【文徒】2015年(平成27)9月1日(第3巻165号・通巻610号)

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1)【記事】佐野研二郎「パクリ疑惑」はエンドレスなのか!
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

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1)【記事】佐野研二郎「パクリ疑惑」はエンドレスなのか!

これで一件落着となるはずだった。佐野研二郎による東京五輪公式エンブレムの「パクリ疑惑」について、大会組織委員会が記者会見を開き、原案を示して選考過程を説明したからだ。
8月28日付毎日新聞は次のように書いている。
「最終案は原案から2度の修正を経たといい、組織委の武藤敏郎事務総長は『原案は劇場のロゴとは別もの。オリジナルだと確信している』と独自性を強調した」
http://mainichi.jp/select/news/20150829k0000m040052000c.html
ハフィントンポストも次のように書いている。
「大会組織委員会によると、佐野氏の原案は長方形と三角形、そして円を組み合わせたデザインだった。しかし、商標登録されているデザインの中に原案と似ているデザインが見つかったため、組織委は佐野氏に修正を依頼。あらためて出てきた案は、円の位置を変更し、また、三角形に曲線の要素を取り入れたものだった」
http://www.huffingtonpost.jp/2015/08/28/sanokenjiro-emblem-tokyo2020_n_8052946.html
しかし、これにて一件落着とはならなかった。新たな「パクリ疑惑」が逆に浮上してしまったのである。大会組織委員会が明らかにした佐野のロゴの展開例として公開された二枚の画像の「パクリ」が指摘されてしまったのだ。
「…この画像で使われている羽田国際空港のロビー風景が、個人ブログに2012年5月に投稿された写真と、酷似しているという点だ。個人ブログに掲載された画像にはコピーライトの表記もあるが、展開例の画像にはその部分がない」
「…渋谷駅前のビルのモニターにエンブレムが映しだされた使用例も紹介されたが、こちらの画像も、『非営利』目的のみ使用可能という条件で画像サイト『Flickr』に投稿された画像が使われているのではないかとの指摘も出ている」
http://netgeek.biz/archives/47313
しかも、この画像ばかりではなかった。表彰台の人物などディテールにおいても「パクリ」がバイラルメディアの「netgeek」に指摘されてしまったのである。
http://netgeek.biz/archives/47570
広告に携わる者であれば「コピー」と「トレース」の間には天と地ほどの開きがあることは自明の理であると私などは考えていた。佐野研二郎のような広告業界を代表するクリエイターがこうも安易に「コピー」に寄りかかっているとは思いもしなかった。それだけに一連の「パクリ疑惑」は、生活者の「広告」に対する信頼感を大きく毀損してしまったのではないだろうか。その責任は重いと言わねばなるまい。むろん、広告業界は佐野をスケープゴートにして洞が峠を決め込むわけにはいくまい。そう広告業界著作権に対する認識が厳しく問われているのである。

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2)【本日の一行情報】

東洋経済オンラインが2014年5月〜2015年4月までの期間で調査した広告宣伝費の金額が多い会社ランキング。
1位「ソニー」4444億円
2位「トヨタ自動車」4351億円
3位「日産自動車」3367億円
4位「イオン」1721億円
5位「セブン&アイ・ホールディングス」1656億円
6位「ブリヂストン」1243億円
7位「マツダ」1224億円
8位「武田薬品工業」1132億円
9位「NTT」1012億円
9位「三菱自動車」1012億円
http://toyokeizai.net/articles/-/82100
MRS広告調査会社によると今年上半期の雑誌広告出稿量(広告費)の上位10社は次のようになる。
1位「シャネル」15億9236万1000円
2位「パナソニック」9億8949万8000円
3位「花王」9億1255万9000円
4位「資生堂」8億1044万6000円
5位「マッシュスタイルラボ」7億3802万6000円
6位「三陽商会」7億3617万円
7位「サマンサタバサ」6億7522万円
8位「ルイ・ヴィトン・ジャパン」6億1718万9000円
9位「パルファンクリスチャンディオール」5億9725万円
10位「ユーキャン」5億4567万4000円
雑誌広告ではトヨタが32位にランクインしている以外は100位圏外だ(ブリヂストンスポーツは83位)。雑誌広告ビジネスが女性誌に傾斜してしまった結果と言えるだろう。
http://www.mrs-ads.com/statistics/tre_oth_rank.php

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムDAC)は、キュレーションマガジン「Antenna(アンテナ)」を運営するグライダーアソシエイツと資本業務提携した。テレビCMや雑誌広告などと連携した、ブランディング広告商品の開発を始めると同時に、ブランディング効果を測る指標の策定にも取り組む。
http://www.advertimes.com/20150827/article201492/

資生堂のコスメブランド「インテグレート」のミニシリーズ「インテグレート『ポーチインコスメ』シリーズ」(税込各540円)が、ローソン限定で9月1日より発売される。
http://www.47news.jp/topics/entertainment/oricon/economy_trend/179884.html
ローソンと組むということは、資生堂セブン-イレブンを敵に回すことになるのかもしれない。

資生堂は9月1日より若年層向けに美容アドバイスアプリケーションソフト「おしえて!ビュー子」β版の配信を開始する。キャラクター「ビュー子」が、アイメーキャップのハウツーや美容情報、雑談をチャット形式で答えるという。
http://www.shiseidogroup.jp/releimg/2481-j.pdf
http://www.shiseido.co.jp/beauco/
即時性に優れ、もれなく回答してくれるとなると、ますます読者の女性誌離れが進んでいくのか。

