【文徒】2015年(平成27)8月28日(第3巻163号・通巻608号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】集英社「第74期決算」と役員人事
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.8.28 Shuppanjin

1)【記事】集英社「第74期決算」と役員人事

集英社の第74期決算(2014年6月1日〜2015年5月31日)と役員人事を発表した。
売上高は1221億5900万円で前期比99.1%とほぼ横ばい。
内訳を見てみよう。
雑誌売上は715億1300万円で前期比95.6%。
このうち雑誌は337億2000万円で前期比91.4%。コミックスが377億9300万円で前期比99.6%。
書籍売上は151億8400万円で前期比92.4%。
広告売上は105億100万円で前期比95.3%。
その他の売上が249億6100万円で前期比118.9%。
その他の売上の内訳は版権が107億3700万円で前期比103.8%。Webが81億9200万円で前期比146.3%。物販が60億3200万円で前期比119.5%。
税引前当期純利益が前期比110.5%、79億200万円。当期純利益が前期比110.0%、41億3000万円。
微減収増益の決算である。純然たる雑誌や書籍の売上や広告収入が前期の水準を維持できなかったにもかかわらず、「微減収」で済んだのは、コミックスが何とか踏ん張り、その他の売上が大きく伸びた結果である。紙の市場は縮小せざるを得ず、紙の市場で最も踏ん張りのきく商品がコミックスであるということ、デジタル関連の事業は高度成長過程にあるということである。これは、これからの出版社のあり方を示唆していると言えよう。何しろ、集英社において、その他の売上規模は書籍売上と広告収入を合算した数字と互角なのである。
Webの売上は、ほぼ電子書籍であるといって良いようだ。もちろん、電子書籍といっても、数字を大きく伸ばす原動力となっているのは、マンガである。マンガをスマホタブレットで読むという習慣は今後とも増え、いつかはそれが主流になるのかもしれない。
物販も数字を大きく伸ばしているが、女性誌の歴史を背景にしてスタートしたECビジネスは数年後には100億を超える水準に達するかもしれない。女性誌にかわる集英社の武器に何としても育てたいところだろう。

8月26日付役員人事は次の通りだ。
鳥嶋 和彦
新:退任後、11月に白泉社代表取締役に就任。
旧:専務取締役[第1-10/ジャンプノベル/ジャンプコミック出版/整理編集部,デジタル/ライツ/ブランド事業部,雑誌デジタル編集室,コミュニケーション・デザイン室]
高森茂
新:退任後、11月に集英社サービス代表取締役に就任。
旧:取締役[雑誌/コミック/マルチコンテンツ販売部]
山下秀樹
新:退任後、顧問に就任。
旧:取締役相談役
【昇格】
塩野嘉和
新:専務取締役[管理部門(社長室、人事部、厚生部、総務部、経理部)、編集総務部、関連会社]
旧:常務取締役[管理部門(社長室、人事部、厚生部、総務部、経理部、総合管理部)、編集総務部、関連会社]
石渡孝子
新:常務取締役[第5〜10編集部,整理編集部,雑誌デジタル編集室,ブランド事業部,コミュニケーション・デザイン室,女性誌企画編集部]
旧:取締役[第5・第7〜第9編集部、コミュニケーション・デザイン室担当]
【新任】
村田 登志江
新:取締役[文芸編集部、文庫編集部、校閲室担当(兼)校閲室部長]
旧:役員待遇[文芸編集部、文庫編集部、校閲室担当(兼)校閲室部長]
渡辺 隆
新:取締役 [社長室,人事部,厚生部,総務部担当(兼)社長室部長]
旧:役員待遇[社長室,人事部,厚生部,総務部担当](兼)社長室部長]
北畠 輝幸
新:役員待遇[第1,第2編集部(兼)第1編集部部長]
旧:第1編集部部長
隅野 叙雄
新:役員待遇[雑誌販売部、コミック販売部担当(兼)コミック販売部部長]
旧:コミック販売部部長

