【メディアクリティーク】『LEON』敗れたり!部数激減の最大戦犯がなんと社長にカムバックの不思議  出版のシロウトによる主婦と生活社の経営は、もはや限界を迎えている!

先ごろ発表されたABC公査部数2014年7〜12月期において、主婦と生活社の屋台骨を支えていると言っても過言ではない男性ファッション誌『LEON』は、『OCEANS』(発行/ライトハウスメディア、発売/インターナショナル・ラグジュアリー・メディア)に大きく引き離されてしまった。その差は3万1000部強。主婦と生活社が刊行している『JUNON』のABC公査部数が2万4011部だから、まさに『LEON』敗れたり、である。
ちなみに近年のABC公査部数の推移を見てみると、以下の通りとなる(左から順に、2012年7〜12月期→2013年1〜6月期→同年7〜12月期→2014年1〜6月期→同年7〜12月期)。
『LEON』
56,868→57,458→56,360→53,842→52,073
『OCEANS』
57,208→53,145→72,803→67,520→83,489
 多少の増減はあるにしろ、じわじわと下降線をたどっている『LEON』に比べ、『OCEANS』は波があるにしても、着実に部数を伸ばしている。当期(2014年7〜12月期)を比較すると、『OCEANS』が前年同期比約115%に対して、『LEON』は約92%だ。
『LEON』が創刊されたのは、2001年9月のことだから、そういう意味では、創刊時の『LEON』に感性が近いのは、現在の『LEON』ではなく、『OCEANS』なのである。昔であれば『LEON』を手に取っていたであろう読者が『OCEANS』に流れていると考えて間違いあるまい。
かつて流行語にもなった「ちょい不良(ワル)オヤジ」「ちょいモテオヤジ」を体現していたのがタレントのパンツェッタ・ジローラモ氏だ。氏は1962年生まれ、今年9月で53歳になる。『LEON』の読者対象とする年齢層に含まれているとはいえ、雑誌のモデルといえば読者層の若い方へ合わせるもので、53歳になるモデルが表紙の雑誌から40代の読者が離れるのも、ある意味では仕方のないことなのである。『LEON』の中心読者は、今や50代後半から60代に移行してしまっている。
このことは、『LEON』の失速が、『OCEANS』に読者を奪われただけではないことを意味する。『LEON』が直面している危機は、もっと深刻なのである。そうセブン&アイ出版から「やんちゃジジイ」(やんジイ)を謳う『MADURO』が創刊されたのである。『LEON』は下の世代では『OCEANS』の脅威に曝され、上の世代では『MADURO』の脅威に曝されているのだ。『OCEANS』と『MADURO』に挟撃されているだけでも大変なことに加えて、ネットに誕生した『FORZA STYLE』(講談社)の脅威にも新たに曝されている。『LEON』『OCEANS』『MADURO』『FORZA STYLE』は、それぞれ読者ターゲットが異なるものの同じ匂い、同じテイストを持っていることが、この四つのメディアをどうしても競合させてしまうことになる。同じ匂い、同じテイストを持っているのは、言わば血縁関係にあるからだ。
『LEON』の創刊は、世界文化社から主婦と生活社に移った岸田一郎編集長のもと、同じく世界文化社から移籍した大久保清彦氏が副編集長に就き、スタッフに『エスクァイア日本版』などの編集経験のある千場義雅氏、千場氏と同期でマガジンハウスでのアルバイト経験のあった太田祐二氏などが参画した。このメンバーが『OCEANS』を創刊し、『MADURO』を創刊し、『FORZA STYLE』を立ち上げる。
2006年秋に『LEON』を去った岸田一郎氏は翌年、『zino』を創刊するが、これは失敗に終わってしまう。
岸田氏が『LEON』を去る以前に大久保清彦氏は同誌を去り、千場氏、太田氏とともにインターナショナル・ラグジュアリー・メディアに移籍している。大久保氏が編集発行人となり、2006年2月に『OCEANS』は創刊された。当時、創刊雑誌としてはギネス新記録となる広告集稿3億円を記録するなど、話題を呼んだ。2008年には太田祐二氏が編集発行人に就き、現在に至る。しかし、大久保清彦氏は『OCEANS』を去る。やがて大久保清彦氏はセブン&アイ出版に招かれることになる。
 昨年9月に創刊された『MADURO』で岸田氏と大久保氏は、再会を果たす。『MADURO』は編集人編集長/製作総指揮が岸田一郎氏、発行人/総合プロデューサーは大久保清彦氏、ファッションディレクターには干場義雅氏が就任し、セブン&アイ出版とyanG(ヤンジー)が共同発行している。
