【文徒】2015年(平成27)8月31日(第3巻164号・通巻609号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】紀伊國屋書店村上春樹買い切りについて
2)【記事】山口組分裂とツイッター
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.8.31 Shuppanjin

1)【記事】紀伊國屋書店村上春樹買い切りについて

紀伊國屋書店村上春樹の新刊「職業としての小説家」の初版10万部のうち、9万部を版元のスイッチ・パブリッシングから買い取るという施策について「紀伊國屋がやって許されるのならば、Amazonが同じことを企図しても許されるということになる。そういう買い占め合いの殴り合いになったら、最後に立っているのはキャッシュが多い方だと思うんだけどねぇ……」というツイートがあったそうだ。
http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/jikenbo_detail/?id=20150826-00044434-r25
そうアマゾンは今回の紀伊國屋書店の取り組みを歓迎しているのかもしれない。「EBook2.0Magazine」は、次のように指摘している。
「…インターネット書店=アマゾンへの対抗というのは「名分」であり、人気作家を買切りして優位に立つことが本旨である。紀伊國屋DNPに続いて、業界大手はすべてこれに倣うことになる。この事態をアマゾンが歓迎することは言うまでもない」
http://www.ebook2forum.com/members/2015/08/coup-d-etat-by-kinokuniya-is-destroying-the-ancient-regime/
http://www.ebook2forum.com/2015/08/kinokuniya-buyouts-a-new-title-of-haruki-murakami/
先のツイートを投稿した人物は次のようにもツイートしている。
「これ、法律的に大丈夫なんかや? 競争阻害行為に当たりかねない気がするわけだけど……。一般の商品なら買占めに対して値上げ圧力がかかる(金を出して対抗することができる)けど、書籍は再販価格維持によって価格が変動しないので、不正競争臭い」
さすがに不正競争とは言えまい。紀伊國屋書店は自社の店舗や取次店を通じて全国の書店にも「職業としての小説家」を回すとしている。しかし、ベストセラーが入り難い中小零細規模の街の書店からすれば、「職業としての小説家」に限らず、ベストセラーであれば何でも回してもらいたいところだろう。紀伊國屋書店がいわば二次取次の役割を担う覚悟があれば、今回のような試みも無意味ではあるまい。

                                                                                                                        • -

2)【記事】山口組分裂とツイッター

山口組の分裂を理解するには「組長」のツイートは参考になる。
「個人的意見ですが、山口組は五代目から正統性に問題があると思います」
https://twitter.com/6yamaguchigumi/status/636893033577885696
「遡れば、山一抗争の政治的解決が山口組に正統性を失わせ、この度の分裂に発展したと思います」
https://twitter.com/6yamaguchigumi/status/636894706748657664
夏原武は次のようにツイートしている。
「山一(1984-1989)の時は時代がバブルに向かうころに始まって、バブル時代に終わった。俺は浅草にいたんだけど、筋は菱にあるなあと外から見てて思った。今回もはっきり分かると傾向は見えるだろうけど、時代が違い過ぎる。あの頃は暴対法も暴排条例もなかった」
https://twitter.com/t_natsuhara/status/636730355093913600
社会経済学者の松原隆一郎もこの件でツイートしている。
山口組が分裂の危機にあるそうだが、実は兆候は昨年早くから現れていた。住吉霊園にある山本健一元組長の墓には、没後毎日豪華に献花が行われ、周囲まで掃除が欠かされることがなかったのに、ぱったりと途絶えていたからだ。我が家の墓と近い場所にあるので、気になっていた」
https://twitter.com/ryuimatsu/status/637064359244468224
「YAKUZA Wiki」には8月27日付で「神戸山口組」を加えた。
http://wikiyakuza.wiki.fc2.com/wiki/%E7%A5%9E%E6%88%B8%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E7%B5%84