(解説・今井照容
堀内丸恵社長は大胆な経営者であると思った。何しろ鳥嶋専務を退任させて、白泉社代表取締役に据えるというのだ(11月に就任する予定だ)。このところ白泉社のトップに就任してきたのは、集英社女性誌畑と広告畑で活躍して来た人材であった。しかし、このところ白泉社の屋台骨を支えるマンガ出版から往時の勢いが失われつつあった。そこで打った手がマンガ編集者としては「天才」のひとりといって良い鳥嶋専務を白泉社代表取締役に送り込むことであったのである。
これは最強のカンフル剤にほかなるまい。堀内社長が事前に鳥嶋専務に自らの考え方を丁寧に説明しなければ実現しなかった人事であったことは想像に難くないところだ。堀内社長に応えて鳥嶋専務もやる気満々であるようだ。
私たちの周辺取材の結果、わかったのは鳥嶋専務が退任するに際して取締役会で「長い間どうもお世話になりました」と一言だけ述べたということである。退任する際には、それこそ何年に入社してどうのこうのと自らの来歴に触れるのがふつうらしいが、そうした発言は一切なかったそうである。
まだ、過去は振り返らない、これからは白泉社の未来をどう切り拓くかという一点に全力を尽くす。そうした決意がこの一言には凝縮していたはずである。いかにも鳥嶋らしい一言である。少年マンガの歴史を変えた鳥嶋和彦は、白泉社において少女マンガの歴史をどう変えるのか。ちょっと楽しみである。
更に言えば堀内社長の経営者としての凄みは鳥嶋専務を白泉社代表取締役に据えたことだけではない。鳥嶋専務の後任を集英社に敢えて置かなかったことだ。塩野嘉和常務が専務に昇任したが、管理部門の担当である。鳥嶋専務が集英社で果たして来た役割を引き継ぎたいのであれば、鈴木晴彦取締役なり、茨木政彦取締役なりは実力でもぎ取れというメッセージが込められているのではないだろうか。

                                                                                                                        • -

2)【本日の一行情報】

講談社の「Kiss」、「ハツキス」で連載されているマンガの魅力をアピールする「Kiss LIVE!」がKiss公式HP上 http://kisscomic.com/ にてスタートした。毎月13日と25日に更新される。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000743.000001719.html
http://kisscomic.com/live/1508torikochiya/index.html

◎「少年サンデーS」10月号(小学館)の付録は、藤田和日郎うしおととら」のハンドタオル。
http://natalie.mu/comic/news/158024

アクロディアは、エイタロウソフトとの協業による対戦パズルRPG「対戦パズル バトルブレイブ」において、人気アニメ「FAIRY TAIL」とのコラボイベントを開催する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000189.000001924.html

◎短編集「雨の裾」(講談社)を上梓した古井由吉を産経がインタビュー。古井曰く。
「老年になると先が少なくなって後ろが詰まってくるから、時間の“流れ”が川の河口みたいによどむ。そして幼少期から老年期までの自分が並列して潜む。歳月を経て、濃く生々しくなってくる記憶もあるんですよ」
http://www.sankei.com/life/news/150826/lif1508260004-n1.html
古井の「仮往生伝試文」は私の好きな小説のひとつである。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062902786

近藤正高講談社現代新書タモリと戦後ニッポン」の前書きが公開されている。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44808
近藤正高は次のようにツイートしている。
「5年ぶり3冊目の著書にして自身初めての重版です。ありがとうございます! 」
https://twitter.com/donkou/status/635834253188599808
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062883283

ソニーの4K対応テレビ、ブラビアパナソニックの4K対応テレビ、ビエラが『ひかりTV 4K』に対応するようになった
すでにシャープは業界初、昨年6月にアクオスがそれに対応済みで、今年1月に対応チューナーが提供されましたが、3月には東芝のレグザ、6月にはLGが、それぞれ対応チューナーが内蔵され、最後にソニーパナソニックが対応したこといになる。
http://www.nttplala.com/information/2015/8/20150825.html

