【文徒】2015年(平成27)9月2日(第3巻166号・通巻611号)

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1)【記事】大手出版社4社とアニメイト合弁会社(株)ジャパン マンガ アライアンスを設立
2)【記事】佐野研二郎問題で問われる広告業界のあり方
3)【本日の一行情報】
4)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.9.2 Shuppanjin

1)【記事】大手出版社4社とアニメイトが(株)ジャパン マンガ アライアンスを設立

アニメやコミック関連の販売店チェーンとしては国内最大手のアニメイトと、大手出版社(講談社小学館集英社KADOKAWA)の5社が合弁会社(株)ジャパン マンガ アライアンスを9月1日付で設立した(本社は東京都板橋区アニメイト本社内)。
同日午前11時より同新宿区内の日本出版クラブにて設立記者会見が開催され、合弁会社の取締役となる上記5社の担当者(アニメイト・國枝信吾取締役、講談社・峰岸延哉取締役、小学館・相賀信宏取締役、集英社・隅野叙雄コミック販売部部長、KADOKAWA・塚本進常務執行役員)が出席のうえ説明を行った。
「ジャパン マンガ アライアンス(以下JMA)」という社名が表わす通り、この会社は日本発のマンガやアニメ作品が海外展開を図るに際して、出版社など日本のコンテンツ事業者が互いに連携を図りながらあたろうとの趣旨のもとに設立された。上記の出版4社のマンガ作品には既に海外でも大々的に展開されているものが数多いが、5社の代表かつJMAの社長として冒頭の説明に立った國枝氏はまず「現状は海賊版など様々な問題が解決されていません。
また、日本企業の海外への投資という視点でも様々なカントリーリスクや、単独資本で展開する事業リスク等々の課題を抱えており、まだまだグローバルな産業としての地位を確立することができていない状況です」と切り出した。
まさに今回、こうした合弁会社を組むに際しての主な目的は、そうした課題をアライアンスによって克服しようというところにあるわけだ。ちなみに事前には官民による「クールジャパンファンド」(株式会社海外需要開拓支援機構・クールジャパン推進機構)の活用も検討されたが、最終的には資本金4億9600万円を5社がほぼ均等に出資する形となったとのこと。
そのうえで國枝氏はJMAの理念として「著作権・権利関係がきちんと尊重され・守られ、ニセモノではなく、すばらしい本物の作品にファン達が接する場所を提供し、日本マンガ・アニメのファンが爆発的に広まるインフラ作りを行う」を掲げた。つまり、各出版社が海外展開において一番頭を悩ませている海賊版を「日本発の本物(を含めた情報)」を提供することで駆逐しつつ、なおかつ当地の読者とリアルに接することができる拠点を設けるというものだ。
その手始めとして今秋にはタイの首都・バンコクにJMA100%出資の現地法人を設立し、年末から来年春にはバンコク市内に200坪前後の広さを持つ店舗を開設(屋号は国内や、既に台湾で展開している店と同じ「アニメイト」になる予定)。以後は動向を見極めながら他地域への拡大を摸索していくという。
店舗には日本からもマンガ・アニメについての専門知識を有したスタッフが派遣されるほか、店内にイベントスペースを設けることで、作品関連の最新情報を現地のファンにもリアルに伝えられるようにする一方、海外市場におけるリサーチ機能も持たせるそうだ。
また、これも海賊版対策として店の会員カードに登録する際には「海賊版に反対します」との同意を求める記入項目も盛り込むことでファンやユーザーへの啓蒙も図るとのこと。さらに、近年は人気マンガ・アニメ作品の舞台となっている日本国内の各地をめざす訪日客も増えていることから、そうしたインバウンドの拠点としての情報発信機能も当然考えられている。
第一号店を置く地域としてタイが選ばれたのは、既に上記出版4社発の日本作品の合計だけでも年間50〜65億円(海賊版を含めると150〜190億円と見込まれる)もの市場規模があり、なおかつ現在も着実に経済成長を遂げる中で中間層も増大し、さらには一昨年からはタイ人の日本での短期滞在に際してのビザが免除されたこともあって訪日客が昨年には過去最高の65万7570人(対前年比45%増=日本政府観光局調べ)に登ったなどの環境の良さを踏まえてのことだという。
なお、そうした日本マンガ・アニメのファンは何も上記4社の作品のみを読んでいるわけではないが、取締役の一人である講談社の峰岸氏は4社以外のJMAへの参加について「他の各社様へのお声かけをどうするかは現時点では未定です。但し海外店舗で4社だけの商品しか置かないということは一切考えておりません。今日を機に他の各出版社様にもJMAの趣旨を充分ご理解いただいたうえでどんどんご出品あるいは商品提供をお願いしたいと考えています」と述べた。
今後の店舗展開も含めて細かいところでは未定の部分も多いようだが、国内ではライバル関係にある大手4社が共同で海外ビジネスのプラットフォーム整備に乗り出したということのインパクトは少なくないだろう。今後の展開に注目したい。(岩本太郎)