干場義雅氏は講談社の社員となることなく、社外編集長として『FORZA STYLE』を今年3月にグランドオープンさせた。
『MADURO』が『LEON』の読者を喰い始めたとはいえ、部数的にはまだまだ『LEON』のほうが上であろう。しかし、広告面における競合という意味では『MADURO』は『OCEANS』同様に『LEON』の牙城に攻め込んでいる。『MADURO』の版元であるセブン&アイ出版はいうまでもなく、セブン&アイ・ホールディングスのグループ企業である。セブン&アイ・ホールディングスはコンビニのセブン-イレブンばかりではなく、百貨店のそごう・西武を擁している。雑誌広告関係者によれば
「『MADURO』は、流通からプレッシャーをかけて広告を獲得できますよね」
ということになる。
それにしても不思議でならないのは主婦と生活社である。広告営業を考えれば、『LEON』を一部でも多く売らなければならない。例えば『OCEANS』は年間購読者を増やすことで部数の安定化を図るべく、通常9360円のところが4680円になる半額キャンペーンを展開している(終了未定)。では、主婦と生活社はどのような施策をもって『LEON』の増売に取り組んだのだろうか。私は不勉強にして知らない。仮に増売に取り組んでいたとして、実際は部数減に歯止めがかけられない責任は問われて然るべきだろう。
2014年7〜12月期において販売を担当していたのは高納勝寿取締役であった。しかし、主婦と生活社の「最高権力者」たる遠藤大介会長は、高納取締役の責任を問うことなく、何と高納氏を社長に返り咲かせてしまうのである。昨年、高納社長を取締役に降格させ、牧秀幸社長を誕生させたばかりなのにたった一年で高納氏を社長に復帰させてしまうのである。主婦と生活社の関係者は次のように嘆く。
「牧社長であろうと高納社長であろうと社員からすればどっちもどっちなんです。二人ともはっきり言って出版の素人です。もちろん、他の出版社にも高納社長のように銀行出身の経営者もいますが、みなさん、出版に相当詳しい。しかし、ウチの社長は出版に関しては素人のままです。単純に数字で判断してしまいますから、これでは編集者なんか育つはずありませんよ。牧前社長はほとんど本を読む人ではないし、高納社長は元銀行マンらしく『週刊東洋経済』くらいは目を通すのでしょうけれど、文学なんて全く縁のない人です。遠藤会長にしても、本なんて読んでいないのではないでしょうか。出版の素人以前に本の素人なんですよ」
主婦と生活社にあっては、「最高権力者」の遠藤大介会長からして、出版に関しては素人なのである。主婦と生活社の内情に詳しい広告関係者の証言も紹介しておこう。
主婦と生活社で雑巾がけをすることなく、いきなり天上人になったのが、遠藤会長です。経営に関しては、自分が外部から引っ張ってきた連中に任せっぱなしです。いずれにしてもボクたち一般の社員は遠藤会長とほとんど接触したことがないのです。いっそのこと会長が会社をどこかに売却してくれないか、なんて冗談も仲間内の話では出ています」
別の主婦と生活社の関係者は、それこそ声をひそめて次のように語ってくれた。
「高納社長にしても、牧前社長にしても、遠藤会長のほうを向いて仕事しているんですよ。社員と向き合っているとは言い難いと思います。遠藤会長が引っ張ってきた連中のなかで、最も社員に支持されていたのは柏原(達也)さんでした。出版の世界を知ろう、学ぼうと努力していたのは社員なら誰でも知っています。トイレに閉じこもって泣いたり、人間味も一番あったんじゃないでしょうか。それが主婦と生活社の社長ではなく、九州のピラミッドの社長になったのは、遠藤会長が柏原さんを怖いと思ったからでしょう。なまじ仕事のできる柏原さんを社長にしては、寝首をかかれるのではないかと心配になって安心して眠れませんもの」
ピラミッドの決算は物凄く良かったらしい。といって、これは柏原社長の手柄というわけでもないようだ。ただ、主婦と生活社の社員の多くは、遠藤会長はいずれ柏原氏を主婦と生活社の社長に据えざるを得なくなると見ているようだ。いずれにしてもブリヂストンの下請けを主たる仕事としているピラミッドが事業として成立しているのは、主婦と生活社というマスコミを背景にしているからだと考えて間違いがない。だとすれば、主婦と生活社の屋台骨を支える『LEON』の再建は急務のはずなのだが、『LEON』が低迷から脱するのは、そう容易いことではないようである。
消息筋は言い放った。
「高納社長と牧常務は仲が悪いし、現役員のなかでは最も出版に明るい佐々木(行夫)常務は高納社長を避けているし、高納社長は高納社長で佐々木常務を煙たがっています。こんな主婦と生活社に明日があると思いますか?」