【文徒】2015年(平成27)7月13日(第3巻130号・通巻575号)

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1)【記事】主婦と生活社の消費増税分不払い事件
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】主婦と生活社の消費増税分不払い事件

主婦と生活社が委託契約しているライターやカメラマンら約140事業者に対して、支払う業務委託料に消費税の増税分を反映していなかったのは消費税転嫁法違反(買いたたき)に当たるとして、公正取引委員会は9日、主婦と生活社に対して再発防止を勧告したという。
公正取引委員会は「違反事実の概要」を次のように記している。
「(1) ア 主婦と生活社は,雑誌等の出版業を営む事業者である。
主婦と生活社は,自社が販売する雑誌等に掲載する原稿,写真等の作 成又は編集,校正等の業務を,個人である事業者又は資本金の額が3億 円以下の事業者に継続して委託している。
(2) 主婦と生活社は,前記(1)イの事業者のうち,委託料を消費税を含む額で 定めているもの(以下「本件事業者」という。)に対し,平成26年4月 1日以後に供給を受けた業務の委託料について,消費税率の引上げ分を上 乗せせず,同年3月31日までと同額の委託料を平成27年4月30日ま でに供給を受けた業務について支払った。
(3) 主婦と生活社は,公正取引委員会が本件について調査開始の連絡をした 後,消費税率の引上げ分を上乗せせずに支払った平成26年4月1日以後 に供給を受けた業務の委託料について,平成27年6月11日までに,消 費税率の引上げ分に相当する額を上乗せした額まで引き上げることを本件事業者との間で合意し,平成26年4月1日に遡って当該引上げ分相当 額を本件事業者に対して支払った」
要するに消費税率増税分をケチッて、下請けに押し付けていた実態がバレてしまったということなのではないだろうか。産経新聞などは恐らく主婦と生活社の言い分を鵜呑みにして「執筆などを依頼する同社の編集者に増税分を反映させる認識がなかったという」と書いているが、そんな程度の編集者が例えば「週刊女性」の仕事がつとまるだろうか。
週刊女性」は昨年4月15日号で「こんな日本に安倍がした!?」との吹き出しに「消費税はほんの入り口!大増税 保険料アップ 値上げラッシュが襲いかかる… 庶民いじめ時代を生き抜く!」「変わる!税と年金2014年最新版・家計狙い撃ち!」といった記事を掲載するなど、消費税に関しては敏感な雑誌であった。
そんな版元なればこそ「下請け」という弱い立場に置かれた事業者に対して、執筆などを依頼する同社の編集者が増税分を反映させる認識がなかったとは、口が裂けても言えないはずだし、それが本当にそうであったとしたら、読者に対する背信行為に他なるまい。
下請に対して買い叩いておいて何が「安倍政権V2で主婦タダ働きの4年が始まる!」(「週刊女性」2014年12月9日号)だ!
そもそも現在もそうだが、消費税率増税時の社長は第一勧業銀行(現在はみずほ銀行)京橋支店出身の高納勝寿社長であったはずである。日頃からカネ勘定に関しては厳しいことで知られる高納社長が業務委託料に消費税の増税分を反映していなかったことに気がつかなかったということは、あり得ないのではあるまいか。会社ぐるみでの消費税転嫁法違反であった可能性を私は捨てきれないでいる。
即ち、主婦と生活社の「金正日」とさえ最近では言われ始めている、同社の最高実力者・遠藤大介会長に少しでも良い数字の決算を献上することを至上命題とした経営の歪みが「買い叩き」として現象したのではないかという疑いをどうしても拭い去れないのである。
高納社長にしても、牧秀幸社長にしても、遠藤大介会長の顔しか見ようとせず、驚くほどに社会や読者に対しては鈍感なのである。主婦と生活社の社長が出版業界団体の会合に顔を出さないのも、そうすることを遠藤会長が嫌うからだという話はあまりにも有名である。遠藤会長と同じマンションに住み、遠藤会長から高級外車を買うことを勧められれば、即座にそれに従う。主婦と生活社の社長は、遠藤会長のイエスマンでしかない存在なのである。
公正委員会の勧告は次の通りであった。
「(1) 主婦と生活社は,今後,消費税の転嫁を拒むことのないよう,自社の役員及び従業員に本勧告の内容について周知徹底するとともに,消費税転嫁 対策特別措置法の研修を行うなど社内体制の整備のために必要な措置を 講じること。
(2) 主婦と生活社は,前記(1)に基づいて採った措置について,特定供給事業者に通知すること。
(3) 主婦と生活社は,前記(1)及び(2)に基づいて採った措置について,速やか に公正取引委員会に報告すること」
いくら社内研修を実施したところで、遠藤大介の顔しかみない経営に終止符が打たれない限り、主婦と生活社の言ってみれば「弱い者イジメ」を根絶することはできないに違いない。
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h27/jul/150709_1.html
現在、出版業界が軽減税率の適用を求め運動を繰り広げていることは周知の事実だが、主婦と生活社は、そうした運動の足を引っ張ったのである。
そういうことすら、高納社長には到底理解できまい。遠藤大介社長よ!御簾に隠れているのではなく、一度でも良いから、主婦と生活社の社長をやってみるが良い。ま、その度量もないから、出版の素人ばかりを主婦と生活社の社長に据えているのだろうな。

