【文徒】2015年(平成27)6月5日(第3巻104号・通巻549号)

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1)【記事】雑誌は、例えば「トリッピース」に学びたい
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】雑誌は、例えば「トリッピース」に学びたい

光文社の「CLASSY.」が4月号で取り上げていた「トリッピース」は、創業4年で会員数約19万人、年間2万人以上が利用するソーシャル旅行サービスだ。「キャリコネニュース」が次のように紹介している。
「旅の流れは、誰かが『行ってみたい旅の企画』を投稿すると、それを『面白そう!』と思った人たちが集まります。5人以上集まったら、『いついこうか?』『なにしようか?』とみんなで話し合って詳細を決め、提携旅行会社に企画をツアー化してもらえるのです」
https://news.careerconnection.jp/?p=12350
味の素とともに「集ろうプロジェクト コーヒー探検隊」キャンペーンも開催するなど、企業とのコラボも増えている。
http://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/trippiece/press/115/pdf/115551bdf27f0ef2.pdf
トリッピースの社長は、石田言行。「言行」は「いあん」と読む。被爆した日本人の祖母と米国人の祖父の孫だそうだ。「トリッピース」は、石田が学生時代にSNSを通じて集まった人たちとバングラデシュ旅行をした体験に着想を得て、中央大学商学部在学中に起業した。「東洋経済オンライン」は、こう書いている。
「大学在学時に自分で企画した『うのあんいっち』のバングラデシュへのスタディツアー。貧困国の現状を目の当たりにしたい、そんな思いからツイッターなどのSNSで知り合いに呼びかけたところ、たちまち18人の参加者が集まった。これを旅行会社に持ちこんでツアーとして実施。マイクロファイナンスで知られるグラミン銀行ムハマド・ユヌス氏との面会も実現するなど、充実した旅となった。トリッピースが提唱する旅の原型だったといえる」
http://toyokeizai.net/articles/-/18215
雑誌が実現しなければならないのは、「トリッピース」が実現しているような「ソーシャル化」にほかなるまい。舞台を紙からインターネットに移しても、一方的に情報を流しているだけではデジタルシフトを果たしたとは本質的に言えないはずである。編集者に問われているのは、読者に雑誌を開く覚悟である。

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2)【本日の一行情報】

◎私は「モノ出版」と勝手に読んでいるが、主婦の友社から2年前に発売された「足指パッドつき つけるだけ 歩くだけでやせる 魔法のパッド」が、2015年上半期オリコン“本”ランキング 美容・ダイエット部門にて、2年連続の1位を獲得している「ロングセラー」となっている。
累計で56万5000部。第2弾の「足指パッドつき つけるだけ 歩くだけでやせる魔法のパッド PRO」も累計34万部。第3弾の「つけるだけで姿勢もよくなり、足も速くなる!魔法の育足パッド 大山式ジュニアforKIDS」が累計3万5000部。三点の合計が94万部となり、100万の大台を目前にしている。
http://corporate.shufunotomo.co.jp/newsrelease/8325/
こちらはシリーズ累計20万部という「1日3分巻くだけ!絶対小顔コルセット」の新装版「New!小顔コルセット」も主婦の友社から発売された。「小顔コルセット」とは、1日3分巻くだけで、顔のゆがみやむくみが改善され、小顔に導く、「額用」と「フェイスライン用」の2本のバンドのことだ。
http://corporate.shufunotomo.co.jp/newsrelease/8334/
「モノ出版」の最大の特徴は、言うまでもなくデジタル化できないということである。

KADOKAWAは、休刊した「電撃ホビーマガジン」の役割を引き継ぐ形で、ホビー総合情報サイト「電撃ホビーウェブ」をリニューアルした。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1506/03/news043.html
紙から撤退し、デジタルに特化するリニューアルは、リストラなしに成立し得まい。

