【文徒】2015年(平成27)9月7日(第3巻169号・通巻614号)

Index------------------------------------------------------
1)【記事】インターネットと広報
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.9.7 Shuppanjin

1)【記事】インターネットと広報

佐野研二郎がアートディレクターとして手がけた多摩美術大学の広告シリーズでメガネを使用した作品で指摘された「パクリ疑惑」だが、佐野が経営している「MR_DESIGN」の広報担当者は「メガネの画像については、この作品を担当したスタッフが実際使っていたメガネを撮影し制作したものです」として疑惑を否定していた。
http://www.j-cast.com/2015/09/03244369.html
これに対して、佐野にメガネ写真を盗用された可能性のあるメガネ情報サイトを運営するさくらヒロシが冷静に反論している。さくらによれば「たとえ同じ型番のフレームであっても、“同じメガネ”は1つたりとも存在しない」そうだ。「さくらヒロシの顔立ちや視力(度数)は、多摩美術大学の広告を撮影したとされるスタッフとよく似ている」のだとしても、「佐野研二郎氏が手がけた多摩美術大学の広告と GLAFAS(グラファス)の写真は、左右非対称に写っている部分まで一致しているように見え」、「リム(ふち)にある白い小さなホコリやバリ、レンズのウズまでもが同じように見える」のは何故かである。
http://www.glafas.com/news/topics/150904sanokenjiro_tamaartuniv_ad_validation.html
河尻亨一は「現代ビジネス」に発表した「それでもあの五輪エンブレムは”パクリ”ではない! 〜そもそもデザインとは何か?」で次のように書いている。
「たとえば写真でもトリミングが1mmずれただけで、ビジュアルの印象というものはかなり変わってくる。見る側は理性ではなく、感性でその細かな違いを実は見分けている。そこまできちんと計算して世に送り出せるのがプロである。そのこだわりが極まって、0.1mmレベルの世界で作業をしているデザイナーもざらにいる」
佐野研二郎が手がけた多摩美術大学の広告シリーズに「0.1mmレベルの世界」にこだわるプロフェッショナリズムがあったかどうかが、それこそ問われているのだ。「0.1mmレベルの世界」にこだわるプロフェッショナリズムにおいて、さくらヒロシが佐野研二郎を凌駕してしまっているのではないか。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44972
多摩美術大学は、この広告シリーズをホームページから削除したことが発覚した。削除の理由はホームページのどこを探しても掲載されていない。
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1509/05/news017.html
佐野研二郎の母校であり、佐野が教鞭をとる多摩美術大学にも疑惑の目が向けられる。そして、さらに延焼。多摩美術大学のホームページには卒業制作作品が掲載されているが、その優秀賞が「いわさきちひろ氏の作品と全く同じ構図。技法と色使いも同じ」であることが発覚してしまう。「netgreek」は次のように書いている。
「有名な作品なのでアートに造詣が深い人ならばすぐに気づきそうなものだが、どうして多摩美術大学の教授は揃いに揃って気が付かなかったのか」
http://netgeek.biz/archives/47958
http://www.tamabi.ac.jp/pro/g_works/2015/id/s14/
多摩美術大学は「沈黙」をもって対応しているようだが、この場合、広報的な観点からいえば、「沈黙」が炎上に対してガソリンの役割を果たしているのだ。断るまでもないが「沈黙」は「冷静」とは別物である。
大関暁夫の広報にかかわる次の指摘は、その通りだと思う。大関横浜銀行時代に神奈川新聞経済部に出向していた経験を持つ。
「メディアに対する『怒』の広報は、敵を増やすだけであり確実に破滅に導く広報なのです。不祥事対応においてはどんなに理不尽な取材を受けようとも、それはある意味身から出た錆なのであり、『メディア=国民の代表』という意識を持った対応を忘れてはいけないのです」
アカウンタビリティ=説明責任は、社会性を帯びた不祥事の当事者になった際には、それまで自身が社会的にどういう存在であっても自動的に発生するものであり、これを無視あるいは逃れようとするならより大きなダメージを被ることになるということは、覚えておかなくてはいけない危機管理広報の基本でもあるのです」
http://blogos.com/article/131791/
佐野研二郎によるエンブレムが描かれた「幻のポスター」、というか撤去されたポスターがネットオークションに出品され、4万5000円で落札されたそうである。
http://mainichi.jp/select/news/20150906k0000m040101000c.html?fm=mnm

