【文徒】2015年(平成27)6月29日(第3巻120号・通巻565号)

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1)【記事】栗田出版販売民事再生法の適用を申請
2)【記事】アマゾンによる「期間限定値引」の波紋
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.6.29 Shuppanjin

1)【記事】栗田出版販売民事再生法の適用を申請

25日締めの翌日にして、東京地裁民事再生法の適用を申請したのは、午後3時。保全命令が出たのは午後4時50分のことであった。出版取次では過去最大の倒産である。
栗田出版販売が6月26日に東京地裁民事再生法の適用を申請した。負債総額は約134億9600万円。ピーク時の1991年10月期には売上高が約701億円あったが、昨年9月期の売上高は329億3100万円とピーク時の半分以下にまで落ち込んでいた。赤字は2億6200万円を計上、1億9700万円の債務超過に転落していた。大阪屋のように大手出版社が支援の手を差し伸べなければ、既に本社を移転し、不動産も売却していたこともあって、こうなるのは、もはや時間の問題であったのだろう。
http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4069.html
http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20150626_02.html
栗田出版販売から版元に出荷の納品先や伝票の書き方などについて詳細を記したFAXが17枚、26日中に送られてきたが、そのうち2枚は大阪屋名義のものであった。大阪屋は「栗田出版販売(株) 民事再生申立にともなう表明」を公表した。
「同社(=栗田出版販売)の今回の申立てにあたっては、当社出資先でもある出版共同流通(株)から、同社への 再生期間における支援、並びに(株)OKC に対しての協業の意向表明をいただいており、当社は、そのような支援体制も含め、出版業界の混乱を避けるとともに、物流協業の立場から、 出版共同流通(株)とともに同社の再生支援の一翼を担っていくことといたしました。 再生期における物流面では、出版共同流通(株)の支援をいただけることから、当社は商流 面での支援のため『仕入代行機能』を担い、安定した商品供給をサポートしてまいります。 また、同社再生期における出版共同流通(株)の支援期間を経た後の当社との更なる協業範囲 の拡大・将来の統合の実現に向けた協議を進めてまいる所存です」
つまり栗田出版販売の再生期における商品物流・返品実務面はOKCと出版共同流通、商流面(仕入れ代行機能)は大阪屋が担う。中長期的には大阪屋との統合の協議を進め、それまでのスポンサーを日販、大阪屋、日教販、太洋社、講談社小学館集英社が株主である出版共同流通が果たすということである。周知のように大阪屋の主要株主は、楽天講談社小学館集英社KADOKAWA大日本印刷である。
http://www.osakaya.co.jp/files/uploads/hyoumei_osakaya_20150626.pdf
朝日新聞によれば栗田出版販売の帳合書店は約1200店舗。日経によれば「雑誌や書籍を出版社から仕入れ、全国約1800の書店に販売していた」ということになるが、いずれにしても西日本を拠点とする大阪屋からすれば、東日本を中心とする栗田帳合の書店を獲得することは、日販やトーハンに比べ規模は劣るものの、名実ともに全国取次として機能することになる。
栗田出版販売(株) 民事再生申立にともなう表明」のなかに「栗田出版販売(株)とは取引先書店のエリア性や特性、企業規 模や文化といった観点からの親和性も高く、両社の個性や持ち味をいかしたかたちでの協業・統合効果を双方が享受できるものと考えております」とあるのは、そういうことだろう。
http://www.asahi.com/articles/ASH6V5Q7QH6VUCVL01J.html
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26I04_W5A620C1TJC000/
「ウラゲツ☆ブログ」は読んでおこう。
http://urag.exblog.jp/d2015-06-26/