                                                                                                                        • -

3)【本日の一行情報】

◎ローソンが書籍の販売を拡大することになった。9月28日から書籍専用商品棚を設置が可能で、売上が見込める約1,000店舗に順次導入することを決めたのだ。通常のローソン店舗ではコミックを除く書籍は10〜20アイテムほど販売しているが、書籍販売専用商品棚では、小説文庫や雑学文庫、ビジネス書、料理・健康の実用書など約75アイテムを取り揃える。ローソンによれば2014年6月から秋田県や千葉県などの一部店舗で専用商品棚を導入し書籍販売を行った結果、雑誌と書籍を合わせた売上高は約1割増加したそうだ。
http://www.lawson.co.jp/company/news/106584/

◎アマゾンはアマゾンプライム会員向けの新たなサービスとして、2015年 9月から 「プライム・ビデオ」 を提供する。年会費3,900円(税込)のみで、「プライム・ビデオ」が提供するすべての映像コンテンツを、いつでも見放題となる。月額ベースに換算すると毎月325円で、日本やアメリカの映画やテレビ番組、人気アニメ、ファン必見のミュージック・ライブ、バラエティ番組やアワードを受賞したAmazonオリジナル作品など幅広い映像作品を見放題となる。
http://www.amazon.co.jp/gp/press/pr/20150827/ref=amb_link_72607249_1?pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_s=center-1&pf_rd_r=1FR5DQH8SS1H980NPB1W&pf_rd_t=2701&pf_rd_p=221890729&pf_rd_i=home-2015

スクウェア・エニックスは「和解による紛争の解決に関するお知らせ」を発表した。
SNKプレイモアは、本件出版物が同社の著作権を侵害しているとして、2014年5月26日付で、当社及びその役員・社員を大阪府警察に刑事告訴しました。これを受けて、当社は、2014 年10月8日付で、本件出版物がSNKプレイモア著作権を侵害していないことの確認を求める債務不存在確認訴訟を大阪地方裁判所に提起し、さらに、これに対する反訴として、SNKプレイモアは、2015年3月16日付で、本件出版物の出版差し止めを求める著作権侵害行為差止請求訴訟を大阪地方裁判所に提起しました。
このたび、両社及びSNKプレイモアの大株主であるLedo Millennium Co., Ltd.(以下「Ledo」)の間で、今後、各社のコンテンツを利用した新たな協業機会の創出を可能にするため、本件紛争を早期に解決すべきとの合意に至り、2015年8月24日付で両社間の和解が成立しました。なお、この和解に基づき、SNKプレイモアは、2015年8月24日付で上記刑事告訴についての告訴取消書を大阪地方検察庁に提出し、同庁に受理されました。
両社及びLedoは、新たな協業機会の創出を通じて、これからもファンの皆様のご期待に沿うコンテンツの開発・提供に邁進してまいります」
http://www.jp.square-enix.com/company/ja/news/2015/html/e9d94051bc90936cadf6b66e9e7e5604.html
SNKプレイモア中国企業に買収されたことも影響しているのかもしれない。問題となった「ハイスコアガールズ」の連載も再開されるのかもしれない。

◎武藤貴也衆院議員は児童福祉法にも売春防止法にも違反しないそうだ。「同意の下の買春」を公開された武藤貴也議員は「被害者」だと、このブログは書いている。
http://www.huffingtonpost.jp/letibee-life/post_9937_b_8046584.html?ncid=tweetlnkjphpmg00000001

◎宝島社は、2015年8月26日から10月にかけて、「手帳シリーズ」2016年度版 全30タイトル(!)を発売する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000199.000005069.html

◎宝島社は「ブランドムック(R)」シリーズより、「ANNA SUI 20TH ANNIVERSARY!」シリーズ全6タイトルを、8月27日(木)から順次発売する。「ANNA SUI」は来年、日本上陸20周年となる。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000198.000005069.html