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2)【記事】佐野研二郎問題で問われる広告業界のあり方

昨日、佐野研二郎のオリンピックのエンブレム使用中止が発表された。
http://mainichi.jp/sports/news/20150902k0000e040001000c.html
佐野自身は記者会見に姿を現さなかったが、ホームページに文章を発表した。
「模倣や盗作は断じてしていないことを、誓って申し上げます」
「一部のメディアで悪しきイメージが増幅され、私の他の作品についても、あたかも全てが何かの模倣だと報じられ、話題となりさらに作ったこともないデザインにまで、佐野研二郎の盗作作品となって世に紹介されてしまう程の騒動に発展してしまいました」
「もうこれ以上は、人間として耐えられない限界状況だと思うに至りました」
http://www.mr-design.jp/
しかし、盗作疑惑はまだまだ噴出中で、今度はメガネだ。
http://hosyusokuhou.jp/archives/45267291.html
佐野研二郎ADによる多摩美術大学の広告にGLAFAS(グラファス)が2012年2月に公開した記事「軽くてタフなメガネ Zoff SMART(ゾフ スマート)に新作登場、壊れたときの『無償交換サービス』もスタート」に掲載された写真を無断で使っていたことが発覚したのである。GLAFASはホームページに次のように書いている。
「この写真は、GLAFAS(グラファス)を運営するさくらヒロシが、私物を撮影し掲載したものです。情報を提供いただいた方から、『これは商用許可でているのでしょうか?』とご質問いただきましたが、現在までに多摩美術大学および佐野研二郎氏、デザイナー香取有美氏からの連絡は来ておりません」
広告業界をあげてクリエイティブ部門の仕事の進め方を総点検する必要があるだろう。GLAFASは次のようにも書いている。
「GLAFAS(グラファス)のものと思われる写真が使用されたことにより、『ネットで拾った写真を使ってコラージュする』という安易な手法が、デザイン・広告の世界に存在することを身をもって知りました」
http://www.glafas.com/news/info/150831sanokenjiro_tamaartuniv_ad.html
広告業界そのものが信用を失いつつあるのだ。もはや佐野研二郎だけの問題ではない。
ニューヨークADC金賞、 ロンドンD&AD金賞イエローペンシル、ONE SHOW DESIGN金賞、 カンヌライオンズ金賞を受賞した佐野研二郎の代表作「MADE BY HANDS.」にも疑惑が浮上した。「netgeek」、恐るべしである。
http://netgeek.biz/archives/47637
佐野は画像をコピーして、そのまま使うという手法に問題はないと判断していたとしか考えられない。そのように判断しているクリエイターは広告業界において佐野だけにとどまらないはずだ。繰り返す、もはや佐野研二郎だけの問題ではない。広告業界が正面から向き合わなければならない問題だ。

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3)【本日の一行情報】

ハースト婦人画報社講談社集英社小学館によるハッカソンイベント「ザ・ファッション ハック東京 2015」で最優秀賞に選ばれたのは自撮り写真をもとに顔に合うファッションやメイクを自動リコメンドできるアプリ「ダレフウ?」をプレゼンしたチームであった。
http://aplista.iza.ne.jp/f-iphone/241387
雑誌編集者はデジタル・テクノロジーにもっと敏感にならなければならないはずだ。

◎「アニメージュ」(徳間書店)が編集者を募集している。雇用形態は業務委託で、月額20万円以上。編集経験があれば月額25万円以上。
http://employment.en-japan.com/desc_733493/

大塚英志が、「ComicWalker」で自主レーベル「大塚英志漫画」を創刊。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1508/31/news102.html
角川歴彦とメディアミックスの時代 第5回」を読んでいただけに大塚にはKADOKAWAと組まないで自主レーベルを立ち上げて欲しかったね。大塚はKADOKAWAについて、ほぼ私たちと同じような展望を持っている。
経営統合がなければ、出版社としての旧KADOKAWAは経営破綻していたはずだ」
「ニコ動の会員収入という安定した収益モデルを持つプラットフォーム企業との経営統合と、それを社内的方便とするリストラで旧KADOKAWAは存続が可能になったという事実は誰も公言しないが、指摘しておくべきだろう」
「歴彦は、海外でまんが・アニメを教えることを、海外に『日本文化に理解のある消費者を拡大』する、としか考えられない。些細なことだが、何故『日本文化の理解者』でなく『日本文化に理解のある消費者』なのか。こういうところに本音が出る。『海外のファン』を『消費者』としか考えられないことに、歴彦やコンテンツ産業の人々の貧しさがあるのだ」
http://sai-zen-sen.jp/editors/blog/works/5-4.html

