【メディアクリティーク】「安保法制とブラック国家ニッポン」ならぬ「消費税増税とブラック企業 主婦と生活社」について 遠藤大介会長と高納勝寿社長の経営責任を問う

主婦と生活社が委託契約しているライターやカメラマンら約140事業者(特定供給事業者)に対して、支払う業務委託料に消費税の増税分を反映していなかったのは消費税転嫁法違反(買いたたき)に当たるとして、公正取引委員会主婦と生活社に対して再発防止を勧告した「主婦と生活社の消費増税分不払い事件」。
 7月13日配信の「文徒」、15日発行の「メディアクリティーク」でこの問題を取り上げた。その際に主婦と生活社の広報担当、管理部総務課の網谷茂孝課長は、小誌の「4月に公正取引委員会の調査があったということは、何かきっかけとかリークとかあったということですか?」という質問に対して次のように答えた。
「そこは公正取引委員会のほうに確認しておりませんし、おそらく訊いてもお話しいただけないかと思いますが、同業他社にもいくつか同様の調査が入っていたとその後ちょっと聞きましたので……」
こうした主婦と生活社の物言いは私たちにとって「他社もやっているのだから」という小学生並みの言い訳、自己弁護に聞こえると書いた。あれから一カ月が過ぎた。
 私たちは毎日、公正取引委員会のホームページをチェックした。しかし、主婦と生活社に対する勧告以降、主婦と生活社の網谷茂孝課長が言うところの「同業他社」で消費税転嫁法違反(買いたたき)に対する勧告を出された例は一件たりとも報告されていない。
 管理部総務課の網谷茂孝課長に再び問いただすことにした。
――前回、他にも調査が入ったとお話しがありましたが、具体的な社名は出せないということでしたので、もしそうであるなら直接公正取引委員会の方にお伺いしたいと思いますが。ご担当の方のお名前を教えていただけますか?
網谷「直接、公正取引委員会にご連絡されることにつきましては、当社の関知することではございませんが、当社からお話ししていいものかどうか判断つきかねる部分がございますので、ご担当の方のお名前はお出ししかねます」
――公取の方からそういう話を確かに伺ったということですね?
網谷「公取さんのほうから、出版社は当社以外にも調査に入って、勧告には至らなかったけれど指導する部分はあったと伺っています」
この発言を聞いて私たちは「エッ!」と声を上げざるを得なかった。前回は、「同業他社」にも公取の調査が入っており、いずれ主婦と生活社同様に公取から勧告を受けるというニュアンスの込められた発言であった。だから、私たちは毎日のように公取のホームページをチェックしてもいたのだ。それが今回いともあっさりと「勧告には至らなかったけれど指導する部分はあったと伺っています」と発言する。もし、前回、網谷課長がこのように発言していたのであれば、この事件の受け止め方は違ったものになっていただろう。すなわち、公取は多くの出版社に調査に入りながら、勧告に至ったのは主婦と生活社だけであり、それほど主婦と生活社の消費税転嫁法違反(買いたたき)は同業他社に比べて悪質なものであったと、そう理解したはずだ。いや、結論を急ぐまい。網谷課長に質問を続けることにした。
――公取の方が、そうした事案があったと具体的な出版社名を挙げてそちらにお話ししたわけですか?
網谷「いえ、具体的なお名前は挙げずに、同業他社でも、と伺っております。別ルートのところで、他社さんにも調査に入ったというのは把握しておりますが、ここでは社名を挙げるのは控えさせていただきます」
 公取では社名までは出していない。しかし「別ルート」からそうした情報は得ていたという。「別ルート」で、他社に調査が入っているかどうかを調べるよりも何より、主婦と生活社は自らの襟を正すべく経営の体質改善を図るのが先決ではないのだろうか。少なくとも総務課長が独断で「別ルート」で、他社に調査が入っているかどうかを確認することはあるまい。そこには、もっと大きな意志が介在していたと考えるのが妥当であろう。主婦と生活社でもっと大きな意志を体現しているのは、同じマンションに住むと言われている遠藤大介会長であり、高納勝寿社長である。
――それは出版関係者からということですか?
