【文徒】2015年(平成27)8月27日(第3巻162号・通巻607号)

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1)【記事】雑誌情況への提言 雑誌を出版社本体から自由にする
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】雑誌情況への提言 雑誌を出版社本体から自由にする

客 先日、書店の経営者にハナシを聞いたんだけれど、売上が半減してしまったと悲鳴をあげていた。
主 消費税率のアップが出版市場を直撃しているのは確かだよね。雑誌なんか販売、広告ともにキツイ情況がつづいている。思うんだけれど、プログラムピクチャーの時代は終わったんじゃないのかなあ。
客 プログラムピクチャーの時代は終わったって、出版は映画じゃないぜ。
主 かつて日本の映画会社は監督、脚本家、俳優までを傘下にして、年間の上映スケジュールに合わせて作品を製作していたよね。雑誌でいえば、編集者、営業を出版社自身が抱えて、それぞれ雑誌の刊行形態に合わせて作ってきたよね。そういうやり方を再検討すべき時期に差しかかっていると思うんだ。
客 どういうことだい。
主 雑誌を擁することのできる出版社の給料って高いじゃない。これを抑制するために雑誌を丸ごとアウトソーシングしてしまう。雑誌Aを「株式会社ブランドA」にするということさ。出版社の社員はプロデューサーに徹して、編集や広告、販売をアウトソーシングしてしまって損益分岐点のハードルを下げる。こうすることで、雑誌ビジネスの筋肉質化をはかる。恐らく女性誌なんか、そういうモデルにしないと経営的には成立しなくなるかもしれないよ。
客 今だって出版社は編集プロダクションを使っているし、それこそ編集プロダクションに丸投げしている企画もあるじゃない。
主 編集プロダクションにも優秀な人材はいるけれど、例えば編集プロダクションが女性誌を代表するような雑誌を丸ごと手がけられるだけの能力を持っているかと言えば疑問だ。オレの言う「株式会社ブランドA」は、従来の編集プロダクションとは質を異にしていると考えてもらいたい。「株式会社ブランドA」は雑誌Aも手がければ、デジタルメディアAも手がけるというように「ブランドA」にかかわるプロフェッショナル集団というイメージさ。組織としては柔構造でね。だから「株式会社ブランドA」が編集プロダクションを使うということはあり得る。それで販売や広告の営業は欧米の出版社に見かけられるようにノルマ制にする。加えて出版社が「株式会社ブランドA」を設立するに際しては、他の企業と業務提携しても良いし、出資にまで踏み込んでもらっても良い。
客 大胆だねぇ。
主 そんなことないと思うよ。少なくとも出版社にとってチャレンジしてみる価値はあるはずさ。雑誌だけでなくデジタル事業でもそうだけれど、出版社本体から切り離すことによって、旧弊から自由になれるというメリットもあるんじゃないのかな。

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2)【本日の一行情報】

◎戦後70年はマガジンハウスにとって創業70周年である。「70seeds」で「POPEYE」「an-an」の編集長を歴任したマガジンハウスの熊井昌広執行役員は次のように語っている。
「電車内で全員が見入っているスマホの画面に、どういうふうに紙で培った編集力を注ぎ込めて、読者の支持を得られるかが今試されているわけです。さらにきちんとビジネスとして成立しなきゃいけない。としたら無料情報の渦に巻き込まれてはいけないし、またメディアの分野だけでなく、持てる編集力を商品開発やコンサルティングといったところにまで開放できたら、また新たな道が拓ける気がしています」
そう編集力を生かす場を「紙」の世界に限定して考えてはなるまい。
https://www.70seeds.jp/magazine-079/

◎小説家の平野啓一郎西日本新聞で自著「ドーン」(2009年)を引き合いに次のように書いている。
「『現実的に』徴兵などあり得ないと主張する人は、『現実的に』自衛隊員が不足した時にはどうする考えなのか。自ら進んで入隊するだろうか?
 私は、そういったもろもろを、日本ではなく、近未来のアメリカを舞台とする小説で描いた。それは、日米同盟のいう現実の必然性もさることながら、日常生活からいったん切断され、別の時空間に身を置く無関係の人間の生を生きることで、自らの世界観を更新するという小説の効果に期待してのことである。」
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/teiron/article/190614

