【文徒】2015年(平成27)7月17日(第3巻134号・通巻579号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】雑誌のデジタルシフトについて
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.7.17 Shuppanjin

1)【記事】雑誌のデジタルシフトについて

紙の雑誌の電子版は、あるにはこしたことはないが、「dマガジン」のような読み放題サービスを別にすれば、これが爆発的に売れるということはあるまい。
インプレス総合研究所によれば、そうした電子雑誌の市場規模は、雑誌全体の市場規模が8520億円であるのに対し、145億円にしか過ぎない。それでも前年比39%増であり、今年は290億円に到達すると予測されている。
そういう意味では紙の雑誌の電子版化に取り組んでも良いだろう。しかし、それをもって雑誌のデジタルシフト戦略の本丸であるなどと考えてはならないはずだ。
私が雑誌のデジタルシフトという場合、情報発信やコンテンツ提供におけるデジタルファーストの実現にほかならない。
女性ファッション誌を例にするのであれば、次々に着回しアプリが生まれ、女性ファッション誌を脅威に晒しているというのであれば、紙の上であれこれ考えるのではなく、自ら着回しアプリを立ち上げてしまえば良いという発想を是とするデジタルファーストである。紙を支配する時間から自由になり、かつユーザーに編集力を解放するという力学に基づくデジタルシフト戦略を構想すべきだと主張しているのだ。
別に難しいことではない。既にマンガや小説の世界では始まっていることを女性ファッション誌やライフスタイル誌など、ヴィジュアルとクオリティをセールスポイントとし、これまで広告収入に多大なる貢献を果たして来た雑誌においても始めようと言っているだけの話である。
デジタルシフトを遂げることで雑誌は、いつでもどこでも読者の必要に応じて読者の傍らに存在することになるはずだ。言うまでもなく、雑誌のデジタルシフトにとって、何よりも優先すべきなのは、どのようにして儲けるかという問題ではなくて、どのようにして読者に奉仕できるかが問題なのであり、どのようにして読者に編集力を解放できるかが問題なのである。ちなみにデジタルファーストとは私の言い方からすれば、水平軸のコミュニケーションを垂直軸のコミュニケーションに優先させるというアプローチでもある。
http://zuuonline.com/archives/72515

                                                                                                                        • -

2)【本日の一行情報】

ソニー・ミュージックエンタテインメントが運営する「エンタメステーション」はワーナーが手掛ける海外ドラマ「GOTHAM/ゴッサム」およびPS4向けゲーム「バットマンアーカム・ナイト」の両作品を紹介する「The World of GOTHAM CITY」を主要電子書籍ストアで無料配信をしている。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000014577.html

◎「メディアは身売りしないと生き残れない? ジャーナリズムとマネタイズを考える
」で朝日新聞メディアラボに属する山川一基の発言。
「ニュースのコモディティ化が進んでいくと、議論のほうの価値が極めて高くなっていて、スター記者もそうですよね。つまり同じニュースなんだけど、この人が書いたらどうなってるかが見たいと。同じニュースなんだけど、皆がどう考えてるのか知りたいっていう世界が、やっぱり次の1つのメディアの在り方だと思うので」
http://logmi.jp/71306

学研ホールディングスが「不正アクセスによる情報流出の可能性に関するお知らせとお詫び」を発表した。不正アクセスを受けたのは、「マイガク」「保育CAN」「保育CANカタログ」「ママノート」などのオンラインサービス。流出の可能性がある個人情報は、学研教育出版が提供している「マイガク」サービス利用者のうち、旧サイトに登録のあるユーザーで、2012年4月9日〜2015年4月27日の期間に登録したユーザー2万2108人。
http://ghd.gakken.co.jp/news/info/ghd_release20150713.pdf
http://www.security-next.com/060646

◎2002年4月に刊行された「陽炎ノ辻」以来、17日に刊行された「意次ノ妄」で第49巻となる佐伯泰英の「居眠り磐音 江戸双紙」(双葉社)シリーズが、2016年1月発売の2冊同時刊行(50巻、51巻)で完結することになった。
http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201507131907/

◎「Pen」(CCCメディアハウス)8月1日号がマンガを特集している。表紙を飾ったのは「週刊ヤングジャンプ」(集英社)に連載されている原泰久の「キングダム」だ。
http://mantan-web.jp/2015/07/14/20150714dog00m200027000c.html
CCCメディアハウスはまた「フィガロジャポン」の電子版の配信を7月18日発売の9月号より開始した。
https://www.atpress.ne.jp/news/67109

