【文徒】2015年(平成27)7月10日(第3巻129号・通巻574号)

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1)【記事】栗田「倒産」についてネットでは、どのように語られているのか
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】栗田「倒産」についてネットでは、どのように語られているのか

栗田出版販売について、ブログやツイッターで、どのように語られているのだろうか。この間、私が閲覧したブログやツイートをここに紹介しておくことにしよう。
「先日出版取次ぎのナンバー4、『栗田出版』が民事再生の適用を受けた。債権者会議での説明はまるでギリシャより酷かった。デフォルトどころかプラスαを要求してきたのだから。出版業界も地に落ちた」(井上敦禎「FX攻略.com」)
http://fx-koryaku.com/articles/number/2513
「しかし今回のスキームは実質的に出版社に対し、栗田に対する債権分の倍の損失を与えるものである。おそらく半年間で栗田の債権額と同額の返品が、大阪屋を通じて戻されるのであれば、その金額までの納品は相殺されてしまうからだ。
もしこのスキームが成立するのであれば、それを判例のようにして、取次の危機が起きるごとに採用されてしまうし、取次が生き残るために出版社は潰れてもかまわないという論拠にもなってしまうだろう。そしてそのダメージは大手出版社に及んでいくことも必至だ」(小田光雄「出版状況クロニクル86 補遺」)
http://d.hatena.ne.jp/OdaMitsuo/20150707/1436274611
「栗田つぶれたんだ」(野間易通)
https://twitter.com/kdxn/status/618473616284389376
「栗田関連の新文化記事の見出しが修正されましたね。 何らかの修正力が働いている模様。 <当初> 栗田債権者説明会、「二次卸スキーム」で紛糾→<現在> 栗田債権者説明会、「返品問題」で意見続出」(リーダー1976)
https://twitter.com/leader1976/status/618049983661510657
「内容見かけたけど金額が金額だけに揉めますわな。どこの方針かはさておいて」(積読書店員ふぃぶりお)
https://twitter.com/fiblio2011/status/617989159941058560
「文面で見るといまいち分かりにくいですね。ザックリ言うと書店を盾に大手と中小がVSの図でしょうかねぇ。K田O阪屋じゃないので伝聞でしかなくてなんとも言い難いです…」(積読書店員ふぃぶりお)
https://twitter.com/fiblio2011/status/618068112089313280
「版元の案内FAXに栗田関連の表記がちらほら出てきてた。」(積読書店員ふぃぶりお)
https://twitter.com/fiblio2011/status/618810880919146496
「債権者説明会で最も紛糾したのが債権を返品相殺出来ないのに別会社から返してその分は別会社と現金(支払残高)で決済というウルトラC八百長提案。ご指名会社も版元の了承無く決済はしないという中で共同流通から返品自体は戻ってきているので債権凍結と言いながら資産を流失させている緩い管財人。」(H.MAGARA)
https://twitter.com/h_magara/status/618652703703457792
Twitterで圧倒的に書店員さんをフォローしてるからかフォローしてない版元関係者の呟きが流れ着いて今回の件で根拠の無い別会社からの返品に文句や泣き言が散見。商売は対等なんだから理屈の合わない返品は受けん。再生曖昧なら委託はせん。別会社保証の注文品は本屋さんが困らないよう出荷」(H.MAGARA)
https://twitter.com/h_magara/status/618751414383218688
「栗田さんの債権者説明会。10:30に始まってまだ終わらない。 どうしてもお客様のところに行かないといけないので途中退場してた。 質疑応答を聞いていて、今回の再建案はやっぱりおかしいと感じたのは私だけではないと思う……」(旅と思索社の見張り猫)
https://twitter.com/tabitoshisaku/status/617928986924978176
「栗田の民事再生は、自転車操業の版元のブレーキか。」(徳永直良 友朋堂吾妻店店員)
https://twitter.com/naox_toku/status/618465218050392064
「昨年自己破産したインフォレストが栗田に対して33,678千円の債権があるな。これはどういうことなんだろ」(徳永直良 友朋堂吾妻店店員)
https://twitter.com/naox_toku/status/616640550964322304
