【文徒】2015年(平成27)7月27日(第3巻139号・通巻584号)

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1)【記事】日経新聞のFT買収でメディアの再編は加速度的に進むのか(田辺英彦)
2)【本日の一行情報】(田辺英彦)
3)【深夜の誌人語録】(田辺英彦)

                                                                            • 2015.7.27 Shuppanjin

1)【記事】日経新聞のFT買収でメディアの再編は加速度的に進むのか(田辺英彦)

先週の23日、日本経済新聞社が英国のピアソンから英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)グループを8億4400万ポンド(約1600億円)で買収したニュースが大きな反響を呼んだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ24I2K_U5A720C1MM8000/
2007年に米ニューズ・コーポレーションが米ダウ・ジョーンズを5900億円(当時の換算レート。以下同)で買収して以降、08年にカナダのトムソンが英ロイターを2兆700億円で、11年に米AOLが米ハフィントン・ポストを260億円で、13年に米アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾス氏が米ワシントン・ポストを245億円で、14年に米コムキャストが米タイムワーナー・ケーブルを4兆6000億円で買収というように、ほとんど毎年のように世界の主要メディアの再編が伝えられている。ピアソンは保有する英誌エコノミストグループの株式の売却も検討しているという。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ23I71_T20C15A7EA2000/
「Reuters Breakingviews」のコラムニストJennifer Saba氏は、次のように語って日経新聞のFT買収に疑問を呈している。
「それでもこれほど高額の買収となれば、元を取るには異例なほどの企業努力が求められる。日経は経費節減を通じて投資の一部を回収しようとする可能性はあるが、そうした取り組みは長期的に見ると、せっかく大枚をはたいて手に入れたFTの名声を損なってしまうかもしれない」
http://toyokeizai.net/articles/-/78124
コラムニストの沢利之氏は高い買い物だという。
「企業の買収価格が高いか安いかは、買収価格が企業収益の何倍であるかで判断する。ブルンバーグによると日経新聞によるFTの買収価格は営業収入の35倍 だった。アマゾンが2014年にワシントン・ポスト紙を買収した時の価格は企業収益の17倍だったから海外メディアの間では「高い買い物」という声が上がっている」
http://blogos.com/article/124354/
BLOGOSで西田亮介氏はメリットとデメリットを挙げ、日経新聞とFTの「温度差」について懸念を表しつつ、期待感を寄せている。
「やや非対称ともいえる温度差のなかで、今回の巨額な買収の「元を取る」ことができるのだろうか。(中略)それでも東芝三菱自動車の米国現地生産の撤退など、日系企業の不祥事や不振のニュースが相次ぐなかで、久々のサプライズ・ニュースであり、期待したい」
http://blogos.com/article/124599/
日経はご存じのとおり日本最大の業界紙であるといわれる。そして日本にはマスコミはあっても英米流のジャーナリズム(世界の普遍性を素朴に信じているかに偽装するスタイル)なるものは存在しない。軋轢が起こるのは必至だ。
いずれにしろ、今後の動向が気になるが、新聞・出版業界がデジタル広告で利益を出す経営モデルを模索しつつ、さらなる系列や業態を越えた再編へと動きだす会社が現れるのか注意が必要だ。

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2)【本日の一行情報】(田辺英彦)

桂望実の小説『嫌な女』(光文社文庫)を映画化、女優の黒木瞳が監督デビューすることが明らかになった。
http://www.cinematoday.jp/page/N0075114

◎小池ノクト原作のホラー・スリラー漫画『6000 ロクセン』(幻冬舎コミックス)が米ハリウッドで実写化される。『ブラック・スワン』『シャッター アイランド』などを手がけてきたプロデューサー、マイク・メダヴォイ氏と提携して、プロジェクトを推進していくことが、共同プロデュースするAll Nippon Entertainment Worksより発表された。
http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0723/ori_150723_0679869034.html

NTTコムリサーチは「企業におけるソーシャルメディア活用状況」に関する調査を実施。最も活用されているメディアは「Facebook」で80.4%。
http://markezine.jp/article/detail/22842
http://jinjibu.jp/news/detl/9605/

集英社少女コミック誌『りぼん』の60周年を記念して、1993年9・10月号の"応募者全員大サービス"のグッズだった『くいしんぼバッグ』が復刻。『姫ちゃんのリボン』『ママレード・ボーイ』『天使なんかじゃない』の3作品のバージョンが、通販サイト『プレミアムバンダイ』で予約受付中。
http://getnews.jp/archives/1053888

◎7月17日に創刊した集英社の「ジャンプSQ.CROWN」が、増刷がかかる好調なスタートを切っている。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1507/23/news133.html

◎第37回講談社ノンフィクション賞は、眞並恭介「牛と土」(集英社)に決まった。また、第31回講談社エッセイ賞にはジェーン・スーの「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」(幻冬舎)、第31回講談社科学出版賞には宮原ひろ子の「地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか」(化学同人)が選ばれた。
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/pdf/2015nonfiction.pdf

学研パブリッシングより“日本最大級の青文字系カルチャーの祭典”を謳う「mer fes.2015」(9月23日、恵比寿ザ・ガーデンホール)の第1弾出演者が発表された。ブランドディレクターとしても活躍する武智志穂、モデルで歌手の三戸なつめ、トップブロガーの桃などの出演が決定。
http://mer-web.jp/event/9564.php

◎リターゲティンググローバル最大手のCriteoが、国内で取扱広告代理店の認定制度「Criteo Certified Partners(スター代理店制度)」を開始した。売上高に応じてスターターからファイブスターまでの階層があり、フォースターにはサイバーエージェントとオプトが認定。
http://www.exchangewire.jp/2015/07/24/news-criteo-platform-2/
http://www.criteo.com/jp/criteo-certified-partners/