サーチナが「Hanako世代の消費動向と価値観調査」を実施。「Hanako世代」とは1959〜64年生まれのアラフィフ女性である。
「10年前と比べると『自分に使える時間』(68.0%)も『自分に使えるお金』(63.0%)も増えている。(中略)20代では『買い物・ショッピング』(48.2%)か『ファッション』(46.0%)がトップで投資対象は自分だけだった。現在は、『旅行』(37.6%)、『食・料理』(33.2%)、『子供』(32.0%)の順となり、自分のことだけではなく子供への投資が増えていることがわかる。そして、子供の手が離れる未来では、『旅行』(45.0%)、『健康』(40.6%)となり、再び自分への投資が増える。」
http://biz.searchina.net/id/1586263?page=1

◎ようやく2020年東京五輪のエンブレムの件で審査委員代表を務めたグラフィックデザイナーの永井一正が発言。<大会組織委員会が佐野さんの案を商標登録するために、世界中の商標を確認。永井さんは「(原案と)似たようなものがほかにあったようだ。そのため佐野さんの案は、元のイメージを崩さない範囲でパーツを一部動かすなど、組織委の依頼で何度か微修正された」とした上で、「最初の案は(類似性が指摘されている)ベルギーの劇場ロゴとは似ていなかった。盗作ではない」と話した>
http://www.asahi.com/articles/ASH8T5VXCH8TPLZU005.html
これまで永井が発言を控えていたのは大会組織委員会から選定の経緯について発言しないよう求められていたというが、大会組織委員会ソーシャルメディアの時代の何たるかを全く理解していない旧人類によって占拠されているということだろう。もっと早期の段階で説明をしていれば、ここまでの大炎上には至らなかったはずだ。

◎CODE SHAREは、10代後半から20代の女子大学生やOLをターゲットにしたファッション通販サイト「Color(カラー)」をオープンした。イメージモデルには、森星や堀田茜(CanCam)、泉里香(Ray)、大川藍(JJ)など人気ファッション誌のモデルを起用。ベーシック系やガーリー系を中心にロープライスなアイテムを取り扱う。
http://ecnomikata.com/ecnews/detail.php?id=5946
http://color-store.jp/
「動画×ファッション誌」という新しいマーケティング手法というが、ECを展開する雑誌社にも参考になるはずだ。

電通は、地上波ローカル放送局が保有する動画コンテンツから、「地方創生」をキーワードに厳選・集約し、地域の魅力を発信するポータルサイト「ロコチャン」(http://www.lococh.jp/)を開始した。
http://dentsu-ho.com/articles/2970

◎花や野菜の種子を研究・販売するサカタのタネと、植物栽培システム“ハイポニカ”を開発した協和、主婦の友社の3社は、園芸や野菜作り未経験者でもすぐに水耕栽培がスタートできるキット「カンタン!水耕栽培キット」を開発し、9月2日から全国の書店で発売する。
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=393802
http://www.j-cast.com/trend/2015/08/24243015.html
学研の「科学」の付録を思い出した。これもデジタル化できない商品である。

AWAは、同社が運営する音楽配信サービス「AWA」のPremiumプランを「Standardプラン」に改称し、月額料金を1080円(税込)から960円(税込)に値下げする。
http://japan.cnet.com/news/service/35069349/
LINE MUSICのプレミアムプラン(時間無制限)1080円(LINE STORE1000円)より安く設定したということだろう。音楽配信サービスも価格競争の時代となれば、淘汰されるところも出てくるに違いない。