◎「NARUTO-ナルト-展」が7月18日から9月27日まで、大阪文化館・天保山にて開催される。
http://animeanime.jp/article/2015/06/02/23519.html

◎これは珍しいアクシデントだ。双葉社が5月25日に刊行したCoinsアクションオリジナル「クレヨンしんちゃんスペシャル 熱血!産休先生&ヌパン4世」で作品の重複があった。
http://www.futabasha.co.jp/news/index.html#coins_shinchan_sp

電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」は、ポーランドのデジタル・パフォーマンス・エージェンシー「マーケティング・ウィザーズ社」の株式100%を取得することになった。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0602-004062.html
タイのデジタルエージェンシー「フレックスメディア社」の株式51%も取得する。将来的に完全子会社化するオプションも獲得した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0603-004070.html
電通は「国内」において、より筋肉質な体質を志向し、「海外」に投資しつづけることになるのだろう。「国内」の電通がスタンダードではなく、海外の電通イージス・ネットワークが電通のスタンダードとなるのは、それほど遠い未来の話ではなかろう。そうならなければ、海外戦略が成功したとは言えないのだから。

◎湘南蔦屋書店が「終わりのない午後」と題して読書会を開催している。参加費はワイン・おつまみ付きで1000円(税抜)。「街の書店」で読書会を組織している書店は何軒あるのだろうか。
http://top.tsite.jp/news/campaign/24189946/

双葉社から6月19日に発売される住野よるの「君の膵臓をたべたい」は、ひょっとすると化けるかもしれない。
http://www.futabasha.co.jp/introduction/2015/kimisui/
小説投稿サイト「小説家になろう」から生まれた作品である。作品を読み終えたあと、タイトルの意味は、読む前とは全くの別物となるほど「泣ける」内容なのだそうだ。
http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/412514/blogkey/1165863/
小説投稿サイトは「文壇」を破壊してしまうかもしれない。出版社の「あり方」が変わるということでもある。こうも問いたい。小説投稿サイトは「純文学」を育てられるのだろうか、あるいはポピュリズムが文学を侵食するとどうなるのかと。

実業之日本社が「ごはんのおとも」大賞をツイッターフェイスブックで開催している。フルカラーコミック「ごはんのおとも」に登場する「たまごの黄身のしょうゆ漬け」のアレンジレシピを募集している。紀伊國屋書店新宿南店、三省堂書店有楽町店、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店で配布している応募用紙を使って応募することもできる。
http://www.j-n.co.jp/topics/otomo.html

◎電子ブック作成ソフト「ActiBook」の提供を行うスターティアラボは、美女がお気に入りのマンガをインタビュー形式で紹介する書評サイト「美女マンガ」を6月2日に開設した。
https://www.startia.co.jp/_wsp/wp-content/uploads/2015/06/150602.pdf
こんな具合。
http://bijomanga.com/
こうなるとAV女優がお気に入りのマンガをインタビュー形式で紹介するってのも「あり!」だよな。「美女マンガ」は広告収益モデルの確立を目指すというから、「書評」自体はマユツバものだろうけどね。このサービスの本質はステマである。

七つ森書館読売新聞東京本社との間で係争中の出版差し止め訴訟で最高裁に上告するようだ。
http://www.sakurafinancialnews.com/news/9999/20150602_1

◎マガジンハウス「アンアン」の猫特集「にゃんこLOVE」。にゃんと253匹もの猫が誌面に登場している。表紙を飾っている猫はカメラマン山口明の愛猫パンチョだそうだ。
http://magazineworld.jp/anan/
これ「愛蔵版」を作れば売れるのではないか。

徳間書店から昨年9月に刊行されたポーランドの地図絵本「MAPS 新・世界図絵」が11万部と売れている。産経ニュースによれば「印刷から製本まですべてポーランドで行っている」とは驚きだ。
http://www.sankei.com/life/news/150603/lif1506030017-n1.html