ハースト婦人画報社の「25ans」と年に4回発行される「リシェス」をセットで定期購読すると「プリティ ユー ロンドン “ルームシューズ”」と「フェラガモのシニョリーナ オーデトワレ」を貰える。
http://www.hearst.co.jp/whatsnew/140301-richesse-25ans-subscription

学研出版ホールディングスは、事業創造アクセラレーターを運用するゼロワンブースターとともに、第二回目となる「学研アクセラレーター2016」をスタートさせる。「学研アクセラレーター2016」は「出版・メディア」、「書籍・雑誌」、「情報コンテンツ」、「教育」をキーワードに学研とベンチャー企業(起業家)が足りないリソースを相互に補完しあい、従来の業界に革新的なイノベーションを起こすビジネス共創プログラムだそうだ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000543.000002535.html

電子書籍取次のメディアドゥがインターネット広告事業に本格的に参入することになった。メディアドゥは、あらゆるインターネットデバイスのネットワーク広告、ディスプレイ広告、アフィリエイト広告などに対応したワンタグソリューションサービス 「Trans-AD」(http://lp.trans-ad.jp/)の提供を開始した。メディアドゥはストアに対し集客のための広告提案に加えて、電子書籍業界以外の様々な企業の広告を取扱うことで、マーケティング情報を蓄積すると同時に、広告事業領のを拡大を目指すそうだ。
http://www.mediado.jp/service/1248/

◎森ビルが愛媛県松山市に複合商業施設「AEL MATSUYAMA(アエル松山)」を8月26日に開業した。二階には「セレンディップ明屋書店アエル店」が開店した。
http://mainichi.jp/area/ehime/news/20150827ddlk38020580000c.html

日本雑誌協会は「ToMeキャンペーン」を9月発売の女性誌を対象に、全国の書店約3400店で実施する。女性誌のフェアとしては雑誌業界で史上最大規模となるのだそうだけれど…。
http://dot.asahi.com/webdoku/2015082800003.html
厳選グッズが90名、図書カードが1025名にブレゼントされる。それだけなの?
http://magafes.jp/tome2015/
店頭以外の場を使ってでも、もう一工夫できないものか。雑誌業界の「編集力」とは、この程度のものなのだろうか。

ソフトバンクグループとベネッセホールディングス合弁会社 Classi(クラッシー)は、同社が提供する学習支援クラウドサービス に 1万本以上の動画コンテンツを9 月上旬から提供する。
http://blog.benesse.ne.jp/bh/ja/news/m/2015/08/27/docs/20150827release.pdf

電通は、昨今のオンライン動画市場の広がりと広告主ニーズの高まりを受け、オンライン動画関連のプロフェッショナルメンバーを集めたグループ横断組織、チーム「鬼ムービー」を発足させた。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0828-004132.html

吉本興業電通デジタル・ホールディングスとコンテンツ・プロデュース事業の合弁会社「YDクリエイション」設立について検討を始めたそうだ。YDクリエイションのプロデュース第一弾として「火花」を映像化するという。しかもネットフリックスでの独占配信だそうだ。
http://www.advertimes.com/20150828/article201667/
http://www.oricon.co.jp/news/2058259/full/

エムオン・エンタテインメントは、「andGIRL」 の臨時増刊として発刊していた「mamagirl 」を 秋号(8月28日発売)より季刊誌として独立創刊した。「mamagir WEB」も拡大強化する。
https://www.atpress.ne.jp/news/71965

◎「ダイヤモンドonline」にアップされた小川たまかの「日経のFT買収は序曲!?『メディア大再編』は本当に起きるのか」によれば「無限にスペースがあるネット上でニュースを配信することは、誰にでもできる」にしても、「それを正当な手段で採算化することは実に難しい」と。
http://diamond.jp/articles/-/77471

                                                                                                                        • -

4)【深夜の誌人語録】

自分のテーマを仕事以外で持つことが仕事の幅を広げることになる。