                                                                                                                        • -

2)【本日の一行情報】

◎宝島社が「NHKあさイチマガジン」を9月15日に発売する。売れ行きが良ければ定期刊行化するのだろう。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000206.000005069.html

小学館の女性ファッション誌「Domani」CM秋冬編。蛯原友里が服を一枚ずつ脱いでいく!
http://news.aol.jp/2015/09/02/ebiharayuri/

博報堂DYメディアパートナーズは、地域創生に関わる政策の立案・施行を行う地方自治体に対し、コンテンツメニューの提案を始めとするさまざまな支援を専門的に行うビジネス組織「地域創生メディア・コンテンツビジネス推進室」を設置した。
http://www.hakuhodody-media.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2015/09/HDYmpnews201509011.pdf
雑誌も、もっともっと「地方」と組む切口を考える必要があるはずだ。

◎宝島社は、訪日外国人旅行客の増加を受け、インバウンド需要を狙った、「ファッション雑誌用 5カ国語 店頭POP」を「InRed」で展開している。中国語・韓国語・英語・フランス語・日本語の5ヶ国語だ。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000207.000005069.html

小学館の「ドラえもん」デジタルカラー版1〜3巻を無料で配信するキャンペーンが、9月16日まで実施されている。9月3日が「ドラえもん」の誕生日であることを知る。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1509/03/news064.html

自衛隊出身の共産党員!「自衛官共産党市議になった〜憲法9条が結んだ縁」(かもがわ出版)なんていう本が出ていた。
http://joyonews.jp/smart/?p=12879

◎「日之丸街宣女子」富田安紀子VSエミコヤマのツイッター論戦が面白い。
http://togetter.com/li/868858

無印良品有楽町がリニューアルオープン。「書籍コーナーMUJI BOOKS」が目玉である。無印良品の商品とそれに関連した一万冊の書籍を揃えて販売する。選書を担当したのは松岡正剛。出版物を扱う無印良品は、MUJIキャナルシティ博多につづく二店目である。
http://www.muji.com/jp/flagship/yurakucho/

◎五輪エンブレムを決める審査委員代表を務めた永井一正が「読売新聞の取材に応じ、コンペで選ばれたアートディレクター・佐野研二郎氏(43)の原案が2度修正されて最終案になった過程を、大会組織委員会から伝えられていなかったことを明らかにした」というが、この手合いに審査委員代表など二度とつとめさせてはなるまい。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150904-OYT1T50016.html

アメリカでの電子書籍の販売減は、値上げが原因のようである。
http://jp.wsj.com/articles/SB10327460236075474355904581211733250255252

猪瀬直樹が次のようにツイートしていた。
「このまま組織委員会を森会長に任せておけば、ガバナンス喪失の新国立競技場やエンブレム問題だけではすまない、2020五輪の敗戦が待ち構えているような予感がする。考えると背筋が寒くなる。断じてそうであってはならない」
https://twitter.com/inosenaoki/status/639846192399015936

◎このTBSによる9月4日付の「お知らせ」を読む限り、何故このような「お知らせ」を発表することになったのか私を含めて視聴者には理解できない。
「8月31日放送の月曜ゴールデン『SP八剱貴志 (やつるぎたかし)』で、拉致被害者救出活動のシンボルであるブルーリボンバッジを国会議員役の胸に付けました。
全く他意はありませんでしたが、配慮に欠け、拉致被害者のご家族をはじめ支援者、関係の皆様のお気持ちを傷つけたことを心よりお詫び申し上げます。今後はより一層注意して番組制作にあたります」
http://www.tbs.co.jp/
拉致被害者救出活動のシンボルであるブルーリボンバッジを逮捕される国会議員役の胸に付けたことが「配慮に欠け、拉致被害者のご家族をはじめ支援者、関係の皆様のお気持ちを傷つけた」のである。
http://www.sankei.com/world/news/150905/wor1509050029-n1.html
「お詫び」を「お知らせ」として発表する広報センスも問われてしかるべきだろう。