博報堂 DY ホールディングスの戦略事業組織「kyu」は、米国シアトルのデジタル・クリエイティブ・エージェンシー「デジタルキッチン社」の株式を100%取得した。
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/pdf/HDYnews2015.06.03.pdf

トーハンの平成26年度決算は減収減益。総合売上高は4809億1900万円で前年比97.6%、送品前年比99.7%、返品前年比103.1%、 返品率は39.3%で前年より1.3ポイント上昇。
営業利益は60億4200万円、前年比100.3%。経常利益40億9500万円、前年比107.2%。税引前当期純利益は40億3900万円、前年比119.9%。当期純利益は21億3800万円、前年比96.7%の減益。
http://www.tohan.jp/pdf/68_kessan_shiryou.pdf

◎「BookRepublic」(ブクリパ)事務局は、プロの漫画家が投稿したネーム原稿を読者投票で一定数を上回ると電子書籍として出版する「トキワ荘プロジェクト」の提供を開始した。
http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/41329/
http://www.bookrepublic.jp/ne-mu-dig-project-test

リクルートの採用革命。「2つの応募条件」と「5つの特徴」。「2つの応募条件」は「2016年の4月に入社できること」「30歳以下であること」。「5つの特徴」は「面接でのスーツ着用禁止」「手書きの履歴書不要」「既卒でも応募可」「オンライン面接可」「入社後の副業可」。
http://recruit-jinji.jp/aboutrecruit2016/

文藝春秋は「週刊文春」をNTTドコモの電子雑誌の定額読み放題サービス「dマガジン」に配信を開始した。
https://www.atpress.ne.jp/news/62853

Amazonは、「本・コミック・雑誌、TVゲームソフト・TVゲーム機本体、DVD・ブルーレイ、ミュージックCD」の買取サービスを開始した。集荷は無料の宅配集荷サービスで、商品受領24時間以内に査定が完了し、ユーザーのアカウントにギフト券が自動で登録されるというもの。1点から買取申込みできるという。
http://www.amazon.co.jp/Trade-In/b/ref=amb_link_73931229_1?ie=UTF8&node=3085249051&pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_s=merchandised-search-leftnav&pf_rd_r=1A38460ZVY8BXSN8HEX6&pf_rd_t=101&pf_rd_p=207505349&pf_rd_i=3085249051

◎「月刊フラワーズ」連載中の吉田秋生海街diary」が、作品の舞台である鎌倉の江ノ電をジャックする。1〜6巻の見どころを集めた中吊りや、吉田が江ノ電と四姉妹を描いたイラストを使用したフラッグなどが江ノ電の一部車両や鎌倉・藤沢駅などを彩る。6月5日から約1か月間実施されるそうだ。
http://natalie.mu/comic/news/149498

こうの史代この世界の片隅に」の劇場アニメ化にあたって、クラウドファンディングプロジェクト「Makuake」で3月から支援を募集したところ当初目標額2000万円を大きく上回り、3374人の支援者から3622万4000円の支援が集まったそうだ。
http://natalie.mu/comic/news/149315
ノンフィクションもクラウドファンディングを真剣に考えるべきなのではないだろうか。これマジメに言っている。

吉川弘文館の「歴史文化ライブラリー」が、2015年4月で通巻400点を迎え、「歴史文化ライブラリー通巻400点達成記念フェア」を開催している。私の好きなシリーズのひとつである。
http://www.yoshikawa-k.co.jp/news/n11325.html

◎「ニコニコ静画」で「なかよし60周年記念新人本誌掲載争奪戦第二弾」が開催されている。
http://info.nicovideo.jp/seiga/nakayoshi60th_02/
マンガは「ソーシャル化の時代」を理解しはじめている。

富士山マガジンサービスは、東京証券取引所マザーズ市場に上場することになった。
http://shopping-tribe.com/news/19283/

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3)【深夜の誌人語録】

「知らない」という無知を曝け出せる勇気を持ちたいものである。