網谷「まあ、そのような形です」
 曖昧な言い方だが、出版関係といっても広告会社や印刷会社も含まれるのかしら。無論、聞いたところで関係社名を教えてくれるわけでないが、この件に関しては、もっと深く追及しなければならないと私たちは判断した。実は、このインタビューは電話で行われた。本来であれば、会ってインタビューしたかったのだが、網谷課長が忙しく、時間が取れないという理由で電話取材となった次第である。こういう応対も広報としては失格であろう。主婦と生活社にとって広報とは名ばかりの存在なのかもしれない。高納社長あたりは一度網谷課長を連れて講談社とか小学館集英社といった大手出版社の広報部門に学びに行ったほうがよろしかろう。もっとも主婦と生活社の場合、遠藤大介会長は高納社長が他社の人間とつきあうのを極度に嫌っているためそれは無理か! 遠藤会長は自らの「猜疑心」が主婦と生活社の経営に何の貢献もしないことをそろそろ自覚すべきである。
――もう少し詳しくお聞きしたいので、お時間を取っていただくことはできませんか?
網谷「今お話しした以上のことはお話し致しかねると思いますので……申し訳ございませんが、詳細についてお聞きになりたいということでしたら公正取引委員会に直接、お尋ねになっていただければと思います」
 私たちが聞きたいのは、指導を受けた他社というのがどこの社かなどという些末な事実ではない。主婦と生活社の対応そのものだ。それに、今回のように改めて話を伺うことで、実は他社は指導で済んで勧告は主婦と生活社1社だけだったこと、そのことを意図的に隠していたのではないか、あるいは故意に話さずにいたのではないかと疑われることなど、新たな事実も見えてくる。だからこそ、直接顔を突き合わせて話がしたいと思ったのだが……。
――他にどこの会社が、ということもそうですが、そのように同業他社にも調査が入ったと話され、ただ、実際に勧告に至ったのは御社だけということですので――。
網谷「現状では、そうです」
――現状では、ということは今後他にも出てくるとお考えですか?
網谷「他社の状況につきましては理解しかねますので、可能性の問題として、出てくるかもしれないし出ないかもしれないということで、少なくとも出版社として現状において勧告を受けたのは弊社のみというところです」
 可能性の問題というが、口ぶりからは他にも出てくるだろうというニュアンスも感じられないでもない。しかし、今のところ、主婦と生活社だけだ、公正取引委員会から消費税転嫁法違反(買いたたき)を指摘されているのは!
――先日お伺いした時に、他社にも調査が入っているとおっしゃって、「他でもやっていること」というニュアンスを感じましたが……。
網谷「そうですね」
――ただ実際は勧告を受けたのは御社だけで、他は勧告に至らなかったということは、御社のケースがより悪質だったということではないですか?
網谷「何らかの差があったというのは確かですが、詳しく伺ったわけではございません。単純にテーマとしては消費税が適正に転嫁されてなかったということだと思いますが、具体的に件数ですとか金額ですとかはもちろん把握しておりません。他社に公取さんから指導が入ったとは伺いましたが、指導と勧告の差がどこにあるかということにつきまして、詳しく基準を伺っているわけではございませんので」
 指導と勧告の差は、明らかに大きい。公正取引委員会の「消費税転嫁対策の取組について」という文書では、「重大な転嫁拒否行為が認められた場合には、勧告・公表を積極的に行っている」との一文があり、勧告を受けた場合、公正取引委員会のホームページにその事実が公表される。不正があったことがあまねく知らしめられるわけだ。主婦と生活社の行為は、まさにこれに当たるにもかかわらず、それを「他社も指導を受けているのだから」とひとくくりにして、「どこでもやっていること」と開き直ることはできないはずだ。主婦と生活社は網谷課長をして出版業界全体の顔に泥を塗っている、私たちにはそうとしか思えないのである。
――「今お話しした以上のことはお話し致しかねる」とのことですが、20、30分でも結構ですので、できれば直接お会いして、お話しをお伺いしたいと思うのですが。
「今、申し上げたこと以上のことはお話しできませんので、お越しいただいてもお時間の無駄ですので、特にそれ以上のことがなければ、お断りさせていただきたいと思います」
私たちは出向くことも時間が無駄になることもいとわないのだが、頑として網谷課長は拒否する。逃げるか、隠れるかが広報の仕事であるとも、この御仁は考えているのだろうか。広報はその企業の体質を反映すると私たちは考えている。
――では、消費税の問題に関しては、軽減税率の問題もあると思いますが、御社も軽減税率を求めるグループの一員ではありますね?