◎「Japan In-depth」編集長の安倍宏行が「テレビ局が良質なコンテンツを提供しなければネットフリックスの成功はない、などと思っているなら、とんでもないしっぺ返しを食うだろう」と書いているが、私もそう思う。
http://www.huffingtonpost.jp/hiroyuki-abe/netflix-japan_b_8035296.html
仮にネットフリックスが日本上陸に失敗しても「携帯での動画視聴に抵抗がない」世代の存在を無視することはできまい。テレビとてこうした世代を無視することはできない。
例えばフジテレビ。9月3日から9月6日まで開催される「43rd フジサンケイクラシック」では、LINE公式アカウントのリアルタイム動画配信機能「LINE LIVE CAST」と、「YouTube Live」を導入して、生配信を中心にして16番ホールを完全中継する。また、「FIVBワールドカップバレーボール2015男女大会」を、地上波のフジテレビに加えて、BS放送CS放送、さらにインターネットを加え、”4つのメディア”を駆使して全試合中継を実施している。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/082602753/
http://www.fujitv.co.jp/company/news/150818.html

三池崇史監督の「藁の楯」がハリウッドでリメイクされることになった。日本テレビも一枚噛む。
http://top.tsite.jp/news/cinema/i/25092677/

◎武藤貴也議員「釈明会見」を開いたが、「この会見に出席できたのは、自民党記者クラブと武藤議員の地元である滋賀県の県政記者クラブに所属している記者だけ」だったという。「会場から締め出された約20人のカメラマンや雑誌記者たちからの怒号が飛び交った」そうだ。
http://www.bengo4.com/other/1146/1307/n_3599/
15分間にわたって語られた「釈明」も「弁護士ドットコム」は詳細に報じている。
http://www.bengo4.com/internet/n_3593/
週刊文春」の記事にかかわる会見であったが、「週刊文春」記者も締め出された。その「週刊文春」が今度は武藤議員の「買春」を報道した。相手は19歳の未成年男子!場所は議員宿舎
「売買春が法律で禁止されているのは異性間のみであり、同性間は違法とならない。ただ、未成年の身体を金で買うという武藤氏の利己的な振る舞いに、国会議員としての資質を問う声がさらに高まりそうだ」
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/5374
最近の「週刊文春」はスクープがあっても昔のように売れないと言われている。しかし、票に結びつかなくとも「週刊文春」が「週刊文春」でありつづけるためにスクープは絶対に欠かせまい。

◎「女性セブン」のスクープ「安倍昭恵さん 布袋寅泰と深夜2時!酔って、唇、しなだれて」!首相夫人は布袋の「首に腕を絡ませて、肩に頭を乗せたり、彼の首筋にキスをしたり」したそうだ。安倍晋三布袋寅泰に対して、どのような自衛権を発動するのだろうか。
http://www.news-postseven.com/archives/20150827_346070.html
しかし、布袋はモテるよなあ。

◎「東京商工リサーチ」の分析である。
「売り上げに占める雑誌の割合が高いことから、街の小さな本屋が次々と姿を消している。小さな本屋に細かな営業を行ってきた栗田は売上高が10期連続で減り、2014年には329億3100万円とピークの半分に落ち込んだ。6期連続で経常赤字となり、最終赤字も余儀なくされた」
http://www.sankeibiz.jp/business/news/150827/bsg1508270500002-n1.htm

◎全国の暴力団の43.7%を占める日本最大の山口組が分裂か。
「全国最大の指定暴力団山口組(総本部・神戸市灘区)傘下の複数の2次団体が山口組から離脱し、新組織を結成する可能性のあることが27日、関係者への取材で分かった」
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201508/0008341424.shtml
8月25日に鈴木智彦が次のようにツイートしている。
ツイッターを検索すると、二階堂ドットコムをソースに、山口組が分裂するかもという情報が流れております。事実、分裂する可能性が濃厚です。新団体はもう名前も決まっております。当然、抗争になると考えて間違いない」
https://twitter.com/yonakiishi/status/636194133976068096
二階堂ドットコムを見てみよう。
http://www.nikaidou.com/archives/70822
http://www.nikaidou.com/archives/70825
鈴木のツイートは臨場感があるなあ。
https://twitter.com/yonakiishi?ref_src=twsrc%5Etfw
「任侠一筋 六代目山口組テーマ曲」も聞いておきたい。
https://www.youtube.com/watch?v=jANNAZSJJRo

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】

常識を踏まえたうえで「非常識」を実現するのが編集力であったはずである。