【文徒】2015年(平成27)6月8日(第3巻105号・通巻550号)

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1)【記事】KADOKAWAの「クールジャパンフォレスト構想」
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】KADOKAWAの「クールジャパンフォレスト構想」

KADOKAWAが敷地面積は約3万7380平方メートルの旧所沢浄化センター跡地を手に入れると私が埼玉新聞の記事をベースに書いたのは、2014年6月5日付「文徒」においてであった。正式にこの跡地を約33億円で取得したのは昨年10月のことであったようだ。
http://d.hatena.ne.jp/teru0702/20140705/1404512582
あれから1年が経過して、KADOKAWAと所沢市の藤本正人市長は6月4日、東京都内で共同記者会見し、「クールジャパンフォレスト構想」を発表した。
これによれば、西武ドームのグラウンドの3倍に当たる旧所沢浄化センター跡地を利用して、隣の三芳町に分散していたKADOKAWAの印刷、製本、出荷機能を集約するとともに図書館や美術館、博物館、学校、託児所、カフェを融合した文化施設を2020年の東京五輪までに建設するという。ジェネラルプロデューサーには角川歴彦KADOKAWA会長、藤本市長が就任する。
また、「アドバイザリーボード」メンバーには、建物の設計を担う隈研吾、作家の荒俣宏、編集工学研究所の松岡正剛所長、CCCの増田宗昭社長、森美術館の南條史生館長ら9人がアドバイザーに就任するそうだ。総合事業費は最大300億円を予定しているようだ。
ただし、事業費はKADOKAWA単独で負担しないで、提携先などを模索する方針だそうだ。
当然、CCCあたりも出資することになるのではないか。また、大取次も提携先に名乗りを上げるのかもしれない。
企画準備会社としての「(株)ところざわサクラタウン」がKADOKAWA の100%出資で 7 月 1 日に設立される。代表取締役社長には松原眞樹が就任する。KADOKAWA所沢市が構想実現に向けて検討、協議する共同プロジェクトの推進会議「TEAM START」(S=サクラ、T=タウン、ART=アート)も発足する。
https://www.city.tokorozawa.saitama.jp/shiseijoho/keikaku/cooljapanforest/index.files/FINAL_20150604_08.pdf
http://www.yomiuri.co.jp/local/saitama/news/20150604-OYTNT50365.html
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ04HLW_U5A600C1TJC000/
それにしても、と思う。KADOKAWAが「クールジャパンフォレスト構想」を実現するためにリストラが必要だったということなのだろうか。リストラされた元社員は「クールジャパンフォレスト構想」の捨石にされたのかもしれない。
新将命の「経営の教科書」(ダイヤモンド社)によれば、企業は利益を得るために存在するのではなく、利益は企業にとってのガソリンであり、企業の目的地はステークホルダーに対して責任を果たすことであり、最も身近なステークホルダーは社員であると書いている。
社員がステークホルダーだという意識は角川歴彦にも、佐藤辰男にも、松原眞樹にもないのだろう。私が彼らを「三馬鹿トリオ」と称する所以である。

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2)【本日の一行情報】

◎銀座のクラブでホステスのアルバイトをしていたことを理由に内定を取り消されたが、その後、裁判で和解が成立し、目出度く日本テレビにアナウンサーとして入社した笹崎里菜が「1億人の大質問!? 笑ってコラえて!」でテレビ初出演した。日本テレビの胃袋は強い!
http://www.47news.jp/topics/entertainment/oricon/culture/173662.html

佐渡島庸平が教育とテクノロジーの祭典「Edu×Tech Fes 2015」で行った講演を「logmi」が紹介している。
「ビジネスモデルというものをゼロから全員がつくっていかないと成立しなくなっている。ビジネスモデルをつくるということ自体が、どんな産業にも求められていて、まったく同じ産業をやっているように思えて漫画をつくるということをやりながらも、会社ごとにまったく違う利益の上げ方をしている。まったく違う儲け方をしているということが生まれてきちゃっているというのが、これからの時代だと思うんです」
http://logmi.jp/53071
「これまで」に拘泥されている限り「これから」はないということだ。

◎LINEは、最大200人まで同時に音声通話ができる無料グループ通話アプリ「Popcorn Buzz」(Android対応/無料)を公開した。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/1005
その昔、パーティーラインなんてのがあったよなあ。性風俗史的にいえばパーティーラインを経てダイヤルQ2に至った。

◎エイベックス・デジタル、ソニー・ミュージックエンタテインメント、LINEの三社共同出資によって設立したLINE MUSICに、ユニバーサル ミュージックも資本参加することになった。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/1006

◎「good!アフタヌーン」(講談社)で連載されているマンガ「亜人」が3部作でアニメ映画化されることになった。「亜人」のコミックスは累計発行部数が320万部を突破しているが、アニメ映画化の発表はコミックス第6巻の発売に合わせて発表された。
http://www.cinematoday.jp/page/N0073823

◎レイバーネットTV「私はねつ造記者ではない!?植村隆元朝日記者、大いに語る」はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=1_njJrI8574&feature=youtu.be

◎「製紙業界『第三極』の主導権をめぐる大王と北越紀州の激突」は出版業界にとっても無縁ではあるまい。「東洋経済」の良記事である。
http://toyokeizai.net/articles/-/72164

◎映画監督の是枝裕和が「週刊文春」の取材の仕方に自らのブログで怒っている。「週刊文春」は「是枝監督がカンヌ、くまモンパーティーに怒った!」という記事を掲載している。
「記事は『もっと怒ったほうが良さそうです』とまとめられていますが、今、僕の中にある怒りと落胆は、パーティーに対するものではありません」
http://www.kore-eda.com/message/20150604.html
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/1487372.html