網谷「直接私の担当ではないので、そこは確認してみなければなりませんが」
網谷課長は日本書籍出版協会日本雑誌協会など出版関係6団体は作家や学識者らによる「出版文化に軽減税率適用を求める有識者会議」を設立していることをご存じないのだろうか。主婦と生活社日本書籍出版協会にも、日本雑誌協会にも属していないのだろうか。そんなはずあるまいて! 多くの出版社が消費税転嫁法違反(買いたたき)に細心の注意を払って来たのは、何としても出版物に軽減税率適用を実現したいからでもある。消費税転嫁法違反(買いたたき)をしておいて軽減税率適用を働きかけることなどできないことを多くの出版社は承知していたに違いない。そんな努力に主婦と生活社は冷水をぶちまけたのではないだろうか。本来であれば消費税転嫁法違反(買いたたき)が他の出版社にもあるかのような発言は口が裂けてもできないはずである。当然、私たちは網谷課長に次のように問わねばなるまい。
――軽減税率の問題に関しても、消費税の不払いを他社も含めてやっていると公言することは、軽減税率の問題に取り組んでいる出版業界全体の足を引っ張ることになりませんか?
網谷「それは視点が全く違いますので……。お伝えした通り、こちらの見落としや誤解があった部分の指導ですので、それに関しては是正勧告に従って粛々と再発防止に努めて参ります。そこは議論のステージが全く違うと考えておりますので」
議論のステージが全く違う? 果たしてそうだろうか。主婦と生活社には、この程度の認識しかないのであろうか。オーナーたる遠藤大介会長の視線を気にして高納勝寿社長が業界活動を軽視して来たツケがこういうところで出てしまうように私たちには思えてならないのである。
――その見落としや誤解についても、前回の記事で書かせていただきましたが、事前に確認すべきことではないのかと思いますけれど。
網谷「前回の記事の中では御社のご意見として承りましたが、当社としてはそこも含めて見落としがあったということになりますので」
 見落としがあったというが、実際のところどうだったのか。網谷課長と話をしていると、主婦と生活社の消費税転嫁法違反(買いたたき)は、もしかすると確信犯ではなかったのか。そういう疑念すら私たちに抱かせてしまうのである。もちろん、故意かどうか、部外者には知る由もない。そもそも仮に故意でなかったとしても、主婦と生活社には、そんな杜撰な管理体制でいいのかという経営上の問題が残されよう。そう遠藤大介会長、郄納勝寿社長の経営責任が問われてしかるべきだ。
――監督官庁のほうからは、手引を作ったりして様々な広報活動をして周知を徹底させていたように思いますが。
網谷「出版社に特化してのガイドラインはございませんでしたので、弊社内でわかる範囲で対応していた部分はもちろんあります。前回もお伝えした通り、全ての取引について適正な消費税が転嫁されていなかったというわけではございませんので」
 主婦と生活社で消費税の不払いがあったのは140の事業者で全取引の1割程度。その数字にもある種の作為が感じられるという(つまるところ、外注者を選別して消費税の転嫁を拒否したという)うがった見方もできなくはあるまい。
――グレーの部分に関してわからない点があれば――。
網谷「グレーというよりは解釈が誤っていた、もしくは、本当に数件ですが当社として対応すべきところで見落としがあったというところでございます」
 網谷課長は、「前回説明した通り」の一点張り。私たちが問題にしている点については、一つの意見として「承る」だけのようだ。
――では軽減税率に関して、これはまた別の問題だということですが、御社のほうではどういう風にお考えですか?