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2)【本日の一行情報】

スペースシャワーTVは、日本のロック・ポップスを中心に、邦楽・洋楽・メジャー・インディーズを問わず様々なジャンルを網羅し、最新から懐かしの名曲まで24時間放送する日本最大の音楽チャンネルだ。
http://www.spaceshowertv.com/
スペースシャワーネットワークが運営しているが、同社がぴあとの協業により、アイドルカルチャーマガジン「UPDATE girls」を7月31日より発売する。
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?template=announcement&sid=24438&code=4838
スペースシャワーネットワークはTOKYO発のファッション・カルチャーマガジン「EYESCREAM」や「ブルース&ソウル・レコーズ」といった音楽にかかわる雑誌を擁しいている。
http://books.spaceshower.net/artist/eyescream
http://books.spaceshower.net/artist/bsr
書籍も刊行している。
http://books.spaceshower.net/books
2013年には東京堂書店で「ほぼ」全点フェアを開催している。専門性に依拠したラインナップは東京堂書店の雰囲気に見事にシンクロしていた。
http://www.tokyodoshoten.co.jp/blog/?p=5127
出版市場は確かに縮小している。その縮小はまだまだつづくことだろう。しかし、その一方で新たに出版に参入して来るプレイヤーも後を絶たない。それほど出版には魅力があるということだ。出版業界にどっぷりと浸かってしまっていると、ともすれば、この魅力を忘れがちなのではないだろうか。

◎光文社の創刊20周年を迎える「VERY」がママ&キッズフレンドリーな街NO.1のニコタマで「VERYフェス2015」を9月19日から四日間にわたって開催する。
http://meet.veryweb.jp/veryfes/veryfes2015/

◎3日に発売された集英社の「ONE PIECE」コミックス78巻は、週間売上部数167.6万部を記録した。4月の77巻の週間売上部数166.8万部を上回ったそうだ。
http://irorio.jp/entame/20150709/244188/
ONE PIECE」が未だに出版界最強のコンテンツであることは疑い得ない。

文藝春秋から刊行された佐藤健永の「日本の中でイスラム教を信じる」を一気に読む。これほど初めて知ることばかりの本は、そうザラにはないはずだ。日本で暮らす「隣人」としてのイスラム教徒について書かれた、これは初めてのルポルタージュではあるまいか。
日々の暮らしにおいてはイスラム教との「共生」がしなやかに、かつしたたかに繰り広げられているのである。日本では11万人のイスラム教徒が暮らしているのだ。実は、私の知人にもパキスタン人と結婚してイスラム教徒になった女性がいる。
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163902982

◎「【マガジンハウス・anan企画 総研美人部主催】おいしくヘルシー 都内で農業体験とお料理教室」が紹介されている。
http://play-life.jp/plans/8112
元はコレ。
http://anansoken.magazineworld.jp/blog/bijinbu/30558/

