【文徒】2015年(平成27)9月4日(第3巻168号・通巻613号)

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1)【記事】1)【記事】「ハフィントンポスト日本版」がステマ排除で記事6本を削除
2)【本日の一行情報】
3)【深夜の誌人語録】

                                                                            • 2015.9.4 Shuppanjin

1)【記事】「ハフィントンポスト日本版」がステマ排除で記事6本を削除

「ハフィントンポスト日本版」は「ハフポストブログ調査・管理チーム」を立ち上げた。その役割は「過去掲載された、ステマと疑われるなど、当社が判断した記事に関しては規約に基づき、金銭授受等の有無に関わらず随時削除」し、寄稿記事で「疑わしい事例が発生した場合は、不掲載とするとともに投稿者に警告し、それでも同様の寄稿が続いた場合、ブログアカウント停止の措置を取」ることだ。第1回検証結果として、次の六本の記事が削除された。
「今さら聞けない「Beaconって何?」 ― 企業の導入で注目高まる」(掲載日:2015/01/06)
「企業内社会起業の4年の軌跡 ― ANA『BLUE WING』」(掲載日:2015/08/25)
「もし、その仕事にチャレンジが必要なら、クリエイターを呼んでみませんか?」(掲載日:2015/08/10
Airbnb×CCCインタビュー ― 『家旅』を通して新しいライフスタイルを発掘する」(掲載日:2014/07/15)
「眠れぬ夜は星空を眺める」(掲載日:2014/07/24)
「医師試験に実技導入の狙い...『5ミリ折り鶴』にこめられた医学界への問いかけ」(掲載日:2015/07/22)
http://www.huffingtonpost.jp/hpffpostblog/blog-delete_b_8068558.html
これに対して「企業内社会起業の4年の軌跡 ― ANA『BLUE WING』」を寄稿した安藤光展は「取材記事のステルスマーケティングの疑いについて」を発表し、次のように書いている。
「…記事削除は最新運営ルールに適していなかったとして、私は肯定も否定もしませんが、一度掲載承認をいただいたにも関らず、このように『ステマの疑いがある記事』としてアーカイブ掲示されてしまうのは、本意ではありません。
本件は、取材先より金品の授受はありませんし、過去の取材先との取引実績もありません。また、知人より取材先の担当者をご紹介いただき、2回にわたる取材や撮影をさせていただき執筆した記事であり、知人の会社からもまた、金品の授受をしてはおりません」
http://andomitsunobu.net/?p=10864
私もステマは撲滅すべきだと考えている。ただし削除するにあたって「密室」をつくるべきではないと考えている。「ハフィントンポスト日本版」は投稿記事をただ削除するだけでなく、何故、削除したのか、その理由を削除に至った記事ごとに説明すべきなのではないだろうか。

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2)【本日の一行情報】

◎ネットが明らかにした記事を新聞が報道する。この記事もそうである。9月2日付河北新報の「雑誌掲載の佐野氏作品 横手市のチラシと酷似」。ここでいう雑誌とは「Hanako」のことである。
「20年東京五輪公式エンブレムの使用中止問題で、デザインを担当した佐野研二郎氏(43)が、秋田県横手市で12年にあったイベントのチラシと酷似したデザインを雑誌に発表していたことが1日、分かった。同日、インターネット上で指摘が相次いだ」
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201509/20150902_43022.html
佐野研二郎をめぐる一連の騒動を牽引したのはインターネットであった。ネットで発覚したことがマスメディアに飛び火し、更なる疑惑探しへと「ネット民」を駆り立てた。佐野研二郎問題で調査報道の役割を自らすすんで担った「ネット民」を支えていたのは、一種のルサンチマンではないかと私は踏んでいる。8月5日に開催された記者会見における佐野研二郎の感情的な発言や佐野を擁護する業界人の感情的な物言いが「ネット民」のルサンチマンにガソリンを注ぎ、「ネット民」のルサンチマンを爆発させてしまったのではないだろうか。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/090100076/?rt=nocnt
松岡正剛が次のようにツイートしている。
「五輪エンブレムも却下。陽気なサノケンも降りざるをえなかった。それにしてもこんなに誰も彼も降参させる社会のどこがいいのか。内側叩きしかできない日本はそうとうにやばい」
https://twitter.com/seigowhibi/status/639100517545738240

ミリオン出版らしい企画だ。「ダークツーリズム・ジャパン」を創刊していた。季刊。差別や偏見を助長することに繋がらなければ良いのだが。
http://mainichi.jp/select/news/20150901k0000e040247000c.html

◎ボーンデジタルの小説を集めた四六判小説レーベル「カドカワBOOKS」が10月10日に創刊される。
http://kadokawabooks.jp/
KADOKAWAは刊行点数が多すぎるのではないだろうか。市中在庫を想像するとゾッとする。それでも出し続けるのは「自転車操業」に陥っているからではないのか。

◎「講談社ラノベ文庫チャンネル」がスタート。
http://live.nicovideo.jp/watch/lv230741377

主婦の友社は55歳から86歳までのパリジェンヌたち14人のファッションやライフスタイルを紹介した「Around60 パリジェンヌ・スタイル」を発売した。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000433.000002372.html
紙の出版はオーバー50をターゲットにしたビジネスが主流になっていくのだろう。

◎「週刊少年サンデー」(小学館)連載の「MAJOR 2ndメジャーセカンド)」のコミックスが、18日発売の2巻で累計100万部を突破した。
http://mantan-web.jp/2015/09/02/20150901dog00m200031000c.html