◎LINEで「任天堂岩田聡社長の暗殺疑惑について」という「陰謀史観」に依拠した怪文書が無差別にバラ撒かれたそうだ。その内容は「トカナ」によれば次のようなものであったという。
花札を売っていた任天堂がゲーム事業を始めたのは、ユダヤ人の大物技術者の開発したゲーム機マグナボックスオデッセイIIの日本版発売がきっかけです。これを後援したのがビデオゲーム界の父、アタリ社の創業者ノーラン・ブッシュネル氏です。
アタリは日本語の『当たり』が由来で、彼らは秘密結社フリーメーソンの一部派閥を組織してテレビゲームによる日本人のコントロールを目的とし、かつて日本人を夢中にさせたユダヤ人によるインベーダーゲームブームを再燃させようとしたのです。それ以来、日本のゲーム業界で任天堂の背後にフリーメーソン系の要人がいて、日本国民の愚民化を続けてきたのです。でも、これに抵抗したのが岩田社長だったのです」
文章は分割して送られて来たそうだ。
http://tocana.jp/2015/07/post_6826_entry.html

◎夏は野外フェスの季節だよね。ってなわけで、「ライブ」をとらえなおし、体験の場をともに形づくる新メディア「ぴあ MUSIC COMPLEX」(PMC)が刊行された。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000083.000011710.html

日本テレビの情報番組「スッキリ!!」で、弁護士が架空の詐欺被害者を出演させていた!産経は次のように書いている。
「テレビ局関係者から詐欺被害者の紹介の依頼を受けた奥野弁護士は見つからなかったため、当時勤務していた事務所の従業員2人を出演させた。事務所とつながりがあった広告代理店からのアドバイスだったという」
http://www.sankei.com/affairs/news/150715/afr1507150011-n1.html

◎確かに安田純平ツイッターの更新は、次のような6月20日のツイートを最後に途絶えている。
「これまでの取材では場所は伏せつつ現場からブログやツイッターで現状を書いていたが、取材への妨害が本当に洒落にならないレベルになってきているので、今後は難しいかなと思っている。期間限定の会員制で取材経過までほぼリアルタイムで現場報告することも考えてたが、危険すぎてやっぱり無理そう」
https://twitter.com/YASUDAjumpei/status/612382136348332032
http://news.livedoor.com/article/detail/10344192/
安田は藤本敏文の「戦場観光 シリアで最も有名な日本人」(幻冬舎)に「構成」としてかかわっている。

◎「ニールセン デジタル広告視聴率」が日本で提供されることになった。オンラインでのブランディング広告キャンペーンのリーチ(到達度)を計測するこのソリューションは、フェイスブックとのパートナーシップによって実現し、オンライン広告に従来の"クリック数"以外の効果計測方法を導入し、広告主は「自社広告がターゲット層にいかに到達したか」をテレビ広告のGRPと同様の指標で管理できるようになるという。
「ネット全体が巨大化し、視聴デバイスが多様化する中、オンライン・メディアは分散化、細分化の様相を呈しています。オンラインやモバイル利用者の劇的な増加、それによる消費行動の変化を踏まえれば、オンラインのブランディング・キャンペーン向けの計測指標の導入は、日本のデジタル広告の一層の発展を促すためにも必要なことです。
『ニールセン デジタル広告視聴率』は、顧客企業のニーズに応え、オンライン広告にアカウンタビリティを提供することができます。世界最大の会員数を擁するフェイスブックと提携することで、これまでにない巨大なユーザーパネルを得ることができました。この指標は、今後大きな成長が期待される動画広告にとっても、重要なものとなるでしょう」(ニールセン福徳俊弘会長兼CEO)
http://www.nielsen.com/jp/ja/press-room/2015/nielsen-pressrelease-20150714.html

◎MakreZine編集部とシード・プランニングがまとめた「デジタル広告市場の最新潮流と現状動向分析調査」によればスマートフォン広告市場は2017年には約5,500億円に達すると予測している。スマートフォンネイティブ広告は2014年が38億円で、2017年には350億円が予測される。何と10倍の成長である。それにしても「デジタル広告市場の最新潮流と現状動向分析調査」って16万2000円もするの!
http://markezine.jp/article/detail/22743

◎「世界の広告費」で2017年にはインターネットがテレビを抜くと予想されている。
http://www.exchangewire.jp/2015/07/14/news-pwc-market/