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2)【記事】アマゾンによる「期間限定値引」の波紋

アマゾンが「夏の読書推進お買い得キャンペーン」を実施している。
http://www.amazon.co.jp/b/ref=s9_acss_bw_sc_JBbargai_ar_s1?_encoding=UTF8&ie=UTF8&node=3605527051&pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_s=merchandised-search-3&pf_rd_r=0CZF8SK299J6JA0S1GWS&pf_rd_t=101&pf_rd_p=210420089&pf_rd_i=2184331051
アマゾンにとって紙の出版物を値下げするのは初めてのことだ。
「期間限定で和書におけるベストセラー値下げの実施は、Amazon にとって初めての試みとなります。 また、実施にあたって は、ダイヤモンド社インプレス社、廣済堂主婦の友社サンクチュアリ出版、翔泳社の 6 社からのご協力のもと、実現した ものです。 Amazon では、今回の特別価格でのベストセラー書籍のご提供をきっかけに、より多くのお客様に読書を身近に感じて頂き、 また、書籍購入のきっかけとなることを期待しています。 なお、期間中は、プリント・オン・デマンド書籍の 50%値引きをはじめ、洋書値引き均一セール、最大 20%ポイント還元キャン ペーンなど、お客様のニーズに沿った、さまざまなお買い得キャンペーンも実施いたします」
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000405.000004612.html
このキャンペーンについて6月26日付日経電子版は「出版6社、発売後一定期間で値下げ アマゾンと組む 」と報じた。
「インターネット通販大手のアマゾンジャパン(東京・目黒)とダイヤモンド社(東京・渋谷)など中堅出版社6社は26日から、発売から一定期間がたった書籍の値下げ販売を始める。まず約110タイトルをアマゾンのサイトで定価から2割下げる。低価格で集客したいアマゾンと、返品を減らしたい出版社の思惑が一致した」
ダイヤモンド社(東京・渋谷)など中堅出版社6社」とは、ダイヤモンド社インプレス社、廣済堂主婦の友社サンクチュアリ出版、翔泳社だ。
ところが、主婦の友社は日経の報道に対して「日本経済新聞 6 月 26 日付報道について」と題された文章を「取締役販売担当 矢崎謙三」名義で発表し、「猛烈に抗議」することになった。
「本日、日本経済新聞に掲載されました『アマゾンで 2 割値下げ』に関する記事 について、全く事実と異なる部分についてご説明いたします。 主婦の友社はアマゾンと『時限再販契約』など一切結んでおりません。さも契約をしたかのような記事が掲載されたことに対し、アマゾン側、また報道した日本経済新聞社にも猛烈に抗議をいたし、アマゾンからは未契約の確認を取っております。この報道記事にて、大変ご不快な思いや混乱を招きましたことにつきまして、 深くお詫び申しあげます」
日経も26日午後9時40分に次のような訂正を発表した。<26日2時に掲載した「出版6社、発売後一定期間で値下げ」の記事で「アマゾンと出版社の間で『時限再販』と呼ぶ契約をして、対象書籍を一定期間後に再販制度の枠組みから外すことで値引きできるようにする」とあったのは「アマゾンと出版社の合意に基づき値引きできるようにする」の誤りでした。(2015/6/26 21:40)>
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ25I1W_V20C15A6TI1000/
http://corporate.shufunotomo.co.jp/wp-content/uploads/2015/06/cce40511b006a291237286828b500a90.pdf
そもそも主婦の友社が2割引という提案に応じたのは、定価販売の再販商品ではないのである。「ねとらば」は次のように書いている。
「今回のAmazonのキャンペーンについて、主婦の友社では『むしろ再販制度を守るためだ』と発言しています。
 規制緩和の流れの中で、再販制の意義と存続についてはこれまで何度も話し合いが行われており、その中でも公正取引委員会が重視していたのが『再販制度は読者の利益のためのものであり、読者サービスも大切。読者利便に向けて改善努力を』という点です。
『以前からブックフェアなど、期間や場所が限定されたところで、読者サービスを目的とする割引セールを行うことはよくあった。今回のAmazonのキャンペーンも(期間と場所が限定されている)、同様の取り組みという認識。そもそも今回の対象になっている本は、すべて価格表示のものですからね。定価じゃない』(主婦の友社)」
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1506/26/news153.html
しかし、「ダイヤモンド社翔泳社などは、定価表示、つまり再販制度の対象となっている書籍を今回の割引セールに提供」(ねとらば)していることも事実である。当然、取次も神経を尖らせる。「東洋経済オンライン」も当初、「取次である日販も協力」とあった部分を訂正している。
「ややこしい話だが、公正取引委員会は、出版社が書籍・雑誌などの再販売価格を拘束することを認めている。そのため、まずは出版社が対象の書籍を自由価格で販売できる書籍に指定。これによって、アマゾンが自由に値引きできるようになる、という立て付けだ。アマゾンは取次である日販にもこの取り組みを説明し、通常の商流を維持する。つまり、出版社とアマゾンが『直取引』を行うわけではない。この値引きの原資(コスト負担)は、出版社とアマゾンの両方が負担する」
http://toyokeizai.net/articles/-/74725