「本は売れない、取次は倒産する。栗田からうちみたいな小さな出版社に入金されることはないだろう。もろかぶりの打撃で連鎖倒産もあるとこはあるだろう。出版界しゃあない時代になってしまった。民事再生が適用されると思うが、適用されなかったらと思うとぞっとする」(masakazu takei)
https://twitter.com/masakazutakei/status/615360721077927937
「取次の栗田出版販売、倒産ー戦争から戻った大叔父さんが戦後勤めた会社でした。飛行機乗りで、この間会ったら、いろんな部品繋ぎ合わせた飛行機を支給されて沖縄から台湾まで、わずかなガソリンで飛べと言われ、ガソリンの残量、小枝で測りながら渡り、こんなことしてて勝つはずがないと思った、と」
「飛行機乗りの叔父は、いまは奥さんのお世話をしながら暮らす90代。家事完璧で、謙虚で、すごいなぁというひと。私が出版の仕事始めた15年ほど前は戦争世代が引退した頃で、辞めたばかりの彼が色々目をかけてくれた。良心的な良い会社という印象だった」(ツムキウム)
https://twitter.com/tumukium/status/614545477212581888
「戦後、栗田に勤めた大叔父と書店を開いた大叔父は、いずれも中国戦線経験者だった。言論統制がなされた戦時中を経て、自由に出版、発言できることが、イデオロギーでなく、まさに実感として、平和の象徴だったんだ、と今思う。だから大叔父は、戦記物を書店に置かなかったのだろう」(ツムキウム)
https://twitter.com/tumukium/status/614548946522771456
「さきほどの栗田の件、出版と戦後、というか、戦争の反省としての戦後出版、みたいなことが、イデオロギーじゃなくて、携わった人の本当の戦争体験のようなものに一つのルーツがあり、それが今失われていく時期でもあるのだろうということが、少し書いてみたかったのです。戦後詩ならぬ戦後出版」(ツムキウム)
https://twitter.com/tumukium/status/614571742225272832
「栗田が倒産。出版界、終わりの始まりだ」(中川右京)
https://twitter.com/NakagawaYusuke/status/614444103003058177
「栗田の倒産は映画界でいえば、かつての大映倒産と同程度の衝撃」(中川右京)
https://twitter.com/NakagawaYusuke/status/614448951798861824
「第5位の太洋社は去年本社を移転し、2015年5月1日現在で、この1年間での帳合書店は69店も減少した。帳合書店数は451書店から382書店に激減した。やはり、お先真っ暗という状態だが、同社は今年から新刊書籍雑誌の物流業務を日販と出版共同流通に委託する。身軽になるのを利点に売上増と返品率の減少に全力を傾注し、活路を見出してほしい」
「日販、トーハンとも帳合書店の獲得を、主に第3位以下の同業者の帳合書店の帳合を変更させることで行っている。栗田書店は自社の帳合書店の多くをトーハンに奪われたことが、倒産の一因になっているだろう」(志茂田景樹「カゲキ隊長のブログ」)
http://plaza.rakuten.co.jp/odata325juk/diary/201506300000/
栗田出版販売民事再生手続きをめぐって、支援の話や先行き不安の声が出てき
ている。やはり、首都圏栗田会奥村会長の再生を希望する言葉は深刻だ。これまでの長い期間、経営に携わってきた人たちと僕は面識はあるが、財務の弱さや、社員株主制に移行していることなどは知らなかった。栗田の取引書店の顔でもある戸田書店グループなど一本取引の書店が多く、これをキッカケに二大取次の書店争奪で草刈場になることを危惧する」(大槌の風)
http://otsuchinokaze.blogspot.jp/2015/07/blog-post_6.html
「こまかいところをともかく、本の委託販売制度というのは、書店で売れなかった本が戻ってくる、いわゆる返品の際の代金が払えず、(委託の際にいったんは代金が出版社に入ってきますから、資金繰りにつかってしまうのはあたりまえ)世に出なくてもいい本を無理に作って配本してもらい資金繰りに充てるという自転車操業が実態であるのに、
きのうの説明会での弁護士の説明によると、売掛金は凍結するは、返本は過去にさかのぼって、請求が来る!それも栗田からでなく、統合を計画している大阪屋からということであってみれば、開いた口がふさがらない。
取次の委託販売というのは、手数料商売で、極論すれば、本が売れようが売れまいが、回転率さえ確保できれば日常業務および売り上げの最低限は保障される、とは理解してきたところですが、今回のように、取次の倒産ということになれば、出版社を切って、自分たちが生き残れるようにする手立てとしても有効に機能するものだということをまざまざと知らされました。
百姓は生かさず殺さずというけれど、出版社もどうやら百姓のお仲間のようです」(三浦衛「港町横濱よもやま日記」)
http://yomo.shumpu.com/?p=10389
http://yomo.shumpu.com/?p=10394