◎毎週160作品以上の連載マンガが無料で読める「LINE マンガ連載」で配信されているオリジナルマンガとして人気の「かわれて候。」「微笑女Mitsu」「コドクゲーム CO-DOKU GAME」の3作品が双葉社から刊行される。
http://official-blog.line.me/ja/archives/36400172.html

自衛官募集広報の一環として制作されたゲームアプリ「自衛隊コレクション」は大広の仕事だったのか。
http://adgang.jp/2015/07/101671.html

◎マネーコンサルタントの神樹兵輔は「Business Journal」で次のように書いている。
民主党政権では電波料をオークション制にすると閣議で決め大慌てだったマスメディアは、現在の第2次安倍政権がそれを取りやめてくれたので、政権には頭が上がらなくなってしまいます。諸外国のようにオークション制にすると、電波料も跳ね上がり国庫も潤うのですが、それを安倍首相が阻止したわけですからマスメディアにとっては大恩人といえるわけです」
http://biz-journal.jp/2015/07/post_10665.html

◎7月4日に放送されたフジテレビ「めちゃ2イケてるッ!2時間SP」の視聴率は6.3%だった。めちゃイケは、今年の「27時間テレビ」を担当するが、確かに「アサ芸プラス」が指摘する通りだ。
27時間テレビのテーマは、『本気を見せて現代のテレビ危機を救おう』というもの。しかし実際問題、『テレビの危機』というより『フジテレビの危機』と言ったほうが正しいのかもしれない」
http://www.asagei.com/excerpt/39454

◎どの新聞も「東芝の不適切会計」と書いている。「東芝の不適切な会計処理を巡る問題で、田中久雄社長が引責辞任する」という具合に。
しかし、「不適切会計」と書くよりも「粉飾決算」と書いたほうが読者にはわかりやすいのではないか。これは「撤退」を「転進」と言い換えたり、「占領軍」を「進駐軍」と言い換えて、物事の本質を隠蔽する昔ながらの新聞語法ではないのか。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD10H55_Q5A710C1MM8000/
http://www.sankei.com/economy/news/150711/ecn1507110009-n1.html
http://mainichi.jp/select/news/20150711k0000e020182000c.html
堀江貴文が強烈なツイートをカマしている。
「誰も粉飾ってワード使わないところが超笑える。日本のマスコミってマスゴミだって言われても仕方ねーな」
http://blog.livedoor.jp/itsoku/archives/45499462.html
堀江はライブドア事件に際して「粉飾決算」と書かれていたことを思い出す。

◎「コロコロアニキ」第3号の附録は「ミニ四駆ダッシュ1号・皇帝サンライズオレンジクリヤーボディ」だそうである。
http://www.appbank.net/2015/07/09/goods-books/1060010.php

博報堂、大広、読売広告社の6月度単体売上高。博報堂電通同様にマス4媒体がそろって前年同月比割れするなか、インターネットは105.5%と伸びている。大広も同じだ。
https://www.hakuhodody-holdings.co.jp/ir/pdf/%E3%80%90%E5%8D%9A%E5%A0%B1%E5%A0%82DY%E3%80%912015%E5%B9%B46%E6%9C%88%E5%BA%A6%E6%9C%88%E6%AC%A1.pdf

◎来春を目途にKADOKAWAドワンゴは、インターネットの通信高校を立ち上げる。
http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/354/354708/
http://ed.kadokawadwango.co.jp/
ダイエーもかつて学校経営に乗り出したんだよな。

小学館から刊行された井上和彦の「撃墜王は生きている!」は、発売即重版となったそうだ。
http://s-press.shogakukan.co.jp/article/3683/
小学館は「平和をかんがえる こども俳句の写真絵本」も刊行しているし、矢部宏治の「戦争をしない国 明仁天皇メッセージ」も刊行していれば、小林よしのりの「戦後70年特別企画 卑怯者の島」も、奥田貞子の「空が、赤く、焼けて 原爆で死にゆく子たちとの8日間」も刊行している。
http://s-press.shogakukan.co.jp/article/3718/
http://www.shogakukan.co.jp/books/09389757
http://s-press.shogakukan.co.jp/article/3640/
http://s-press.shogakukan.co.jp/article/3713/
出版者は新聞社と違って「社説」に左右されないから懐が深く、胃袋が強いのだと思う。