◎「週刊少年ジャンプ」(集英社)8月24日号の特集は、「ハイキュー!!」のキャラクターが、FIVBワールドカップ2015に出場中の龍神NIPPONを応援。ウィングスパイカー石川祐希選手、ミドルブロッカー・山内晶大選手、セッター・深津英臣選手、リベロ酒井大祐選手の各ポジションの説明をしながら、見どころを紹介している。
http://wc2015.jva.or.jp/topics/150824-mg

NHK朝ドラ「まれ」の女優・土屋太鳳主演で実写映画化(12月12日公開)される高野苺のマンガ「orange」が、25日発売の「月刊アクション」(双葉社)10月号で完結した。
http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0825/man_150825_1844410614.html
http://www.futabasha.co.jp/introduction/orange/pc/

◎第51回谷崎潤一郎賞中央公論新社主催)に、江國香織の「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」(朝日新聞出版)が選ばれた。
http://www.yomiuri.co.jp/culture/20150824-OYT1T50089.html
虫と話をする幼稚園児、そんな弟を庇護する姉、愛人との時間を優先させる父、その帰りを待ちつづける母という家族の物語。5歳児の心の世界はひらがなだけの文体にするなど野心的な作品だ。

◎ネオマーケティングでは、20〜39歳の働く女性300人を対象に「働く女性のファッション事情」に関する調査を実施。購入している雑誌についての質問では、20代女性は「MORE」と「ViVi」が24.1%で同率1位、「with」「sweet」「AneCan」「GINGER」と続く。30代女性は「CLASSY.」が1位で、以下「BAILA」「AneCan」「MORE」「GINGER」と続く。
http://dokujo.jp/archives/51889826.html

エイチ・アイ・エスH.I.S.)とファミリーマートは、東日本と北海道のファミリーマート店舗約5700店で、ファミリーマート限定企画の「旅カタログ」(390円・税込)を創刊する。「旅カタログ」には、アジア・ビーチリゾート・オセアニアアメリカ・カナダ・ヨーロッパ・日本国内など、H.I.S.企画担当者厳選の50方面300コース以上の商品を掲載する。隔月発行予定で、購入者限定特典として、H.I.S.主催のパッケージツアーが最大3000円引きになるクーポン券が付く。
https://www.family.co.jp/company/news_releases/2015/150824_02.pdf

アメリカの「ヴォーグ」9月号がOtoO戦略に踏み出した。誌面とデジタル広告を連携させ百貨店へ動員をはかっている。
http://blogos.com/article/130038/

◎賃貸住宅の「D-room」を展開する大和リビングマネジメントとメディアドゥは、大和リビングマネジメントが管理する賃貸住宅の新規契約物件を対象に、1日30分電子書籍が読み放題のサービス「D-room Books」の提供を開始した。
http://www.mediado.jp/service/1249/

◎図書館調査事業委員会から昨年度の都道府県立図書館統計が発表され、岡山県立図書館(岡山市北区)の来館者および個人貸出冊数が10年連続で1位となったことがわかった。来館者は約105万人、貸出冊数は約144万冊。全国で発売される新刊図書の約7割を購入、現在の蔵書数は120万冊を超えている。CDやDVDを鑑賞できるAVコーナーや、休憩スペースなども充実している。
http://otapol.jp/2015/08/post-3724.html
http://www.libnet.pref.okayama.jp/

そごう・西武凸版印刷は、28色のカシミヤニットのバーチャル試着体験が可能なカラーフィッティングサイネージを、西武池袋本店、西武高槻店、そごう横浜店、そごう千葉店、そごう大宮店の5店舗で提供する。11月7日までの期間限定。
http://www.toppan.co.jp/news/2015/08/newsrelease150821.html

◎京都のジュエリーブランド「俄 NIWAKA」は、結婚に役立つ情報をまとめた結婚情報サイト「結婚スタイルマガジン」のスマートフォン版をオープンした。
http://japan.cnet.com/release/30113878/

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3)【深夜の誌人語録】

遊び過ぎるということはあっても、学び過ぎるということはないのである。