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3)【本日の一行情報】

◎女性ファッション誌「VERY」(光文社)の専属モデルの滝沢眞規子が、かき氷ソース「サントリー 南アルプスの天然水 プレミアムフルーツソース」の発売記念イベントに登場。滝沢は3児の母だそうだ。
http://mantan-web.jp/2015/06/25/20150625dog00m200013000c.html
滝沢は、「サントリー天然水ウォーターサーバー」も使っている。
http://www.suntoryws.com/lp/takimaki2/
ブログでは滝沢家の夕飯がアップされている。
http://veryweb.jp/diary/

エイベックス通信放送NTTドコモが提供する映像配信サービス「dTV」は、フジテレビとコンテンツ契約を結び、フジテレビのドラマ作品の配信を開始することになった。毎月2作品ずつ配信する。第1弾として7月1日から「リッチマン、プアウーマン」、「救命病棟24時(第4シリーズ)」を配信する。これにより、「dTV」は既に配信しているNHK日本テレビテレビ朝日、TBS、テレビ東京を含め、在京6局のドラマ配信を実現させたことになる。
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20150625_708650.html

武雄市図書館の2014年度収支は約1700万円の赤字。前年が3300万円だから、赤字は小さくなったとはいえ2年連続の赤字であった。佐賀新聞は次のように書いている。
「CCCは図書館の建物内で、年間612万円の行政財産使用料を払って書店とCD・DVDレンタル店(蔦屋書店)、コーヒーショップ(スターバックス)を運営しているが、収支報告には含まれない」
http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/201513

中村文則の「教団X」がテレビ朝日系バラエティー「アメトーーク!」の「読書芸人」で取り上げられた結果、全国の書店で売れ切れ状態に。版元の集英社は、大重版を決めたという。「アメトーーク!」のロケ地となった紀伊國屋書店の「新宿本店次長 石井」によれば放送前は週に一桁しか売れていなかったが、放送後3日間で240冊以上も売れたそうだ。
http://top.tsite.jp/news/o/24338981/

電子書籍&電子コミックキャンペーン「講談社 夏☆電書2015」がスタートした。電子書店77店で展開する日本最大級の電子書籍/電子コミックキャンペーンである。
http://natsuden.kodansha.co.jp/
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000683.000001719.html

朝日放送(ABC)はベンチャー企業向けの投資会社「ABCドリームベンチャーズ」を立ち上げた。運用総額は12億円。
http://www.asahi.com/articles/ASH6T547LH6TPLFA004.html

青林堂が次のような「お詫びと訂正」を発表した。
「当社が刊行しました井上太郎著『日本のために 井上太郎@kaminoishi』(以下「本書」といいます。)において、下記の事実とは認められない内容の記載をしたことにつき、木野氏に対してお詫びし、当該部分を取り消します」
http://www.garo.co.jp/teisei.html
「弁護士ドットコムNEWS」は次のように書いている。
「神原弁護士は、今回の本の中には、木野さんのような形で名前を挙げられた『被害者』がまだたくさんいるとして、青林堂に対して追加請求を行うことや、著者である井上さんの責任を追及することなどを考えている、と話していた」
http://www.bengo4.com/internet/1071/n_3298/

東京放送ホールディングス株主総会で、株主のひとりが、指原莉乃を取締役候補者とする動議を提出したが、否決されたそうだ。
http://blog.livedoor.jp/advantagehigai/archives/65956318.html

文藝春秋が異様に長いタイトルの電子書籍をリリースした。「週刊文春でAKBのスクープを連発して"文春砲"とか呼ばれているらしい記者が、AKB総選挙の日にニコ生に出て、○○○○のこととか××××のこととか裏話をけっこうヤバいレベルで暴露したらしいので、それをまとめて載せてみた件。」という!著者はもちろん「文春砲&B子」である。
http://news.livedoor.com/article/detail/10280322/

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4)【深夜の誌人語録】

関心を持つということは疑問を持つということである。