◎ ドワンゴは、100%子会社のニワンゴを10月1日付けで吸収合併することになった。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1508/31/news138.html

◎「ハフィントンポスト日本版」のステマについての見解が発表された。
「昨今、一部のニュースメディア上で広告と明記せず、編集記事と見紛うような広告を掲載する事例が増えているとの報道が見受けられます。読者にとってこうした広告クレジットのない記事(ノンクレジット)は、編集記事と思って読んでしまう悪質なものであり、ステルスマーケティングステマ)は優良誤認として景品表示法違反に問われる可能性があります。
ハフィントンポスト日本版では、当社規約においてこうしたステマ行為を厳格に禁じており、疑いのある記事は排除する一方、広告記事に関しては広告である旨の表示を明記し、読者の皆様方に誤解やご不便をおかけしない対応をしております」
http://www.huffingtonpost.jp/kazuhiko-kuze/huffpost-policy_b_8058090.html

◎「図書館戦争」の小説はKADOKAWAだが、マンガは白泉社である。映画「図書館戦争」が10月4日(日)TBS系で放映され、翌5日には同じくTBS系でドラマ特別企画「図書館戦 BOOK OF MEMORIES」が放映され、映画「図書館戦争 -THE LAST MISSION-」が10月10日より公開される。
http://www.hakusensha.co.jp/toshokan/

資生堂の7月の国内店頭売り上げが前年同月比で11%増と好調だ。
http://makernews.biz/201508315621/

◎一日のFacebook利用者の数が全世界で10億人を超えた。
http://news.mynavi.jp/news/2015/08/31/382/

◎インテリジェンスとLINEの合弁会社「AUBE」(オーブ)」は、アルバイト求人情報サービス「LINEバイト」において、アルバイト応募者と企業採用担当者が応募から採用までのコミュニケーションをLINEで取ることができる新機能「LINE応募」を公開した。
http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/1067

◎オプティムは、コネクシオと協業のもと、インコム・ジャパンのPOSA技術を活用し、雑誌の読み放題サービス「タブホ powered by OPTiM」と、パソコンソフトの使い放題サービス「パソコンソフト使い放題 powered by OPTiM」のプリペイドカード「OPTiMカード」をコンビニのスリーエフで販売を開始した。
http://www.optim.co.jp/news-detail/17912

トーハンは試験的に完全週休2日制を導入した。これまでは第二土曜日のみ休業だった。
http://www.tohan.jp/topics/20150831_576.html

トーハンは、書店店頭におけるディズニーグッズ及びスター・ウォーズグッズ常設コーナー設置をすすめる。
http://www.tohan.jp/news/20150831_577.html

◎これ着想は良いけれど、つくりがダメ。学研パブリッシングのムック「もう一度買いたい! 遊びたい!! 昭和ホビー完全読本」。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1508/31/news145.html

◎マガジンハウスの「平凡パンチ 五木寛之 時代を駆け抜ける作家」は買った。ゴールデンカップスのマモル・マヌーだったと思うけれど、五木の「青年は荒野をめざす」を絶賛していたんだよね。
http://magazineworld.jp/books/paper/5022/

書泉ブックマートが9月30日(水)をもって閉店することになった。神保町の一角が崩れた。
https://www.shosen.co.jp/news/21665/
藤原編集室が次のようにツイートしている。
「80年代後半だと思うが、国書刊行会書泉ブックマートにウィンドウ広告を出していた。いまはライトノベルやコミックの広告が並ぶ場所で、〈アレイスター・クロウリー著作集〉などの巨大ディスプレイが駿河台下交差点を見守っていた」
https://twitter.com/fujiwara_ed/status/638539442001612800
今のような書店じゃなかったんだよね、ここは!もっと光り輝いていた。かわぐちかいじの「血染めの紋章」を書泉ブックマートで発見したときの喜びを私は忘れられない。私は趣味といえば読書としか言えない暗い学生であった。春日太一も次のようにツイートしている。
「人生の諸先輩方が『学生時代に書泉ブックマートに通っていた』とツイートしてるのをTL上でチラホラ見つけて『あ、この方も暗い学生時代を過ごしていたのかな』とか思ってしまう。ちなみに私は高校から駿台の浪人時代を経て大学院生時代まで、この書店には結構な期間お世話になりました」
https://twitter.com/tkasuga1977/status/638546775024865281

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4)【深夜の誌人語録】

油断は慢心から生まれ、慢心は成功から生まれる。