーンを上げるのは得意だが、テメエのケツを自分で拭くことはできない経営者であると私は認識している。

◎「東洋経済オンライン」によればNTTドコモの「dマガジン」で「最も人気なのは写真週刊誌の『FRIDAY』と『FLASH』。女性誌やライフスタイル系雑誌もランキングの上位に並ぶ」そうだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/66778

◎5月23日より公開が予定される映画「チャッピー」は日本向けに編集されているそうだ。
ソニー・ピクチャーズはユーザーの質問に答える形で次のようにツイートしている。
「映画『チャッピー』についてご質問を頂き有難うございます。本作品につきましては日本での劇場公開に際しまして、より幅広い層のお客様にご覧になっていただくため、米国本社と協議を重ねまして、監督の賛同を得た上で、作風を損なわない形で、映倫からの指摘に沿い米国で編集を加えました結果、PG12の区分での公開が決定致しました」
https://twitter.com/SonyPicturesJP/status/588237403363667970
このツイートだと、ニール・ブロムカンプ監督も同意しての編集であるかのような書き方であるが、日本からのオリジナル版を見たいという英語でのツイートに対して、ブロムカンプは「don't know what you mean. One edit…worldwide」と応じたそうだ。
ブロムカンプは描写の一部が日本ヴァージョンではカットされたことを知らなかったのである。
http://rocketnews24.com/2015/04/16/570874/?utm_medium=partner&utm_source=gunosy
ソニーが作家の「表現」よりも興行という商売を優先させたことは間違いないようだ。

毎日新聞の4月17日付社説「テレビ局聴取 政権党は介入を控えよ」は次のように結ばれている。
「圧力ではないと説明しても、『要望』のかたちをとったパフォーマンスは威圧効果を持つ。政権党はもっと自制的にふるまうべきだ」
http://mainichi.jp/journalism/listening/news/20150417org00m040005000c.html

産経新聞出版社長の皆川豪志は次のように書いている。
「政府や与党に批判されるとすぐに『委縮』したり、『委縮しかねない』などとビビりまくる一方で、民間人から堂々と言論で批判されると、今度は名誉棄損で訴訟を連発するという彼らのお仲間も北海道にいます。一体彼らは、どこまで安全地帯から『悪乗り』を続けるつもりなのでしょうか。『俺はこのネタに命を賭けてるんだ!』という潔さというか、格好よさはないのでしょうか」
http://www.sankei.com/entertainments/news/150416/ent1504160007-n1.html

社会福祉法人ひまわりの会が朝日新聞社を被告とした名誉棄損訴訟の和解が成立した。「Business Journal」弁護士の山岸純が「朝日新聞、また誤報で謝罪文掲載 記事取り消し被害者へお詫び、方針ありきのずさんな取材」を書いている。
http://biz-journal.jp/2015/04/post_9634.html
朝日新聞は4月17日付で「社会福祉法人『ひまわりの会』の記事を訂正し、おわびします」との記事を掲載した。
http://www.asahi.com/articles/DA3S11708975.html
新聞は権力を監視するのが使命らしいが、そうだとすれば新聞という権力に対しても当然厳しい監視が必要なはずである。

◎「ハーバー・ビジネス・オンライン」で江川紹子が「ろくでなし子」事件の本質を喝破している。
「…ここで問題なのは、その芸術性ではない。マスメディアが好む『わいせつか、芸術か』という切り分けは、本件では全く無意味だ」
「刑罰によって表現の自由を制限しなければならないほど、善良な性的道義観念に反しているのだろうか。ここが、この裁判で一番吟味されなければならない争点だと思う」
http://hbol.jp/34762

ヘアヌード写真集「深海」(双葉社)の芹菜々子は山本太郎参院議員の「元妻」?双葉社東スポの取材に明言を避けているが、アダルトビデオもリリースされるらしい。
http://www.tokyo-sports.co.jp/entame/entertainment/390191/

愛川欽也が亡くなった。いつも鞄の中に「日本国憲法」を入れて持ち歩いていたそうだ。
http://withnews.jp/article/f0150417007qq000000000000000G0010601qq000011861A
これも初耳。元木昌彦は愛川の鶴の一声で「パックインジャーナル」(朝日ニュースター)の準レギュラーを降板させられたそうだ。
http://www.j-cast.com/tv/2015/04/17233341.html