網谷「先ほどお話しした通り、私が直接担当をしておりませんので、確認をしまして、必要であればお伝えすることもできるかと思いますが、今、この場ではお答えしかねます」
こうした経緯で、翌日、改めて連絡をもらうことになった。

明けて13日、朝一番で連絡が来るとは思わなかったが、待てども、待てども網谷課長から連絡はなかった。先方から連絡をくれるという話であったにもかかわらず、午後3時になり午後4時を過ぎた。こちらから連絡を入れてみることにした。しかし離席中だという。午後5時にも、こちらから電話を入れた。午後5時から会議とのこと。30分ほどで終わるというので待っていたら、漸く5時半に網谷課長から連絡が来た。網谷課長曰く!
網谷「昨日ご質問いただいた消費税の軽減税率について、担当にも確認いたしましたが、当社も書協さんや雑協さんの加盟社ということで、加盟社の一つとして、団体の構成員として、書協さんや雑協さんともども、適用を要望しているというスタンスになります」
――昨日、軽減税率は別の問題という風におっしゃっていましたが、一方で軽減税率の適用を求めて働きかけをしていながら、他方でその消費税の不払いがあるとすると、良い影響を与えないのではないかと思いますが。
網谷「もちろん、そういう捉え方が全くないとは申しませんし、そのように感じる方もいらっしゃるとは思いますが、出版物が文化貢献の一環として消費税の軽減税率を適用するという主張と、今回のことに関してはステージというかフレームが全く違うことでございますから、当社としては全く別の問題として捉えています」
 先に触れたが、これが全くの別問題ならば、収めるべき税金を納めずに、国のほうには税金を免除して欲しいと頼む厚顔さは、真剣に取り組んでいる組織の足並みを乱すことにはならないだろうか? 「出版物が文化貢献の一環」というのであれば、その出版物を制作・発行する出版社も襟を正すのでなければ、「文化貢献」などおこがましいというべきだろう。
――軽減税率についてはどなたか別の方がご担当ということですが……。
網谷「そうですね、今のところは法務担当の者が中心となって動いております」
――その方は今回の消費税の不払いに関しては――。
網谷「公正取引委員会さんの件については総務と経理が中心となって対応しましたので、そこは法務とは全く別の話ではありましたので」
――そうすると法務担当の方からは、意見やアクションなどはなかったと。
網谷「ございませんでした」
 軽減税率を求める運動に関しては主婦と生活社では法務が担当するのだそうだ!
主婦と生活社は『週刊女性』7月14日号で「『戦争法案』とニッポンの行方――あなたの子どもがアメリカのために殺し、殺される国になる!」なる仰々しいタイトルのもと10ページにも及ぶ大特集を組んだ。更に7月28日号では「安保法制とブラック国家ニッポン」、8月4日号では「安保法案強行採決 安倍首相をどう懲らしめようか」、8月11日号では「安倍首相はどうして法案成立にこだわるのか」と特集を続け、何と「これからも安保関連法案についてしつこく取材・報道していきます」と宣言して見せた! 遠藤大介会長や高納勝寿社長の指示があったのかどうかはいざ知らず、安倍晋三政権を正面から批判して見せた。果たして、そんな資格が主婦と生活社にあるのだろうか。消費税転嫁法違反(買いたたき)についての主婦と生活社の対応を見ていると、「ない」としか私たちには思えないのである。今回の記事のタイトルは『週刊女性』にオマージュをこめて、「消費税増税ブラック企業 主婦と生活社」とでもしようか。