◎「ブックエキスプレス」の書店員全員が、自分で読んで「面白い!」「お客さまにも薦めたい」と思った本を選ぶ「エキナカ書店大賞」は、小島正樹の「扼殺のロンド」(双葉文庫)に決定した。
http://www.j-retail.jp/brand/bookexpress/info/detail.html?id=2092

◎電子コミックスの場合、期間限定で無料配信するという売り方がやはり一番強いのではないだろうか。
http://zakuzaku911.com/archives/4474513.html

◎日本出版者協議会の高須次郎会長が日本出版者協議会のホームページで「栗田出版販売民事再生が意味するもの」を発表しているが、そのなかで取引格差について言及している。「同じ本を卸す場合でも、取引条件に大手・老舗版元と中小零細、新規版元とでは、実質的に1割から2割の格差を生じる」のは次のような理由による。
「大手・老舗版元、医書などの正味は一般に限りなく高く、中小零細・新規版元は限りなく低いのだ。高い正味では7.5掛けなどはざらで8掛けなどというのもある」
「…歩戻しと呼ばれるバックマージンである。新刊委託をはじめとして、長期委託、常備寄託などさまざまな名目での販売協力金であるが、中小零細、新規版元ほど多くのパーセンテージを強いられている」
「…販売代金の支払い条件である。中小零細、新規版元は、新刊は6カ月精算、原則翌月払いの注文品にも、納品額の3割が6カ月間支払い保留されるなどの注文品支払い保留が強いられる。一方、大手・老舗版元には、原則6カ月精算の新刊が翌月に全額ないし一定割合が支払われる内払い、条件払いが適用される」
http://shuppankyo.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/post-bc38.html

ダイヤモンド社が書籍編集者を募集している。
「弊社には、実に多くのベストセラー編集者がいますが、皆が自分のノウハウを隠すことなく積極的に周囲の人たちにオープンにしている点はとても良いと思います」
「基本的に手を挙げた人に任せる文化ですが、それがこの職場のよさでもあります」
「刊行点数のノルマもありません。それでいて高いモチベーションが保たれている」
http://diamond.jp/articles/-/77666

◎日本でもネットフリックスは成功すると私は思う。「AV Watch」のレビューが参考になる。
「レスポンスはとても良い」「コンテンツもかなり揃っている」「よく出来た隙のないSVODサービス」「レコメンドはよく出来てそうだが、まだ未知数」「対応テレビでカジュアルに4K体験」「テレビのNETFLIXボタンは侮りがたい。利用頻度がすごく高まる」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/20150902_718584.html

産業革新機構は、保有する出版デジタル機構の発行済株式の39.4%に相当する株式を出版デジタル機構に売却したそうだ。
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1509/02/news117.html

KADOKAWA・DWANGOは、8月10日から31日までの期間で、183万7200株を総額29億4300万円で自社株の市場買付を実施した。株価を維持するための自社株買いなのだろう。
http://pdf.irpocket.com/C9468/GvsA/eI4W/bY37.pdf

◎「週刊文春」が深見東州の広告を解禁したことが話題となっている。
http://www.gruri.jp/article/2015/09030815/

◎「ニューズピックス」は年内に100万ユーザー、月額1500円の有料会員1万人という目標を達成できる見込みだという。ニューズピックスの社員数は編集部16人、エンジニア12人、ビジネス部門10人。
「…読者層が幅広く、ページビューが伸びやすいスポーツ記事は、従来通りにユーザー数を伸ばすことを目的として無料記事にし、ヤフーにも配信する。一方で、有料会員を増やすことを目的とした有料記事は、読者層が少ないマニアックなネタでも深掘りし、そのテーマに関心のある層に深く刺さる記事を目指す」
http://withnews.jp/article/f0150903002qq000000000000000W0090901qq000012445A

寺脇研が次のようにツイートしている。
「雑誌「映画芸術」が休刊の危機と報じられました。荒井晴彦編集長もそれを支援してきた私もいよいよ限界に近い状態です。なんとか存続する努力はしているのですが…」
https://twitter.com/ken_terawaki/status/638648742195920896
毎日新聞は次のように書いている。
「しかし89年当時の5000部は2000部を切り、ここにきて万策尽きた。このままでは、沖島勲監督への追悼などを特集する秋号と、今年の映画を総括する来年発行の冬号で休刊せざるを得ないという」
http://mainichi.jp/shimen/news/20150831dde012040002000c.html

小学館の女性ファッション誌「プレシャス」の表紙キャラクターを杏が9月7日発売の10月号よりつとめることになった。編集長のコメントがあるのだけれど、う〜ん、オレの生きて来た世界の語彙とまるで違うんだよな。何を言っているかわからないから引用しないでおこう。一冊200万円のファッション誌「ミリオンプレシャス」も発売するというけれど、そういう世界では常識なのだろう。念のため、200万円って校正ミスじゃないからね。ちなみに第二弾は300万円!話題になるだろうね。
http://mdpr.jp/review/detail/1518648

世界文化社の通販事業「家庭画報ショッピングサロン」は、10月で50周年を迎えることに加え、累計50万食を販売している「家庭画報のえびめん」のニュー・バージョン「金ごま香る家庭画報のえびめん」の発売(9月1日)を記念して、「家庭画報の美味しいフェア」を明治屋などで開催する。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000108.000009728.html

資生堂の「花椿」が紙としての刊行をやめ、2016年1月からデジタルに完全移行する。
http://www.fashionsnap.com/news/2015-09-02/hanatsubaki-desital/
女性誌にしてもデジタルを「主」、紙を「従」としたブランド事業にシフトしていかないと生き残れない時代が眼前に迫っていると私は認識している。

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3)【深夜の誌人語録】

筋目を神経質なぐらいに大切にしなければ信用は獲得できない。