安田浩一が文春新書から「ヘイトスピーチ愛国者』たちの憎悪と暴力」を刊行した。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784166610273
安田は「リテラ」のインタビューに答えて「僕は記者としてこの問題に取り組むと同時に、自分を明確に『カウンター』(対抗者)のひとりだと思っています」と言い切っている。安田はドワンゴについても次のように批判している。
ドワンゴはたしかに在特会の公式チャンネルを打ち切ったかもしれない。それは在特に対する勝利だとしても、ドワンゴという企業に対する社会的なけじめはついていません。ドワンゴは自分たちが『差別に加担した』ということに対して、企業として明確に意思表示する必要がありますよね」
http://lite-ra.com/2015/06/post-1160.html
http://lite-ra.com/2015/06/post-1166.html

◎宝島社の女性ファッション誌「GLOW」7月号の附録はタンクトップだ。720円でタンクトップを買ったと思えば、安い買い物である。宝島社の女性ファッション誌が生き残る道は、とことん附録にこだわりつづけることである。
http://youpouch.com/2015/06/05/272976/

◎「岡田斗司夫氏のメディア降板署名キャンペーン」が展開されている。岡田は現在、朝日新聞紙面で人生相談コーナー「悩みのるつぼ」の回答者と、ABC朝日放送にて情報バラエティ「正義のミカタ」のコメンテーターをつとめている。
https://www.change.org/p/%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E6%9C%9D%E6%97%A5%E6%96%B0%E8%81%9E%E7%A4%BE%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3abc%E6%9C%9D%E6%97%A5%E6%94%BE%E9%80%81%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BE-%E5%B2%A1%E7%94%B0%E6%96%97%E5%8F%B8%E5%A4%AB%E6%B0%8F%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E9%99%8D%E6%9D%BF%E3%82%92%E6%B1%82%E3%82%81%E3%82%8B%E7%BD%B2%E5%90%8D%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%B3
岡田は「朝日文化人」のひとりであるようだ。

内田洋行学研ホールディングスは、学校教育向けコンテンツビジネスの開発・推進を中心に協業を進めることで合意した。
http://www.uchida.co.jp/company/news/press/150604.html

◎6月5日付西日本新聞はワシントンで開催されたニュースメディア大会の模様を伝えている。ニューヨークタイムズのアーサー・サルツバーガー会長が一面会議をやめたと報告すると会場がどよめいたそうである。ニューヨークタイムズは電子版の広告収入が広告収入全体の約3割を占めるまで成長しているそうだ。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/article/173516
わが国の全国紙にとってデジタルシフトは、全国紙であるがゆえに容易ではあるまい。

◎アイドル応援アプリ「CHEERZ」が、アパレルショップ「spinns」、エンターテインメントカフェ&バー「Carnival Stars」と組んで、ライブイベント「iCON DOLL LOUNGE」を立ち上げる。
http://realsound.jp/2015/06/post-3439.html

◎エモーシブは、男性用ファッションコーディネート提案 アプリ「ベストスタイルミー」のiOSアプリ(iOS 7.0以上対応)をリリースした。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000011618.html
エモーシブの坂本慧代表取締役は、慶大卒業後、ホリプロに入社。2012年11月にエモーシブを創業する。
http://emosiv.com/

◎政治家秘書・参謀にして、「関東連合」創設最高顧問、上祐史浩元身元引受人といった肩書を持つオリコンの元編集長・渡邉正次郎の「芸能人、ヤクザ、政治家は弱い者イジメが大好き」(グツドタイム出版)は芸能界の裏などに触れていて興味深く読んだ。渡邉は徳間康快とソリが合わなかったようだ。千昌夫遠藤実藤圭子に触れた部分は迫力がある。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0CB0QFjAA&url=http%3A%2F%2Fwww.amazon.co.jp%2F%25E8%258A%25B8%25E8%2583%25BD%25E4%25BA%25BA%25E3%2580%2581%25E3%2583%25A4%25E3%2582%25AF%25E3%2582%25B6%25E3%2580%2581%25E6%2594%25BF%25E6%25B2%25BB%25E5%25AE%25B6%25E3%2581%25AF%25E5%25BC%25B1%25E3%2581%2584%25E8%2580%2585%25E3%2582%25A4%25E3%2582%25B8%25E3%2583%25A1%25E3%2581%258C%25E5%25A4%25A7%25E5%25A5%25BD%25E3%2581%258D-%25E6%25B8%25A1%25E9%2582%258A%25E6%25AD%25A3%25E6%25AC%25A1%25E9%2583%258E%2Fdp%2F4907319657&ei=IQp0VcP5KIXLmAXtpILQDQ&usg=AFQjCNEUe1Drp94uVyetcawD2XF2A9mX7Q&sig2=pAYXkh8qgxhlqVJ5waftVQ

日経BPは昨年7月に会社側が一方的に振り分ける職務に応じて、「E職」と呼ばれる53歳以上の一般社員の処遇を変えられる制度を導入した結果、仕事内容は以前と同じであるにもかかわらず突然10%以上も減給となる例が続出したそうだ。
現役社員が「目的は人件費削減。違法な不利益変更で中高年社員を狙い撃ちしている」と内部告発に踏み切った内容を「My News Japan」が報じている。
http://www.mynewsjapan.com/reports/2156

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3)【深夜の誌人語録】

単なる徒労を達成感などと勘違いしてはなるまい。徒労であったことを直視し、何故、徒労に終わったかを総括しない限り、徒労は次なる徒労を生み出すものである。