◎味覚糖から発売となる「MIXON」は、「DIME」(小学館)の商品企画ラボ"理想のおやつ"プロジェクトから生まれた。
http://dime.jp/genre/185484/

学研パブリッシングとブックビヨンドは、女性ファッション誌「mer」(メル)電子版の配信を開始した。これにより学研パブリッシングの電子雑誌は全12誌に、学研グループとしては全18誌になる。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000162.000009949.html

GMOメディアが運営するファッション共有SNS「CoordiSnap」(コーデスナップ)は、学研パブリッシングの「mer」と共同で、おしゃれが大好きな街の女のコの夢を叶える/応援する“夢実現プロジェクト”「Dream Girl Project」を開始した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001623.000000136.html

◎LINEは、100%子会社のBonsai Garageを通じ、コマース事業戦略の一環として、ファッションコマース領域に参入し、今夏を目処に、国内外の気鋭デザイナー・ブランドと、有力なバイヤー・小売をつなぐ「LINE Collection」を開始する。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/977

講談社女性誌FRaU」は、5月号<行こうよ!バンコク>特集を記念して、5月11日(火)までTwitterキャンペーンを開催している。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000624.000001719.html

ファーストリテイリンググループで低価格衣料品を手がけるジーユーのファッション情報サイトの「G.PAPER」は、デジタル雑誌のスタイルを取り入れることで、サイトの閲覧頻度を向上させてネット販売での購買につなげる戦略だという。多くのファッションECサイトが雑誌化することは間違いあるまい。既存の女性ファッション誌は、こうした動向に対応を迫られているということだ。
http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2015/04/post-2157.html
http://www.gu-japan.com/gpaper/

崎陽軒は、KADOKAWAとコラボして、4月24日(金)・25日(土)・26日(日)の3日間限定で「横浜ウォーカー5月号」の表紙をモチーフに掛け紙をデザインした「炒飯弁当」(税込830円)を崎陽軒店舗にて発売する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001458.000007006.html

楽天は、楽天ポイントが使えるAndroidアプリストア「楽天アプリ市場」を6月下旬にオープンする予定だそうだ。
http://corp.rakuten.co.jp/news/press/2015/0417_02.html
楽天は大阪屋を傘下に収めるなど、出版業界に深く関与している企業のひとつだが、楽天の持つ「速度」に出版業界が振り回されることも、今後、増えて来るだろう。出版業界の、出来る限り歩調を合わせようとする「護送船団」的な発想は、楽天からすればビジネスチャンスの喪失を意味することになるからだ。出版業界にとって楽天もアマゾン同様に黒船にほかならないということだ。しかも、アマゾンと違って楽天の本質が金融業であることを見誤ると出版業界は痛い目をみることになるだろう。

◎米「タイム」による「世界で最も影響力のある100人の人物」2015年版が発表された。日本からは村上春樹近藤麻理恵の二人が選ばれた。
「人生がときめく片づけの魔法」(サンマーク出版)の近藤麻理恵である!何とアメリカで32万部を超えるベストセラーになっているんだって!!
http://gigazine.net/news/20150417-time-100-people/
安倍晋三は落選した。

主婦の友社は、「S Cawaii!」で連載していたざわちんのものまねメイクを一冊にまとめた「S Cawaii!特別編集『ざわちんメイクまとめ。』」を刊行した。通常版800円、特装版マスクつきが900円だそうだ。
https://www.youtube.com/watch?v=2k5Sq5GZbg4
https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/3845

◎、「週刊東洋経済」 4 月25 日号の特集は「買っていい株 ダメな株」だが、「週刊モーニング」(講談社)で人気連載中の 投資漫画「インベスターZ」とコラボしているぞ!
http://corp.toyokeizai.net/news/wp-content/uploads/sites/5/2015/04/20150417.pdf
こうした出版社の垣根を越えたコラボは、もっと増えれば良いと思う。

実業之日本社WEBマンガサイト「COMICリュエル」から初の単行本が生まれた。オオタガキフミ「京のとっとき お教えします」がそうである。ガイドブックは実業之日本社の得意とするところだ。
http://natalie.mu/comic/news/144481

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3)【深夜の誌人語録】

不意をつかれるのは、前のめりになり過ぎているからである。