◎「ウラゲツ☆ブログ」で知った「返品入帳条件通知 参考書式」。
「一、今回の債権確定にあたっては、2015年6月26日から債権届出期間満了日までの株式会社大阪屋からの返品のうち、6月25日以前の貴社向け搬入分であることが明らかな品目を小社で特定し、民事再生申請前の残債より相殺処理をおこないます。
二、最大限の再生債権削減のため、債権届出期間は法定最大限の期間をご設定ください。
三、上記作業を可能とするため、2015年6月1日以降に出版共同流通株式会社に到着した貴社および株式会社大阪屋あての返品について、書店名・書店コード・品名・ISBNコード・返品到着日の5項目の明細データを貴社の責任においてご開示ください」
https://docs.google.com/document/d/1_jcQ9TyZ-Y5blWB6fSje5HycyazYCVBncJcmtttFmXc/pub

◎「ECzine」の「売上高11兆円目前も、赤字体質のアマゾン 経営の数字から未来を読む」はアマゾンの企業としての特質が簡潔にまとめられている記事だ。
「2000年度比では32.3倍、10年度からでも2.6倍も売上高を伸ばし、世界有数の企業に成長してきたアマゾン。ただし、前述した他社(筆者註 アップル、マイクロソフト、グーグル)とは明らかに異なる顔を持つ。利益率が極端に低いのだ」
「…アマゾンは2000年度から14年度までの15期中、5回も最終赤字を計上している。14年度も11兆円に届くかという売上高にもかかわらず、300億円に近い最終赤字だった。薄利多売の赤字体質にあるといっても過言ではないようだ」
「(アマゾンの)物流の最適化を目的としたソフトウェアの開発やウェブ構築などに投じる研究開発関連の費用だ。10年度はおよそ2,000億円だったが、14年度は約1兆1,000億円に急増。何と自動車世界大手のGMやアップルを上回る投入額である
金額もそうだが、さらに驚かされるのは売上高に占める割合だ。10%超というのは、非製造業としては異例中の異例。ほぼ同規模の研究開発費を投じているトヨタ自動車のそれは、3%台である」
http://eczine.jp/article/detail/1982

大日本印刷は、購買やポイントなどの生活者の多様なデータを活用して最適なマーケティングを支援する分析・管理ツール「DNPオムニチャネル対応型データ・マネジメント・プラットフォーム diip(ディープ)」を開発し、販売を開始した。
http://www.dnp.co.jp/news/10112222_2482.html

大日本印刷は、個人同士のモノの売買が簡単かつ安心して行えるサービス「DNP CtoC取引サービス KURURi(クルリ)」を開始した。
http://www.dnp.co.jp/news/10112216_2482.html

主婦の友社は「ジャーでかんたんキレイに! デトックスウォーター」を発売した。
http://straightpress.jp/20150709/90275
ローラやミランダ・カーが毎日のように飲んでいるというヤツだ。宝島社からは「キレイをかなえるデトックスウォーター」、イーストプレスからは「はじめてのデトックスウォーター 基本のレシピ100」が既に刊行されている。

◎CCCの「T-SITE」が熊本の長崎次郎書店を紹介している。
「文豪・森鴎外は『小倉日記』のなかで『書肆の主人長崎次郎を訪ふ』と記されています。また、旧制第五高等学校(現・熊本大学)で教鞭を執った夏目漱石ギリシャ出身の小説家、小泉八雲も訪れたといわれています。
2013年に一時休業していましたが、レトロな外観はそのまま1階は書店、2階は喫茶室として内装を一新し、創業140周年目の節目である2014年7月31日に再開しました」
http://top.tsite.jp/news/o/24677661/

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3)【深夜の誌人語録】

立ち位置を変えることで、それまで見えなかったものが見えるにしても、何かを見るということは何かを見ないことであることに変わりはない。