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2)【本日の一行情報】

ソフトバンクグループとベネッセホールディングス合弁会社Classiは、教師向けの学習支援プラットフォームサービスとして、生徒の成績・出欠管理、家庭学習時間管理、宿題配信機能などを有料で提供している。既に全国120校以上の高校、中学で採用されているが、アメリカのKnewton, Inc.(ニュートン)と提携し、生徒の習熟度に個別最適化された学習問題の自動配信サービスを開始することになった。
http://blog.benesse.ne.jp/bh/ja/news/m/2015/07/08/docs/20150708release.pdf

小学館の「週刊ビッグコミックスピリッツ」「月刊!スピリッツ」「ヒバナ」のマンガ3誌は、キャラクターに焦点を当てた漫画賞「スピリッツ×ヒバナ×pixiv キャラ漫★新人賞」をpixivで開催する。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1507/08/news044.html

◎マンガ家の江川達也が7月5日に放送のテレビ朝日「見る人が見た!!」でマンガ界の内幕を暴露した。「おたぽる」は次のように書いている。
「…番組で発表された『まじかる☆タルるートくん』で得た収益の内訳を見ると、原稿料が約1620万円(約4500円×全189話)なのに対し、単行本収入が約4億6620万円(発行部数約1260万部×10%)、アニメ収入が約1200万円(1話約10〜15万円×全87話)、関連グッズが約2億7000万円。パチンコのライセンス収入などもあわせると、『まじかる☆タルるートくん』だけでなんと総額約7億9440万円(すべて番組調べ)という金額に。改めてマンガ家もとい、「ジャンプ」作家が夢ある仕事であることを伺わせた」
http://otapol.jp/2015/07/post-3291.html

◎「週刊少年サンデー」で連載され、アニメ化もされた「ハヤテのごとく!」の畑健二郎が同誌で「前代未聞の同一週刊誌 2本同時掲載」に挑戦することになった。月1の新連載だそうだ。
http://mantan-web.jp/2015/07/08/20150707dog00m200034000c.html

電通の6月度単体売上高。マス4媒体が揃って前年同月比割れをしている。その一方で「インタラクティブメディア」は76億34百万円、114.5%か…。しかも「インタラクティブメディア」の売上は「新聞」を上回っている。電通の単体月次売上高で「インタラクティブメディア」が「新聞」を上回ったのは初めてのことである。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2015078-0707.pdf

電通の海外本社「電通イージス・ネットワーク」は、ニューヨークに本社を置くクリエーティブ領域のグローバルネットワーク・ブランドである「mcgarrybowen」を東南アジア地域にも展開するため、シンガポールの有力クリエーティブエージェンシー「Mangham Gaxiola Pte Ltd」(マンガム・ギャクシオーラ)の株式20%を取得し、マクギャリーボウエンのネットワークに組み込む。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0708-004093.html

双葉社の「漫画アクション」で連載されている「BARレモン・ハート」がBSフジで連続ドラマ化される。マスターを中村梅雀が演じる。
http://www.hochi.co.jp/entertainment/20150707-OHT1T50154.html