アキバ総研のアニメポータル「あにぽた」が、7月28日〜8月23日に実施した「2010年代放送少女マンガ原作恋愛アニメ人気投票」によると、
1位:神様はじめました
2位:赤髪の白雪姫
3位:それでも世界は美しい
4位:会長はメイド様
5位:俺物語!!
https://akiba-souken.com/anime/vote/v_53/
上位4位までを白泉社の作品が占めた。

東洋経済オンラインによると、アップルは今年リリースする新しいiPhone/iPad用の基本ソフトウェア「iOS 9」に、モバイル機器向けの広告を遮断する機能を組み込もうとしているらしい。
http://toyokeizai.net/articles/-/82189

電子書籍販売サイト「eBookJapan」は、25社138誌のマンガ雑誌編集長がオススメするレビュー企画「編集長、オススメのマンガを教えてください2015」を8月28日より公開している。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/special/editors_recommend_2015.asp
今もっとも気になる編集長のひとりである「週刊少年サンデー」市原武法編集長のオススメは「だがしかし」だ。
http://www.ebookjapan.jp/ebj/special/editors_recommend_2015_article.asp#review161

東芝電子書籍事業から完全撤退する。東芝電子書籍ストアBookPlaceがU-NEXTに事業譲渡されることになった。「BookLive! for Toshiba」を「BookLive!」に統合することは既に発表済み。追い詰められた同社が、選択と集中の選択肢において電子書籍は将来性なしとして真っ先に切り捨てたということだ。
http://bookplace.jp/pc/static/info/news7.html

◎これはスリリングな「言論戦」である。植村隆朝日新聞元記者)VS阿比留瑠比(産経新聞編集委員)!一冊にまとめてくれないかなあ。
http://www.sankei.com/premium/news/150829/prm1508290007-n1.html
http://www.sankei.com/premium/news/150830/prm1508300009-n1.html
http://www.sankei.com/premium/news/150831/prm1508310001-n1.html

クリーク・アンド・リバー社は、エージェント契約する作家・漫画家がプロデュースするアイテムを販売する、本の世界と雑貨が結びついたオンラインショップSAKKA de ZAKKA(サッカ・デ・ザッカ)をオープンした。第一弾は、椎名誠氏が自ら描き、自著の表紙にも採用されたイラストのプリントTシャツとトートバッグを販売。
http://www.cri.co.jp/news/press_release/2015/20150828001318.html

◎先日、ネットフリックスが日本市場に参入するニュースを伝えたが、それに呼応するようにカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)はインターネットを使った有料動画配信サービスに、定額制(税別月額933円)や宅配レンタルを組み合わせたプラン(2417円)を導入する。Amazonも9月から、定額制の動画を見放題で提供する。
http://www.sankei.com/economy/news/150829/ecn1508290016-n1.html

◎東京と大分で計25万人以上を動員したイベント、「進撃の巨人展 WALL OSAKA」が9月11日(金)から10月18日(日)まで大阪・梅田のグランフロント大阪で開催される。
http://news.walkerplus.com/article/63880/

◎俳優の渡辺謙が8月28日、ツイッターに政府の国会答弁を批判するコメントを投稿した。
「震災の後、不眠不休で救助、救援活動に命を賭けていた自衛隊の皆さんの姿は今も目に焼き付いています。世界に誇れる方々です。国会での答弁から見えてきた、政府の定見なき推測だけで武器弾薬を携えて彼らを任地に向かわせる。未来のない戦いを強いられた栗林中将と何ら変わりがない気がしてならない」
http://www.huffingtonpost.jp/2015/08/28/iwo-jima-watanabe-ken_n_8057442.html
栗林中将とは、渡辺自身が映画「硫黄島からの手紙」(クリント・イーストウッド監督)で演じた栗林忠道陸軍中将(最終階級は大将)のことで、硫黄島の戦いで日本軍守備隊の最高指揮官を務めた。
一方、安倍首相も栗林には触れている。先の米議会での演説のときに、栗林の孫である新藤義孝衆院議員と硫黄島で戦った元米海兵隊員を紹介。そこで両者は握手を交わし、日米和解の象徴として議場で拍手を浴びた。
「みなさま、いまギャラリーに、ローレンス・スノーデン海兵隊中将がお座りです。70年前の2月、23歳の海兵隊大尉として中隊を率い、硫黄島に上陸した方です。近年、中将は、硫黄島で開く日米合同の慰霊祭にしばしば参加してこられました。こう、仰っています。
硫黄島には、勝利を祝うため行ったのではない、行っているのでもない。その厳かなる目的は、双方の戦死者を追悼し、栄誉を称(たた)えることだ』
もうおひとかた、中将の隣にいるのは、新藤義孝国会議員。かつて私の内閣で閣僚を務めた方ですが、この方のお祖父さんこそ、勇猛がいまに伝わる栗林忠道大将・硫黄島守備隊司令官でした。これを歴史の奇跡と呼ばずして、何をそう呼ぶべきでしょう。熾烈に戦い合った敵は、心の紐帯が結ぶ友になりました。スノーデン中将、和解の努力を尊く思います。ほんとうに、ありがとうございました」
http://www.sankei.com/politics/news/150430/plt1504300008-n1.html

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3)【深夜の誌人語録】

人生において無駄な時間は一秒たりともないのである。「無駄な時間」こそ無駄ではないし、無駄にしてはならないのだ。