リクルートブライダル情報誌「ゼクシィ」9月号の付録「シアワセすぎる・花嫁専用自撮り棒」が、「いつ使うの?」「かわいそうだから誰か写真撮ってあげて!」など、ネット上で疑問と困惑から話題を呼んでいる。
http://kai-you.net/article/19194

サイバーエージェント伊藤忠商事と提携し、法人向けデジタルギフト流通プラットフォーム「ifeelgoods」を活用した広告配信を2015年8月中旬(予定)より開始する。
https://www.cyberagent.co.jp/news/press/detail/id=10767?season=2015&category=ad

Googleは2015年上半期に国内で話題になったYouTubeの動画広告10本を発表した。auKDDI)は「SYNC YELL 〜上京した瞬間に、地元からのサプライズエール〜」「にゃにゃにゃにゃ食堂」「au学割『桃太郎の出生』篇」の3本が選ばれた。
http://adwords-ja.blogspot.jp/2015/07/YouTube-video-ads-1st-half-of-2015.html

Twitterは花火大会や音楽フェスなどのイベントにあわせてキャンペーンや広告を展開できる新サービス「イベントターゲティング」の提供を開始した。
https://blog.twitter.com/ja/0724event

博報堂DYメディアパートナーズ、博報堂DYホールディングスの「マーケティング・テクノロジー・センター」は、TVCMとオンライン動画広告をかけ合せた、キャンペーンにおける広告効果予測プラニングのための新ツール「TVCross Simulator」(テレビ クロス シミュレーター)の提供を開始する。
http://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/service/20150723_10444.html

◎産経ニュースの「メディア裏通信簿」が月刊「正論」7月号の記事を転載している。
「先生 文藝春秋6月号の看板鼎談「戦後七十年を動かした『政治家の名言』」で、御厨貴吉田茂を挙げて「防衛大の第一回卒業式で述べた、『君たちが日陰者である時の方が、国民や日本は幸せなのだ』という言葉は先駆的でした。言語矛盾している『戦力なき軍隊』の存在をうまく言い表していますし、日本の戦後を規定した真意が出ているように感じます」と発言していたが、あれは間違い。この発言は防衛大の卒業式ではなくて、卒業アルバム編集長に言った言葉。雑誌歴史通の平成23年6月号に、当時のアルバム編集長が書いているから、読んでみろよ。文藝春秋は、そんなことも知らなかったのか。
教授 しかも、あの言葉は、外国からの攻撃や災害派遣があれば、自衛隊が活躍しなければならないから、自衛隊に活躍の場がない方が国民や日本は幸せなのだという意味。あらゆる国の軍隊に言えることで、「戦力なき軍隊」の存在を言い表した言葉ではないのです。文藝春秋校閲は、ちゃんとチェックしているんでしょうか。」
http://www.sankei.com/premium/news/150725/prm1507250010-n1.html

吉本新喜劇の座長でもある芸人の小籔千豊が『NYLON JAPAN』、『ViVi』、『VOCE』の“専属モデル”を務めることが決定した。3誌同時の専属モデルは女性ファッション史上でも初めて。
http://top.tsite.jp/news/i/24735357/

◎香港メディア大手の一伝媒(ネクスト・メディア)は、8月7日発売の創刊20周年記念号をもって女性誌「忽然1週」を休刊、同誌編集部員70人はすべて解雇する方針という。
http://www.newsclip.be/article/2015/07/23/26336.html
http://hongkong.keizai.biz/headline/526/
香港ではフリーペーパーやネットメディアの影響で老舗メディアの休刊が相次いでいる。中国語版を展開している日本の女性誌も再考を迫られるかもしれない。

◎ネオマーケティングは、一都三県に住む20歳〜39歳の働く女性300人を対象に「働く女性のファッション事情」をテーマにしたインターネット・アンケートの結果を発表した。それによると毎月ファッション誌を購入している女性は16%で、そのうち20代は「MORE」「ViVi」が24.1%と同率1位。30代は「CLASSY.」が48.1%で1位となった。
http://news.mynavi.jp/news/2015/07/23/558/

◎北米や欧州で先行発売した、高解像度の6インチタッチスクリーンの電子書籍リーダー「Kobo Glo HD」が国内でも販売を開始。2つの英和辞書を搭載し、「後読み」アプリの「Pocket(ポケット)」と連携し、ウェブサイトやニュースアプリなどからPocketアプリに保存した記事を、同端末からでも読めるようになった。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000220.000005889.html
http://books.rakuten.co.jp/event/e-book/ereaders/koboglohd/

◎電子出版事業を手がけるインプレスR&Dは、インターネット上で一般個人からの出版企画募集を開始した。専門性の高い知見を持つ人や出版社との出会いに恵まれなかった著者に出版機会を提供することで、優良なコンテンツが増えることを期待している。第一弾は8月末締切のITジャンル10タイトルの募集。
http://koukaiboshu.nextpublishing.jp/
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000787.000005875.html

◎2013年度の出版業界の総売上高は5兆997億3500万円で、5年前の2008年度(6兆3495億7500万円)に比べて19.7%減少していることが、帝国データバンクの調査で分かった、とITmediaが伝えている。
「減少率が最も高かったのは「出版社」で24.3%、次いで「書店経営者」(減少率18.3%)、「出版取次業者」(同15.1%)となった」
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1507/23/news145.html

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3)【深夜の誌人語録】(田辺英彦)

誰もが想像し得るが、その想像を一笑に付したときに番狂わせは起こる。