祥伝社から30〜40代男性向けストリート誌「Boon 2015夏号」(税込880円)が発売された。
http://www.j-cast.com/bookwatch/2015/07/08239652.html
紙の「Boon」にとどまるのではなく、インターネットにおいても「Boon」を立ち上げられないものか。デジタル「Boon」が「主」であり、紙「Boon」が「従」であるという仕組づくりである。

学研ホールディングス講談社が共同で小学4年生〜中学3年生を対象にした「子どもの読書実態調査」を実施した。これによれば、本をまったく読まない親の子どもの1か月の読書量が平均2.1冊であったの対して、本を1か月に6冊以上読む親の子どもの読書量は平均6.9冊であったという。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000516.000002535.html

◎フジテレビは、香港最大の通信事業社で、香港最大のペイTV「now TV」を擁するPCCW Limitedと戦略的パートナーシップを構築し、アジア各国市場におけるテレビドラマのインターネット配信を本格的に開始する。
http://www.fujitv.co.jp/company/news/150707.html

◎次のようなツイートが話題になっている。
「ジャニーズのタレントの写真をWebで使っちゃいけないのかもしれないけど、Amazonでのこの処理はないだろ! 犯罪者が表紙かと思った!
http://www.amazon.co.jp/dp/B00VGIJR5O
http://getnews.jp/archives/1035782
これは「女性自身」の2015年4月28日号の表紙であり、光文社のサイトでは、「都合により、表紙画像を掲載しておりません」と書かれている。「ガジェット通信」によれば「今回の『Amazon』の画像はユーザーが登録したものではないかと思われる」。

博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所による「メディア定点調査2015」によれば、東京地区における1日あたり・週平均のメディア総接触時間(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、パソコン、タブレット端末、携帯電話・スマートフォン)は383.7分。
最も長いのがテレビの152.9分(39.9%)だが、2006年の調査開始以来、減少傾向にある。
一方、2006年以来、伸長しつづけているのが携帯電話・スマートフォンで80.3分(20.9%)だった。また、タブレット端末も20.6分(5.4%)あり、携帯電話・スマートフォンタブレット端末を合わせると今年初めて4分の1を超えた。スマホの所有率は7割に迫り、タブレットの所有率も昨年の2割から伸長し、約3割となった。
http://www.hakuhodody-media.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2015/07/HDYmpnews201507071.pdf

ハースト婦人画報社講談社集英社小学館の4社はファッションをテーマとしたハッカソン「THE FASHION HACK TOKYO」を2015年8月29日(土)〜30日(日)に開催する。4社が発行するファッション誌28誌の雑誌データを限定で公開し、そのデータとグーグルを始めとするインターネットサービス各社が提供する各種APIやデバイスを活用し、ファッションを楽しむ新しいサービスの開発を競いあう。
http://fashionhack.jp/
http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201507081800/
編集力が解放される契機になれば良いと思う。ハースト婦人画報社が呼びかけて実現したという。講談社集英社小学館のファッション誌にかかわる編集者には、こういう発想がなかったということであったならば、あまりにも淋しいことである。それにしても光文社やマガジンハウスには、お呼びがかからなかったのだろうか。あるいはお呼びがかかってもNOと応じたのだろうか。

◎アマゾンが20周年を迎える前日の7月15日に、日本、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストリアの9カ国において、Amazonプライム会員限定"Amazon最大のセール"として開始する「プライムデー」の商品情報第一弾が公開された。私の目に即座に飛び込んで来たのが、「週刊文春 オリジナルコレクション」である!
http://www.amazon.co.jp/gp/browse.html?node=3490886051&rh=i
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20150708_710820.html

◎猫・小型犬専用の自動給餌器「PETLY」を販売する「RINN Inc.」から、「猫」を共通キーワードに、インテリアやアート、カルチャー、ヘルスケアなど、すべてのコンテンツに猫が登場するオルタナティブ・ライフスタイルマガジン「MILL」が7月14日(火)に創刊される。
http://top.tsite.jp/news/i/24677211/
http://rinn.co.jp/

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3)【深夜の誌人語録】

自分の体内時計を持て。その時計で潮目の変化を見極めるのだ。