◎金子翔の「佐野氏の盗用を非難する『保守速報』の記事は盗用で成り立っている事実」は読んでおきたい。
「日本の愛国心溢れる保守の方々は『不正は許さない』と言わんばかりに佐野氏を批判しているわけですが、彼らが有り難がって読んでいるこれらの記事はほぼ全て盗用なんですよね。
保守速報のページの構成は【ニュース記事】+【2ちゃんねるのコメント】+【保守速報のコメント】という形になっているのですが、問題なのは【ニュース記事】の部分なんです。ニュース記事の出典を見ると各新聞社だったりYahooだったりするわけですが、引用ではなく丸々転載しているんですよね。一字一句漏らすことなく全てコピペ、全て盗用です」
http://blog.ks-product.com/hosyusoku-sano/
同じく金子による「やはり佐野研二郎は凄かった!五輪ロゴが盗用ではない明確な理由を簡潔に解説」も読んでおきたい。
http://blog.ks-product.com/tokyo-olympic2020-logo2/
何故、佐野は金子のように説明しなかったのだろうか。

◎水上準也の「山窩秘帖」が河出文庫から刊行される。解説の冒頭に書かれた文章を引用しておこうか。
「サンカという三文字が大衆文学を紡ぎ出す小説家の創造力をかきたて、読者の想像力を刺激してやまないのは、『正史』に対峙する『叛史』の可能性を示唆しているからである。『正史』は支配権力の意志によって支えられ、必然的に『叛史』を抹殺しようとする。しかし、どんな支配権力であっても、『叛史』を完全に抹殺することはできない。『叛史』は『稗史』に身を隠すようにして『正史』の行間に生き残るのだ」
http://www.kawade.co.jp/np/search_result.html?writer_id=13152
解説は私が書いている。

東洋経済オンラインは、主要な上場企業の売上高に占める広告宣伝費の比率を独自調査したランキングを発表しているが、1位となったフォーサイドは驚くべきことに「売り上げ1億円を稼ぐために、9340万円の広告宣伝費を投じた計算となる」という。
http://toyokeizai.net/articles/-/83035
フォーサイドは電子書籍ビジネスも手掛けている。
http://www.forside.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2015/07/pr_mb_150713-01.pdf
パピレスも4位にランキングされている。
http://toyokeizai.net/articles/-/83035?page=2

◎第35回新聞広告賞の大賞は資生堂の「2015企業広告 50 selfies of Lady Gaga」に決定。広告主部門で小学館が選ばれている。出版社が選ばれるのは、やはり嬉しい。
http://www.pressnet.or.jp/adarc/pri/2015.html

Twitter Japanの笹本裕代表によれば日本は世界的にも“異常”なほどTwitterがよく利用されているという。実名のフェイスブックよりも、匿名のTwitterのほうが「2チャンネル」文化との親和性が高いということなのだろう。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1509/04/news086.html
もともとマスメディアにしてからが、匿名記事が好きだからね。

日本雑誌協会 デジタル国際委員会(委員長 イヴ・ブゴン)は、9月18日(金)から10月4日(日)までの17日間、雑誌の魅力を再発見できるイベント「NEXT MAGAZINE」をウェブサイトで開催する。今回は女性誌だけでなく、ライフスタイル誌を中心に男性誌も配信する。ゴールデンウィーク期間中に実施した前回は、22万人を超えるユーザーからの約3000万ものページビューがあったという。運営幹事会社はハースト婦人画報社小学館集英社、プレジデント社。ハースト婦人画報社を別にすれば、みな一ツ橋系である。資生堂が協賛している。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000012118.html

新川直司のマンガ「四月は君の嘘」(講談社 全11巻)の実写映画化が決まった。
http://natalie.mu/comic/news/159065

                                                                                                                        • -

3)【深夜の誌人語録】

決断とは選択である。