高校野球100年記念号として8月初旬発売予定の週刊朝日増刊「甲子園2015」の表紙にあだち充のマンガ「タッチ」のヒロイン浅倉南が起用された。
http://www.asahi.com/articles/ASH7G5KG1H7GULZU00T.html
ちなみに、あだちジュニアはマンガ誌の編集者として活躍している。

◎日本出版者協議会が「栗田出版販売民事再生案スキームを撤回するよう求める」を発表した。
「これによれば、仮に1000万円の売掛金を持つ出版社は1000万円を失うだけでなく、栗田出版販売の返品が5割ある場合、さらに500万円分の返品を大阪屋経由で買い取らされることになり、合計1500万円の過重な負担を強いられることになる。
債権者説明会でも出版社各社の怒りが爆発したように、売掛金を失うばかりか、自社の返品を大阪屋経由で買わされるなどという事態は、およそ商道徳・商慣習に反するものであり、債権者の利益を不当に害するものであって、絶対に許されるものではない。この再生計画案スキームは栗田出版販売の膨大な債務を、すべて出版社に押しつけた上で、同社を身軽にして帳合書店ごと来春、大阪屋に統合しようという乱暴で身勝手な計画といわざるをえない。
このようなことが許されるならば、すでに始まっている連鎖倒産が示すように、多くの出版社が経営危機に追い込まれ、日本の出版文化は危殆に瀕することとなる」
http://shuppankyo.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-7d58.html
「ウラゲツ☆ブログ」も読んでおこう。
「大阪屋が『買い上げた』という栗田の返品はそもそも、大阪屋と版元との関係においては新規取引に当たるわけなので、版元の同意なしに大阪屋の売上から相殺できません。そのことは集会で栗田代理人弁護士団も認めています。つまり、大阪屋が『買い上げた』(金銭のやりとりの実態があるようには見えませんが)返品を、版元は受ける必要がない。
出版共同流通が強引に版元に返品してくること事態が間違っていますし、実際今も『同意がないまま』返品され続けています。同意がないまま返品し続けていることを悪びれる様子すらなく、『返品をもうしちゃってるし、受け入れている版元もいるんだから、ほかの版元も受け入れて買い上げてくれないと公平じゃないだろ』と言っているわけです。繰り返しますが『公平性』ってこういう無理を強制する時に使う言葉じゃない」
http://urag.exblog.jp/d2015-07-14/

日本テレビ放送網テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京フジテレビジョンの民放5局はテレビ番組を広告付きで無料配信する見逃し配信サービス「TVer」をスタートさせる。各局1週当たり10番組前後、放送終了後から1週間程度配信するそうだ。
https://tver.jp/pdf/TVer_release20150716.pdf
https://tver.jp/

幻冬舎の社員を50回以上にわたって脅迫していた男性が逮捕された。スポーツ報知は次のように書いている。
「原宿署によると、逮捕容疑は3〜4月、幻冬舎が2005年に出版したゲッツ板谷さんの小説『ワルボロ』に自分をモデルとした人物が登場することに因縁をつけ、50回以上にわたって同社役員に電話で『ぶっ殺す。慰謝料をもらう』などといって現金を脅し取ろうとした疑い」
http://www.hochi.co.jp/topics/20150714-OHT1T50177.html

電通は、日本テレビとバスキュールの合弁会社スマートテレビスマートデバイスに関連した事業を推進しているHAROiD(ハロイド)が行う第三者割当増資を引き受け、本約1.2億円を出資した。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0715-004094.html

◎honto電子書籍ストアは、講談社コミックス「はじめの一歩」の配信を8月31日で停止することになった。「出版社の事情」とあるが、他のストアは、どうなるのだろうか。
http://honto.jp/ebook/news/detail_041000005963.html

芥川賞が決定。芥川賞羽田圭介の「スクラップ・アンド・ビルド」と又吉直樹さんの「火花」。直木賞東山彰良の「流」(講談社)。私は6月22日付文徒で芥川賞は「本命が島本、対抗が又吉、大穴が滝口、内村なんじゃないの」と書き羽田を予想できなかった。直木賞は「個人的には「流」と「東京帝大叡古教授」を推す」と書いている。
http://mainichi.jp/select/news/20150717k0000m040058000c.html?fm=mnm
http://mainichi.jp/select/news/20150717k0000m040064000c.html?fm=mnm

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】

悲しみや痛みを共有できなければ、喜びを分かち合うことができないだろう。